三陽商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三陽商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。紳士服・婦人服等の製造販売を行うアパレル企業。「マッキントッシュ」「ポール・スチュアート」等のブランドを展開する。第82期は記録的な暖冬の影響等により減収、営業減益となったが、投資有価証券売却益の計上により親会社株主に帰属する当期純利益は増益となった。


※本記事は、株式会社三陽商会の有価証券報告書(第82期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三陽商会ってどんな会社?


ファッションを通じた生活文化の創造を掲げ、百貨店を主販路とするアパレル企業です。

(1) 会社概要


1943年に設立され、工作機械工具の修理加工からレインコート販売へ転換しました。1949年より百貨店販売を開始し、1971年に上場。長年「バーバリー」のライセンス事業を展開しましたが2015年に終了し、現在は「マッキントッシュ ロンドン」や「ポール・スチュアート」等を基幹ブランドとして事業を展開しています。

同グループの連結従業員数は1,149名、単体では1,142名です。筆頭株主はアパレル商社の八木通商で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
八木通商 15.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.06%
日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・三井物産退職給付信託口) 7.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は大江 伸治氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大江 伸治 代表取締役社長兼社長執行役員 三井物産を経て、ゴールドウイン取締役副社長執行役員等を歴任。2020年より現職。
加藤 郁郎 取締役兼副社長執行役員事業統轄本部長兼事業本部長 1985年同社入社。事業本部婦人服企画部長、第二事業本部長、常務執行役員、専務執行役員等を経て2024年より現職。


社外取締役は、二橋 千裕(元東急百貨店代表取締役社長)、安田 育生(ピナクル代表取締役会長兼社長兼CEO)、中本 修(元八木通商取締役)、村上 佳代(Kazu and Company代表社員兼CEO)、平林 義規(元三井物産専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「衣料品関連事業」および「その他」事業を展開しています。

衣料品関連事業


紳士服、婦人服および装飾品の製造・販売を行っています。「マッキントッシュ ロンドン」「ポール・スチュアート」「エポカ」など7つの基幹ブランドを中心に、全国の百貨店、直営店、アウトレット店舗およびECサイトを通じて商品を販売しています。また、子会社による縫製加工や海外生産支援も行っています。

主な収益源は、一般消費者への製品販売による売上代金です。主力販路である百貨店における売上が全体の約6割を占めています。運営は主に同社が行い、衣料品の縫製加工は子会社のサンヨーソーイング、海外生産支援業務は上海三陽時装商貿有限公司、ライセンス管理業務はエコアルフ・ジャパンが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第78期はコロナ禍の影響で赤字でしたが、第79期以降は構造改革の効果により黒字化しています。第80期から第81期にかけて売上・利益ともに回復基調にありましたが、直近の第82期は暖冬の影響等により減収減益(営業・経常)となりました。一方、純利益は投資有価証券の売却等により増加傾向にあります。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 379億円 386億円 583億円 614億円 605億円
経常利益 -90億円 -7億円 24億円 32億円 28億円
利益率(%) -23.8% -1.9% 4.2% 5.2% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -52億円 9億円 21億円 28億円 40億円

(2) 損益計算書


売上高は減少しましたが、在庫管理の徹底等により売上総利益率は改善傾向にあります。販売費及び一般管理費はほぼ横ばいで推移していますが、売上高の減少分をカバーしきれず営業利益は減少しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 614億円 605億円
売上総利益 382億円 378億円
売上総利益率(%) 62.2% 62.5%
営業利益 30億円 27億円
営業利益率(%) 5.0% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が141億円(構成比40%)、給料及び手当が100億円(同29%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「衣料品関連事業」の単一セグメントですが、百貨店販路が売上の約6割を占めています。直近では主力の百貨店およびアウトレット等が堅調に推移しましたが、記録的な高気温による秋冬物の初動遅れ等の影響を受け、全体として減収となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
衣料品関連事業 614億円 605億円
連結(合計) 614億円 605億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで資金を獲得しつつ、投資有価証券の売却等により投資CFもプラスとなっており、これらを原資に借入返済や株主還元(配当、自己株式取得)を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 44億円 27億円
投資CF -23億円 16億円
財務CF -14億円 -39億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業以来一貫して「ファッションを通じ、美しく豊かな生活文化を創造し、社会の発展に貢献する」ことを経営の基本方針(Mission)としています。高い価値創造力と強靭な収益力を併せ持ち、サステナブルな社会の実現に貢献できる「エクセレント・カンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


同社はValuesとして「高品質・高品位・高付加価値商品を生み出すスキル」「優良なブランドポートフォリオとブランドビジネス遂行能力」「クリエイティブで且つ高い倫理観を持った社員」「優れた統治能力を持った経営者及び経営体制」を掲げています。これらを基盤に、サステナブルな社会への貢献と企業価値向上を追求する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は長期目標として売上高1,000億円、営業利益率10%等の達成を目指しており、そこからバックキャストした3カ年の中期経営計画(2026年2月期〜2028年2月期)を策定しています。

* 売上高:700億円(2028年2月期)
* 営業利益率:7.1%(2028年2月期)
* ROE:10.7%(2028年2月期)

(4) 成長戦略と重点施策


「ブランド価値向上」をレバレッジとした事業領域の拡張や市場拡大を推進しています。具体的には、7つの基幹ブランドにおける売上高100億円体制の構築、EC専用ブランドの立ち上げ、雑貨や子供服等の新カテゴリーへの拡張、海外展開などを検討・実行します。また、資本効率の向上と株主還元の強化にも取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様性の尊重と働きがいのある職場づくり」を掲げ、プロフェッショナル人材の育成と適材適所の配置を推進しています。特に「ブランドビジネス」「バックオフィス」「IT/DX」の各領域で専門性を高める育成を行い、ジョブローテーションや学び直しの機会を提供することで、個の能力最大化と組織力強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 43.0歳 15.2年 5,514,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.9%
男女賃金差異(正規) 69.1%
男女賃金差異(非正規) 83.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断受診率(98.2%)、ストレスチェック受検率(98.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動リスク


世界的な経済情勢の変化や需給バランスの変動により、同社グループが使用する繊維原料や副資材の価格が大きく変動する可能性があります。価格転嫁や原価低減努力を行っていますが、急激な価格上昇や高止まりが生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) グローバルサプライチェーンリスク


生産拠点の多くを中国やアジア諸国に置いており、現地の政治的・経済的不安定性、労働環境の変化、法規制の強化、自然災害等により製造や物流に支障が生じる可能性があります。これにより商品の供給が滞った場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 気候変動及び異常気象のリスク


ファッション衣料の需要は季節や天候の影響を受けやすく、冷夏や暖冬などの異常気象が発生した場合、季節商品の需要減少や在庫増加につながる可能性があります。特に秋冬商戦における記録的な高気温などは、販売機会の損失や在庫リスクの増大を招き、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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