コーチ・エィ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コーチ・エィ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コーチ・エィは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、システミック・コーチングによる組織変革や人材開発事業を展開しています。直近の業績は、大型案件の減少等により減収となったものの、業務効率化やIT投資による生産性向上に取り組み、経常利益は2.0億円を確保するなど底堅く推移しています。


※本記事は、株式会社コーチ・エィの有価証券報告書(第25期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コーチ・エィってどんな会社?


同社グループは、対話を通じた組織変革とリーダー育成を支援するコーチングのプロフェッショナル集団です。

(1) 会社概要


1997年にコーチ養成機関として創業し、2001年に法人向け事業を分社化して同社を設立しました。エグゼクティブ向けコーチングを開始し、その後、中国やタイ、米国などへグローバルに展開しています。2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たし、近年はAIコーチングも提供しています。

現在の従業員数は連結で140名、単体で130名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である伊藤ホールディングスで、第2位は創業者の伊藤守氏、第3位はコーチ・エィ社員持株会となっています。

氏名 持株比率
伊藤ホールディングス 48.91%
伊藤守 4.01%
コーチ・エィ社員持株会 3.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長執行役員は纐纈順史氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
纐纈順史 代表取締役社長執行役員 1996年に代々木会計事務所へ入社後、リクルート等を経て2017年に同社へ入社。2025年より現職。
鈴木義幸 取締役会長 1991年にマッキャンエリクソン博報堂へ入社。2001年に同社取締役副社長、2018年に代表取締役社長を経て2025年より現職。
稲川由太郎 取締役副社長執行役員 大日本印刷等を経て2011年に同社へ入社。海外拠点の董事総経理等を歴任し、2020年より現職。
青木美知子 取締役常務執行役員 1994年に東京海上火災保険へ入社。2006年に同社へ入社し、海外子会社のCEO等を経て2023年より現職。
内村創 取締役常務執行役員 1997年に日本アイ・ビー・エムへ入社。2013年に同社へ入社後、執行役員を経て2025年より現職。
伊藤守 取締役ファウンダー 1997年にコーチ・トゥエンティワンを設立し代表取締役に就任。2001年に同社を設立し、2023年より現職。
片岡詳子 取締役(常勤監査等委員) 1998年に法律事務所に入所後、パナソニック等を経て2018年に同社へ入社。2020年より現職。


社外取締役は、亀﨑英敏(元三菱商事代表取締役副社長執行役員)、英公一(元新日本監査法人理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コーチング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) システミック・コーチングによる組織開発ビジネス


同社グループの主要事業であり、プライム市場上場企業を中心とする法人顧客に対し、対話を通じた組織変革プロジェクトを提供しています。経営陣やリーダー層だけでなく、その周囲のキーパーソンを巻き込み、組織全体にアプローチする独自のコーチングを展開しています。

顧客企業からプログラムの受講料やプロジェクトのコンサルティングフィーを受け取る収益モデルです。エグゼクティブ・コーチングやAIコーチング「CoachAmit」などの多様なサービスを組み合わせ、主に同社および各海外子会社が運営を担当しています。

(2) コーチング人材開発ビジネス


組織変革をリードする人材の育成を目的とし、国内外のビジネスパーソンに向けてコーチングスキルや理論を学ぶ実践的な学習プログラムを提供しています。国際コーチング連盟(ICF)の基準を満たした世界基準のプログラムも展開しています。

受講者ごとの販売単価を設定し、個人や法人から受講料を受け取ります。コーチ・エィ アカデミアは主に同社および各海外子会社が提供し、プロのコーチを目指す方向けのプログラムは米国子会社のCOACH U, INC.が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は36億円前後で安定して推移しています。経常利益率は一時低下したものの直近では底打ちの兆しを見せており、当期利益も黒字転換を果たしました。オンライン化への対応や新規サービスの開発を通じ、安定した収益基盤の構築を進めています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 33.1億円 36.0億円 36.5億円 36.4億円 35.0億円
経常利益 4.2億円 5.2億円 3.0億円 2.0億円 2.0億円
利益率(%) 12.6% 14.4% 8.2% 5.5% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 3.6億円 0.2億円 -0.4億円 0.8億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、営業利益は増加しており、営業利益率も改善しています。業務効率化や生産性向上を目的としたIT投資の効果が表れ、利益体質の強化が進んでいることが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 36.4億円 35.0億円
売上総利益 16.9億円 15.3億円
売上総利益率(%) 46.3% 43.6%
営業利益 1.6億円 2.1億円
営業利益率(%) 4.3% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.5億円(構成比34.4%)、業務委託費が2.3億円(同17.8%)を占めています。また、売上原価においては、労務費が12.5億円(構成比61.6%)を占め、次いで経費が7.8億円(同38.4%)となっており、人材を中心としたコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


同社はコーチング事業の単一セグメントであるため、事業全体の業績を記載します。大型案件の減少等により受注状況が一時的に低調となりましたが、新サービスの提供開始や人員配置の最適化に取り組みました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
コーチング事業 36.4億円 35.0億円
連結(合計) 36.4億円 35.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、サービス提供開始時に全額一括請求を行う前金受領制を営業取引の条件としており、営業活動によるキャッシュ・フローを確保することで投資及び財務活動を賄っております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上により、前連結会計年度から増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、サービス提供のためのソフトウエア開発等に伴う無形固定資産取得による支出が主な要因です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによる支出が主な要因です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 1.3億円 2.9億円
投資CF -2.1億円 -2.0億円
財務CF -0.5億円 -0.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


パーパス(Purpose)は「私たちは、世界中の人が対話に参加できる機会を創り出し、社会に貢献しています。」です。対話を通して目標達成に向けた能力や可能性を最大化し、組織の未来に貢献するリーダーを開発することを社会的意義と位置づけています。

(2) 企業文化


対話のプロフェッショナル集団として、互いの共通性だけでなく「違い」にフォーカスする姿勢を重視しています。違いに起因する緊張感や違和感を避けるのではなく、変革に向けた対話を意図的に生み出すことを大切にする文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


売上高の先行指標としての受注高、売上高、営業利益を重要な経営指標として位置付けています。また、継続的な成長と品質の高いサービス提供に不可欠である社内コーチ数も重要な目標として管理し、持続的な事業拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


システミック・コーチングによる組織開発ビジネスの拡大と、顧客ニーズに対応した新規サービスの開発を成長戦略に掲げています。また、グローバルな最新トレンドや自社の研究成果を取り入れ、持続的なコーチング品質の強化と社内コーチ人材の育成に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


コーチングの品質を担保するため、人的資本への積極的な投資を経営上の重要項目に位置付けています。独自の人材育成制度や海外トップコーチによる研修を通じて真のプロフェッショナルを育成するとともに、フレックスタイム制度やベビーシッター利用補助制度など、多様性が尊重される職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.9歳 7.6年 8,677,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 57.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 87.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 90.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、国際コーチング連盟のコーチ資格保有割合の実績(77%)、国際コーチング連盟のコーチ資格保有割合の目標(76%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報漏洩リスク


クライアント企業の機密情報や個人情報を多数扱うため、サイバー攻撃や不正アクセス等による情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用の失墜により、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。情報セキュリティ委員会の設置等で管理体制を強化しています。

(2) 人的資本の確保及び定着リスク


事業の特性上、コーチングスキルを習得した人材の確保が重要課題です。人材不足による採用の遅れや、競合他社への転職、独立等による人材流出が発生した場合、収益の確保が困難となり、競争力が低下するリスクがあります。

(3) 競合・新規参入リスク


大企業向け組織開発サービスに強みを持っていますが、低価格戦略を採る競合の出現や、AIなどのテクノロジーを活用した代替サービスの普及により競争環境が変化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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