日本色材工業研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本色材工業研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本色材工業研究所は、東証スタンダード市場に上場する化粧品および医薬品の受託製造(OEM/ODM)メーカーです。日本とフランスに拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。2025年2月期の連結業績は、売上高176億円で前期比増収、営業利益も増益となりましたが、経常利益および当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社日本色材工業研究所 の有価証券報告書(第68期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本色材工業研究所ってどんな会社?


日本とフランスに製造・研究拠点を持ち、化粧品や医薬品のOEM/ODM事業をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1930年に創業し、1957年に設立されました。1996年に株式を店頭登録し、2000年にはフランスのTHEPENIER社を買収して海外進出を本格化させました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2017年にはフランスのOrleans Cosmetics(現・日本色材フランス社)を買収して生産能力を増強しました。

2025年2月28日現在、連結従業員数は486名、単体では322名です。筆頭株主は株式会社トワ・スールで、第2位は同社会長の奥村浩士氏、第3位は化粧品メーカーのちふれホールディングスとなっています。

氏名 持株比率
トワ・スール 23.80%
奥村 浩士 12.10%
ちふれホールディングス 7.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は奥村浩士氏、代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)は奥村華代氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
奥村 浩士 代表取締役会長 兼最高経営責任者(CEO) 1967年入社。社長、生産統括本部長等を経て2016年より現職。
奥村 華代 代表取締役社長 兼最高執行責任者(COO) 1999年入社。経営企画室長、人事部長、専務等を経て2023年より現職。
南 孝司 常務取締役研究開発本部長 兼研究開発部長 2019年入社。執行役員研究開発部長等を経て2022年より現職。
霜田 正樹 常務取締役企画・経理部長 2019年入社。経理・財務部長等を経て2024年より現職。
鈴木 史彦 取締役品質保証本部長 兼品質保証部長 1995年入社。生産統括本部長、生産本部長等を経て2018年より取締役。
中嶋 伸之 取締役営業本部長 兼営業部長 1984年入社。営業部長、執行役員等を経て2022年より取締役。
内田 実 取締役管理部長 2023年入社。執行役員管理部長を経て2024年より取締役。
橋場 正樹 監査等委員である取締役(常勤) 1983年入社。品質保証部長、執行役員等を経て2023年より現職。


社外取締役は、遠山友寛(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)、小畑孝雄(小畑税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「仏国」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


主に化粧品(医薬部外品を含む)の製造受託および研究開発受託(OEM/ODM)を行っています。主要製品はファンデーション、口紅、マスカラ、アイライナー、UV製品、スキンケア製品など多岐にわたり、国内外の化粧品メーカーに提供しています。

収益は、顧客である化粧品メーカー等からの製品製造受託や研究開発受託による売上が主な源泉です。運営は主に日本色材工業研究所が行っており、国内工場(座間、つくば)および研究センターを拠点に活動しています。

(2) 仏国


フランスにおいて、医薬品および化粧品の製造受託を行っています。医薬品分野では薬用歯磨きや水虫治療薬などを、化粧品分野ではメイクアップ製品やスキンケア製品などを製造しています。

収益は、現地の医薬品・化粧品メーカー等からの製造受託による売上が中心です。運営は、連結子会社であるテプニエ社(THEPENIER PHARMA & COSMETICS S.A.S.)および日本色材フランス社(Nippon Shikizai France S.A.S.)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年2月期から2022年2月期にかけては売上高が減少し損失を計上していましたが、2023年2月期以降は売上高が増加傾向に転じ、黒字化を達成しました。直近の2025年2月期では売上高が176億円まで拡大し、経常利益も確保していますが、当期純利益は前期に比べ減少しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 91.4億円 87.0億円 117.6億円 150.5億円 176.3億円
経常利益 -5.9億円 -1.7億円 1.5億円 4.1億円 3.7億円
利益率(%) -6.4% -2.0% 1.3% 2.7% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -9.4億円 -1.0億円 2.7億円 -0.9億円 1.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の151億円から当期の176億円へと増加し、売上総利益も20億円から22億円へ伸長しました。一方で、売上原価率の上昇に伴い売上総利益率は低下しています。営業利益は増益となりましたが、営業利益率はやや低下しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 151億円 176億円
売上総利益 20億円 22億円
売上総利益率(%) 13.4% 12.4%
営業利益 4.4億円 4.9億円
営業利益率(%) 2.9% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.5億円(構成比20%)、役員報酬が2.2億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは、国内需要の回復や海外からの大口受注により大幅な増収増益となりました。一方、仏国セグメントは円安の影響で円建て売上高は増加したものの、現地通貨ベースでの減収やコスト高騰により営業損失となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
日本 101億円 124億円 2.2億円 5.5億円 4.5%
仏国 50億円 53億円 2.2億円 -0.7億円 -1.4%
連結(合計) 151億円 176億円 4.4億円 4.9億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本色材工業研究所のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動を通じて資金が増加したことを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資などにより資金が減少したことを示しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済などの資金調達・返済活動により資金が増加したことを示しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 13億円 6億円
投資CF -4億円 -11億円
財務CF -7億円 1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「美しさと健康とを創りだすことで生活・文化の向上に貢献」することを企業理念としています。化粧品・医薬品等の開発・製造を通じて社会の信頼に応えるとともに、収益力の向上と企業価値の増大、持続的な成長の実現に努めています。

(2) 企業文化


企業活動を通じて「豊かな心、知識、生活」を社会に生み出し、その結果として「生活・文化の向上=ここちよい、快適な社会づくり」に貢献することを使命としています。顧客の良きパートナーとして、企画提案から研究開発、完成品製造まで一貫して受託できる体制を構築し、高品質で信頼性の高い製品供給を目指しています。

(3) 経営計画・目標


資本政策として、資本効率(ROE)の維持・改善と資本コストの抑制を通じて、持続的成長と企業価値向上を目指しています。また、コロナ禍からの回復を目指し、収益性の高い効率経営を推進し、売上高営業利益率および自己資本比率を重点指標としています。

* ROE:8%以上を維持、10%以上を目指す
* 連結売上高(2026年度目標):200億円レベル

(4) 成長戦略と重点施策


「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の後半ステージとして、「競争優位にある「強み」製品の強化と拡大」、「クリーン・ビューティーへの積極取組」、「高収益体質への転換」を重点戦略としています。具体的には、得意分野への経営資源集中、海外大手メーカーとの取引拡大、サステナビリティ対応処方の提案、工場の稼働向上と適正な価格転嫁の推進などに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりが能力を発揮できるよう、階層別研修の再構築や専門人財の確保に注力しています。また、女性活躍推進を重要課題と位置づけ、管理職候補者向け研修や女性リーダーミーティングの開催などを通じて、女性のキャリア形成支援と働きがいのある職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 40.1歳 10.3年 5,095,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 52.8%
男女賃金差異(正規雇用) 77.8%
男女賃金差異(非正規) 51.9%


※男性育児休業取得率は対象社員がいないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職・主任以上に占める女性労働者の割合(正社員)(39.5%)、従業員の幸せ指数(52.9)、3年後の従業員定着率(正社員)(81.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 化粧品市場環境の競争激化


国内化粧品市場は成熟期にあり、M&Aによる再編や異業種からの参入等で競争が厳しさを増しています。同社グループが属する受託製造市場においても、同業者間の合従連衡や海外事業者の参入が進んでおり、予期せぬ競争環境の変化に対処できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) OEM/ODM企業としての依存リスク


同社グループの事業は顧客ブランドでの製造販売(OEM/ODM)であるため、顧客メーカーの営業施策や販売戦略の影響を強く受けます。特定の顧客メーカーへの依存度が高まった場合、その顧客の販売動向により同社グループの業績が著しく変動する可能性があります。

(3) 海外での事業活動リスク


欧州や北米、アジア等での事業展開を強化していますが、海外事業には予期せぬ政策変更、政情不安、労働問題、テロ・戦争、感染症の流行といったリスクが伴います。これらの事象が発生した場合、同社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。