※本記事は、Hmcomm株式会社の有価証券報告書(第14期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. Hmcommってどんな会社?
音に着目したAIプロダクトやソリューションを提供し、顧客の課題解決とDX推進を支援する企業です。
■(1) 会社概要
2012年にIT技術のコンサルティング業務を目的に設立されました。2014年に産総研技術移転ベンチャーの認定を受け、音に着目した研究開発を開始しました。その後、音声認識プロダクトや異音検知プロダクト、AI音声自動応答プロダクト等を順次リリースし、2024年に東証グロース市場へ上場しました。
従業員数は単体で57名です。大株主については、筆頭株主は創業者の三本幸司氏で、第2位は役員の伊藤かおる氏、第3位は投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三本幸司 | 30.24% |
| 伊藤かおる | 14.37% |
| DBJキャピタル投資事業有限責任組合 | 5.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長CEOは三本幸司氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三本幸司 | 代表取締役社長CEO | 富士ソフト入社後、同社取締役に就任。2012年7月に同社を設立し、代表取締役社長CEOに就任。 |
| 伊藤かおる | 取締役専務執行役員COO | 富士ソフト、サイバーコムを経て2015年に同社へ入社。2017年に専務取締役COOに就任後、2025年3月より現職。 |
| 土屋学 | 取締役執行役員CFO | 第一三共、有限責任監査法人トーマツを経て2022年に同社へ入社。2025年3月より現職。 |
社外取締役は、浅田浩(元And Doホールディングス専務取締役CFO)、恩田俊明(ライツ法律特許事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社は、「AI×音」サイエンス事業の単一セグメント内で、AIプロダクト事業とAIソリューション事業を展開しています。
■(1) AIプロダクト事業
音声認識プロダクト「Voice Contact」や、AI音声自動応答プロダクト「Terry」、対話型AIエージェント「Terry2」、異音検知プロダクト「FAST-D」などの自社開発製品を、主にコンタクトセンターや製造業などの法人顧客に向けて提供しています。
収益源は、導入時の開発対応等による対価と、導入後のライセンス利用料です。運営は同社が行い、多くの企業で必要となる標準的な機能をプロダクト化することで、顧客企業の業務自動化や効率化を支援しています。
■(2) AIソリューション事業
AIプロダクト事業で培ったAI技術やデータサイエンスのノウハウを集結し、企業のDX推進や経営課題の解決をトータルにサポートするコンサルティングおよび受託開発を提供しています。
顧客の課題に応じたシステム要件のコンサルティングから実際のシステム開発までを担い、主に準委任契約や請負契約に基づく役務提供の対価を収益源としています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去4期の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の順調な拡大が続いています。一方で利益面については、先行投資やのれん償却費の発生などの影響により、直近の数期間は減少傾向で推移しています。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7.3億円 | 8.0億円 | 9.5億円 | 11.1億円 |
| 経常利益 | 1.5億円 | 0.9億円 | 0.7億円 | 0.4億円 |
| 利益率(%) | 20.0% | 10.9% | 7.6% | 3.6% |
| 当期利益 | 1.7億円 | 0.7億円 | 1.0億円 | 0.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しているものの、売上原価や販売費及び一般管理費の増加により、売上総利益率および営業利益率が低下する傾向にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9.5億円 | 11.1億円 |
| 売上総利益 | 4.3億円 | 4.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.9% | 43.8% |
| 営業利益 | 0.9億円 | 0.4億円 |
| 営業利益率(%) | 10.0% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が1.0億円(構成比22.1%)、役員報酬が0.7億円(同16.4%)、支払報酬が0.7億円(同14.5%)を占めています。また、当期総製造費用においては、経費が3.8億円(同58.0%)、労務費が2.7億円(同41.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
AIソリューション事業が大きく成長して全体の増収を牽引した一方で、AIプロダクト事業は減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| AIプロダクト | 5.7億円 | 4.3億円 |
| AIソリューション | 3.8億円 | 6.8億円 |
| 合計 | 9.5億円 | 11.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだキャッシュを借入の返済や事業投資に充てる健全型の状況にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.4億円 | 2.8億円 |
| 投資CF | 0.1億円 | -2.7億円 |
| 財務CF | 2.0億円 | -0.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「音から価値を創出し、革新的サービスを提供することにより社会に貢献する」を経営理念に掲げています。また、「キーボードレスの新しい社会を自ら創造する」というビジョンの実現に向け、音に着目したAIの専門的な研究開発を行い、その成果を革新的なサービスとして社会に提供していくことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、研究開発型ビジネスプロセスを重視し、自律的なキャリア形成を支援する文化を持っています。独自のバリューに則った行動や組織への知見還元を評価基準に組み込み、従業員の成長意欲を組織の競争力へと結びつけるサイクルを運用しています。また、多様な人材が柔軟に活躍できる職場環境の構築にも努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と企業価値向上のため、財務・非財務両面でのKPIを設定しています。主な財務上の指標として売上高成長率、経常利益率、ROE、自己資本比率を重視しています。また、事業活動の指標として、AIプロダクト事業のアカウント数および生成AI売上高比率、AIソリューション事業のプロジェクト数、事業全体のエンジニア数を追跡しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、AIエージェントの社会実装と生成AIコンサルティングを両輪として事業拡大を図ります。「Voice Contact」や「Terry2」等のAIプロダクトの機能統合・販売加速を進めるとともに、特定の産業ドメイン向けソリューションを提供し高付加価値化を目指します。さらに、戦略的M&Aや技術人材の獲得を通じて非連続な成長と収益改善を追求します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材確保および長期的な雇用の継続を重要課題と捉え、専門性の高い人材の育成と働きやすい環境づくりに注力しています。最新技術の共有や実務を通じたスキル習得の支援に加え、リモートワーク等の柔軟な働き方の推進、男女を問わない育児休業取得の促進などを通じて、多様な人材が長期的に活躍できる組織を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 37.9歳 | 2.8年 | 7,183,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の販売先や外注先への依存
同社の売上や外注費用は、特定の上位取引先に依存する傾向があります。販売パートナーの業績不振や方針変更が生じた場合、事業計画に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、サービスの市場価値向上やパートナー関係の強化を図り、取引先の分散化に努めています。また、外注先の多角化と進行管理の徹底も行っています。
■(2) 情報セキュリティとシステム障害リスク
同社のサービスは外部のクラウドインフラに依存しており、自然災害やサイバー攻撃、アクセス集中等でシステムが停止した場合、サービス提供に重大な支障をきたす恐れがあります。また、顧客の機密データを取り扱うため、情報漏洩が発生した場合には損害賠償や社会的信用の失墜につながり、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
■(3) 企業買収(M&A)に伴うリスク
同社は非連続な成長を実現するため、戦略的なM&Aや資本業務提携を積極的に推進しています。しかし、対象企業の予期せぬ債務の露見や主要人材の流出、市場環境の激変などにより、当初見込んでいたシナジー効果が得られない場合、のれんの減損損失が発生するなど、財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。



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