ダブルエー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダブルエー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、婦人靴の企画・販売を主力事業としています。「ORiental TRaffic」等のブランドを展開し、実店舗とECを連携させています。直近の業績は、売上高は増加したものの、為替影響やコスト増により経常利益、当期純利益ともに減益となりました。


※本記事は、株式会社ダブルエー の有価証券報告書(第24期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダブルエーってどんな会社?


同社グループは、婦人靴および婦人服の企画・販売を主な事業とし、自社オリジナル商品の開発・販売を行っています。

(1) 会社概要


2002年に直通企画有限会社として設立され、下北沢に「ORiental TRaffic」1号店を出店しました。2007年に現在のダブルエーへ社名変更し、2019年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしました。その後、2023年に株式会社ミッシュマッシュを吸収合併してアパレル事業へ参入し、2024年には東京証券取引所プライム市場へ移行しています。

2025年1月31日時点で、グループ全体の従業員数は512名、単体では276名です。筆頭株主は代表取締役の肖俊偉氏であり、第2位、第3位も個人株主が名を連ねています。創業者を中心とした安定的な持株構成となっています。

氏名 持株比率
肖 俊偉 51.14%
趙 陽 6.17%
丁 蘊 4.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役は肖俊偉氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
肖 俊偉 代表取締役 1998年マルチウ産業入社を経て、2002年に同社(旧直通企画有限会社)を設立し代表取締役に就任。2020年より卑弥呼の代表取締役も兼任し、現職。
中井 康代 取締役 2003年に同社入社。商品部部長を経て、2013年に取締役企画広告・流通担当に就任。2020年より卑弥呼の代表取締役も兼任し、現職。
岩瀬 絵美 取締役 2007年に同社入社。2018年に商品部部長となり、2019年に取締役商品部部長に就任。2025年より卑弥呼の取締役も兼任し、現職。


社外取締役は、佐川明生(A.佐川法律事務所代表)、佐藤広一(HRプラス社会保険労務士法人代表社員)、菅沼匠(リンクパートナーズ法律事務所代表パートナー)、落合孝裕(落合会計事務所代表)、早坂陽(peace of cake代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「婦人靴の企画・販売事業」および「婦人服の企画・販売事業」を展開しています。

(1) 婦人靴の企画・販売事業


「ORiental TRaffic」「卑弥呼」などのブランドで、婦人靴の企画・販売を行っています。国内外の実店舗に加え、自社ECサイトやZOZOTOWN等のECモールでも展開しています。企画から製造、販売までを一貫して管理し、トレンドを取り入れた商品をリーズナブルな価格帯で提供しています。

収益は、一般消費者への商品販売による代金が主な収益源です。運営は、同社および子会社の卑弥呼、海外子会社などが行っています。店舗販売、オンライン販売のほか、他社ブランドでの委託販売も実施しており、幅広いチャネルで顧客を獲得しています。

(2) 婦人服の企画・販売事業


「MISCH MASCH」ブランドを中心に、婦人服の企画・販売を行っています。フェミニンスタイルを提案し、トレンドを取り入れた商品を展開しています。2023年に事業を本格化し、リブランディングによるイメージ刷新や効率的な店舗運営に取り組んでいます。

収益は、婦人靴事業と同様に、一般消費者への商品販売による代金が主な収益源です。運営は主に同社が行っています。実店舗およびECサイトを通じて商品を販売しており、靴事業で培ったノウハウを活かした事業展開を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移です。売上高は順調に拡大傾向にあり、毎期増収を達成しています。利益面では、2024年1月期まで増加傾向にありましたが、直近の2025年1月期は経常利益、当期純利益ともに減少しました。

項目 2021年1月期 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期
売上高 131億円 157億円 176億円 213億円 228億円
経常利益 3億円 10億円 11億円 17億円 16億円
利益率(%) 2.4% 6.6% 6.2% 8.0% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.9億円 4億円 4億円 6億円 8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益率は低下しています。特に売上原価の増加率が売上高の増加率を上回っています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 213億円 228億円
売上総利益 134億円 140億円
売上総利益率(%) 63.0% 61.5%
営業利益 18億円 17億円
営業利益率(%) 8.3% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が33億円(構成比27%)、給料及び賞与が23億円(同19%)、地代家賃が23億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の婦人靴事業は増収を維持しましたが、為替影響等による原価高騰で減益となりました。一方、婦人服事業は売上高が大きく伸長し、利益も増加しました。全体として増収減益の結果となっています。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期) 利益(2024年1月期) 利益(2025年1月期) 利益率
婦人靴の企画・販売事業 196億円 205億円 35億円 35億円 17.0%
婦人服の企画・販売事業 16億円 23億円 0.2億円 0.9億円 3.7%
調整額 - - -18億円 -19億円 -
連結(合計) 213億円 228億円 18億円 17億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業活動で得た資金を借入金の返済や投資活動に充てており、手元資金で投資を賄いつつ財務体質を維持する「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF 6億円 9億円
投資CF -4億円 -7億円
財務CF -4億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均(9.4%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.8%で市場平均(24.2%)を大幅に上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、企業理念として「いつでも想像以上に満足のできる商品・サービスを提供します。」を掲げています。この理念の下、株主、顧客、取引先、従業員、そして社会全体との共栄を図りながら、持続的な成長と企業価値の最大化を目指して事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、消費者ニーズや販売員の声を商品開発に反映させることを重視しています。商品企画スタッフが定期的に販売員として店頭に立ち、リアルな意見や要望を収集する体制をとっています。また、企画開発から生産品質管理、販売までを一気通貫で担当することで、顧客の声に寄り添った魅力的な商品提供を可能にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、収益性と資本効率を重視した経営を行っています。その達成状況を判断するための客観的な指標として、以下の2点を重要な経営指標と位置付けています。

* 売上高
* 売上高営業利益率

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、企業理念の実現に向け、商品企画開発力の向上やグローバルなサプライチェーンマネジメントの強化に取り組んでいます。また、デジタル化の推進による顧客サービスの拡充や、中・高価格帯ブランドの強化を進めています。さらに、アパレル事業の拡大として、ブランドの再建ノウハウを活かした収益向上に努めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本戦略を重要な経営戦略と位置付け、男女の区別なく機会の平等を確保し、能力や職責に応じた人事評価を行っています。また、労働環境の改善や向上、心身の健康維持にも注力しており、コンプライアンス研修やハラスメント防止策などを通じて人材価値の向上と就業環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 29.8歳 5.2年 4,031,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 68.8%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 57.4%
男女賃金差異(正規雇用) 55.5%
男女賃金差異(非正規) 147.9%


※男性育児休業取得率の「-」は、育児休業取得の対象となる男性労働者が無いことを示しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害及び戦争等の発生


同社は国内外に店舗や物流拠点を持ち、商品は主に海外のパートナー工場等から仕入れています。そのため、地震や気候変動による自然災害、感染症の流行、戦争等の事態により、事業活動の停止や物流の断絶が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外サプライチェーン


商品は海外パートナー工場等で生産されているため、為替変動による輸入コストへの影響や、現地の政治経済情勢、法制度の変更等がリスクとなります。特に円安進行や現地の人件費・物価高騰は仕入原価の上昇につながり、業績に影響を与える可能性があります。

(3) ファッショントレンドの転換


取り扱う婦人靴・婦人服は流行性や季節性が高く、気候変動の影響も受けやすい商品です。ファッショントレンドの変化に適応できず、消費者の嗜好に合った商品を提供できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 市場競争による販売シェア低下


SNSやオンライン販売などチャネルの多様化により、同業他社との競争が激化しています。販売価格の見直しや広告宣伝費の増加が必要となる場合や、市場競争に遅れをとった場合、販売シェアや利益率が低下する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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