※本記事は、株式会社放電精密加工研究所の有価証券報告書(第65期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 放電精密加工研究所ってどんな会社?
同社は、放電加工などの高度な技術を用いた金属加工や金型製造、機械設備の販売などを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1961年に放電加工の受託業務を目的として設立されました。1963年にアルミ押出用金型の製造を開始し、1999年に株式の店頭登録(現東証スタンダード市場)を果たしました。2020年にはタイの関連会社を連結子会社化し、近年は機械設備事業と環境事業の統合など、さらなる体制強化を進めています。
現在の従業員数は連結で641名、単体で462名です。筆頭株主は事業会社の三菱重工業で、第2位は東京中小企業投資育成、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱重工業 | 35.10% |
| 東京中小企業投資育成 | 6.87% |
| 日本カストディ銀行 | 3.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は村田力氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村田 力 | 代表取締役社長 | 1979年ジャパックス入社。1990年同社入社。執行役員、産業メカトロニクス事業部長等を経て、2023年5月より現職。 |
| 瀧川 浩二 | 取締役常務執行役員情報取扱責任者 | 1984年同社入社。原動機事業部長等を経て2017年に取締役就任。2024年5月より現職。 |
| 髙橋 孝二 | 取締役上級執行役員 海外戦略部長 | 1986年三菱重工業入社。2022年同社入社。執行役員海外戦略部長を経て、2025年5月より現職。 |
| 細江 廣太郎 | 取締役(監査等委員) | 1978年富士写真フィルム入社。2005年同社入社。技術開発部長等を経て2013年取締役就任。2021年5月より現職。 |
社外取締役は、伊藤眞理子(湘南MIRAI理事長)、須郷知徳(須郷法律事務所弁護士)、江田信之(フィンポート会計グループ公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「放電加工・表面処理」「金型」「機械装置等」および「その他」事業を展開しています。
■放電加工・表面処理
航空機エンジン部品の製造、産業用ガスタービン部品、その他各種金属製品の受託加工、および表面処理受託加工を行っています。一般の機械加工では切削できない超硬材などの精密加工や、過酷な環境で稼動する部品に対する耐熱・耐食コーティング加工を提供しています。
顧客からの受託加工による加工賃や製品の販売代金を主な収益源としています。三菱重工業や川崎重工業などの主要得意先からの受注が多く、本事業の運営は同社が主体となって行っています。
■金型
アルミ押出用金型やセラミックスハニカム押出用金型、およびそれらの付属品の製造・販売を行っています。材料仕入れから製品までの一貫生産を行うことでコスト低減を実現し、高精度かつ長寿命な独自の金型製品を提供しています。
住宅関連や交通・輸送関連メーカーに対する金型製品の販売代金が主な収益源となります。事業の運営は同社のほか、タイにある子会社のKYODO DIE-WORKS(THAILAND)CO.,LTD.が行っています。
■機械装置等
プレス複合加工システムやデジタルサーボプレスなどの機械設備、完全クロムフリー塗料の開発・製造・販売、およびプレス部品の受託加工を行っています。独自の制御技術を搭載したプレス機の販売や、自社設備を用いた部品加工サービスを提供しています。
機械設備やプレス部品、塗料の販売代金から収益を得ています。また、顧客仕様にカスタマイズされた設備の設置立ち上げによる収益も含まれます。本事業の運営は同社が単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一時期の落ち込みから回復傾向にあり、直近では環境・エネルギー関連や航空機需要の増加などを背景に143億円と過去最高を更新しました。経常利益も大幅な増益となっており、利益率も7.3%まで改善するなど収益基盤の強化が進んでいます。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 130億円 | 117億円 | 122億円 | 129億円 | 143億円 |
| 経常利益 | 6億円 | -3億円 | 2億円 | 6億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | -2.8% | 1.4% | 5.0% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | -13億円 | 2億円 | 6億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は25.3%に改善しています。また、一部製品の価格改定や生産性向上の効果が寄与したことで営業利益も大幅に伸長し、営業利益率は7.8%に向上しました。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 129億円 | 143億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 36億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.0% | 25.3% |
| 営業利益 | 7億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が7億円(構成比約28%)、業務委託費が2億円(同約9%)、法定福利費が2億円(同約6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の放電加工・表面処理セグメントは、航空・宇宙関連や環境・エネルギー関連の需要が堅調に推移し大幅な増収となりました。金型セグメントは海外での需要増加により微増収となった一方で、機械装置等セグメントは一部設備の販売減少により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 放電加工・表面処理 | 83億円 | 99億円 |
| 金型 | 33億円 | 34億円 |
| 機械装置等 | 12億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 129億円 | 143億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 23億円 |
| 投資CF | -6億円 | -8億円 |
| 財務CF | -15億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROEは10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
サステナビリティ方針の大元の目標である「持続可能な社会の実現に貢献するコト作り企業として、創造的な発想と技術で人と社会のために必要なカタチを提供する」という理念を掲げています。企業理念の実践を通じて、持続的な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
「サステナブル社会に必要なものづくり技術を提供し続けて100年企業となるための基盤を構築する」という長期ビジョンを持っています。「人間性(利他の精神)」「能力(知識・経験・実績)」「姿勢(HSKマインド)」の3つを向上させ、自ら学ぶ姿勢を持った付加価値の高い人材を育成する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2027年2月期を最終年度とする「中期経営計画2027」において、業容の拡大と収益基盤の強化を目指しています。また、長期的な目標として「営業利益率10%以上」を客観的な指標に設定し、各種施策に取り組んでいます。
* 売上高:147億円
* 営業利益率:6.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
事業ポートフォリオを適宜見直して投資配分の最適化を行うとともに、海外展開を拡大して成長事業の国際競争力を強化します。また、製造現場における課題の可視化と自動化による業務改革を推進し、生産性を向上させます。さらに、カーボンニュートラル社会に向けた技術開発やESG経営の体制構築にも注力していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
労働人口の減少に対応し新たな成長を実現するため、性別や年齢、国籍や職歴にとらわれない人材の確保と中核人材への登用を推進しています。また、業務ローテーションやOJT、階層教育などのリスキリングを通じて付加価値の高い人材を育成するとともに、従業員アンケートや1on1を活用して働きやすい環境の構築を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 40.9歳 | 12.1年 | 6,003,634円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与が含まれています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 86.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(3.0%)、定着率(97.0%)、取締役に占める女性役員の割合(14.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定顧客への依存度に関するリスク
売上高の大部分を三菱重工業グループなどの主要得意先4社グループが占めており、これらの顧客の受注動向や外注政策が変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、顧客基盤の拡大や自社製品の拡販に努め、特定の顧客に過度に依存しない事業構造の構築を進めています。
■(2) 製品の品質・欠陥に関するリスク
国際的品質管理基準に基づく品質の安定化を図っていますが、すべての製品に欠陥がないという保証はありません。大規模な製造物責任賠償につながるような事態が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。製造物責任賠償保険への加入や、継続的な品質管理の改善で対応しています。
■(3) 生産性向上とコスト削減に関するリスク
加工技術の開発などによって生産性の向上やコスト削減に努めていますが、有能な人材の流出や原材料の高騰等により開発が進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。適正な価格転嫁や調達ルートの多様化を進めるとともに、ジョブリターン制度の導入など多様な働き方に対応できる環境整備に努めています。



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