三陽商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三陽商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三陽商会は東京証券取引所プライム市場に上場し、アパレルを核とするファッション関連事業を展開しています。紳士服や婦人服の製造・販売を主力としています。直近の業績は、市況悪化や気象条件の影響を受け前年を下回る減収減益となりましたが、費用削減等の努力により黒字を確保し、純利益は前期比で微増となりました。


※本記事は、株式会社三陽商会の有価証券報告書(第83期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三陽商会ってどんな会社?

同社はアパレルを核とするファッション関連事業を展開し、衣料品の製造から販売までを手掛けています。

(1) 会社概要

同社は1943年に設立され、工作機械工具の修理加工からレインコートの販売へと事業を転換しました。1969年頃から総合アパレルメーカーへ進出し、1971年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1977年に同市場第一部へ指定替えされました。その後も国内外への展開や商標権の取得を進めています。

同社グループの従業員数は連結で1,125名、単体で1,118名です。筆頭株主は事業会社の八木通商で、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行です。

氏名 持株比率
八木通商 11.10%
AVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLC 9.97%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.57%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は大江伸治氏、代表取締役社長は平林義規氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
大江伸治 代表取締役会長 1971年三井物産入社。ゴールドウイン取締役副社長執行役員などを経て2020年同社入社、同年5月代表取締役社長に就任。2026年5月より現職。
平林義規 代表取締役社長兼社長執行役員 1986年三井物産入社。同社常務執行役員人事総務部長などを歴任。2025年5月同社社外取締役に就任し、2026年5月より現職。
加藤郁郎 取締役兼副社長執行役員事業統轄本部長兼事業本部長 1985年同社入社。事業本部婦人服企画部長、執行役員第二事業本部長等を経て、2020年常務執行役員事業本部長に就任。2024年3月より現職。


社外取締役は、二橋千裕(元東急百貨店名誉顧問)、安田育生(現ピナクル代表取締役会長兼社長兼CEO)、村上佳代(現Kazu and Company代表社員兼CEO)、濱田吉朗(元八木通商執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ファッション関連事業」の単一セグメントを展開しています。

(1) ファッション関連事業

同社グループはアパレルを核とするファッション関連事業を展開しており、紳士服、婦人服および装飾品の企画・製造・販売を主力としています。百貨店をはじめ、直営店、ECサイト、アウトレットなど多様な販売チャネルを通じて消費者に自社ブランドやライセンスブランドの商品を提供しています。

衣料品等の製造および販売は同社が中心となって担っており、子会社のサンヨーソーイングが衣料品の縫製加工を行い同社に納入しています。また、子会社の上海三陽時装商貿有限公司が海外生産支援業務を担い、エコアルフ・ジャパンが日本国内における商標権の独占使用権を同社に許諾する形で事業を支えています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5年間の売上高は、一時600億円台まで成長したのち、足元では584億円に落ち着いています。経常利益は黒字転換以降安定して推移していましたが、当期は減益となりました。一方、当期利益は投資有価証券売却益などの特別利益の計上により、過去最高水準を確保しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 386億円 583億円 614億円 605億円 584億円
経常利益 -7億円 24億円 32億円 28億円 14億円
利益率(%) -1.9% 4.2% 5.2% 4.7% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 21億円 28億円 40億円 41億円

(2) 損益計算書

直近2期の損益を比較すると、市況悪化や気象条件の影響で売上高が減少したことに加え、在庫超過を抑止するためのセール販売強化によりプロパー販売比率が低下し、売上総利益率が下落しました。これに伴い、営業利益も減益となっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 605億円 584億円
売上総利益 378億円 356億円
売上総利益率(%) 62.5% 60.9%
営業利益 27億円 13億円
営業利益率(%) 4.5% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が132億円(構成比39%)、給料及び手当が99億円(同29%)を占めています。

(3) セグメント収益

同社はファッション関連事業の単一セグメントですが、販売チャネル別に見ると、主力である百貨店向けの売上が減少しています。一方で、EC・通販およびアウトレット向けの売上は前期と比較して堅調に推移しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
百貨店 391億円 361億円
直営店 36億円 35億円
EC・通販 82億円 89億円
アウトレット 73億円 78億円
その他 24億円 21億円
連結(合計) 605億円 584億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

改善型:営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 27億円 10億円
投資CF 16億円 16億円
財務CF -39億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、「ファッションを通じ、美しく豊かな生活文化を創造し、社会の発展に貢献する」ことを経営理念(Mission)として掲げています。また、高い価値創造力と強靭な収益力を併せ持ち、サステナブルな社会の実現に貢献できる「エクセレント・カンパニー」を目指すことをVisionとして定めています。

(2) 企業文化

同社は、経営戦略を実現するための行動指針(Values)として、「高品質・高品位・高付加価値商品を生み出すスキル」「優良なブランドポートフォリオとブランドビジネス遂行能力」「クリエイティブで且つ高い倫理観を持った社員」「優れた統治能力を持った経営者及び経営体制」の4つを重視して事業を運営しています。

(3) 経営計画・目標

同社は「アッパーミドル市場で圧倒的な存在感と競争優位性を持ったトップランナーを目指す」ことを長期目標に掲げています。修正後の中期経営計画の最終年度となる2028年2月期に向けて、以下の数値目標を設定しています。

* 売上高:620億円
* 営業利益:13億円
* 長期目標:売上高1000億円、営業利益率10%、ROE10%

(4) 成長戦略と重点施策

既存事業の建て直しによるオーガニックグロースを推進し、基幹商品の開発やフリー客向けのプライス商品拡充に取り組みます。また、新たな成長戦略として、既存ブランドの領域拡張や新規自社ブランドの開発、M&Aなどを実行します。チャネル面では百貨店での出店強化に加え、ECのプロパーサイト化や直営店・アウトレットの役割明確化を進めます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は人的資本の強化を企業価値向上の重要課題と位置づけ、「プロフェッショナル人材の育成を通じた個の能力の最大化」および「多彩な知識・経験の糾合によるシナジー創出」を基本方針としています。ブランドビジネス、バックオフィス、IT・DXの各領域で専門人材を育成するとともに、多様な背景を持つ人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 43.4歳 15.6年 5,481,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.9%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 72.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 71.8%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 82.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人雇用率(1.0%)、従業員エンゲージメントスコア(48.1)、定期健康診断受診率(99.6%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動リスク

同社グループが使用する繊維原料や副資材の価格は、国際市況や為替動向などの影響を受けます。価格変動が急激かつ大幅に発生した場合、製品原価の上昇を招き、利益率の低下や販売計画への影響が生じる可能性があります。同社は複数調達先の確保や適切な価格反映等の施策を進めています。

(2) サプライチェーンの不確実性

同社グループは主に中国やアジア諸国に生産拠点を有しています。これら地域での政治的・経済的混乱、労働環境の変化、法規制強化や自然災害などにより製品供給に影響が出る可能性があります。サプライチェーンに支障が生じた場合、商品の供給遅延や調達コストの増加に繋がるおそれがあります。

(3) ファッショントレンドの変化

主力商品であるファッション衣料は、消費者の嗜好や流行の変化に大きく影響されます。同社では市場動向の分析やニーズ把握に努め商品開発を行っていますが、予測を超える急激なトレンドや消費者嗜好の変化が生じた場合、在庫リスクの増大や販売機会の損失につながる可能性があります。

(4) ブランドライセンス契約の変更・解除

同社グループは複数の海外ブランドとライセンス契約を締結し、製品の製造・販売を行っており、これらは売上高の相当部分を占めています。ライセンサーとの良好な関係維持に努めていますが、契約条件の変更や解除、ブランドの市場競争力低下等が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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