※本記事は、ノバシステム株式会社 の有価証券報告書(第44期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ノバシステムってどんな会社?
金融業界向けシステム開発を主力とするソフトウエア開発企業であり、自社製クラウドサービスも展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1982年に中小企業向けシステム開発を目的として設立されました。1983年に大型汎用機向けシステム開発を開始し、1985年には現在の主力である生命保険業界向けシステム開発事業へ参入しました。2010年には飲食店向けクラウドサービスの提供を開始し、2023年に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしています。
同社グループは単体で510名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者である芳山政安氏の資産管理会社であるシリウスとなっており、第2位は同社の従業員持株会、第3位は個人の清板大亮氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| シリウス | 33.71% |
| ノバシステム従業員持株会 | 8.61% |
| 清板 大亮 | 3.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は芳山政安氏が務めており、社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 芳山 政安 | 代表取締役社長 | 内田洋行などを経て、1982年9月に同社を設立し代表取締役社長に就任。以来、同社の経営を牽引している。 |
| 川上 秀樹 | 取締役副社長クラウドサービス部長 | 1988年10月に同社入社。システム開発部長、取締役などを経て、2024年3月より現職。 |
| 加藤 博久 | 取締役 | 1989年6月に同社入社。システム営業部長、システム部長、経営企画部長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 川上 貴之 | 取締役 | 2001年4月に同社入社。東京事業部システム部長、SI第2事業部長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 福島 将介 | 取締役 | 2007年6月に同社入社。大阪事業部開発部長、SI第1事業部長などを経て、2026年1月より現職。 |
社外取締役は、新谷庄司(湘南ライフプランニング代表取締役)、倉田亨(元インテック常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソフトウエア開発事業」の単一セグメントにおいて、主に2つのサービスを展開しています。
■(1) システムインテグレーション
生命保険会社や損害保険会社など、金融業界を中心とした業務用情報処理システムの受託開発を提供しています。中でも保険業界向けはシステムインテグレーション売上の約半数を占める主要領域であり、既存顧客での実績を通じて蓄積した「業務知識」を強みとしています。物流、エネルギー、商社、公共団体向けなどへも幅広く展開しています。
収益は、要件定義などの上流工程から開発、保守に至る一連のシステム開発の対価として受け取ります。売上の大半は元請システムインテグレーション企業またはユーザー企業系列の開発会社との契約によるものであり、同社が開発体制を構築して事業を運営しています。
■(2) クラウドサービス
SaaS型の自社製品として、飲食店向け店舗運営支援システム「Order Revolution」、受付業務支援システム「アイウェルコ」、AI顔認証入退室管理システム「アイウェルコトール」を提供しています。店舗規模や顧客の業態に応じたシステムを提供し、業務の効率化や省力化に寄与しています。
収益は、飲食店やユーザー企業等への新規導入設置料と、月額利用料によるサブスクリプション型の継続的収益から構成されています。直販および販売代理店を通じてサービスを展開しており、本事業は同社が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、底堅いシステム開発需要の拡大を背景に売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益も2024年12月期まで順調に拡大していましたが、2025年12月期は人材投資の強化や社員寮取得等の経費増加により減益に転じています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 42億円 | 46億円 | 54億円 | 65億円 | 67億円 |
| 経常利益 | 1.1億円 | 3.4億円 | 4.8億円 | 5.5億円 | 3.6億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 7.3% | 8.9% | 8.5% | 5.4% |
| 当期純利益 | 0.7億円 | 2.1億円 | 3.4億円 | 3.9億円 | 2.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は堅調に推移し増収となったものの、プロパー従業員の増加に伴う労務費や外注費の増加により売上総利益は減少しました。さらに、採用活動の強化や福利厚生施設の取得に伴う経費の増加により、営業利益も減少しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 65億円 | 67億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.0% | 19.3% |
| 営業利益 | 5.3億円 | 3.2億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.5億円(構成比26%)、役員報酬が1.4億円(同15%)を占めています。また、売上原価においては、労務費が31億円(構成比58%)、外注費が21億円(同38%)を占め、システム開発における人的コストが原価の大半を構成しています。
■(3) セグメント収益
主力であるシステムインテグレーション事業は、一部プロジェクトでの遅延リカバリー対応の影響があったものの概ね順調に推移し増収となりました。クラウドサービス事業も、販売促進策の推進や導入店舗数の増加により売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| システムインテグレーション | 64億円 | 66億円 |
| クラウドサービス | 0.9億円 | 1.1億円 |
| 連結(合計) | 65億円 | 67億円 |
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.5億円 | 4.0億円 |
| 投資CF | 1.6億円 | -4.6億円 |
| 財務CF | -2.7億円 | 0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も62.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私たちは、『スマートに働き、よく学び、よく遊び、夢や理想に近づく』という考えを基にした働き方を通じて、全てのステークホルダーにとっての幸せを追求し続けます。」を経営理念として掲げています。情報技術を活用した無形の価値を提供するためには、単純に時間を費やすのではなく「能力で働く」ことが必要不可欠であるとしています。
■(2) 企業文化
プロフェッショナルとして知識力や技術力を養い続ける「よく学ぶ」文化を根本とし、社内外を問わず趣味やコミュニティ活動に積極的に参加する「よく遊び、夢や理想に近づく」ことを重視しています。この好循環を継続することが経営理念の実践であり、従業員の働きやすさと働きがいの両立を図る企業文化が形成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営上の目標達成状況を判断するための主要な経営指標(KPI)として、「営業利益率」を重視しています。また、システム開発技術者数の稼働に伴って売上が計上される収益構造であることから、「システム開発技術者数」および「一人当たり売上高」も主要なKPIとして認識しています。
* 営業利益率:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、長年蓄積した「業務知識」を基盤に、既存開発領域における継続的案件の受注と取引拡大を図っています。また、AI技術をはじめとする先進的なデジタル技術を活用し、提案型活動を通じた開発領域の新規拡大を推進しています。加えて、クラウドサービスのサブスクリプション契約増加を通じた継続的収益の拡大にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長に向けて「よく学ぶ」文化のもとで高め合い、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用を推進しています。若手からプロジェクトマネージャーまで階層別の教育プログラムを提供し、リモートワークや時短勤務の導入、男性の育児休業取得促進など、多様な従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.2歳 | 8.9年 | 5,381,614円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 60.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リフレッシュ休暇取得率(88.3%)、有給休暇取得率(70.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新及び市場ニーズの変化による影響
RPAの活用などによる定型業務の自動化や、システム開発の内製化が進展した場合、既存のプログラミング業務が代替される可能性があります。同社は技術力の向上や協力会社との協業体制の構築に努めていますが、技術革新の急激な進展は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定顧客企業への依存
同社の売上高は、日本アイ・ビー・エム、ニッセイ情報テクノロジー、SCSKの主要顧客3社で6割以上を占めており、安定的な収益基盤となっています。良好なパートナーシップ関係の構築に努めていますが、顧客企業の取引方針の見直し等が行われた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 不採算プロジェクトの発生
完成物責任を負う請負契約において、プロジェクトの進行状況をモニタリングする独立機関を設置し、リスク管理機能の強化を図っています。しかし、追加要件の発生や作業遅延、品質低下などにより追加的コストや遅延損害金が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材の採用・確保及び育成
優秀なIT人材の確保と定着は事業拡大において重要であり、各種研修制度の充実や就業環境の整備に努めています。しかし、IT人材の争奪激化により必要な人材の確保や定着が進まない場合、また外国籍技術者の就労ビザ更新が認められない場合などは業績に影響を及ぼす可能性があります。



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