日本色材工業研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本色材工業研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本色材工業研究所は、東証スタンダードおよび名証メイン市場に上場する、化粧品や医薬部外品の製造受託および研究開発受託を行う企業です。直近の業績は、国内の受注沈静化やフランスでの業績低迷により減収、各種コストの増加で営業減益となりましたが、固定資産売却益の計上等で最終的な当期純利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社日本色材工業研究所の有価証券報告書(第69期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日本色材工業研究所ってどんな会社?


国内外のメーカーに向けて、化粧品や医薬部外品の企画・研究開発・製造を受託するOEM/ODM企業です。

(1) 会社概要


日本色材工業研究所は、1930年に白粉用顔料の製造を目的として創業し、1957年に化粧品の製造受託(OEM)を行う企業として設立されました。その後、2000年と2017年にフランスの医薬品・化粧品製造受託会社を買収し、海外展開を拡大しました。2026年には長野県に新たな生産拠点となる小諸工場を取得しています。

同社グループは連結で505名、単体で343名の従業員を擁しています。筆頭株主はトワ・スールで、第2位は現代表取締役会長の奥村浩士氏、第3位には事業会社のちふれホールディングスが名を連ねています。

氏名 持株比率
トワ・スール 23.80%
奥村浩士 11.10%
ちふれホールディングス 7.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長 兼最高経営責任者(CEO)は奥村浩士氏が務めています。社外取締役の比率は20.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
奥村浩士 代表取締役会長 兼最高経営責任者(CEO) 1967年同社入社。専務、社長を経て、2016年6月より代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)に就任し現職。
奥村華代 代表取締役社長 兼最高執行責任者(COO) 1999年同社入社。国際営業部長、経営企画部長、人事部長等を歴任し、2023年5月より代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任し現職。
南孝司 常務取締役開発本部長 兼研究開発部長 2019年同社入社。研究開発部長等を経て、2022年6月より常務取締役に就任し現職。
霜田正樹 常務取締役企画・経理部長 2019年同社入社。経理・財務部長等を経て、2024年5月より常務取締役に就任し現職。
鈴木史彦 取締役品質保証本部長 兼品質保証部長 1995年同社入社。座間工場長、生産本部長等を経て、2023年5月より品質保証本部長兼品質保証部長に就任し現職。
中嶋伸之 取締役営業本部長 兼営業部長 1984年同社入社。営業グループマネジャー等を経て、2022年6月より取締役に就任し現職。
内田実 取締役管理部長 2023年同社入社。管理部長を経て、2024年5月より取締役に就任し現職。
橋場正樹 監査等委員である取締役(常勤) 1983年同社入社。品質保証部長等を経て、2023年5月より監査等委員である取締役に就任し現職。


社外取締役は、遠山友寛(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)、小畑孝雄(小畑税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「仏国」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


ファンデーション、口紅、マスカラ、アイライナー、スキンケア用品など、幅広い化粧品および医薬部外品の研究開発から製造までを受託するOEM/ODM事業を展開しています。化粧品メーカーなどが主な顧客となります。

顧客である国内外の化粧品メーカーから新製品の企画提案や処方開発、完成品の製造までを一貫して受託し、その対価として製造販売の収益を得ています。日本国内における運営は日本色材工業研究所が行っています。

(2) 仏国


フランス国内を拠点として、欧州市場向けの化粧品および医薬品の製造受託事業を展開しています。化粧品のほかに、薬用歯磨きや口腔洗浄剤、水虫治療薬などの医薬品や衛生用品なども取り扱っています。

現地のメーカー等から製品の製造を受託し、製品を供給することで収益を得ています。運営は、医薬品や化粧品の受託製造を行うテプニエ社と、化粧品の受託製造を行う日本色材フランス社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年2月期から2025年2月期にかけて増加傾向にありましたが、直近の2026年2月期ではやや減少に転じています。経常利益は2023年2月期以降黒字を維持しているものの、直近ではコスト上昇などの影響で利益率が低下しました。一方で当期利益は、固定資産売却益の計上などもあり、直近で大幅な増益を達成しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 87億円 118億円 151億円 176億円 166億円
経常利益 -2億円 1億円 4億円 4億円 2億円
利益率(%) -2.0% 1.3% 2.7% 2.1% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -1億円 3億円 -1億円 2億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益は横ばいを保ち、売上総利益率は改善しました。しかし、インフレによる原材料費や人件費などの各種経費の上昇が響き、販売費および一般管理費が増加した結果、営業利益および営業利益率は前年度を下回る結果となりました。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 176億円 166億円
売上総利益 22億円 22億円
売上総利益率(%) 12.4% 13.2%
営業利益 5億円 2億円
営業利益率(%) 2.8% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比22%)、役員報酬が2億円(同12%)、荷造運送費が1億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上推移を見ると、日本セグメントでは新型コロナウイルス禍明けの新製品受注の波や大口受注が沈静化したことで、前期と比較して減収となりました。また、仏国セグメントにおいても、現地の医薬品および化粧品の受注が低迷した影響などを受け、同じく減収となっています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
日本 124億円 116億円
仏国 53億円 50億円
連結(合計) 176億円 166億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益や資産の売却等で得た資金を活用して借入金の返済を進める「改善型」の傾向を示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 6億円 1億円
投資CF -11億円 1億円
財務CF 1億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「美しさと健康とを創りだすことで生活・文化の向上に貢献」することを企業理念として掲げています。企業活動を通して社会に「豊かな心、知識、生活」を生み出し、ここちよい快適な社会づくりに貢献することを使命としています。高品質で信頼性の高い製品を供給し、企画から製造まで一貫して受託できる体制を構築しています。

(2) 企業文化


同社はサステナビリティを経営課題と捉え、事業活動を通じて深化させていくことをステークホルダーの期待に応える道と考えています。SDGsへの対応や環境、人権、倫理への配慮など、「クリーン・ビューティー」への取り組みを積極的に推進し、社会価値と経済価値を長期的な視点で持続的に創出していく文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」において、最終年度の目標連結売上高として200億円レベルを掲げています。また、資本政策として以下の指標を重点指標として設定し、持続的成長と企業価値の向上を目指しています。

* 自己資本利益率(ROE):8%以上を維持し、10%以上を目指す

(4) 成長戦略と重点施策


競争力のある研究開発力と技術力をベースとし、収益性の高い効率経営の実現を目指しています。「中期事業戦略ビジョン」の最終年度として、強みを持つ分野への経営資源の重点投下や、フランス子会社との連携を活かした海外での営業力強化を進めます。また、クリーン・ビューティーへの対応強化や工場の稼働率向上により高収益体質への転換を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長を実現するため、従業員一人ひとりが働きがいを得られるような人材育成と環境整備を推進しています。階層別やテーマ別の研修を実施し、キャリア自律や専門性の向上を促しています。また、従業員幸福度調査を通じてウェルビーイングの向上を図り、経営陣との対話や多様な働き方の充実を通じてエンゲージメントの高い組織を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 39.9歳 9.9年 5,400,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.5%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.8%
男女賃金差異(正規雇用) 76.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.7%


また、同社は「人的資本に関する事項」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の幸せ指数(53.1)、3年後の従業員定着率(83.3%)、従業員の年次有給休暇取得率(50.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客メーカーへの依存リスク


OEM/ODM事業の性質上、顧客である化粧品メーカーの営業施策や販売戦略、外注方針の変更によって業績が大きな影響を受けるリスクがあります。特定顧客からの受注依存度が高まった場合、その顧客の販売施策の影響をより強く受ける可能性があります。

(2) 製造物責任および品質に関するリスク


提供する製品に予期せぬ欠陥が生じた場合や、リコールが発生するリスクがあります。大規模な製造物責任賠償やリコールにつながり、そのコストが保険でカバーできない場合には、多額の支払いが生じるとともに、同社グループの製品に対する信頼性や評判が低下する恐れがあります。

(3) 海外事業におけるカントリーリスク


欧州や北米、アジア市場での事業展開を強化していますが、海外での事業活動には予期し得ない経済的・政治的な政策変更、政情不安、労働問題などのリスクが潜在しています。これらが顕在化し社会的混乱等が生じた場合、現地での事業活動や同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 原材料やエネルギー価格の高騰リスク


世界的な物価上昇や円安、地政学的問題などに起因するサプライチェーンの混乱により、原材料や光熱費、各種経費が高騰するリスクがあります。これらコスト上昇分を適正に価格転嫁できない場合、同社グループの収益性が低下する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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