※本記事は、株式会社情報戦略テクノロジーの有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 情報戦略テクノロジーってどんな会社?
同社は、多重下請け構造を排除した「0次システム開発」を通じて、顧客企業のDX内製化を支援しています。
■(1) 会社概要
同社は2009年に設立され、システム開発の業界構造改革を目指して事業を拡大してきました。2021年にエンジニア支援のオープンプラットフォーム「WhiteBox」を正式に開始し、2024年3月に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。2025年にはエー・ケー・プラスの株式を取得しています。
2025年12月期末時点の従業員数は連結で406名、単体で339名となっています。筆頭株主は創業者の髙井淳氏であり、第2位株主には資産管理会社であるISTホールディングスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 髙井淳 | 35.91% |
| ISTホールディングス | 34.19% |
| 情報戦略テクノロジー社員持株会 | 2.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は髙井淳氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙井淳 | 代表取締役社長 | 2000年に商工ファンド入社。2003年ピーシーワークス入社。2009年に同社を設立し、代表取締役社長に就任。2016年よりISTホールディングスの代表取締役。 |
社外取締役は、金井一正(元日立製作所金融営業第二本部本部長)、飯田耕造(元日本総合研究所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、DX関連事業を展開しています。
■(1) 0次システム開発および関連ソリューション
顧客とエンジニアが協働してシステムを構築するアジャイル型の開発手法を用いた「0次システム開発」を提供しています。要件が固まっていなくても開始でき、システム統合やアプリ開発などを支援します。また、専門チームによる「0次ラボ」や、実装を見据えた「0次コンサル」も展開しています。
収益は、主に企業からの準委任契約に基づくシステム開発支援の対価として得ています。運営は主に情報戦略テクノロジーおよび子会社のエー・ケー・プラスが行っています。
■(2) WhiteBoxプラットフォーム
システム開発企業やフリーランスエンジニア向けのオープンプラットフォーム「WhiteBox」を運営しています。エンジニアのスキルシート管理機能などを無料で提供するほか、企業間での案件や人材の共有機能を有償プランとして展開しています。
収益は、案件や人材を探す法人向けの月額基本料金から得ています。運営は子会社のWhiteBoxが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年12月期から2025年12月期にかけて、売上高は39億円から80億円へと大幅に拡大しています。顧客のDX投資需要を背景に、既存取引の深耕や新規開拓が進んだことで利益面も堅調な伸びを示し、事業規模の拡大に合わせた着実な成長傾向がうかがえます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39億円 | 80億円 |
| 経常利益 | 1億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 3.5% | 6.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
2025年12月期の損益構成を見ると、売上高に対する売上総利益率は26.4%、営業利益率は6.9%となっています。エンジニアの増員やプラットフォームの拡充を進める中でも、安定した利益水準を確保して事業展開を行っていることがわかります。
| 項目 | 2025年12月期 |
|---|---|
| 売上高 | 80億円 |
| 売上総利益 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.4% |
| 営業利益 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.5億円(構成比29%)、のれん償却額が0.6億円(同4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループはDX関連事業の単一セグメントであるため詳細な区分はありませんが、主力である0次システム開発における既存顧客の深耕と新規顧客の開拓が奏功し、事業全体の売上高を力強く牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年12月期) |
|---|---|
| DX関連事業 | 80億円 |
| 連結(合計) | 80億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を活用しつつ、金融機関からの借入等によってM&Aなどの積極的な成長投資を行っている状態を示しています。
| 項目 | 2025年12月期 |
|---|---|
| 営業CF | 4.2億円 |
| 投資CF | -11.9億円 |
| 財務CF | 6.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.7%で市場平均をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「すべてを、なくしていく。」を企業理念として掲げています。日本のIT業界に根付く多重下請け構造や、システムエンジニアの使い捨てといった不健全な慣習をなくし、顧客企業のDXを成功に導くことを使命としています。システムの力で企業の課題を解決し、社会全体の豊かな未来をつくることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客と対等な立場で相談・提案を繰り返しながら協働する「0次」の姿勢を重視しています。「外注」という上下関係の意識や「要件定義のウソ」をごまかすような不健全なチームを排除し、エンジニアが健全に懸命に誠実に活躍できる環境を作ることを重んじています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、システム開発業界の構造改革とエンジニアの地位向上を経営上の重要な目標と位置づけています。全社的な規模拡大を重視し、売上高および営業利益を重要な経営指標としています。また、事業拡大を牽引する社員エンジニアの人数や、1人当たり売上高、プラットフォームの総会員数などの客観的な指標を追跡しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「DXの総合商社」としてのさらなる成長を目指し、既存顧客の深耕と新規開拓を進めています。アジャイル開発に精通したエンジニアの育成に加え、AIやサイバーセキュリティなどの先端技術を活用したソリューション型サービスの強化に取り組んでいます。さらに、パートナー企業との連携拡大や、M&Aなどの成長投資も積極的に推進する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「エンジニアの使い捨て」をなくし、優秀な人材が育つ環境づくりを最重要課題としています。細かな評価項目の設定による公正な評価制度や、マネジメント以外のスペシャリストコースなど多様なキャリアパスを用意しています。また、1日当たりの平均残業時間を1時間未満に抑えるなど、長く働ける就業環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 32.3歳 | 4.4年 | 6,404,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 8.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 53.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 67.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 67.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | - |
※連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部委託先(パートナー)の確保に関するリスク
同社はシステム開発業務の一部を外部のパートナーと協働して実施しています。必要なタイミングで適切なパートナーを確保できない場合や、パートナー側で契約義務違反などの事態が発生した際には、開発品質の維持に向けたコスト増加や損害賠償が生じる可能性があり、同社の業績に影響を及ぼすおそれがあります。
■(2) 法的規制に関するリスク
同社は準委任契約を主体として事業を運営しており、労働者派遣事業との区分を厳正に適用しています。今後の法改正や新たな規制の導入、監督官庁による指導などによって既存の事業運営に制約が生じた場合、事業戦略の変更を余儀なくされ、同社の経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 機密情報および個人情報の漏洩リスク
同社は顧客企業の機密性の高いシステム情報や、プラットフォーム上で会員エンジニアの個人情報を取り扱っています。サイバー攻撃や不測の事態により情報漏洩が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜を招き、同社グループの事業展開に重大な影響を及ぼすおそれがあります。



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