記事タイトル:「西部技研転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、株式会社西部技研の有価証券報告書(第61期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 西部技研ってどんな会社?
デシカント除湿機やVOC濃縮装置などの製造・販売・保守サービスを中心にグローバルな事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1965年に前身となる西部技術研究所を設立し、1974年に連続ハニカム成形技術を確立して全熱交換器を商品化しました。1993年にスウェーデンの企業を完全子会社化するなどグローバル展開を推進し、2007年には中国に子会社を設立しています。2023年には東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。
現在、同社グループの従業員数は連結で785名、単体で415名です。筆頭株主は代表取締役社長執行役員の隈扶三郎氏が実質的に出資するグリーンフューチャーで、第2位は科学技術関連の助成等を行う公益財団法人隈科学技術・文化振興会、第3位は西部技研社員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| グリーンフューチャー | 34.41% |
| 公益財団法人 隈科学技術・文化振興会 | 15.10% |
| 西部技研社員持株会 | 6.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は隈扶三郎氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 隈扶三郎 | 代表取締役社長執行役員 | 1987年に同社へ入社し、専務取締役営業本部長を経て2002年に代表取締役社長に就任。国内外の子会社取締役や名誉領事を歴任し、2024年より現職。 |
| 下薗誠 | 取締役常務執行役員 | 1993年に同社へ入社。取締役営業本部長や常務取締役プロダクト・マネジメント本部長を経て、2021年に常務取締役プロダクト営業本部長。2024年より現職。 |
| 平川美和 | 取締役上席執行役員経営管理本部長 | 1996年に同社へ入社。経営管理本部長として執行役員や取締役を歴任し、中国子会社の監事も務める。2024年より現職。 |
| 田邊孝司 | 取締役常勤監査等委員 | ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング等を経て2018年に同社へ入社。調達本部長や監査等委員会室長を務め、2024年より現職。 |
社外取締役は、内田健二(如水監査法人パートナー等)、市丸信敏(不二法律事務所代表等)です。
2. 事業内容
同社グループは、「空調事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 空調事業
同社グループは、デシカント除湿機やVOC濃縮装置、全熱交換器などの環境保全・省エネルギー装置の開発、製造、販売および据付・メンテナンス等のサービスを提供しています。独自のハニカム成形技術をコア技術とし、リチウムイオン電池製造現場や半導体工場、食品・製薬工場など、厳格な温湿度管理や大気汚染防止が求められる企業が主な顧客です。
収益モデルは、自社開発した各種装置の機器販売や、製造環境に向けたシステム提案、設計、設置工事から対価を得る仕組みです。また、導入後のローター交換や保守などのサービス収益も安定的な収入源となっています。事業の運営は西部技研をはじめ、アメリカ、スウェーデン、中国、ポーランドなど世界約50か国に展開する販売・製造子会社が連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は174億円から343億円へと順調に拡大を続けています。経常利益も10%台の安定した利益率を維持しながら45億円規模へと成長しており、親会社株主に帰属する当期利益も着実に増加傾向を示しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 174億円 | 249億円 | 287億円 | 321億円 | 343億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 48億円 | 44億円 | 42億円 | 45億円 |
| 利益率(%) | 11.9% | 19.2% | 15.2% | 13.1% | 13.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 7億円 | 12億円 | 25億円 | 32億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も117億円へと拡大しています。売上総利益率は34.0%で安定して推移しており、営業利益率も13.2%と前年を上回る高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 321億円 | 343億円 |
| 売上総利益 | 109億円 | 117億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.0% | 34.0% |
| 営業利益 | 40億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 12.6% | 13.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が20億円(構成比28%)、運賃が8億円(同12%)、賞与引当金繰入額が4億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各製品の売上動向を見ると、デシカント除湿機は国内や北米での底堅い需要が牽引して売上を維持しています。また、VOC濃縮装置も堅調に推移し、その他製品の売上が大きく伸びたことで、全体として増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| デシカント除湿機 | 197億円 | 197億円 |
| VOC濃縮装置 | 96億円 | 99億円 |
| その他 | 28億円 | 48億円 |
| 連結(合計) | 321億円 | 343億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 66億円 | 35億円 |
| 投資CF | -25億円 | -32億円 |
| 財務CF | -21億円 | 1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「独創と融合」を経営理念として掲げています。個々の独自性と創造性を尊重し、それらをあらゆる次元で発展的に融合させることで新しい価値を継続的に生み出していくという姿勢を重視しています。また、グループのパーパスとして「環境に優しい空気のソリューションを届ける。」を掲げ、クライメイト・ニュートラルな未来の実現に向けて空気処理技術のイノベーション・リーダーであり続けることをビジョンとしています。
■(2) 企業文化
同社はパーパスやビジョンを実現するための価値観として「コアバリュー」を策定しています。目標必達に向けた「達成」、チームビルディングに努める「結束」、社会のトレンドと独自技術を融合させる「探究」、多様性を尊重する「協働」、想定外の変化へスピーディーに行動する「機敏」という5つの行動指針を意識し、日々の業務に取り組む文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2024年から2026年までの3か年を対象とした中期経営計画を策定し、持続的成長の土台づくりを進めています。コア事業での市場シェア拡大、成長事業の本格始動、グループガバナンスの強化を基本方針とし、最終年度に以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:360億円
* 営業利益率:12%
* EBITDAマージン:15%
* ROE(自己資本利益率):13%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として、既存の機器・装置販売を中心とするコア事業に加え、顧客の製造工程における最適空間創出を担うトータルエンジニアリングを成長事業として伸長させることを目指しています。エナジーデバイス領域では車載用電池製造の最適環境創出を推進し、半導体領域ではクリーン環境のソリューションを提案します。また、継続的に収益を確保できるサービス事業の海外展開を拡充し、生産拠点の効率化にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の人材戦略は、経営理念「独創と融合」を体現し、個を活かすこととチームワークを重視することの高次元でのバランスを目指しています。多様な価値観を持つキャリア人材や外国籍人材を積極的に採用し、自律的な学びを支援するための研修制度や資格取得支援を整備しています。また、フレックス勤務制度の導入や健康経営の推進により、社員が最大限にパフォーマンスを発揮できる社内環境の構築に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.8歳 | 11.5年 | 6,789,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.6% |
| 男性育児休業取得率 | 64.7% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 71.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(22.4%)、キャリア人材(中途入社人材)の割合(69%)、手挙げ式スキル研修受講率(30.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境と設備投資動向の影響
同社の売上高は、顧客の設備投資動向に影響を受けやすい特性があります。経済情勢の変化等により顧客の投資計画の中止や延期が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これを軽減するため、世界約50か国への販売網の拡大による地域リスクの分散や、需要動向に左右されにくい据付・保守管理サービスの強化を図っています。
■(2) グローバル事業における為替や地政学リスク
同社グループはグローバルに事業を展開しており、海外諸国の経済動向や社会情勢、地政学的リスクの影響を強く受けます。為替レートの変動は海外資産の価値や生産コストに直結し、価格競争力に影響を及ぼす可能性があります。短期の為替予約等でリスク軽減に努めるとともに、マクロ経済環境の変化を注視しながら慎重に事業展開を進めています。
■(3) 原材料の供給と価格高騰リスク
製品の製造に必要な原材料や部品の調達において、仕入先の不測の事態や需給逼迫により適正な価格や量での確保が困難になるリスクがあります。特に大半を依存する特定の取引先からの調達に支障が生じた場合、生産活動に影響を及ぼすおそれがあるため、複数購買ルートの検討や取引先との契約を通じた一定水準の在庫確保など、安定調達に向けた対策を講じています。



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