ストレージ王 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ストレージ王 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ストレージ王は東京証券取引所グロース市場に上場し、トランクルームの企画、開発、運営管理を主力とする企業です。直近の業績では、自社開発物件の売却や既存店舗の稼働率向上により、売上高40億円、営業利益1.9億円の減収増益を達成しました。旺盛な需要を背景に出店を拡大し、持続的な成長を目指しています。


※本記事は、株式会社ストレージ王の有価証券報告書(第16期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ストレージ王ってどんな会社?


トランクルームの開発と運営を通じて不動産価値を高め、人々の暮らしを豊かにする企業です。

(1) 会社概要


2008年5月にトランクルームの運営を目的に設立されました。2015年7月にアイトランク山陽と合併してストレージ王へ商号変更し、岡山など西日本へも進出しました。2019年以降はビルイン型トランクルームの自社開発を強化し、2022年4月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

同社の従業員数は単体で25名です。筆頭株主は事業会社のケイ・エル・アイで、第2位はかつての親会社である事業会社のデベロップ、第3位は寺田倉庫となっており、事業会社を中心とした株主構成です。

氏名 持株比率
ケイ・エル・アイ 24.00%
デベロップ 9.86%
寺田倉庫 2.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員の荒川滋郎氏が経営を牽引しており、取締役5名のうち2名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
荒川滋郎 代表取締役社長執行役員 新日本製鐵、パルコ、寺田倉庫等を経て、2016年にデベロップ入社。2019年4月に同社代表取締役社長に就任し、2023年4月より現職。
佐藤芳紀 取締役常務執行役員開発部長兼経営企画室長 フィナンシャル・エージェンシー、デベロップ等を経て2019年11月に同社入社。店舗開発室長や開発部長を歴任し、2025年4月より現職。
坂口亮一 取締役執行役員営業部長 タイガー魔法瓶等を経て2015年にデベロップ入社。同年6月に同社取締役、2019年に営業部長に就任し、2023年4月より現職。


社外取締役は、兼平愼氏(元乃村工藝社常務執行役員万博・IR準備室長)、田中公子氏(元チャーム・ケア・コーポレーション社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「トランクルーム運営管理」「トランクルーム開発分譲」「その他不動産取引」事業を展開しています。

トランクルーム運営管理事業


トランクルームを利用者に貸し出し、プロパティマネジメント業務などの管理サービスを提供しています。コンテナ型と在来建築によるビルイン型の両方を展開し、利用者の利便性向上を図っています。

収益は、利用者からの利用料金や、物件オーナーからの管理手数料などから構成されます。本事業の運営は同社が行っています。

トランクルーム開発分譲事業


トランクルームとして利用可能な不動産を自社で企画・開発し、収益不動産として投資家に売却しています。首都圏等の需要が旺盛なエリアで、用地取得から建築までを一貫して手がけています。

収益は、開発したトランクルームを投資家へ売却することで得られる売却代金から構成されます。本事業の運営は同社が行っています。

その他不動産取引事業


トランクルーム以外の不動産に関するコンサルティングや、不動産の売買・仲介を行っています。普段から接点のある不動産事業者や投資家のニーズに応える形で事業を展開しています。

収益は、不動産の売却代金や賃料収入、不動産仲介等に伴うコンサルティングフィーから構成されます。本事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は31億円から40億円へと拡大基調にあります。開発物件の売却タイミング等により売上高には変動が見られるものの、経常利益は安定して1.5億円から1.7億円の黒字を確保しており、継続的な利益創出を実現しています。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 31億円 31億円 33億円 43億円 40億円
経常利益 1.6億円 1.5億円 1.6億円 1.7億円 1.7億円
利益率(%) 5.2% 4.9% 4.7% 4.0% 4.3%
当期利益 1.2億円 1.0億円 1.1億円 0.8億円 1.2億円

(2) 損益計算書


前事業年度から当事業年度にかけて、売上高は43億円から40億円へと減少したものの、売上総利益は6億円から7億円へと増加し、売上総利益率は14.8%から17.6%へと改善しました。これにより営業利益も1.7億円から1.9億円へと増益となっています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 43億円 40億円
売上総利益 6億円 7億円
売上総利益率(%) 14.8% 17.6%
営業利益 1.7億円 1.9億円
営業利益率(%) 4.0% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.2億円(構成比23%)、役員報酬が0.7億円(同13%)を占めています。売上原価の多くは販売用不動産取得費であり、23億円(売上原価の70%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の開発分譲事業は開発物件の売却により安定した利益を稼ぎ出しています。また、運営管理事業は既存店舗の稼働室数増加が寄与し、前年の赤字から黒字転換を果たしました。その他不動産事業もホテル売却等により大幅な増収増益となっています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期) 利益(2025年1月期) 利益(2026年1月期) 利益率
トランクルーム運営管理 8.9億円 11.0億円 -0.5億円 0.2億円 1.8%
トランクルーム開発分譲 33.1億円 25.3億円 4.5億円 4.4億円 17.3%
その他不動産取引 0.6億円 3.7億円 0.2億円 0.2億円 6.7%
連結(合計) 42.6億円 40.0億円 1.7億円 1.9億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ストレージ王は、財務活動による資金調達を積極的に行い、事業基盤の強化を図っています。

営業活動では、主に税引前当期純利益を計上したものの、棚卸資産の増加などにより資金の使用が発生しました。投資活動では、有形固定資産や敷金の差入などにより資金を使用しました。一方、財務活動では、長期借入れによる多額の収入を得て、全体の資金残高を増加させました。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF -6.3億円 -3.9億円
投資CF -1.5億円 -1.4億円
財務CF 3.6億円 9.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「顧客資産の持続的な価値向上を通じて、人々の暮らしや社会の未来を共創する」という経営理念を掲げています。不動産所有者の資産価値向上とトランクルーム利用者の利便性向上を通じ、社会の未来を豊かにすることを使命として事業活動を展開しています。

(2) 企業文化


少数の人員体制でありながら効率性を重視し、少数精鋭でプロフェッショナル集団を目指す組織文化を持っています。専門性や経験の異なる多様な人材を積極的に取り込み、働きやすい環境と風通しのよい社内環境整備に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


事業を適切に管理・評価するため、各物件開業後の稼働率、管理する物件数と部屋数、物件への問合せ数と契約の成約率を重要な経営指標として設定しています。稼働率と経過年数に注目し、物件ごとにきめ細かな運営管理を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業拡大のため、出店用地の確保と建設コストの抑制による「物件開発力の強化」を推進しています。また、WEB広告やキャンペーン展開による「既存物件・新規物件の稼働率向上策」や、トランクルームと配送サービスを組み合わせた「新規事業の拡大」にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


不動産に関する専門知識の習得だけでなく、全従業員が自己研鑽や自律的キャリアを形成することを推奨しています。OJTや定期面談、社外セミナー、資格取得支援などを通じて能力向上を図り、高い専門性を持つ人材の育成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 51.0歳 6.2年 4,707,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の女性労働者割合(48.0%)、生産性の一人当たり営業利益(765万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客ニーズや不動産市況等の経営環境リスク


景気動向や金利水準、地価などのマクロ経済要因の変動は、貸し出すトランクルームの賃料や稼働率、土地購入代金等に影響を与えます。同社は市況のモニタリングやエリア特性に応じた投資判断力の強化により、リスク低減を図っています。

(2) 開発用地の仕入れ価格変動と競合リスク


不動産市況による開発用地の価格変動や、他社との競合による仕入れ価格の上昇は、売却時の利益を減少させる可能性があります。事前調査を徹底し、マンション開発業者と競合が少ない物件を早期に取得するなどの工夫を行っています。

(3) 販売用不動産の売却遅延リスク


開発分譲事業において、想定した利用料や稼働率が確保できない場合や、周辺相場が変動した場合、物件が計画通りに売却できず経常赤字となる恐れがあります。物件完成前から販売活動を開始し、複数の買主候補と並行して商談を進めています。

(4) マスターリース契約に伴う稼働率リスク


開発したトランクルームを投資家へ売却後に同社がマスターリース契約を結ぶ場合、当初の計画より稼働率が低迷して投資回収が見込めないときは引当金を計上する可能性があり、経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。