※本記事は、イフジ産業株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イフジ産業ってどんな会社?
液卵の製造販売を行う独立系メーカーです。製パン・製菓業界向けに安定した品質の「液卵」を供給し、国内トップクラスのシェアを有しています。
■(1) 会社概要
1972年に福岡市で設立され、翌年に本社工場で液卵の製造販売を開始しました。1996年に製造・販売子会社を合併して製販一体体制を確立し、2001年に日本証券業協会へ店頭登録しました。その後、2012年の東証二部上場、2017年の東証一部指定を経て、2024年にはHORIZON FARMSを完全子会社化し、EC事業を強化しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は168名、単体従業員数は128名です。筆頭株主は将コーポレーションで、第2位は個人の宇髙紫乃氏、第3位は個人の宇髙真一氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 将コーポレーション | 14.49% |
| 宇髙 紫乃 | 8.90% |
| 宇髙 真一 | 5.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は藤井宗徳氏です。社外取締役比率は約44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤井 宗 徳 | 代表取締役社長 | 1999年4月同社入社。名古屋事業部次長、関東事業部長代理、常務取締役、専務取締役を経て、2014年6月より現職。日本化工食品代表取締役社長を兼務。 |
| 池田 賢次郎 | 常務取締役関東事業部長東日本(関東事業部・名古屋事業部)担当 | 1981年4月同社入社。関東事業部長、取締役、名古屋事業部長を経て、2003年6月より現職。2019年6月より東日本担当を兼務。 |
| 原 敬 | 常務取締役管理本部長 | 1994年4月同社入社。経営企画室次長、日本化工食品取締役工場長、同社取締役総務部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 本 司 義 博 | 取締役購買統轄部長西日本(関西事業部・福岡事業部)担当 | 1996年2月同社入社。関西事業部購買グループ長、関西事業部長、購買統轄部長を経て、2025年6月より現職。 |
| 三 宅 史 員 | 取締役常勤監査等委員 | 2004年3月同社入社。総務部総務課長、総務部次長、総務部長、管理本部担当部長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、川原正孝(ふくや代表取締役会長)、中川正裕(元九州電力執行役員)、桝本美穂(桝本法律事務所代表弁護士)、上村勝則(元西日本シティ銀行支店長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「液卵事業」「調味料事業」「オーガニックEC事業」を展開しています。
■(1) 液卵事業
鶏卵を割卵して卵殻を取り除いた「液卵」「凍結卵」を製造販売しています。これらは「食の半導体」とも呼ばれ、多くの業務用加工食品に使用されています。安定した品質と供給力を強みとし、主に大手食品メーカーや外食産業向けに納入しています。
収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。鶏卵相場の変動に応じて販売価格や仕入価格が変動する特徴があります。運営は主にイフジ産業が行っています。
■(2) 調味料事業
業務用粉体調味料及び顆粒調味料等を製造販売しています。開発力や商品力を活かし、即席めんやふりかけなどの用途を中心に、主に大手食品メーカーへ納入しています。
収益は、調味料製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主に連結子会社の日本化工食品が行っています。
■(3) オーガニックEC事業
オーガニック商品及びオールナチュラル商品を仕入れ、ECサイトにて販売しています。健康志向やエシカル消費に関心の高い個人顧客を主な対象としています。
収益は、ECサイトを通じた商品販売代金として個人顧客から受け取ります。運営は主に連結子会社のHORIZON FARMSが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5期間で約1.8倍に拡大しています。利益面でも、経常利益率は7%台から11%台へと上昇し、収益性が向上しています。特に当期は価格改定の浸透や販売数量の増加により、売上高・各利益ともに過去最高を更新しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 138億円 | 174億円 | 209億円 | 245億円 | 256億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 14億円 | 16億円 | 18億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 7.8% | 7.7% | 7.4% | 11.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 10億円 | 11億円 | 16億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加え、売上原価率が改善したことで売上総利益が大きく伸長しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、売上総利益の増加幅がそれを上回り、営業利益率は前期の7.2%から11.7%へと大幅に向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 245億円 | 256億円 |
| 売上総利益 | 42億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.1% | 23.7% |
| 営業利益 | 18億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 7.2% | 11.7% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が13億円(構成比42%)、給料及び手当が4億円(同12%)を占めています。売上原価については、材料費の変動が大きく影響します。
■(3) セグメント収益
主力の液卵事業は、販売数量の増加と価格改定により増収増益となり、全社利益の大部分を稼ぎ出しています。調味料事業も増益を確保しました。当期より新たに加わったオーガニックEC事業も収益に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 液卵事業 | 233億円 | 237億円 | 17億円 | 29億円 | 12.3% |
| 調味料事業 | 12億円 | 12億円 | 0.7億円 | 0.9億円 | 7.3% |
| オーガニックEC事業 | - | 6億円 | - | 0.4億円 | 6.1% |
| 連結(合計) | 245億円 | 256億円 | 18億円 | 30億円 | 11.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で獲得した資金で借入金の返済を行いつつ、将来への投資も実施可能な「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3億円 | 40億円 |
| 投資CF | -2億円 | -19億円 |
| 財務CF | 5億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.2%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も66.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「高い倫理観を保ち、浮利を追わず、質実剛健と先憂後楽の社風を確立して、社業の発展に努め、以って取引先、従業員並びに株主に対する企業責任を全うし、社会に貢献することを旨とする。」という経営理念を掲げています。また、「食のインフラ」として国民の食生活に貢献し、「サステナブルサプライ」を実現することを存在意義としています。
■(2) 企業文化
経営理念に基づき、品質管理や需給調整機能の提供を通じて取引先や社会への貢献を重視する文化があります。また、「質実剛健と先憂後楽」の社風のもと、安定した製品供給と適正価格での提供を目指しています。コスト削減意識を高めるための提案制度や、コンプライアンス遵守の姿勢も重視されています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2030年度に向けて以下の数値目標を掲げています。この目標達成を通じて、製造設備や研究開発への投資、株主還元、従業員の所得向上を目指しています。
* 液卵販売数量:8万トン
* 業界シェア:20%
* 連結売上高経常利益率:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
液卵事業では、高品質な製品の安定供給を使命とし、新規取引先の獲得や新業種への拡販を進め、2030年度の販売数量目標達成を目指します。また、仕入先の拡大や輸入検討など購買施策の多様化も図ります。調味料事業では高付加価値化と販路拡大を推進し、オーガニックEC事業では商品ラインナップの拡充による売上増加を目指します。
* 2030年度液卵販売数量:8万トン
* 業界シェア:20%
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Speed Growing 閾値を超え突き抜ける」を目標に、人材育成のスピードアップに注力しています。社員一人ひとりが自律的に成長し個の力が活かされる環境づくりを目指し、新入社員研修やOJTリーダー教育、Eラーニング等の研修制度を充実させています。また、資格取得支援やエンゲージメント調査を通じた環境整備、健康経営の推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.5歳 | 12.3年 | 5,769,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.3% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 44.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 56.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鶏卵相場が業績に与える影響
主力製品である液卵の原料価格と販売価格は鶏卵相場に連動します。鳥インフルエンザの発生や食料政策の変更等により鶏卵需給が逼迫し相場が高騰した場合、あるいは相場が大きく下落した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食品の安全・衛生問題
食品メーカーとして安全・安心な製品提供に努めていますが、万一、同社グループ製品に起因する安全・衛生問題が発生した場合、製品回収や社会的信用の失墜等により、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 凍結製品の在庫について
長期保存可能な凍結製品を製造・保管していますが、その多くを外部倉庫に委託しています。在庫の大規模な毀損、販売予測の乖離による過剰在庫や在庫枯渇が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 自然災害等による影響
気候変動による災害や大規模地震が発生した場合、工場の操業停止やサプライチェーンの寸断が発生するリスクがあります。特に工場被災やインフラ停止は生産活動に直接的な影響を与え、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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