アイビス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイビス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場。モバイルペイントアプリ「ibisPaint」の運営やIT受託開発、技術者派遣、AI歌声合成事業を展開しています。当期は売上高50億円、経常利益12億円を計上し、サブスクリプション課金の伸長やM&Aによる事業基盤の拡大により、堅調な業績推移を見せています。


※本記事は、アイビスの有価証券報告書(第27期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイビスってどんな会社?


モバイルペイントアプリの開発とIT技術者派遣を軸に、世界的なユーザー基盤を持つIT企業です。

(1) 会社概要


2000年に設立。2011年にリリースしたモバイルペイントアプリ「ibisPaint」で世界的支持を獲得し、2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2025年にはテクノスピーチとゼロイチスタートを完全子会社化し、AI歌声合成やノーコード開発へと事業領域を拡大しています。

同社グループは連結従業員数356名、単体341名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は創業者の神谷栄治氏であり、第2位は村上和彦氏、第3位には事業会社のリオライトが名を連ねています。強固な経営基盤と最新技術を活かし、クリエイターや企業向けの多彩なITソリューションを提供しています。

氏名 持株比率
神谷 栄治 40.22%
村上 和彦 7.70%
リオライト 5.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は神谷栄治氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
神谷 栄治 代表取締役社長 1998年アルモニコス入社。2000年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2016年よりアイビスモバイル代表取締役社長、2025年よりテクノスピーチ取締役へ就任し現職。
村上 和彦 常務取締役ソリューション事業部担当 1991年より営業代行業に従事。2001年に同社常務取締役に就任し、派遣事業部やプロフェッショナル・サポート事業部を担当。2021年より現職。
丸山 拓也 取締役モバイル事業部担当 2017年にアイビスモバイル(現同社)入社。モバイル事業部課長代理、モバイル統括事業部長を経て、2020年より現職。
安井 英和 取締役管理部門担当 1990年丸万証券(現東海東京証券)入社。ヤマナカでの執行役員総合企画室長を経て、2021年より現職。
中山 靖之 取締役(常勤監査等委員) 1982年住友金属鉱山入社。同社事業部長や伸光製作所代表取締役社長、住友金属鉱山監査役を経て、2024年に同社へ入社し現職。


社外取締役は、宮﨑陽平(公認会計士・税理士事務所所長)、近藤直生(大江橋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モバイル」「ソリューション」「AI歌声合成」事業を展開しています。

モバイル事業


同社が自社開発したiOS・Android・Windows・Mac用モバイルペイントアプリ「ibisPaint」の開発およびサービス運営を行っています。趣味からプロユースまで幅広い年齢層のイラスト制作者を顧客とし、オンラインギャラリー「ibispaint.com」を通じたコミュニティも提供しています。

収益源は、アプリ内に表示される広告枠をSSP事業者に提供することで得る広告収益と、追加機能や広告非表示機能を利用できる定額課金型のプレミアム会員サービス(サブスクリプション課金)、および売切型アプリの販売収益です。運営は同社が行っています。

ソリューション事業


企業向けにスマートフォンやタブレットなどインターネット端末用のアプリケーション受託開発、クラウドサーバ環境の構築・運用保守、およびIT技術者派遣事業を展開しています。顧客のIT戦略やDX化を推進するベストパートナーとして、最新技術を用いたワンストップの開発支援を提供しています。

収益源は、アプリやWebシステム等の受託開発・運用保守に係る代金、および無期雇用契約を結んだIT技術者を顧客企業に派遣することで得る人材派遣料です。運営は同社およびノーコードシステム開発を手掛けるゼロイチスタートが行っています。

AI歌声合成事業


AI音声合成技術を活用したBtoC向けのAI歌声合成アプリ「VoiSona」事業と、BtoB向けの受託開発事業を展開しています。著名なキャラクターやアーティストとコラボした多様なボイスライブラリを取り揃え、国内外の幅広いクリエイターや音楽制作企業向けにサービスを提供しています。

収益源は、「VoiSona」アプリ内で提供する有料ボイスライブラリなどのアプリ課金収入、および企業ニーズに応じたボイスライブラリの開発代金や音声エンジンのライセンス収入です。運営は2025年に完全子会社化したテクノスピーチが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


当期より連結財務諸表を作成しており、売上高が50億円、経常利益が12億円に達しています。アプリのサブスクリプション課金へのシフトや、M&Aによる新たな事業セグメントの追加により、事業規模の拡大と高収益化が着実に進展している状況がうかがえます。

項目 2025年12月期
売上高 50億円
経常利益 12億円
利益率(%) 24.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円

(2) 損益計算書


当期の損益構成を見ると、売上総利益率は60%を超えており、自社アプリやIT人材関連の高い付加価値による収益性の高さが表れています。また、営業利益率も約24%と高水準を確保しており、効率的な事業運営と強固な収益基盤が確立されていることが確認できます。

項目 2025年12月期
売上高 50億円
売上総利益 30億円
売上総利益率(%) 60.9%
営業利益 12億円
営業利益率(%) 24.0%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が5億円(構成比29%)、広告宣伝費が3億円(同18%)を占めています。アプリの利用拡大に伴う決済手数料の増加が見られる一方、オーガニック成長への転換により広告宣伝費の効率的な運用が図られています。売上原価の多くは、開発人員の増加に伴う労務費や外注費等で構成されています。

(3) セグメント収益


モバイル事業が売上・利益ともに全体を牽引し、利益率は50%を超え高い収益性を誇っています。ソリューション事業も安定した利益を生み出しており、AI歌声合成事業は将来の成長に向けた先行投資段階にあるため損失を計上しています。

区分 売上(2025年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
モバイル 28億円 15億円 53.0%
ソリューション 21億円 3億円 13.0%
AI歌声合成 1億円 -0.6億円 -52.2%
連結(合計) 50億円 12億円 24.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アイビス社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上等により、資金を獲得しました。投資活動では、子会社株式の取得や無形固定資産の取得により、資金を支出しました。財務活動では、配当金の支払等により、資金を支出しました。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「モバイルに精通した技術者集団」として、「イラストは言語も民族も宗教もジェンダーも関係ない」という信念のもと、「モバイルペイントアプリで世界のコミュニケーションを創造する」をミッションに掲げています。また、世界でのMade in Japanのプレゼンスを上げることをビジョンとしています。

(2) 企業文化


同社は3つのバリューを掲げ、企業文化の醸成に努めています。高度な技術のエキスパート集団であるという自覚を持つこと、スピーディな意思決定とソフトウェア開発を実行すること、そしてスピードを緩めることなく継続的なチャレンジを通じて新しい価値を創り出すことを重視し、社会課題の解決に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


事業の成長性と収益性を判断する重要な経営指標として、売上高、営業利益、営業利益率を重視しています。また、各サービスにおける重要な事業KPIとして以下の指標の増加を目指し、企業運営に努めています。

* 「ibisPaint」のDAU(日次アクティブユーザー数)
* サブスクリプション契約数
* ITエンジニア数

(4) 成長戦略と重点施策


モバイル事業では、広告に依存しない収益構造を目指す「サブスクリプション本格強化」、PC版展開による「プロマーケット開拓本格強化」、AI技術を取り入れた「高機能開発本格強化」を推進します。ソリューション事業では、高収益なSIer型事業モデルへの進化や新たな開発手法の導入を図り、成長を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


市場動向や技術革新に対応できる優秀なモバイルアプリ開発エンジニア、ITエンジニア、管理人材の確保と育成を事業発展の根幹と位置づけています。能力や職位に応じた教育カリキュラムの構築や、専門性の高いeラーニングサービスの導入を通じて、継続的なスキルアップとキャリア形成を支援する環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 33.8歳 4.1年 4,608,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.6%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.9%


※同社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の規定による公表義務の公表項目として選択していないため、女性管理職比率の記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット広告市場動向の変化


同社のモバイル事業における収益の一部はインターネット広告に依存しています。急激な景気変動や広告配信アルゴリズムの変化が生じた場合、広告掲載案件や広告単価が減少し、同社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、サブスクリプション課金への誘導を強化し、リスク分散を図っています。

(2) ユーザー嗜好の変化


モバイルアプリ市場は競争が激しく、新しいサービスが次々とリリースされています。同社が提供するアプリがユーザーのニーズやトレンドの変化にスピーディに対応できなかった場合、アクティブユーザーの減少を招く恐れがあります。継続的な機能改善と新機能追加を通じて、顧客満足度の維持・向上に努めています。

(3) M&Aおよび資本業務提携の不確実性


事業拡大の有力な手段としてM&Aや資本業務提携を積極的に実施していますが、事前のデューデリジェンスにもかかわらず、買収後に市場環境の急変や想定外の事業課題が発覚した場合、事業計画の未達やのれん等の減損損失が発生し、同社の財政状態および業績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 優秀な人材の確保および育成


急速な技術革新に対応するため、高度な専門知識を持つエンジニアや事業推進人材の確保が不可欠です。しかし、人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化により、計画通りの採用が進まない場合や、既存の優秀な人材が社外へ流出する事態が生じた場合、開発体制や事業展開に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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