ダブルエー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダブルエー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダブルエーは東京証券取引所プライム市場に上場し、婦人靴および婦人服の企画・販売事業を展開しています。直近の業績は、店舗網の拡大やアパレル事業の強化により売上高が233億円と増収を維持した一方、仕入原価の高騰や人件費の増加等により経常利益は12億円と減益傾向にあります。


※本記事は、株式会社ダブルエーの有価証券報告書(第25期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダブルエーってどんな会社?


ダブルエーは婦人靴・婦人服の自社ブランドを展開し、直営店とECサイトでの小売販売を行う企業です。

(1) 会社概要


2002年に設立され、婦人靴ブランド「ORiental TRaffic」の1号店を出店しました。2007年にダブルエーへ社名変更し、2019年に上場しました。近年はミッシュマッシュの吸収合併や「31 Sons de mode」の事業譲受を行い、アパレル事業の拡大を推進しています。

同社グループの従業員数は連結で566名、単体で336名体制となっています。筆頭株主は創業経営者であり代表取締役の肖俊偉氏で、過半数の株式を保有しています。第2位は趙陽氏、第3位は丁蘊氏となっており、個人株主が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
肖俊偉 51.13%
趙陽 6.17%
丁蘊 4.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役を肖俊偉氏が務めており、社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
肖俊偉 代表取締役 1998年にマルチウ産業へ入社。2002年に直通企画(現ダブルエー)を設立し、代表取締役に就任。2020年より卑弥呼の代表取締役を兼任。
中井康代 取締役 2003年に直通企画(現ダブルエー)へ入社。商品部部長などを経て2018年に取締役に就任。2020年より卑弥呼の代表取締役を兼任。
岩瀬絵美 取締役 2007年に直通企画(現ダブルエー)へ入社。商品部部長などを経て、2019年に取締役商品部部長に就任。2025年より卑弥呼の取締役を兼任。


社外取締役は、佐川明生(A.佐川法律事務所代表)、佐藤広一(HRプラス社会保険労務士法人代表社員)、菅沼匠(リンクパートナーズ法律事務所代表パートナー)、落合孝裕(落合会計事務所代表)、早坂陽(peace of cake代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「婦人靴の企画・販売事業」および「婦人服の企画・販売事業」を展開しています。

(1) 婦人靴の企画・販売事業


「ORiental TRaffic」や「卑弥呼」などの婦人靴ブランドを展開し、幅広い年齢層や嗜好に合わせた商品を提供しています。自社で商品の企画から生産管理、検品までを一貫して行い、店頭で集めた顧客の声を反映した靴づくりを行っているのが特徴です。

収益は、ルミネやららぽーとなどの商業施設や百貨店に出店する実店舗、および自社サイトやZOZOTOWN等のオンラインでの商品販売から得ています。事業の運営はダブルエーおよび子会社の卑弥呼などが担っています。

(2) 婦人服の企画・販売事業


「MISCH MASCH」や「31 Sons de mode」などのブランドを展開し、トレンドを取り入れたフェミニンで洗練されたアパレル商品を女性向けに提供しています。靴事業で培ったサプライチェーンのノウハウを活かし、ブランドの再構築を進めています。

収益は、実店舗およびオンラインショップでの衣料品販売から得ています。事業の運営はダブルエーが主体となって展開しており、複数ブランド間のシナジー創出を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、新規出店やアパレル事業の拡大により売上高が毎期増加し、順調なトップラインの成長が続いています。一方、利益面では為替相場の変動に伴う仕入原価の高騰や人件費の増加などのコスト上昇要因が影響し、直近では減益傾向にあります。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 157億円 176億円 213億円 228億円 233億円
経常利益 10億円 11億円 17億円 16億円 12億円
利益率(%) 6.6% 6.2% 8.0% 7.0% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 4億円 6億円 8億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高は店舗網の拡大により増収を確保しましたが、物価上昇や円安による仕入原価の高騰により、売上総利益率はわずかに低下しました。また、従業員の賃上げによる人件費の増加や物流費などの上昇により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益率は低下しています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 228億円 233億円
売上総利益 140億円 142億円
売上総利益率(%) 61.4% 60.9%
営業利益 17億円 11億円
営業利益率(%) 7.5% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が35億円(構成比26.8%)、地代家賃が24億円(同18.7%)、給料及び賞与が24億円(同18.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の婦人靴事業は、オンライン販売が堅調に推移したものの、円安を背景とした仕入原価の高騰などが響き、減益となりました。一方、婦人服事業はブランドの事業譲受等によって大きく増収を果たしましたが、事業拡大に伴う先行費用の発生などにより営業赤字へと転落しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期) 利益(2025年1月期) 利益(2026年1月期) 利益率
婦人靴の企画・販売事業 205億円 203億円 35億円 31億円 15.2%
婦人服の企画・販売事業 23億円 30億円 1億円 -1億円 -3.2%
連結(合計) 228億円 233億円 17億円 11億円 4.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 9億円 10億円
投資CF -7億円 -5億円
財務CF -6億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「いつでも想像以上に満足のできる商品・サービスを提供します。」を企業理念として掲げています。株主や顧客をはじめ、取引先、従業員、ひいては社会全体との共栄を図るとともに、自社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の最大化を目指して事業を展開しています。

(2) 企業文化


商品の企画から生産、販売までを一気通貫で担う体制を構築しています。特に、商品企画スタッフが自ら店頭に立って直接顧客のリアルな声や要望を聞き、商品開発に反映させるなど、現場目線と消費者ニーズをスピーディに捉える文化が根付いています。また、サステナビリティに関する課題も重要な経営テーマと位置づけています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、収益性と資本効率を重視した経営を行っています。そのための客観的な指標として、「売上高」および「売上高営業利益率」を重要な経営指標に位置づけており、事業領域の拡張や収益力の強化に向けた各種の経営課題に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


靴業界のイノベーターとして既存サプライチェーンの省力化を図り、ブランドポートフォリオの最適化による持続可能なビジネス展開を進めています。ファッション小売企業としての競争力向上を図るため、店舗の戦略的展開やオンライン販売の拡充を推進しています。

* 商品企画開発力の向上
* 戦略的店舗展開
* スニーカブランド「ORTR」の再構築
* 事業構造のデジタル化の推進
* グローバル・サプライチェーンの最適化と為替変動リスク対応力の強化
* アパレル事業の競争力強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続可能な社会への貢献と継続的な事業成長を確保するため、人的資本戦略を重要な経営戦略として位置づけています。待遇や業務内容において男女の区別なく機会の平等を確保し、能力や職責に応じた適切な人事評価を実施しています。また、社員の心身の健康維持やコンプライアンス研修を通じた就業環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 29.0歳 4.5年 4,103,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 66.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 52.1%
男女賃金差異(正規労働者) 49.7%
男女賃金差異(非正規労働者) 127.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ファッショントレンドと働き方の多様化への適応


同社が取り扱う婦人靴や婦人服は流行性や季節性が高く、気候の変化に影響を受けやすい特性があります。また、テレワークやオフィスカジュアルの普及など働き方の変化により消費者の嗜好が変化しており、これらに対応する商品の提供が遅れた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外サプライチェーンと為替変動リスク


商品は自社で生産拠点を持たず、海外のパートナー工場に生産を委託しています。そのため、海外の政治経済の動向や為替相場の急激な変動が仕入原価の高騰を招くリスクがあります。また、関税制度の変更や通関手続きの強化などが新たなコスト負担を生む可能性もあります。

(3) 特定商業施設への出店と市場競争の激化


実店舗は駅ビルや大型ショッピングセンター等の特定商業施設への出店に依存しており、出店環境の変化が計画通りに進まないリスクがあります。また、SNSやオンライン販売などチャネルの多様化により同業他社との競争が激化しており、価格競争や広告宣伝費の増加が収益性を圧迫する懸念があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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