鎌倉新書 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鎌倉新書 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する鎌倉新書は、葬儀やお墓、仏壇のほか、相続や介護など多岐にわたる終活関連のポータルサイトを運営するマッチングプラットフォーム企業です。直近の業績は、官民協働事業や介護事業の成長により売上高が前期比で増加し、当期純利益も増益となるなど順調な拡大を続けています。


※本記事は、鎌倉新書の有価証券報告書(第42期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鎌倉新書ってどんな会社?


終活に取り組む高齢者や家族に向けたマッチングプラットフォームを運営し、終活インフラの構築を目指す企業です。

(1) 会社概要


1984年4月、仏壇仏具業界向け書籍の出版を目的に設立されました。2000年に葬儀ポータルサイト「いい葬儀」、2003年に「いいお墓」「いい仏壇」を開始し、インターネットを利用した情報サービスへと進出しました。2015年に上場を果たし、2019年以降はハウスボートクラブのグループ化などを経て、終活領域全般へと事業を拡大しています。

従業員数は連結で244名、単体で181名です。筆頭株主は創業者の清水祐孝氏で、第2位は同社と資本業務提携を結んでいるSOMPOホールディングス、第3位は資産管理会社のかまくらホールディングスです。

氏名 持株比率
清水祐孝 27.60%
SOMPOホールディングス 10.00%
かまくらホールディングス 7.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表取締役会長CEOの清水祐孝氏と、代表取締役社長COOの小林史生氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
清水祐孝 代表取締役会長CEO 1986年国際証券入社。1990年同社入社、2002年代表取締役社長などを経て、2020年より現職。
小林史生 代表取締役社長COO 1998年日産トレーディング入社。2000年楽天入社などを経て、2017年同社入社。2020年より現職。


社外取締役は、余語邦彦(ビジネス・ブレークスルー大学大学院教授)、玉木彰(経営共創基盤マネージングディレクター)、新森公夫(新森公認会計士事務所所長)、河合順子(梅ヶ枝中央法律事務所弁護士)、下村朱美(ミス・パリ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「終活事業」の単一セグメントとして事業を展開しています。

(1) 終活関連マッチングサービス


葬儀、お墓、仏壇などの供養領域にとどまらず、相続や介護といった高齢者とその家族が直面する多様な課題を解決するためのポータルサイトを運営しています。全国の優良な専門事業者と顧客をつなぐことで、情報格差の解消を支援し、適切な事業者の選定をサポートしています。

収益は主に、同社のサイトを通じて提携事業者と顧客が成約した際に得られる手数料収益と、サイトへの広告掲載料から成り立っています。運営は同社のほか、介護領域のあっせん事業を担うエイジプラスなどが主体となってサービスを提供しています。

(2) 官民協働事業およびその他の新規事業


地方自治体と連携し、地域住民に向けた終活情報の提供や手続き支援を行う官民協働事業を展開しています。また、少額短期保険事業や不動産などのアセットマネジメント事業を通じ、人生のあらゆるステージをワンストップでサポートする社会基盤の構築を進めています。

官民協働事業では、自治体向けに終活関連の冊子等のマスターデータを提供し、納品時点で収益を認識するモデルなどを採用しています。保険事業はベル少額短期保険が担い、保険契約上の責任開始に伴う保険料を収益として計上しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が右肩上がりで持続的に拡大しており、利益面でも毎期安定して増益を達成しています。利益率も高い水準を維持しており、事業領域の拡張や積極的なサービスの展開により、終活分野における需要を着実に取り込んでいることがうかがえます。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 38億円 50億円 59億円 71億円 83億円
経常利益 5億円 7億円 8億円 9億円 12億円
利益率(%) 14.1% 13.7% 13.9% 12.8% 14.0%
当期純利益 4億円 5億円 6億円 7億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益も順調に増加しています。売上総利益率は安定した高い水準を保っており、継続的な増収と適切なコストコントロールの成果によって、営業利益率もさらに改善する傾向にあります。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 71億円 83億円
売上総利益 39億円 46億円
売上総利益率(%) 55.6% 55.0%
営業利益 9億円 12億円
営業利益率(%) 12.9% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が17億円(構成比50%)、給料及び手当が3億円(同8%)を占めています。また、役務原価などの売上原価の主な内訳は業務委託費が5億円(構成比23%)、通信費が2億円(同9%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は終活事業の単一セグメントですが、各種サービスの販売実績ではマッチングプラットフォームを中心とした終活関連事業が売上高の大部分を占めています。官民協働事業や介護事業なども大きく伸長し、全体の成長を力強く牽引しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
終活事業 70億円 83億円
終活関連書籍出版事業 0.5億円 0.5億円
連結(合計) 71億円 83億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

鎌倉新書は、終活事業を中心に官民協働事業や介護事業、葬祭事業などを展開し、売上高を前年比で大きく伸ばしています。当連結会計年度は、営業活動により多くの資金を得ており、これは主に税金等調整前当期純利益の計上が貢献しています。一方、投資活動では有形・無形固定資産の取得や事業譲受により資金を使用しました。財務活動では、増資や自己株式の処分により資金を得ましたが、配当金の支払いも行われました。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は大幅に増加しました。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 6億円 13億円
投資CF -4億円 -8億円
財務CF -2億円 16億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは、明るく前向きな社会を実現するため、人々が悔いのない人生を生きるためのお手伝いをします」をミッションに掲げています。高齢社会の進展に伴いニーズが拡大する高齢者やそのご家族に向けて、終活にまつわる課題解決のための情報やサービスを提供し、「終活インフラ」を構築することで社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、全社共通の価値観・行動指針として「かましんスタンダード」を制定し、従業員への浸透を図っています。仕事に対する前向きで充実した心理状態である「ワークエンゲージメント」を高める環境づくりを重視し、部門を超えた相互支援やフィードバックを促進しながら、明るく前向きに働ける風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、サービスの紹介実績を示す「紹介数」および「成約数」を重視するとともに、継続的な成長を示す売上高、営業利益、EBITDAを重要な経営指標として掲げています。また、株主還元方針として、中期経営計画期間中(2024年2月〜2027年1月)は「配当性向100%または1株当たり20円のいずれか低いほう」を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は、多様化する顧客の終活ニーズに的確に応えるため、グループ全体でのシームレスな連携による「終活領域全体の価値向上」を図ります。また、AI技術を活用したニーズ抽出によるマッチングプラットフォームの高度化や、SOMPOホールディングスとの資本業務提携を通じたワンストップの終活関連サービスの提供を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


価値を生み出す源泉である人材を最重要視する「人的資本経営」を推進しています。「明るく前向きに働ける環境づくり」と「多様性とインクルージョン」を基本方針とし、従業員一人ひとりの成長を支援する公正な評価制度や多彩な研修メニュー、自律的なキャリア形成を促す「ジョブポスティング制度」などを整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 37.7歳 3.0年 6,840,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.1%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) -
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) -


※労働者の男女の賃金の差異は公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、通年在籍者の平均年間昇給率(7.1%)、目標とする女性管理職比率(15.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社による競争環境の激化


同社と同様に終活に関する情報を提供する企業や新規参入企業との競争が激化した場合、ポータルサイトのユーザー数減少や手数料の縮小が生じ、同社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定サイトの収益への依存


同社は様々なサイトを運営していますが、「いい葬儀」「いい仏壇」「いいお墓」の3サイトに係る売上高比率が当期で約51.0%と高く、これらへの依存度が高い状況です。予期せぬ事態でこれらのユーザー数が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 検索エンジンへの集客依存


同社運営サイトへの集客は概ね外部の検索エンジン経由であり、表示順位に依存しています。積極的なブランド構築やSEO対策を進めていますが、検索エンジンの上位表示方針の変更等によって優位に働かなくなった場合、集客効果が低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

鎌倉新書の転職研究 2026年1月期決算に見るキャリア機会

鎌倉新書の2026年1月期決算は、売上高・利益ともに過去最高を更新。SOMPOホールディングスとの資本業務提携により「終活インフラ」構築への成長が加速しています。「なぜ今、鎌倉新書なのか?」転職希望者が自治体連携や介護、IT活用などの成長事業でどのような役割を担えるのか、その将来性を整理します。