ドリーム・アーツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドリーム・アーツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドリーム・アーツは東京証券取引所グロース市場に上場し、大企業向けノーコード開発ツール「SmartDB」や社内ポータル構築ツール等のSaaS事業を展開しています。近年はSaaSモデルへの転換が奏功してストック収益が拡大しており、売上高の成長とともに収益性も大幅に改善し、増収増益のトレンドが定着しています。


※本記事は、株式会社ドリーム・アーツの有価証券報告書(第30期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ドリーム・アーツってどんな会社?


大企業向けSaaSの提供を通じて、現場主導の業務デジタル化と生産性向上を支援するIT企業です。

(1) 会社概要


1996年に設立され、1999年にグループウェアの提供を開始しました。2005年に現在の主力製品であるWebデータベース「SmartDB」を販売開始し、2018年には大企業でのクラウド普及を見据えてSaaSベンダーへとビジネスモデルを転換しました。2023年に東証グロース市場へ上場しています。

同社グループの従業員数は連結293名、単体258名です。筆頭株主は創業者の山本孝昭氏で、第2位と第3位には代表者および役員の資産管理会社である芸夢YAMAMOTOと芸夢前川がそれぞれ名を連ねており、経営陣による安定した所有体制が構築されています。

氏名 持株比率
山本孝昭 16.72%
芸夢YAMAMOTO 16.42%
芸夢前川 7.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は山本孝昭氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 孝昭 代表取締役社長 1988年アシスト入社。インテルジャパンを経て1996年同社を設立し代表取締役社長に就任。芸夢YAMAMOTO代表取締役社長などを経て現職。
牧山 公彦 取締役専務執行役員経営管理本部長 1992年住友信託銀行入行。2000年同社に入社し業務管理部長に就任。取締役執行役員などを歴任し、2021年より現職。
吉村 厚司 取締役常務執行役員社長室長 1987年野村コンピューターシステム入社。野村総合研究所を経て2006年同社に入社し取締役営業統括本部長に就任。新規事業室長などを経て現職。
前川 賢治 取締役執行役員CWO 1987年アシスト入社。1996年同社取締役に就任し、最高技術責任者などを歴任。2018年より現職。
石田 健亮 取締役執行役員CTO/サービス&プロダクト開発本部長 2000年同社入社。製品開発部部長、最高技術責任者などを経て、2016年取締役執行役員CTOに就任。2025年より現職。


社外取締役は、遠藤功(元ローランド・ベルガー社長)、金山藍子(三浦法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウド事業」「オンプレミス事業」「プロフェッショナルサービス事業」を展開しています。

クラウド事業


ノーコード開発ツール「SmartDB」、企業ポータル構築ツール「InsuiteX」、チェーンストア向け情報共有ツール「Shopらん」などのSaaSを提供しています。IT専門知識を持たない現場部門でも業務アプリを構築できる環境を提供し、大企業のデジタル化を推進しています。

顧客企業からの月額利用料を主な収益源とするサブスクリプションモデルで、ストック収益の柱となっています。同社および連結子会社の夢創信息(大連)がシステムの開発と運用を行っています。

オンプレミス事業


自社開発したアプリケーションソフトウェアである「SmartDB」および「INSUITE」を、顧客のオンプレミス環境で稼働するパッケージソフトウェアとして提供しています。現在はクラウドへの移行を推進しており、新規販売は停止し既存顧客への提供に限定しています。

パッケージソフトウェアのライセンス料(スポット収益)や、継続利用に伴うソフトウェアメンテナンス料(ストック収益)を顧客から受け取ります。同社が運営を行っています。

プロフェッショナルサービス事業


クラウド事業やオンプレミス事業における各種製品の導入支援(オンボーディング)、利活用コンサルティング、特定顧客向けのシステム開発、およびオンプレミス環境からのクラウド移行支援といった役務を提供しています。

請負契約や準委任契約に基づき、提供価値や開発規模に応じたサービス料をスポット収益として獲得しています。これらの役務提供を通じてSaaSの適用業務拡大を促進しており、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


主力であるクラウド事業の伸長やSaaSモデルへの転換が奏功し、売上高は毎期着実な成長を続けています。利益面でも、先行投資による一時的な赤字を脱却した後は増益基調が定着しており、収益性が大幅に改善していることが読み取れます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 29.4億円 36.7億円 44.4億円 50.3億円 56.5億円
経常利益 -0.2億円 1.8億円 5.6億円 7.7億円 10.7億円
利益率(%) -0.8% 4.9% 12.7% 15.2% 19.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.8億円 1.2億円 4.1億円 5.5億円 7.7億円

(2) 損益計算書


クラウドサービスの利用拡大によるストック収益の積み上げが寄与し、売上総利益率が大きく向上しています。また、増収効果によって営業利益率も着実に改善傾向にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 50.3億円 56.5億円
売上総利益 28.7億円 35.3億円
売上総利益率(%) 57.1% 62.5%
営業利益 7.7億円 9.7億円
営業利益率(%) 15.4% 17.2%


販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が6.6億円(構成比26.0%)、給与手当が6.2億円(同24.2%)を占めています。売上原価は21.2億円で、売上高に対する構成比は37.5%となっています。

(3) セグメント収益


主力のクラウド事業は、積極的なマーケティング活動や既存顧客へのアップセル提案が実を結び、全社の増収を力強く牽引しています。プロフェッショナルサービス事業も導入支援等の需要増で堅調ですが、オンプレミス事業はクラウド環境への移行進行により減収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
クラウド事業 38.9億円 44.7億円
オンプレミス事業 5.6億円 5.3億円
プロフェッショナルサービス事業 5.8億円 6.6億円
連結(合計) 50.3億円 56.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型に該当します。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 10.0億円 10.9億円
投資CF -2.0億円 -0.7億円
財務CF -0.8億円 -4.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は29.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ミッションとして「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」を掲げています。ICTに仕事を奪われるのではなく、生み出された時間でいかに「協創」を生み出すかを本来の役割と定義し、「協創力を究めよ」というスローガンのもと、大企業向けのBD(ビッグ・ドーナツ)市場におけるリーディングカンパニーを目指しています。

(2) 企業文化


ミッション実現に向けた行動指針として「DA Values」を定義しています。具体的には、「圧倒的な当事者意識」「自律とリーダーシップ」「挑戦と変革」「機会の本質」「やりぬく忍耐と勇気」「建設的対立」の6つを定めています。これらは創業以来アップデートを重ねてきた根幹を支える理念であり、全役職員への周知徹底が図られています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画のスローガンとして「IT業界の『あたりまえ』が変わる 大企業のシステム開発におけるノーコード時代の到来とともに、『SmartDB』をデファクトスタンダードへ」を掲げ、システム内製化によるDX推進の新しい標準を社会に広げることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「デジタルの民主化」を基本戦略に掲げ、ビジネス系人材を巻き込んだ業務システムの内製化を推進します。ERPフロント領域でのSaaS活用促進(MCSA)や、日本企業の海外拠点における業務デジタル化(グローバル・コネクト)、実践的なAI活用構想(DAPA)などを重点領域とし、機能拡張と社外リソースの拡充による成長を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長に向け、優秀な人材の確保と育成を不可欠と位置づけ、採用活動を全社的な取り組みとする「全社採用」を推進しています。プロフェッショナルとして必要な能力を定義して多彩な教育研修を実施するとともに、株式報酬制度の導入や多様な働き方に対応した制度整備を通じて、従業員のエンゲージメント向上に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.7歳 8.4年 6,955,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 29.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 87.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 87.0%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 80.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) クラウド市場の展望に関するリスク


同社はクラウド型業務デジタルツールをSaaS形態で提供しており、クラウド市場の成長を見込んでいます。しかし、経済情勢の変化や新たな法規制の導入、技術革新の停滞等によって市場の成長が鈍化した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 競合他社の動向に関するリスク


SaaS市場には複数の競合が存在し、さらなる新規参入が予測されます。資本力や技術力に勝る企業との競争激化に対し、付加価値の向上などで対抗していますが、相対的な競争力が低下した場合は業績に影響する可能性があります。

(3) 技術革新への対応に関するリスク


IT業界の急速な技術進歩に対し、AI活用構想などを通じた製品の高度化に取り組んでいます。しかし、予期せぬ技術革新やインターネット環境の急激な変化に適切に対応できなかった場合、新たな投資負担が生じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 顧客の継続率および単価に関するリスク


サブスクリプション型のビジネスモデルであるため、新規獲得に加えて既存顧客の解約防止と単価向上が重要です。経済情勢の悪化によるIT投資の抑制や、想定を超える解約が発生した場合には、成長と収益性に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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