放電精密加工研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 放電精密加工研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の技術開発型企業です。放電加工・表面処理、金型、機械装置等の事業を展開し、ガスタービン部品やアルミ押出用金型などを製造しています。直近の業績は、航空・宇宙および環境・エネルギー分野の好調により、売上高129億円、経常利益6.4億円となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社放電精密加工研究所 の有価証券報告書(第64期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 放電精密加工研究所ってどんな会社?


放電加工技術を核に、ガスタービン部品等の受託加工や金型製造を行う技術開発型企業です。

(1) 会社概要


1961年に設立され、放電加工の受託業務を開始しました。その後、アルミ押出用金型やセラミックスハニカム押出用金型の製造へと事業を拡大し、1999年に株式を店頭登録しました。2013年には東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場し、2020年にはタイの関連会社を連結子会社化するなど、グローバル展開も進めています。

連結従業員数は610名、単体では421名が在籍しています。筆頭株主は事業上の主要な取引先でもある三菱重工業で、第2位は東京中小企業投資育成です。三菱重工業とは資本業務提携を結んでおり、同社グループの売上高の3割強を占める重要なパートナー関係にあります。

氏名 持株比率
三菱重工業 35.10%
東京中小企業投資育成 6.87%
放電精密加工研究所社員持株会 3.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名 (内、社外取締役1名) の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は村田力氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
村田 力 代表取締役社長 1979年ジャパックス入社、1990年同社入社。執行役員、産業メカトロニクス事業部長、取締役、特命担当を経て、2023年5月より現職。
瀧川 浩二 取締役常務執行役員情報取扱責任者 1984年同社入社。原動機事業部長、執行役員、取締役、常務取締役(営業・技術・人事総務担当)を経て、2024年5月より現職。
髙橋 孝二 取締役上級執行役員 海外戦略部長 1986年三菱重工業入社。2022年同社入社、執行役員海外戦略部長を経て、2025年5月より現職。
細江 廣太郎 取締役(監査等委員) 1978年富士写真フィルム入社。2005年同社入社。業務改革推進部長、塗料事業部長、技術開発部長、取締役などを経て、2021年5月より現職。


社外取締役は、伊藤眞理子(一般社団法人湘南MIRAI理事長)、須郷知徳(弁護士)、江田信之(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「放電加工・表面処理」「金型」「機械装置等」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 放電加工・表面処理


電気エネルギーによる火花を利用して難削材などを精密加工する放電加工技術を用い、ガスタービン部品や航空機エンジン部品の受託加工を行っています。また、耐熱・耐食コーティングなどの表面処理加工や、クロムフリー防錆表面処理剤の製造・販売も手がけています。主な顧客は重工業メーカーや自動車関連企業です。

収益は、部品の受託加工費や表面処理加工費、製品販売代金から得ています。運営は主に放電精密加工研究所が行っており、三菱重工業などの主要顧客からの受注に対応しています。

(2) 金型


独自の放電加工技術を駆使し、アルミサッシ等を成形するためのアルミ押出用金型や、自動車排気ガス浄化用のセラミックスハニカム押出用金型などを製造・販売しています。高精度かつ長寿命な金型を提供することで、住宅関連や自動車関連の顧客ニーズに応えています。

収益は、各種金型およびその付属品の販売代金から得ています。運営は放電精密加工研究所およびタイの連結子会社であるKYODO DIE-WORKS(THAILAND)CO.,LTD.が行っており、国内および海外市場に向けて製品を供給しています。

(3) 機械装置等


独自の制御技術を搭載した直動式デジタルサーボプレス「ZENFormer」シリーズなどの機械装置や、プレス複合加工システムの製造・販売を行っています。また、自社のデジタルサーボプレス機を使用したプレス部品の受託加工や、金属プレス用金型の製造も手がけています。

収益は、機械装置や金型の販売代金、および部品の受託加工費から得ています。運営は放電精密加工研究所が行っており、製造現場の効率化や高精度化を求める顧客に対して製品・サービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は110億円から130億円前後で推移しており、第64期は過去最高の売上水準となっています。利益面では変動が見られ、第60期と第62期には赤字を計上しましたが、第63期以降は黒字化し、第64期は利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 109億円 130億円 117億円 122億円 129億円
経常利益 -5.8億円 6.1億円 -3.2億円 1.7億円 6.4億円
利益率(%) -5.3% 4.7% -2.8% 1.4% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -28億円 14億円 -13億円 2.3億円 5.8億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。これは価格改定や生産量の拡大が寄与したためです。営業利益は大きく伸長し、営業利益率は前年の1.9%から5.3%へと向上しました。コストコントロールと高付加価値製品へのシフトが進んでいることが窺えます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 122億円 129億円
売上総利益 25億円 31億円
売上総利益率(%) 20.7% 24.0%
営業利益 2.3億円 6.9億円
営業利益率(%) 1.9% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が10億円(構成比42%)、給料及び手当が9億円(同39%)を占めています。売上原価においては、材料費や労務費、外注費などが含まれますが、詳細は記載がありません。

(3) セグメント収益


放電加工・表面処理セグメントは、航空・宇宙関連や環境・エネルギー関連の受注増により大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。一方、金型セグメントと機械装置等セグメントは、市場需要の鈍化や納入延期などの影響を受け、減収減益となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
放電加工・表面処理 73億円 86億円 7.4億円 14億円 16.6%
金型 36億円 33億円 4.5億円 3.3億円 10.0%
機械装置等 12億円 9.4億円 0.6億円 0.4億円 4.5%
連結(合計) 122億円 129億円 2.3億円 6.9億円 5.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは**健全型**(営業CF+、投資CF-、財務CF-)です。本業で得た現金を、設備投資や借入金の返済に充てている状態であり、財務体質の改善が進んでいると言えます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 10億円 4.2億円
投資CF -7.8億円 -6.2億円
財務CF 21億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「持続可能な社会の実現に貢献するコト作り企業として、創造的な発想と技術で人と社会のために必要なカタチを提供する」というサステナビリティ方針の大元の目標を掲げています。このビジョンのもと、サステナブル社会に必要なものづくり技術を提供し続け、100年企業となるための基盤構築を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、優秀人材の定義として「人間性(利他の精神)」「能力(知識・経験・実績)」「姿勢(HSKマインド)」の3つの向上を重視しています。自ら学ぶ姿勢を持ち、付加価値の高い人材を育成することを方針としており、全社員が一丸となってマテリアリティ(重要課題)の実現に取り組む体制を構築しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2027」を推進しており、最終年度である2027年2月期に向けた数値目標を設定しています。長期的には営業利益率10%以上を目指しています。

* 売上高:147億円(2027年2月期)
* 営業利益率:6.1%(2027年2月期)

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2027」に基づき、「改革の推進」「収益基盤の強化」「成長基盤の強化」「経営基盤の強化」を重点方針として掲げています。具体的には、事業ポートフォリオの最適化、業務の標準化と自動化、カーボンニュートラル社会に向けた技術開発、海外展開の拡大などに取り組んでいます。

* 欧米市場におけるガスタービン事業の受注拡大と海外展開の強化
* カーボンニュートラル社会実現のための新市場分野への事業展開
* 製造現場のデジタルツール活用による可視化と改善サイクルの加速

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、性別や年齢等に囚われない採用と登用を行っています。特に女性管理職の育成に注力し、「リーダー養成プログラム」の実施や積極的な採用を進めています。また、従業員エンゲージメント向上のため、表彰制度の導入やキャリア開発支援、OJTやリスキリング教育など、人材育成と環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 41.3歳 13.1年 5,971,650円


※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 84.6%
男女賃金差異(全労働者) 62.2%
男女賃金差異(正規雇用) 69.6%
男女賃金差異(非正規) 71.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(6.0%)、定着率(94.0%)、離職者数(25名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客への依存度について


同社グループの売上高の6割以上が、三菱重工業グループをはじめとする主要得意先4社グループで占められています。これらの主要得意先の受注・生産動向や外注政策が大きく変動した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、顧客基盤の拡大や提供サービスの多様化に取り組んでいます。

(2) 製品の欠陥について


国際的品質管理基準ISO9001に基づき品質管理を行っていますが、全ての製品に欠陥がなく、将来にわたり製造物責任賠償が発生しない保証はありません。大規模な製造物責任賠償につながる製品の欠陥が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。品質マニュアルの定義や社員教育を通じ、品質管理の徹底に努めています。

(3) 自然災害等について


生産拠点が関東から中部地区に集中しており、大規模な地震や台風などの自然災害が発生した場合、甚大な被害を受け生産能力に影響を及ぼす可能性があります。対策本部設置の体制整備や火災保険への加入等で備えていますが、災害の影響を完全に回避できる保証はありません。顧客や従業員の安全を最優先し、早期復旧に向けた対応策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。