※本記事は、株式会社アピリッツの有価証券報告書(第26期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アピリッツってどんな会社?
Webソリューション事業、デジタル人材育成派遣事業、推しカルチャー&ゲーム事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2000年にケイビーエムジェイとして設立し、2001年にWebソリューション事業を本格稼働しました。2010年にオンラインゲーム事業を開始し、2012年に現在のアピリッツへ商号変更しています。2021年に東証JASDAQに上場し、近年は積極的なM&Aを通じてデジタル人材育成派遣事業等を強化しています。
現在の従業員数は連結で820名、単体で386名体制となっています。大株主については、筆頭株主が法人のエイ・ティー・ジー・シーで、第2位も法人のクリプトメリア、第3位は個人の魚谷幸一氏となっています。なお、第4位には同社代表取締役の和田順児氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エイ・ティー・ジー・シー | 38.43% |
| クリプトメリア | 5.94% |
| 魚谷 幸一 | 5.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員CEOは和田順児氏が務めており、社外取締役の比率は37.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 和田 順児 | 代表取締役社長執行役員CEO | 1993年富士通入社。2005年同社入社。2014年より現職。Y's取締役等を兼任。 |
| 中館 博貴 | 取締役執行役員CSO | 2009年三陽商会入社。2012年Y's入社後、同社取締役CEO等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、北上真一(元i.JTB代表取締役社長)、正能茉優(ハピキラFACTORY代表取締役)、内田雅章(TOP CONNECT代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「Webソリューション事業」「デジタル人材育成派遣事業」「推しカルチャー&ゲーム事業」を展開しています。
■Webソリューション事業
顧客企業のECサイトやWebシステムの企画、要件定義、設計、開発、保守・運用までの全工程を一貫して対応しています。AWSを活用した大規模システム構築や、アジリティに強みを持つECソリューションの提供、デジタルマーケティング支援等も行い、顧客の多様なニーズに応えています。
収益モデルは、顧客企業からのシステム開発に伴う受託開発収入や、保守・運用サービスにおける準委任契約に基づく継続的な収入等から成り立っています。運営は同社および、Bee2Bやクエイル、BUNBU COMPANY LIMITED等のグループ子会社が連携して行っています。
■デジタル人材育成派遣事業
顧客企業の開発現場における多様なニーズに対応するため、エンジニア等のデジタル人材を育成し派遣しています。Webソリューション事業等で培ったデジタル人材の育成・活用機能と、M&Aにより取得した企業を統合して立ち上げた事業であり、高度な技術力の提供に取り組んでいます。
収益モデルは、顧客企業からデジタル人材の派遣要請があった際、プロジェクトに必要なスキルを有する人材を派遣し、その対価として得られる派遣収入から成り立っています。運営は同社の子会社であるY'sおよびJUTJOY等が行っています。
■推しカルチャー&ゲーム事業
主としてスマートフォン向けオンラインゲームの運営およびファンクラブサービスの提供を行っています。アイドルグループ等の有力なIP(知的財産)を活用したゲームやファン向けサービスを展開し、企画・開発・運営を一貫して手掛けることで独自ノウハウを蓄積しています。
収益モデルは、ゲーム内アイテムの販売によるユーザーからの課金収入や、パートナー企業のゲームタイトルに対する受託開発収入、運営移管による運営収入、レベニューシェア等から成り立っています。運営は同社およびアピリッツ・ファンカルチャーパートナーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はM&Aの推進や企業の旺盛なDX投資需要を背景に、5期連続で順調な増収傾向を維持しています。一方利益面については、過去数期にわたり増益基調にありましたが、直近期は大型不採算案件の発生や中核人材採用に向けた先行投資が利益を圧迫し、経常赤字に転落する結果となりました。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 73億円 | 84億円 | 90億円 | 100億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 4.5億円 | 6.0億円 | 1.9億円 | -3.2億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 6.1% | 7.1% | 2.1% | -3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.1億円 | 2.1億円 | 3.9億円 | 0.5億円 | -4.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な増加に対して売上総利益が減少しており、原価率の上昇が顕著に表れています。また、販売費および一般管理費も前年から増加したことで、営業損益は赤字となりました。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 100億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.0% | 15.5% |
| 営業利益 | 1.9億円 | -3.1億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | -3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.8億円(構成比26%)、支払手数料が2.5億円(同13%)を占めています。売上原価(84.1億円)の詳細内訳は損益計算書に記載されていませんが、不採算案件に伴う外注費や工数超過などが原価高止まりの大きな要因となっています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収を達成しましたが、利益面では明暗が分かれました。Webソリューション事業は不採算案件の影響で大幅減益となり、デジタル人材事業も先行採用等のコスト負担で赤字に転じています。一方、推しカルチャー&ゲーム事業は主力タイトルの周年施策等で好調に推移し、全社の利益を下支えしています。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) | 利益(2025年1月期) | 利益(2026年1月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| Webソリューション事業 | 33億円 | 35億円 | 4.6億円 | 1.0億円 | 2.8% |
| デジタル人材育成派遣事業 | 14億円 | 18億円 | 0.4億円 | -0.1億円 | -0.7% |
| 推しカルチャー&ゲーム事業 | 43億円 | 47億円 | 4.6億円 | 3.4億円 | 7.3% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -7.8億円 | -7.4億円 | -% |
| 連結(合計) | 90億円 | 100億円 | 1.9億円 | -3.1億円 | -3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な「末期型」の傾向を示しています。ただし、当期の営業CFは赤字によるわずかなマイナスに留まっており、借入金の返済を進めた結果として財務CFがマイナスになっている点に留意が必要です。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.1億円 | -461万円 |
| 投資CF | -1.6億円 | -1.7億円 |
| 財務CF | 7.0億円 | -627万円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-22.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も31.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ザ・インターネットカンパニー」という理念のもと、「セカイに愛されるインターネットサービスをつくり続ける」ことを目指し、デジタルトランスフォーメーション時代に対応し進化したデジタル技術を用いて、顧客のサービスひいては人々の生活をよいものへ変革するという考え方を掲げて経営を行っています。
■(2) 企業文化
従業員1人1人の成長が事業成長および社会貢献へ繋がるとの考えから、「学ぶ」というテーマを重視しています。横串のコミュニティを活性化し、相互理解や助け合いの文化を促進する「共創・共学」を掲げ、人と事業が継続して成長できる環境づくりと企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
事業規模の拡大と収益性の向上を重要な経営課題と認識しており、特に「売上高」「営業利益」およびその成長率を客観的な指標としています。また、資本効率を判断する指標として「自己資本利益率(ROE)」を重視するほか、それらの源泉となるエンジニア数、単価、顧客継続率も重要視して事業を展開しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的には、既存事業の安定的成長とM&Aを両軸として事業規模の拡大を図る方針です。「アピリッツVISION2030」を掲げ、不採算案件の再発防止とプロジェクト管理体制の抜本的強化を図ります。また、生成AI等の技術革新へ対応するとともに、要件定義・設計を担うミドル〜シニア層のエンジニアを戦略的に増強し、高付加価値領域の拡大を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「共創・共学」「人材育成」「生産力向上」の3要素を重視し、デジタル人材の採用と教育に注力しています。資格取得支援制度や社内研修の充実に加え、多様な人材がライフステージに合った働き方を選択できるよう、テレワーク、フレックスタイム、服装の自由化、社員寮制度などの社内環境整備を積極的に進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 33.1歳 | 4.8年 | 5,600,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ユーザー保護を目的とした社会的な規制
オンラインゲーム業界における課金方法(コンプリートガチャ等)に対する法的規制や自主規制の変更が社会情勢の変化によって生じた場合、同社のサービス提供形態に著しい制約を受け、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新規ゲームタイトルの開発とリリース遅延
ユーザーの嗜好変化が速く、新規タイトルの企画・開発には多額の先行投資とリスクが伴います。開発工程における仕様変更や不具合によってリリース遅延が生じた場合、想定通りの収益を確保できず事業計画に影響を与える恐れがあります。
■(3) 開発工数の増加および不具合の発生
Webソリューション事業等の受託開発において、要件定義の不十分さや顧客の要求変更により、当初想定した開発工数を超過するリスクがあります。また、納品物に予期せぬ不具合が生じた場合、追加対応によるコスト増加で採算が悪化する可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。