※本記事は、太洋基礎工業株式会社の有価証券報告書(第59期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 太洋基礎工業ってどんな会社?
太洋基礎工業は、地盤改良等の特殊土木工事や住宅関連工事を中心に、社会基盤整備を担う建設企業です。
■(1) 会社概要
同社は1967年に土木工事請負業として設立されました。1974年に一般建設業、1990年に特定建設業の許可を取得し、事業基盤を確立しました。2004年に株式を上場しています。近年は周辺領域の企業との連携を推進し、2021年以降、瀧上工業、日本エコシステム、徳倉建設、ナガワと相次いで資本提携を行っています。
現在の従業員数は単体で221名です。筆頭株主は同社役員である豊住清氏で、第2位は取引先企業で構成される持株会、第3位は金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 豊住清 | 28.47% |
| 太洋基礎工業取引先持株会 | 6.45% |
| あいち銀行 | 4.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長の加藤行正氏および代表取締役社長の六鹿敏也氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤行正 | 代表取締役会長 | 1979年同社入社。東京支店次長、名古屋支店長、専務取締役、管理本部長等を経て、2017年より代表取締役社長。2026年2月より現職。 |
| 六鹿敏也 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社。名古屋支店長、営業本部長、経営企画本部長等を経て、2025年専務取締役。2026年2月より現職。 |
| 土屋敦雄 | 専務取締役施工本部長兼神守研究開発センター長 | 1984年同社入社。機械事業本部長、取締役、施工本部長等を経て、2025年2月より現職。神守研究開発センター長も兼務。 |
| 加藤敏彦 | 常務取締役技術本部長 | 1979年同社入社。名古屋支店営業部長、大阪支店長等を経て、2017年常務取締役。西日本地区担当等を経て2024年2月より現職。 |
| 奥山喜裕 | 常務取締役営業本部長 | 1983年同社入社。名古屋支店工事部長、東京支店長等を経て、2017年常務取締役。中日本地区担当等を経て2024年2月より現職。 |
| 市岡秀夫 | 取締役長野支店長 | 1991年同社入社。長野支店工事部長等を経て、2013年4月より現職。 |
| 豊住清 | 取締役建築本部長 | 2005年同社入社。東京支店営業課長、名古屋支店建築部長、建築事業部長を経て2025年2月より現職。 |
| 岡田浩 | 取締役大阪支店長 | 1982年同社入社。名古屋支店工事部課長、大阪支店副支店長等を経て、2019年4月より現職。 |
| 長澤正志 | 取締役(監査等委員) | 1980年鹿島建設入社。三菱商事出向等を経て、2024年同社入社。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、一栁守央(一栁公認会計士事務所所長)、太田好宣(元中日本建設コンサルタント取締役)、皆見幸(皆見幸会計事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「特殊土木工事等事業」「住宅関連工事事業」「環境関連工事事業」「建築事業」「機械製造販売等事業」および「再生可能エネルギー等事業」の各報告セグメントを展開しています。
■特殊土木工事等事業
様々な工法による地盤改良工事、推進工事、地中連続壁工事、地中障害物撤去工事、液状化対策工事や法面補強工事などの施工を行っています。公共工事から民間工事まで幅広く対応し、インフラの整備や災害対策の基盤づくりに貢献しています。
収益は、発注者である官公庁や民間企業からの工事請負代金から得ています。これらの施工業務は、同社が一貫して運営を担っています。
■住宅関連工事事業
住宅の基礎補強工事や、既存の構造物修復工事を提供しています。住宅メーカーや一般の施主を顧客とし、建物の安全性と耐久性を高めるための工事を専門的に手掛けています。
収益は、住宅メーカーなどからの工事請負契約に基づく代金として得ています。この事業も同社が直接運営を行っています。
■環境関連工事事業
太陽光発電設備築造工事や風力発電工事に加え、地中熱を利用したエネルギー事業、土壌浄化環境事業を展開しています。再生可能エネルギー分野の環境配慮型建設への移行ニーズに応えるサービスを提供しています。
収益は、再生可能エネルギー事業者などからの設備構築や環境対策工事の請負代金から得ています。同事業は同社が運営を行っています。
■建築事業
中規模マンションなどを中心とする建物の建築、リフォーム業、不動産開発事業などを手掛けています。多様化する都市の生活環境やニーズに対応した建築物の提供を行っています。
収益は、建物の発注者からの建築請負代金や、不動産開発に伴う販売収益などから得ています。同事業は同社が運営を行っています。
■機械製造販売等事業
建設現場で使用される専用の建設機械の製造および販売、メンテナンスなどを提供しています。自社の施工でも使用する機械技術を活かし、建設業界向けの設備供給を担っています。
収益は、建設業者などの顧客に対する機械の販売代金から得ています。運営は同社(神守研究開発センターなど)が行っています。
■再生可能エネルギー等事業
自社で保有する太陽光発電設備等を用いた再生可能エネルギーによる売電事業を展開しています。環境サステナブル経営の一環として、持続可能なエネルギーの創出に取り組んでいます。
収益は、固定価格買取制度などを利用した電力会社への太陽光発電などの売電収入から得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は130億から140億円台で安定して推移しています。経常利益は2023年1月期に9億円台を記録した後、一時的に落ち込みを見せましたが、直近の2026年1月期には売上高145億円、経常利益6.2億円と回復傾向を示しています。利益率も4%台に改善しており、事業環境の変化に対応した成果が表れています。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 129億円 | 147億円 | 146億円 | 135億円 | 145億円 |
| 経常利益 | 6.6億円 | 9.4億円 | 3.1億円 | 2.4億円 | 6.2億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 6.4% | 2.2% | 1.8% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.7億円 | 6.1億円 | 2.1億円 | 2.3億円 | 4.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の135億円から当期は145億円へ増加し、売上総利益も12億円から14億円へと大きく伸びています。これに伴い、売上総利益率は8.6%から9.8%へ改善し、営業利益も1.7億円から5.5億円へと大幅な増益を達成しました。採算性の向上が業績回復に大きく寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 135億円 | 145億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 14億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.6% | 9.8% |
| 営業利益 | 1.7億円 | 5.5億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が3.2億円(構成比36%)、役員報酬が1.0億円(同11%)、雑費が1.0億円(同11%)を占めています。また、売上原価においては外注費が66億円(同50%)、経費が37億円(同29%)、材料費が23億円(同18%)となっており、外部パートナーとの連携費用が主要なコストとなっています。
■(3) セグメント収益
主力の特殊土木工事等事業は、インフラ更新需要の持続などにより売上が大きく増加し、業績を牽引しました。一方で、住宅関連工事事業や環境関連工事事業は前期比で減収となりました。建築事業は中規模マンション建設などの底堅いニーズに支えられ、堅調な推移を見せています。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) |
|---|---|---|
| 特殊土木工事等事業 | 53億円 | 70億円 |
| 住宅関連工事事業 | 46億円 | 43億円 |
| 環境関連工事事業 | 14億円 | 9.4億円 |
| 建築事業 | 22億円 | 23億円 |
| 機械製造販売等事業 | - | 0.1億円 |
| 再生可能エネルギー等事業 | 0.4億円 | 0.4億円 |
| 連結(合計) | 135億円 | 145億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
太洋基礎工業では、政策保有株の縮減や事業ポートフォリオによる平準化を通じて資本効率の向上を図っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前当期純利益の増加などにより、前事業年度から大きく増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の借入れと返済によるものでした。同社は、運転資金および設備投資の資金需要を自己資金と借入金で賄っています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.7億円 | 9.0億円 |
| 投資CF | -4.4億円 | -1.6億円 |
| 財務CF | -2.2億円 | -0.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業以来「働いて良かったといえる職場づくり」「社会に存在価値のある職場づくり」を経営理念として掲げています。「建設で拓く豊かな都市づくり」「職域で自己を磨く人こそ建設人」を経営スローガンとし、社会基盤の整備を通じて社会に貢献することを使命として日々の事業活動に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は「自然資本と人的資本を明日に継(つな)ぐ建設力」という価値観を全社で共有し、環境サステナブル経営を長期ビジョンに据えています。「成長(挑戦と学び続ける姿勢)」「協働(仲間と協力して目標達成)」「喜び(感謝が広がる言葉と行動)」をバリューとして掲げ、社員の幸福と社会価値の創造を両立する文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は「安定成長・100年企業」の礎を築くため、中期経営計画を推進しています。「たゆみない付加価値の提案・提供」を基本方針とし、最終年度に向けて以下の数値目標の達成を目指しています。
・売上高:150億円
・営業利益:7.5億円
・ROE(自己資本利益率):6.0%
・DOE(株主資本配当率):1.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
目標達成に向け、「人財の確保・育成(技術の伝承)」と「更なるイノベーション」を基本戦略に掲げています。採用活動の強化や世代別の研修プログラムによる人材育成を進めるとともに、建設業における「新3K(給与・休暇・希望)」を体感できる職場づくりを推進しています。また、ITやAIを活用したDX推進を通じて生産性の向上や環境負荷低減の新工法開発にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は労働集約型ビジネスである建設業において、「人財の確保・育成(技術の伝承)」を最重要課題と位置付けています。量と質の両面からアプローチし、リファラル制度やWeb媒体を活用した採用活動を展開するほか、次世代経営層や若年層向けの階層別研修など社内外の教育機会を充実させ、技術の確実な継承と人材の定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 45.7歳 | 14.6年 | 6,275,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、一部の項目に関する有報への記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業遂行上の施工関連リスク
労働災害や品質不良、納期遅延、コスト超過など、施工現場における安全・品質・工程管理の各種リスクがあります。同社は安全パトロールの実施や施工前検討会の励行により事故や手戻りを未然に防ぐとともに、徹底した損益管理と機械稼働率を意識したスケジュール管理によってリスクの低減に努めています。
■(2) 取引先の財務健全性に関するリスク
得意先や協力会社の資金繰り悪化、収益低下による倒産などが連鎖し、同社の事業や財務に悪影響を及ぼすリスクがあります。同社では、このリスクを回避するために日常的な信用調査を励行し、取引先の財務状況を的確に把握することで、債権回収不能などの事態を未然に防止する体制を整えています。
■(3) 人為的および労働環境リスク
建設現場における社員や協力会社社員の長時間労働、熱中症、メンタルヘルス不調などの心身に関連するリスクが存在します。同社はこれに対し、全社員の健康診断を100%実施し、必要に応じて産業医との面談を行うなど、働く人々の安全と健康を守るための労働環境の整備と健康管理に注力しています。



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