※本記事は、株式会社三陽商会 の有価証券報告書(2026年2月期、2025年3月1日 ~ 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
同社グループは、衣料品等繊維製品の製造・販売を主な事業内容とするアパレル企業です。アパレルを核としたファッション関連事業の単一セグメントで事業を展開しています。
単体従業員数は1,118名、連結従業員数は1,125名です。
主な国内グループ会社は、エコアルフ・ジャパンなどです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
三陽商会はアパレルを核とするファッション関連事業を展開しており、同社グループの給与水準や働き方は、この業界の特性を反映しています。人材育成や多様な働き方を推進する方針が示されており、従業員が長期的に活躍できる環境づくりに注力していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
三陽商会では、平均勤続年数が比較的長く、従業員が安定してキャリアを築いている傾向が見られます。平均年齢も40代前半であり、経験豊富な人材が多数在籍していることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,481,000円 |
| 平均勤続年数 | 15.6年 |
| 平均年齢 | 43.4歳 |
| 単体従業員数 | 1,118人 |
| 連結従業員数 | 1,125人 |
| 単体のグループ内比率 | 99.4% |
同社は確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両退職給付制度を採用しています。適用範囲は国内グループ会社です。
退職一時金制度があります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
退職給付債務は3.9億円、年金資産は89百万円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
三陽商会は、人的資本の強化を企業価値向上の重要な課題と位置づけ、「人的資本経営の推進」をマテリアリティの一つとして掲げています。プロフェッショナル人材の育成を通じて個々の能力を最大限に引き出し、人事インフラの整備により多様な知識や経験を融合させることで、総合力の向上を目指しています。
同社グループでは、持続的成長に必要な人材として「ブランドビジネスのプロフェッショナル」「バックオフィスのプロフェッショナル」「IT/DX人材」を定義し、それぞれの専門性を高める育成に取り組んでいます。具体的には、若手人材向けの「自律型人材」育成の基礎教育や、階層別研修、資格取得支援制度などを通じて、従業員の能力開発を支援しています。
また、働きがいのある職場環境を整備するため、女性活躍推進、育児休業取得の促進、ワーク・ライフ・バランスの推進、障がい者雇用、外国人雇用にも積極的に取り組んでいます。従業員エンゲージメントの向上にも注力し、定期的なサーベイ実施と課題に応じた改善活動を通じて、従業員一人ひとりが意欲的に成長し貢献できる組織づくりを進めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 14.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 72.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 71.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うちパート・有期労働者) | 82.9% |
人材育成に関する指標と目標
人的資本の人材育成及び社内環境整備に関する非財務指標・目標・実績は、同社単体の係数です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 30歳を迎える新卒総合職社員が2職種、2ブランド以上に従事している比率 | 75.0% |
| 40歳を迎える新卒総合職社員が3職種、2ブランド以上に従事している比率 | 100.0% |
| 35歳以下の新卒総合職社員のバックオフィス部門配置者数 | 2名 |
| IT研修の受講率 | 100.0% |
社内環境整備に関する指標と目標
人的資本の人材育成及び社内環境整備に関する非財務指標・目標・実績は、同社単体の係数です。
男女間賃金格差は、総合職、専門職、一般職、正社員販売職の合計です。
従業員エンゲージメントスコアは、「企業と従業員の結びつき、信頼関係」の強さを数値化したもので、2025年度実績48.1は組織の信頼関係が健全な状態を示すB評価にあたります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.9% |
| 男女間賃金格差(男性を1とした場合の女性の割合/全職種) | 72.2% |
| 男性の育児休業取得率 | 100.0% |
| 外国人雇用率 | 0.97% |
| 従業員エンゲージメントスコア | 48.1 |
| 20-30代の採用者数(新卒採用/中途採用の合計) | 38名 |
従業員の健康管理に関する指標と目標
人的資本の人材育成及び社内環境整備に関する非財務指標・目標・実績は、同社単体の係数です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 定期健康診断受診率 | 99.6% |
| ストレスチェック受検率 | 99.1% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
三陽商会グループは、衣料品等繊維製品の製造・販売を主な事業内容としています。同社グループは、アパレルを核とするファッション関連事業の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
三陽商会グループは、衣料品等の製造・販売を主力としています。子会社であるサンヨーソーイングは衣料品の縫製加工を担い、上海三陽時装商貿有限公司は海外生産支援業務を行っています。また、エコアルフ・ジャパンは日本国内における商標権の独占使用権を同社に許諾しています。
同社グループの収益は、ファッション関連事業における販売チャネルから得られています。特に百貨店での販売が大きな割合を占めていますが、EC・通販やアウトレットを通じた販売も一定の比率を占めています。同社グループの売上高は、そのほとんどが日本国内の外部顧客によるものであり、国内市場に強く根ざした事業構造となっています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
三陽商会グループの直近5期間の業績を見ると、売上高は前期から減少傾向にあります。経常利益も同様に前期から減少しています。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は前期から増加傾向を示しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 386億円 | 583億円 | 614億円 | 605億円 | 584億円 |
| 経常利益 | △7.3億円 | 24.4億円 | 31.8億円 | 28.2億円 | 14.4億円 |
| 経常利益率 | △1.9% | 4.2% | 5.2% | 4.7% | 2.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 6.6億円 | 21.6億円 | 27.9億円 | 40.1億円 | 41.1億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 54.59 | 178.68 | 238.96 | 351.48 | 392.17 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
三陽商会グループの従業員1人あたり売上高は、前期と比較して減少しています。また、従業員1人あたり営業利益も前期から減少する傾向が見られます。これらの指標は、同社グループの生産性が前期に比べて変化していることを示しています。
| 指標 | 2025年2月期(前期) | 2026年2月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 52.7百万円 | 52.0百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 2.4百万円 | 1.2百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの経営の安定性は、自己資本の厚みや手元資金の状況、そして事業活動によるキャッシュフローの創出能力から判断できます。これらの財務状況は、入社後の雇用や給与の安定性にも関わる重要な要素です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率とROEからその健全性を確認できます。自己資本比率は68.3%と、プライム市場の平均(製造業46.8%、非製造業24.2%)と比較して高い水準にあり、財務の安定性を示しています。ROEも10.3%とプライム市場の平均(9.4%)を上回っており、効率的な資本活用ができている状況です。手元資金である現金及び預金も潤沢に確保されており、不測の事態への耐性があると言えます。
| 指標 | 2025年2月期(前期) | 2026年2月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 393億円 | 409億円 |
| 自己資本比率 | 68.9% | 68.3% |
| ROE(自己資本利益率) | 10.0% | 10.3% |
| 現金及び預金 | 237億円 | 240億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは当期もプラスを維持していますが、前期と比較すると減少しています。これは事業活動を通じて資金を創出できていることを示しています。投資活動によるキャッシュフローは前期に引き続きプラスを維持しており、当期は増加しています。これは主に投資有価証券の売却収入によるものです。
その結果、営業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュフローはプラスであり、事業の成長や株主還元に充てる資金を確保できている状況です。財務活動によるキャッシュフローは配当金の支払いと自己株式の取得によりマイナスとなっていますが、前期と比較すると支出額は減少しています。これは積極的な株主還元策の一環です。これらの資金の流れから、同社グループは安定した財務運営を行っており、雇用や給与の安定性にもつながる基盤があると言えます。
| 項目 | 2025年2月期(前期) | 2026年2月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 26.8億円 | 10.0億円 |
| 投資CF | 16.3億円 | 16.4億円 |
| 財務CF | △38.7億円 | △36.8億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 43.1億円 | 26.3億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、ファッショントレンドの変化に伴うリスクを認識しています。消費者の嗜好や流行の急激な変化は、在庫リスクの増大や販売機会の損失につながる可能性があります。また、複数の海外ブランドとのライセンス契約に依存している点もリスクとして挙げられています。これらのライセンスブランドは売上高の相当部分を占めており、契約条件の変更や解除、ブランド競争力の低下が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、国内外で事業を展開する上で、各国の法令や規制を遵守する必要があるとしています。不適切な行為や法令違反が発生した場合、行政処分や社会的信用の低下、事業活動の制限等につながるリスクがあります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
三陽商会は、ファッションを通じて美しく豊かな生活文化を創造し、社会の発展に貢献することを経営の基本方針としています。同社グループは、高い価値創造力と強靭な収益力を持ち、サステナブルな社会の実現に貢献するエクセレント・カンパニーを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、創業以来一貫して「ファッションを通じ、美しく豊かな生活文化を創造し、社会の発展に貢献する」ことを経営の基本方針としています。この方針は、同社グループのMission(経営理念)でもあります。
Visionとしては、「高い価値創造力と強靭な収益力を併せ持った、またサステナブルな社会の実現に貢献することができる、エクセレント・カンパニー」を目指しています。長期目標として「アッパーミドル市場で圧倒的な存在感と競争優位性を持ったトップランナー」となることを掲げています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、中期経営計画において「Values」として、高品質・高品位・高付加価値商品を生み出すスキルを重視しています。また、クリエイティブで高い倫理観を持った社員、優れた統治能力を持った経営者及び経営体制を大切にしています。
サステナビリティの取り組みでは、サプライチェーン全体における人権への配慮、格差・差別の解消に取り組んでいます。その一環として「三陽商会取引行動規範(SANYO Code of Conduct)基本ガイドライン」を定め、取引工場を対象に第三者機関による工場監査を実施しています。
人的資本方針では、プロフェッショナル人材の育成を通じた個の能力の最大化と、人事インフラ整備を通じた個の能力の最大発揮、そして多彩な知識・経験の糾合によるシナジー創出による総合力向上を目指しています。多様な経験と価値観を持つ従業員が互いを尊重し、時間や場所にとらわれずに働ける職場環境の整備と企業風土の醸成を推進しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、気候変動、資源循環、人権、人的資本の4つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、その達成に向けた個別アクションプランを推進しています。従業員一人ひとりが自らの課題として取り組むとともに、サプライチェーン全体に渡る大きな課題については、パートナー企業との協働を推進しています。
気候変動課題では、温室効果ガス排出量の削減を通して気候変動対策に取り組み、SBT(Science Based Targets)認定を取得しています。資源循環課題では、長く愛用できる良質な製品づくりを基盤に、循環型社会の実現を目指し「SANYO RE: PROJECT」を
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
三陽商会は監査役会設置会社であり、取締役会は社外取締役を複数選任することで監督機能の強化を図っています。また、執行役員制度を導入し、経営の意思決定と業務執行の迅速化・効率化を進めています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
三陽商会の株主構成を見ると、筆頭株主は事業会社である八木通商です。その他、複数の信託銀行や海外の機関投資家が上位株主として名を連ねています。特定の事業会社が筆頭株主である点が資本構成の特徴の一つです。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 八木通商 | 11.10% |
| AVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLC | 9.97% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.57% |
なお、前事業年度末において主要株主でなかったAVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLCは、当事業年度末現在では主要株主となっています。また、2025年12月10日現在でSapphireterra Capital,LLCが728千株(7.08%)を、2026年2月27日現在で野村證券及びその共同保有者1社が合計556千株(5.46%)を保有している旨が大量保有報告書に記載されていますが、これらは大株主の状況には反映されていません。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は10名(男性9名・女性1名)で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は平林義規氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大江 伸治 | 代表取締役会長 | 三井物産株式会社入社後、同社繊維本部繊維第三部長、理事コンシューマーサービス事業副本部長などを歴任。株式会社ゴールドウイン取締役専務執行役員、副社長執行役員を経て、2020年3月同社入社。副社長執行役員、代表取締役社長兼社長執行役員を経て、2026年5月より現職。 |
| 平林 義規 | 代表取締役社長 兼社長執行役員 | 三井物産株式会社入社後、三井物産モスクワ有限会社副社長、同社コンシューマーサービス事業本部サービス事業部長、執行役員流通事業本部長、常務執行役員人事総務部長などを歴任。2025年5月同社社外取締役、2026年5月より現職。 |
| 加藤 郁郎 | 取締役 兼副社長執行役員 事業統轄本部長兼 事業本部長 | 同社入社後、事業本部婦人服第二事業部エヴェックスDIV長、執行役員事業本部ビジネス開発事業部長などを歴任。常務執行役員事業本部長、取締役兼常務執行役員、取締役兼専務執行役員を経て、2024年3月より現職。 |
社外取締役は、二橋千裕氏(元東急百貨店取締役会長)、安田育生氏(ピナクル代表取締役会長兼社長兼CEO)、村上佳代氏(Kazu and Company代表社員兼CEO)、濱田吉朗氏(元八木通商執行役員)です。
同社は監査役会設置会社であり、独立社外取締役を4名、社外監査役を2名選任することで経営監督機能を強化しています。執行役員制度の導入により、意思決定と業務執行の迅速化・効率化を図る体制です。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
三陽商会の役員報酬は、取締役(社外取締役を除く)の場合、固定の月額報酬、業績連動報酬としての賞与、そして譲渡制限付株式報酬で構成されています。固定報酬が70%を占め、業績連動報酬と株式報酬がインセンティブとして機能する設計です。社外取締役と監査役の報酬は、独立性を重視し固定の月額報酬のみとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 2名 | 99百万円 | 49.5百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 18百万円 | 18.0百万円 |
| 社外役員 | 8名 | 51百万円 | 6.4百万円 |
役員報酬の総額は1億68百万円であり、報酬の支給対象となった役員の総数は11名です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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