メンタルヘルステクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メンタルヘルステクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のメンタルヘルステクノロジーズは、産業医クラウド等のメンタルヘルスソリューション事業や医療機関向け人材派遣のメディカルワークシフト事業を展開しています。直近の業績は売上高が増加し、各事業の収益基盤強化により経常利益も大幅に改善して増収増益となり、黒字転換を達成して好調に推移しています。


**※本記事は、株式会社メンタルヘルステクノロジーズの有価証券報告書(第15期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. メンタルヘルステクノロジーズってどんな会社?


同社は、産業医によるメンタルヘルス支援と医療機関向け人材サービスを主軸に事業を展開しています。

(1) 会社概要


2011年にITソリューション事業を行うMiewとして創業し、2016年に医師のキャリア支援や産業医サービスを開始しました。2018年に現在のメンタルヘルステクノロジーズへ社名変更し、2022年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2024年にタスクフォースを完全子会社化し事業を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で140名、単体で22名です。筆頭株主は創業者の刀禰真之介氏で、第2位は第一生命保険、第3位はOrchestra Investmentです。経営陣の強力なリーダーシップと提携先企業との連携により、企業の健康管理や医療機関の支援を推進する体制を構築しています。

氏名 持株比率
刀禰 真之介 35.47%
第一生命保険 4.61%
Orchestra Investment 4.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は刀禰真之介氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
刀禰 真之介 代表取締役社長 デロイトトーマツコンサルティング等を経て2011年に同社を設立し現職。
松本 裕介 取締役ビジネス・インキュベーション部 部長 プロトコーポレーション等を経て2019年に同社入社。各事業部長を経て現職。
小倉 行雄 取締役 病院での勤務を経て2005年にクリニック院長に就任。2024年より同社にて現職。
樋口 晴将 取締役コーポレート本部 部長 リクルート等を経て2023年に同社入社。2025年より同社の取締役に就き現職。


社外取締役は、浅川秀治(元オウケイウェイヴ取締役技術本部長)、小原毅也(トポロジ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、メンタルヘルスソリューション事業、メディカルワークシフト事業、およびその他事業を展開しています。

メンタルヘルスソリューション事業


産業医等による役務提供サービスとメンタルヘルスケアのクラウドサービス「ELPIS」を組み合わせた「産業医クラウド」等を提供しています。企業の従業員の心身の健康管理を低コストかつ高品質にサポートしており、人事担当者や労働者が主な顧客です。

顧客企業から受け取る月額顧問料やクラウドサービスの月額課金が主な収益源です。運営は同社がクラウドシステムを開発し、Avenir、明照会労働衛生コンサルタント事務所、みらい産業医事務所などの子会社が産業医業務や保健師等の役務提供を行っています。

メディカルワークシフト事業


大規模な急性期病院などの医療機関を対象に、看護補助者や医療事務スタッフなどを派遣する人材サービスを提供しています。医師の長時間労働や人材不足といった医療現場の課題解決に向け、業務負担の軽減や生産性向上を支援しています。

医療機関からの人材派遣や業務受託に応じたサービス料金が主な収益源です。医療現場に対する深い理解と長期安定的な派遣スタッフの定着を強みとしており、運営は主に子会社のタスクフォースが行っています。

その他事業


医師を医療機関に紹介するメディカルキャリア支援事業と、医学会向けサービスやWebマーケティング支援を行うデジタルマーケティング事業を展開しています。医療従事者の採用支援や、一般企業の見込み顧客獲得サポートなど幅広いニーズに対応しています。

常勤・非常勤医師の入職時等に医療機関から受け取る紹介料や、システムの導入費用および月額利用料が主な収益源です。運営はメディカルキャリア支援事業をAvenirが、デジタルマーケティング事業を同社がそれぞれ担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績は、主力事業の順調な拡大や積極的なM&A効果により、売上高が継続して高い成長を遂げています。利益面では買収関連の一時的な費用等により直前期に落ち込みが見られたものの、当期は収益基盤の強化とグループ間シナジーの発現により経常利益が大幅に回復し、最終的な利益も大きく改善する傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 15億円 23億円 26億円 51億円 64億円
経常利益 1億円 3億円 5億円 0.4億円 4億円
利益率(%) 9.4% 15.1% 19.0% 0.8% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.4億円 0.4億円 1.9億円 -0.8億円 4.3億円

(2) 損益計算書


売上高は事業規模の拡大により増加しており、売上総利益も順調に伸びています。販売費及び一般管理費については、直前期に発生したM&A関連の一時的費用や株式報酬費用が当期には発生しなかったことなどから減少しており、結果として営業利益率が大きく向上し、収益性が高まる構造となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 51億円 64億円
売上総利益 18億円 21億円
売上総利益率(%) 35.8% 33.0%
営業利益 1億円 6億円
営業利益率(%) 2.1% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比37%)、広告宣伝費が2億円(同11%)を占めています。売上原価においては、派遣スタッフの人件費を中心とする労務費や外注加工費などが主な構成要素となっており、サービスの提供体制を支える費用構造となっています。

(3) セグメント収益


メンタルヘルスソリューション事業は、顧客サービス体制の強化や大手企業向けの提案営業が奏功し、売上を順調に拡大しています。メディカルワークシフト事業は、新規連結による通年稼働への移行により大幅に売上が増加し、全体の成長を牽引しています。一方、その他事業はグループ内向け活動への注力等により売上が減少しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
メンタルヘルスソリューション事業 26億円 31億円
メディカルワークシフト事業 24億円 33億円
その他事業 1.6億円 1.1億円
連結(合計) 51億円 64億円


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 3億円 6億円
投資CF -21億円 -3億円
財務CF 21億円 1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ウェルビーイングのスタンダードを創る」というビジョンを掲げています。働く人々が「毎日、楽しくて仕方がない」という気持ちで目を覚まし、満ち足りた気持ちで過ごせる世界の実現を目指しています。メンタルヘルスの問題解決を通じて、心身の健康問題を考えることが身近になる社会を創造することを社会的使命としています。

(2) 企業文化


同社は、企業にとって最適なメンタルヘルスケア体制をクラウドサービスを活用しながら構築・運用し、多くの職場で従業員の健康問題に真摯に向き合う姿勢を重んじています。多様な人材がそれぞれの専門性を活かして連携し、ワークライフバランスをとりながら柔軟に活躍できる環境や、継続的な学びを支援する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な成長を実現するため「中期経営計画MHT100/20-25」を策定し、持続的な企業価値の向上を図っています。月次経常収益(MRR)を重要な経営指標と位置づけ、ストック型収益構造の確立を目指しています。

* 2027年12月期 連結売上高:100億円
* 2027年12月期 営業利益:20〜25億円

(4) 成長戦略と重点施策


メンタルヘルスソリューション事業では、大手企業(エンタープライズ)の契約比率向上と単価引き上げにより月次経常収益の拡大を図ります。同時にクラウドサービス「ELPIS」の導入促進による利益率向上や、グループ内のデータベースを活用したクロスセルを推進します。メディカルワークシフト事業においては、大規模急性期病院でのシェア拡大と医療機関向けの経営改善提案を強化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、産業保健やメンタルヘルス、医療関連の専門知識を有する優秀な人材の確保と育成を重要課題と位置づけています。中途採用を中心に高度な知識・経験を持つ人材を積極的に受け入れ、OJTや各種研修制度を通じて専門性の向上をサポートしています。また、多様な人材が長期的に定着して活躍できるよう、柔軟な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.1歳 5.9年 6,656,841円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 53.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 79.3%
男女賃金差異(正規雇用) 57.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 88.9%


※男性育児休業取得率については、対象となる従業員がいないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(72.1%)、時短勤務利用率(子供を持つ女性社員の3割超)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連市場の動向と検索エンジンへの集客依存


同社の事業は見込み顧客の獲得やサービスの提供においてインターネットを広く活用しています。個人情報保護などの新たな法的規制が導入された場合や、集客の大部分を依存している特定の検索エンジンのアルゴリズム変更等によりSEO施策が機能しなくなった場合、集客効率が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業拡大に伴うシステム及びサービス開発に関するリスク


同社はサービスの安定稼働や競争力維持のために継続的なシステム開発を行っています。技術革新のスピードが速い中、開発計画の前倒し等により想定外の費用が発生するリスクや、十分な機能拡充ができずユーザーの満足度が低下するリスクが存在します。また、システム障害やサイバー攻撃による情報漏洩も重大なリスクと認識しています。

(3) 優秀な専門人材の採用や育成に関するリスク


各事業の成長には、産業医や保健師、看護補助スタッフといった高い専門性を持つ人材の継続的な確保が不可欠です。労働需給の逼迫や人材獲得競争が激化する中で、計画通りの人材採用や育成が進まなかった場合、サービスの提供体制を維持することが困難となり、同社の事業拡大にブレーキがかかる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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