丹青社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丹青社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丹青社は東京証券取引所プライム市場に上場し、商業施設やチェーンストア、博物館など文化施設に関わる総合ディスプレイ業を展開しています。直近の業績はインバウンド関連需要や大阪・関西万博関連プロジェクトの完工などにより、売上高、各種利益ともに前年を大きく上回り、増収増益と好調に推移しています。


※本記事は、株式会社丹青社の有価証券報告書(第68期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 丹青社ってどんな会社?


同社は商業施設から文化施設まで、こころを動かす空間づくりを提供する総合ディスプレイ企業です。

(1) 会社概要


同社は1959年に設立され、百貨店や専門店等の商業施設、博物館等の文化施設の受注を目的として事業を開始しました。1987年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2000年には同市場第一部への指定替えを果たしています。長年にわたり国内外の博覧会やパビリオンのディスプレイ・内装工事を手がけ、直近の2025年においても大阪・関西万博にて多数の企画・設計・工事等を担当しています。

現在の従業員数はグループ全体で1,579名、単体で1,184名です。筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、第3位には同社の取引先で構成される持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口) 6.91%
日本マスタートラスト信託銀行(投資信託口) 6.80%
丹青社取引先持株会 3.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は小林統氏が務めており、社外取締役の比率は40.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
小林統 代表取締役社長 1984年同社入社。営業本部第1IMC統括部長、CS事業部長等を歴任。2016年より取締役を務め、2023年4月より現職。
森永倫夫 取締役デザイン・制作担当 1986年同社入社。第1制作統括部長、安全・技術推進センター長等を歴任。2017年より取締役を務め、2023年4月より現職。
深谷徹 取締役営業・マーケティング担当 1989年同社入社。コマーシャルスペース事業部長等を歴任。2023年2月に同事業部参与を経て、2023年4月より現職。
津久井哲雄 取締役経営管理担当 1989年同社入社。事業管理統括部事業推進部長、経営企画統括部長等を歴任。2023年2月に同部参与を経て、2023年4月より現職。
野村英司 取締役経営企画・人事担当 1989年同社入社。コミュニケーションスペース事業部長、人事・総務統括部長、執行役員等を経て、2025年4月より現職。
菅野敦夫 取締役常勤監査等委員 1989年同社入社。事業管理統括部長、CMIセンター長、参与等を経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、板谷敏正(プロパティデータバンク代表取締役会長)、吉井清信(NTS総合コンサルティンググループ代表)、槇原耕太郎(元国税庁徴収部長)、保坂理枝(シティユーワ法律事務所入所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「商業その他施設事業」「チェーンストア事業」「文化施設事業」および「その他」事業を展開しています。

商業その他施設事業


チェーンストア事業以外の百貨店・専門店・飲食店等の商業施設全般をはじめ、オフィス、ホテルなどの内装、博覧会や展示会等の展示に関する事業を展開しています。顧客である事業者に対し、空間を通じた課題解決の提案や設計・施工等を提供しています。
顧客から施設の設計や施工、展示に関する対価を受け取ることで収益を上げています。事業の運営は同社および丹青TDC、丹青ディスプレイが行っており、設計から施工までを一貫して担当しています。

チェーンストア事業


ファストファッションやファストフード、コンビニエンスストアなど、全国にチェーン展開を行っている店舗施設を対象とした内装等に関する事業を行っています。多様なブランドの多店舗展開を支援する空間づくりを提供しています。
チェーン展開を行う企業から、店舗の内装設計・施工などの対価として収益を受け取ります。この事業は主に同社および丹青TDCが運営しており、効率的かつ高品質な施工体制を構築しています。

文化施設事業


博物館や美術館、科学館、企業ミュージアムといった文化施設全般の展示に関する事業を行っています。学術的・専門的な調査研究に基づき、利用者の学びや感動を促す展示空間の企画・設計・施工を提供しています。
自治体や施設運営者などから、調査研究や企画、展示工事などの業務委託費として収益を受け取ります。運営は同社および丹青研究所が担い、ソフト面とハード面の両軸から事業を推進しています。

その他


ディスプレイ業に関連する周辺サービスとして、事務機器等のレンタル・販売、労働者の派遣、Webサイトを活用した情報提供サービスや広告販売、コンテストの企画・運営などの事業を展開しています。
各サービスの利用者や広告主などから利用料や手数料、販売代金を受け取る収益モデルです。これらの運営は、丹青ビジネス、JDN、丹青ヒューマネットといったグループ各社がそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、新型コロナウイルス等の影響により一時的な落ち込みは見られましたが、直近ではインバウンド関連需要や大型イベントの特需などにより売上、利益ともに大きく回復し、増収増益の力強い傾向にあります。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 627億円 642億円 812億円 919億円 1072億円
経常利益 22億円 8億円 40億円 53億円 83億円
利益率(%) 3.5% 1.2% 4.9% 5.8% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 5億円 28億円 39億円 60億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて、収益性重視の受注活動や大型プロジェクトの貢献により売上総利益率が上昇しています。それに伴い、本業の儲けを示す営業利益も大幅な増益を達成しています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 919億円 1072億円
売上総利益 171億円 214億円
売上総利益率(%) 18.6% 20.0%
営業利益 51億円 84億円
営業利益率(%) 5.6% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が50億円(構成比38%)、支払手数料が16億円(同12%)、賞与引当金繰入額が12億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


商業その他施設事業はインバウンド需要や大型イベント需要を確実に取り込み大幅な増収増益を達成しました。一方、チェーンストア事業は収益性の改善により減収ながらも増益、文化施設事業は工事進捗の遅れ等により減収減益となっています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期) 利益(2025年1月期) 利益(2026年1月期) 利益率
商業その他施設事業 544億円 722億円 33億円 68億円 9.4%
チェーンストア事業 271億円 256億円 18億円 20億円 7.8%
文化施設事業 99億円 89億円 -1億円 -6億円 -6.7%
その他 5億円 5億円 1億円 2億円 34.0%
連結(合計) 919億円 1072億円 51億円 84億円 7.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

丹青社は、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業基盤を強化しています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資や有価証券の取得を行いました。財務活動では、株主還元を重視した配当金の支払いを実施しています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 10億円 37億円
投資CF 9億円 -2億円
財務CF -15億円 -32億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「パーパス/私たちの存在意義」として「空間から未来を描き、人と社会に丹青(いろどり)を。」を掲げています。まだ世の中にないものをかたちにし、空間によってもたらされる「こころ動く体験」を生み出すことで、そこに集う人々の生活や人生を豊かなこころの動きで彩ることを目指しています。

(2) 企業文化


「バリュー/私たちの価値観」として、「人と向き合う」「丹精をこめる」「いまの先に挑む」「個性をかけ合わせる」「仕事を楽しむ」の5つを定めています。ステークホルダーの想いに誠実に向き合い、プロフェッショナルの矜持と業(わざ)で真摯に取り組みながら、全ての仕事と変化を楽しむ文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2025年1月期〜2027年1月期)において、最終年度の目標値を設定し、収益力と資本効率の向上を重視した経営を行っています。
・売上高:1070億円
・営業利益:80億円
・経常利益:81億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:57億円
・自己資本当期純利益率(ROE):14.7%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、持続的な成長に向けて「働き方と人的資本」「マーケティング」「サプライチェーン」「サステナビリティ対応」の4つの基盤整備を推進しています。さらに、空間づくり事業の資源を活用した新規事業の創出や海外戦略の再点検など、従来の枠に囚われない「領域の拡張」への挑戦を重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間の尊重」を重要課題に掲げ、従業員一人ひとりが強い個となることを目指しています。従業員の基本的人権と個性を尊重し、健康と安全に配慮した働きがいのある職場環境を整備するとともに、多様な仕事経験や研修を通じた人材開発、自律的なキャリア開発を支援していく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 42.9歳 15.1年 9,312,705円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.0%
男性育児休業取得率 94.4%
男女賃金差異(全労働者) 76.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 62.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向や市場ニーズ変化による不確定性リスク


同社の事業は空間を通じた課題解決であり、経済動向や市場のニーズに大きく左右されます。景気悪化による事業者の設備投資抑制や、消費トレンドの変化を的確に捉えられなかった場合、受注機会の減少や価格競争による利益圧縮が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 空間の安全性と施工現場での事故リスク


利用者が接する空間の安全性を保つことは同社の信用に直結します。設計や制作の不備によって利用者の健康や人命を害する事態が生じた場合や、工場や施工現場での火災・事故等が発生した場合、損害賠償や納期遅延、社会的信用の失墜を招き、大きな損失が発生するリスクがあります。

(3) 建設業法等の法的規制やコンプライアンス違反リスク


空間づくり事業では建設業法に基づく許可や法定資格者の確保が必須要件となっています。意図せずこれらや建築基準法などの規制に抵触した場合、法的処分や業務制限を受ける恐れがあります。また、他者の知的財産権等の侵害があった場合も、訴訟や追加費用の発生につながるリスクがあります。

(4) 個人情報および顧客機密情報の漏洩リスク


同社は未発表の開発情報や出店計画など、顧客から提供される重要な機密情報や個人情報を多数取り扱っています。過失やサイバー攻撃、不正アクセス等によりこれらの情報が漏洩または毀損された場合、損害賠償や信用の低下を招き、事業機会を失う重大なリスクとなります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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