鎌倉新書 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鎌倉新書 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、葬儀・お墓・仏壇などの終活関連ポータルサイト運営企業です。出版社からWebサービスへ転換し、現在は相続、介護、自治体支援など事業領域を拡大しています。直近の業績は、主力事業の堅調な推移に加え、官民協働事業等の成長により増収増益となっています。


※本記事は、株式会社鎌倉新書 の有価証券報告書(第41期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鎌倉新書ってどんな会社?


仏壇仏具業界向けの出版社として創業し、現在は葬儀やお墓、仏壇などを中心とした終活関連のポータルサイトを運営する情報インフラ企業です。

(1) 会社概要


1984年に仏壇仏具業界向け書籍の出版社として設立されました。2000年に「いい葬儀」、2003年に「いいお墓」「いい仏壇」を開始し、Webサービスへ事業転換しました。2015年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2017年に市場第一部へ変更しました。近年は介護や相続、官民協働事業など周辺領域へ事業を拡大しています。

同グループ(連結)の従業員数は234名、同社(単体)では178名です。筆頭株主は代表取締役会長CEOの清水祐孝氏で、第2位は創業家資産管理会社と思われる株式会社かまくらホールディングス、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。経営陣による持株比率が高く、オーナーシップが明確な体制です。

氏名 持株比率
清水祐孝 30.70%
かまくらホールディングス 8.63%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表取締役社長COOは小林史生氏が務めています。社外取締役比率は71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
清水 祐孝 代表取締役会長CEO 1986年国際証券入社。1990年同社入社。2002年代表取締役社長、2017年代表取締役会長、2020年4月より現職。
小林 史生 代表取締役社長COO 2000年楽天入社。米国Rakuten.com社長などを経て2017年同社入社。2019年代表取締役COO、2020年4月より現職。


社外取締役は、余語邦彦(ビジネス・ブレークスルー大学大学院教授)、玉木彰(IGPIグループマネージングディレクター)、新森公夫(公認会計士)、河合順子(弁護士)、下村朱美(ミス・パリ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「終活事業」および「終活関連書籍出版事業」を展開しています。

(1) 既存主力事業(お墓・葬祭・仏壇)


「いいお墓」「いい葬儀」「いい仏壇」などのポータルサイトを運営し、高齢者やその家族と、葬儀社・石材店・仏壇店などの事業者をつなぐマッチングサービスを提供しています。ユーザーには希望条件に合った事業者を紹介し、比較検討を支援します。

収益は主に、ユーザーから問い合わせがあった際や成約に至った際に、提携事業者から受け取る紹介手数料や成約手数料です。また、サイトへの広告掲載料も収益源となっています。運営は主に同社が行っています。

(2) 新規・成長事業(相続・介護・官民協働ほか)


終活の周辺領域として、相続手続きの専門家を紹介する「いい相続」、介護施設探しの「いい介護」、自治体と連携してお悔やみ窓口等を支援する官民協働事業などを展開しています。また、2024年11月より少額短期保険事業も開始しました。

収益モデルは既存事業と同様に、専門家や施設からの紹介手数料や成約手数料が中心です。官民協働事業では自治体向け冊子の広告収入なども得ています。運営は同社のほか、子会社のエイジプラス(介護)、ベル少額短期保険(保険)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面でも、経常利益、当期利益ともに増加基調を維持しており、増収増益の成長トレンドにあります。特に直近では売上高が70億円を突破し、利益率も高い水準を保っています。

項目 2021年1月期 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期
売上高 32億円 38億円 50億円 59億円 71億円
経常利益 3億円 5億円 7億円 8億円 9億円
利益率(%) 8.3% 14.1% 13.7% 13.9% 12.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 4億円 5億円 5億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。営業利益も増加していますが、営業利益率は前期と比較して若干低下しました。事業拡大に向けた投資を行いつつも、一定の収益性を確保していることがうかがえます。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 59億円 71億円
売上総利益 36億円 39億円
売上総利益率(%) 60.7% 55.6%
営業利益 8億円 9億円
営業利益率(%) 13.9% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が17億円(構成比57%)、給料及び手当が2億円(同8%)を占めています。売上原価においては、業務委託費が増加要因となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、サービス区分別の売上を見ると、主力のお墓、葬祭事業が堅調に推移しています。また、官民協働事業が大きく伸長しており、新たな収益柱として成長しています。新たに連結化された少額短期保険事業の売上も加わっています。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期)
お墓事業 21億円 23億円
葬祭事業 11億円 13億円
仏壇事業 3億円 2億円
相続事業 7億円 7億円
介護事業 6億円 6億円
少額短期保険事業 - 2億円
官民協働事業 5億円 8億円
その他 5億円 7億円
書籍事業 0.6億円 0.5億円
連結(合計) 59億円 71億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って、将来のための投資(投資CFマイナス)や株主還元・借入返済(財務CFマイナス)を行っている「健全型」です。安定した本業収益を基盤に、健全な財務運営が行われています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF 4億円 6億円
投資CF -4億円 -4億円
財務CF -5億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、明るく前向きな社会を実現するため、人々が悔いのない人生を生きるためのお手伝いをします。」をミッションに掲げています。高齢社会の進展に伴い拡大する課題に対し、情報やサービスを提供することで社会に貢献することを責務としています。

(2) 企業文化


同社は、高齢者やその家族の「こころ」「おかね」「からだ」などの課題解決を支援するため、誠実なユーザー対応と公正で有益なサービス提供を重視しています。また、変化の激しいインターネット業界において、新しいサービスの提供に積極的に取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は重要な経営指標として、サービス紹介数、成約数、クロスユース率(複数サービスの利用率)を重視しています。また、継続的な成長を示す売上高、営業利益、EBITDAに加え、良好な財務体質と資本効率の実現のためROE、EPSを重要な財務指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「終活インフラ」の実現に向け、顧客データの活用によるクロスユースの強化、他社や自治体との連携による集客チャネルの多様化に取り組んでいます。また、「家族の終活」として生前整理や老後の不安解消に向けた新サービスの拡充を進め、企業の信頼性向上にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を重要な経営資源と捉え、成果を出す力と成長ポテンシャルを重視した採用を行っています。OJTを中心とした育成に加え、シリーズ研修や外部研修によりリーダー育成を推進しています。また、フレックスタイムやハイブリッド勤務の導入など、働きやすい環境整備にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 37.3歳 3.0年 6,470,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定のサイトへの依存


同社グループの売上の約半数は「いい葬儀」「いい仏壇」「いいお墓」の3サイトに依存しています。これらのサイトのユーザー数が減少したり、運営が困難になった場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 検索エンジンへの集客依存


同社サイトへの集客は主に検索エンジン経由であり、検索結果の上位表示に依存しています。検索エンジン運営者の方針変更などにより表示順位が下がった場合、集客力が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) インターネット関連の法的規制等


事業において個人情報を扱うため、個人情報保護法等の規制を受けています。インターネット普及に伴う新たな法的規制の導入や、セキュリティ事故による個人情報漏洩などが発生した場合、事業運営や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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