トーホー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーホー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーホーは東京証券取引所プライム市場に上場し、業務用食品の卸売や現金販売などを展開する外食産業向けの食品卸売企業です。直近の業績では、外食産業向け販売が堅調に推移し、食品スーパー事業からの撤退効果などにより増収増益を達成しました。営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を更新しています。


※本記事は、株式会社トーホーの有価証券報告書(第73期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーホーってどんな会社?


同社グループは、外食産業向けに業務用食品の卸売や現金卸売店舗の運営などを展開している企業です。

(1) 会社概要


1947年に藤町商店として創設され、食料品の卸・小売業を開始しました。1953年に東蜂産業を設立し、1983年にトーホーへ商号変更しています。1987年に業務用食品現金卸売事業の1号店「A-プライス」を出店し、2000年には東京証券取引所市場第一部に上場しました。近年は国内外でのM&Aを推進し、2025年には三協食鳥をグループ化しています。

現在の従業員数は連結で2,540名、単体で162名となっています。筆頭株主は国分ホールディングスで、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は国分グループ本社となっており、食品卸売等の事業会社や信託銀行が上位株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
国分ホールディングス 9.17%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.68%
国分グループ本社 5.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役会長の古賀裕之氏、代表取締役社長の奥野邦治氏をはじめとする体制です。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
古賀 裕之 代表取締役会長 1976年同社入社。ディストリビューター事業部中国地区統括支店長などを経て、2011年トーホー・北関東代表取締役社長。2017年同社代表取締役社長を経て、2025年4月より現職。
奥野 邦治 代表取締役社長 1984年同社入社。トーホービジネスサービス人事総務部長、トーホーキャッシュアンドキャリー代表取締役社長などを経て、2023年同社取締役執行役員。2025年4月より現職。
土井 弘光 取締役執行役員物流戦略部長 1978年国分入社。同社取締役常務執行役員兼国分首都圏取締役会長などを歴任。2022年同社顧問として入社し、2023年同社取締役執行役員物流戦略部長を経て、現在に至る。
田上 玲子 取締役執行役員法務・コンプライアンス部担当、コーポレート・コミュニケーション部担当、人事部長 1992年三洋電機入社。2013年同社入社。人事部長、執行役員コンプライアンス室担当兼人事部長などを経て、2025年4月より現職。トーホーキャッシュアンドキャリー監査役なども兼務。
原田 大介 取締役執行役員財務部担当、海外事業担当、IT戦略部担当、グループ戦略部長 2001年同社入社。海外子会社担当兼グループ戦略部長、執行役員海外事業担当などを歴任。2025年4月より現職。トーホーフードサービス監査役やトーホー沖縄取締役なども兼務。


社外取締役は、佐藤尚文(元大和銀行渋谷支店営業第一部長)、原田比呂志(元先端医療振興財団常務理事)、渡真利千恵(元千趣会執行役員)、山村和正(元室町建物取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ディストリビューター事業」「キャッシュアンドキャリー事業」「フードソリューション事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

ディストリビューター事業


ホテル、テーマパーク、レストラン、事業所給食など、外食産業の顧客に対して、業務用食材を直接納入販売する事業を展開しています。プライベートブランド商品の開発や、全国各地での物流・営業拠点網の再編等を通じてシェア拡大を図っています。

収益は、外食事業者への業務用食品の販売代金から得ています。運営はトーホーフードサービスやトーホー・北関東などの国内子会社のほか、海外ではシンガポールやマレーシア、香港などの現地法人が担っています。

キャッシュアンドキャリー事業


プロの食材の店「A-プライス」などの業務用食品現金卸売店舗を運営し、中小の外食事業者向けに業務用食材を中心とした販売を行っています。店舗の出店や改装に加え、クイックコマースの導入やフランチャイズ展開などを進めています。

収益は、中小飲食店等を中心とした顧客からの店舗における現金販売代金などから得ています。運営は主にトーホーキャッシュアンドキャリーが行っており、沖縄エリアではトーホー沖縄が事業を展開しています。

フードソリューション事業


外食企業向け業務支援システムの販売、品質管理サービス、不動産賃貸、総合建設請負、店舗内装設計・施工、業務用調理機器やコーヒーマシンの輸入・製造・販売など、外食ビジネスを補完する事業を行っています。

収益は、外食企業からのシステム利用料、品質管理サービスの提供対価、機器の販売代金などから得ています。運営はアスピット、トーホービジネスサービス、エフ・エム・アイなどの各事業子会社がそれぞれの専門領域を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は順調に拡大を続けています。経常利益も成長傾向にあり、特に直近では食品スーパー事業からの撤退効果や外食産業向け販売の好調により、増収増益のトレンドを維持しています。親会社株主に帰属する当期純利益も安定して推移しています。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 1,886億円 2,156億円 2,449億円 2,465億円 2,597億円
経常利益 2億円 39億円 80億円 77億円 79億円
利益率(%) 0.1% 1.8% 3.3% 3.1% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 10億円 36億円 45億円 46億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に連動して売上総利益も拡大しています。売上総利益率および営業利益率は前年度と同水準を保っており、安定した収益構造を維持しながら事業の成長を実現していることがうかがえます。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 2,465億円 2,597億円
売上総利益 490億円 500億円
売上総利益率(%) 19.9% 19.2%
営業利益 75億円 79億円
営業利益率(%) 3.0% 3.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が140億円(構成比33%)、運賃及び荷造費が80億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


ディストリビューター事業は国内外の需要堅調により増収となったものの、一部海外子会社の利益率低下などで減益となりました。一方、フードソリューション事業は増収増益を達成しました。なお、食品スーパー事業は前期に撤退しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期) 利益(2025年1月期) 利益(2026年1月期) 利益率
ディストリビューター事業 1,840億円 2,009億円 62億円 58億円 2.9%
キャッシュアンドキャリー事業 449億円 456億円 17億円 15億円 3.4%
フードソリューション事業 129億円 132億円 4億円 5億円 3.8%
食品スーパー事業 47億円 - -8億円 - -
連結(合計) 2,465億円 2,597億円 75億円 79億円 3.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 65億円 79億円
投資CF -22億円 -5億円
財務CF -46億円 -55億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「食を通して社会に貢献する」という経営理念のもと、「美味しさ」そして「安心・安全、健康、環境」を経営のキーワードに掲げています。食のあらゆるシーンを支え続ける企業グループとして、外食事業者の役に立つ商品やサービスを提供し、外食ビジネスをトータルにサポートできる企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、従業員満足度を高め、顧客、取引先、株主、地域社会などあらゆるステークホルダーから信頼され必要される経営の実践を重視しています。「自ら考え、自ら行動し、自ら成長する自律型人材」を求める考え方を基本とし、持続的成長と収益力向上、組織と人材の活性化、顧客・現場視点の経営を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期経営計画(3カ年計画)「SHIFT-UP 2027」において、持続可能な社会の実現と事業の安定的な成長を目指し、中長期的な企業価値向上を目標としています。客観的な指標として「売上高」「親会社株主に帰属する当期純利益」「ROE」「PBR」を設定し、持続的成長と収益力の向上を追求しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「新たな成長ステージへの変革」と「サステナビリティ経営の推進」を重点施策に掲げています。エリア毎の市場環境に沿った事業展開へのシフトや、プライベートブランド商品の強化、海外事業の拡大を推進しています。また、ITやDX戦略を活用した生産性の向上や継続的なM&Aの活用により、外食ビジネスのトータルサポート機能を拡充する戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「企業は人である」との考えのもと、従業員の健康維持・向上を最重要テーマと位置づけた「健康経営」を推進しています。また、多様な人材の活躍推進(ダイバーシティ)やグループ内の会社間異動の活性化、自律的なキャリア形成支援に取り組み、従業員エンゲージメントの向上を図る方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 44.0歳 16.4年 6,803,772円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 63.2%
男女賃金差異(正規雇用) 70.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.1%


※男性労働者の育児休業取得率は、対象となる従業員がいなかったため省略されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断 再検査受診率(100%)、エンゲージメントスコア(74.2%)、女性管理職・リーダー職比率(10.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 消費者や得意先のニーズへの対応遅れ


外食市場の動向等に対する情報収集や対応が遅れることで、品揃えやサービスが市場に受け入れられず、市場シェアを落とすリスクがあります。同社グループは日々の営業活動や取引先との密なコミュニケーションを通じて、顧客ニーズの変化に対応する体制を整えています。

(2) 品質および衛生管理上の事故


主要取扱品が食品であるため、品質管理や衛生管理、表示上の不備による事故等が発生した場合、販売の減少や信用失墜など長期的なリスクにつながる可能性があります。同社は品質保証部による定期的な検査や、従業員向けの教育を実施し、意識向上に努めています。

(3) 海外からの商品調達の停滞等


海外の産地や工場からの輸入に頼る商品において、紛争や事故により生産や輸送が止まった場合、販売に大きな支障を来すリスクがあります。また、為替変動による原価上昇も懸念されます。同社は情報共有の徹底や複数仕入先からの調達によりリスクの低減を図っています。

(4) 海外でのカントリーリスクや紛争


シンガポールやマレーシア、香港などで展開する事業において、現地での法改正や諸制度の変更、政変等の発生により事業継続に支障を来すリスクがあります。同社グループは現地との緊密な情報交換を行い、従業員の安全確保を最優先とした施策を講じる体制を整えています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

トーホーの転職研究 2026年1月期決算に見るキャリア機会

トーホーの2026年1月期決算は、不採算事業からの撤退と外食向け卸売の好調により、営業利益で過去最高を更新。三協食鳥のグループ化やベトナム出資など、攻めの姿勢が鮮明です。「業務用食品卸の国内首位」として、専門人材がどの事業でどのような役割を担えるのか、転職のポイントを整理します。