※本記事は、イフジ産業株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イフジ産業ってどんな会社?
液卵や凍結卵といった「食の半導体」となる業務用食品原料の製造販売を主力としています。
■(1) 会社概要
イフジ産業は1972年に福岡市で設立され、翌年に本社工場を完成させて液卵の製造販売を開始しました。その後、関東や関西などへ事業拠点と販売網を拡大し、2001年に店頭登録(後のJASDAQ上場)を果たしました。2009年には日本化工食品を、2024年にはHORIZON FARMSを完全子会社化し、事業領域を広げています。
現在の同社グループは連結で184名、単体で135名の従業員を擁しています。筆頭株主は法人である将コーポレーションで、第2位および第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 将コーポレーション | 14.47% |
| 宇髙 紫乃 | 8.88% |
| 宇髙 真一 | 5.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は藤井宗徳氏が務めており、社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤井 宗徳 | 代表取締役社長 | 1999年同社入社。名古屋事業部次長、関東事業部長代理等を経て2007年取締役に就任。常務、専務を経て2014年より現職。 |
| 池田 賢次郎 | 常務取締役関東事業部長東日本(関東事業部・名古屋事業部)担当 | 1981年同社入社。関東事業部長、名古屋事業部長を経て2003年に常務取締役に就任。2019年より現職。 |
| 原 敬 | 常務取締役管理本部長 | 1994年同社入社。経営企画室次長、日本化工食品取締役工場長等を経て、2011年取締役総務部長に就任。2024年より現職。 |
| 本司 義博 | 取締役購買統轄部長西日本(関西事業部・福岡事業部)担当 | 1996年同社入社。名古屋事業部、関西事業部の購買グループ長を経て、2019年関西事業部長に就任。2025年より現職。 |
| 三宅 史員 | 取締役常勤監査等委員 | 2004年同社入社。総務部で総務課長、次長、総務部長を歴任。2024年管理本部担当部長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、川原正孝(元ふくや代表取締役社長)、中川正裕(元九州ビジネスソリューションズ代表取締役社長)、桝本美穂(桝本法律事務所代表弁護士)、上村勝則(元西日本シティ銀行小倉支店事務部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「液卵事業」「調味料事業」「オーガニックEC事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■液卵事業
鶏卵を割卵して卵殻を取り除いた液卵や凍結卵を製造販売しています。業務用加工食品の基幹原料として「食の半導体」とも呼ばれ、安定した品質と供給力が評価されており、主に大手食品メーカーや外食産業向けに製品を提供しています。
収益は、液卵や凍結卵、卵加工品の販売による売上から得ています。運営は同社が単独で行っています。
■調味料事業
業務用粉体調味料および顆粒調味料等の製造販売を行っています。独自の生産技術を活用し、即席めんやふりかけといった既存の得意分野に加え、健康食品向けなど新たな市場への提案も強化しています。
収益は、大手食品メーカー等への粉体調味料や顆粒調味料等の販売による売上から得ています。運営は日本化工食品が行っています。
■オーガニックEC事業
オーガニック商品およびオールナチュラル商品を仕入れ、インターネットを通じて販売しています。主に希少性の高い厳選された商品を多数取り扱い、個人顧客向けにオンラインストアで提供しています。
収益は、自社のECサイトを通じて個人顧客に直接販売することによる売上から得ています。運営はHORIZON FARMSが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の連結業績は、販売数量の拡大や適正価格での供給体制強化により、直近5期間において継続的な増収傾向にあります。利益面でも長期的には拡大基調にありますが、設備投資の増加に伴う減価償却費の負担などにより、直近では小幅な減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 174億円 | 209億円 | 245億円 | 256億円 | 326億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 16億円 | 18億円 | 30億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 7.8% | 7.7% | 7.4% | 11.9% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 11億円 | 16億円 | 21億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、原料調達コストや設備投資に伴う各種コストの上昇により売上総利益は減少し、営業利益も減益となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 256億円 | 326億円 |
| 売上総利益 | 61億円 | 59億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 18.1% |
| 営業利益 | 30億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 11.7% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が14億円(構成比44%)、給与及び手当が4億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の液卵事業は、鶏卵不足を背景とした調達力の強みを活かして販売数量が過去最高となり、大幅な増収を牽引しました。調味料事業は既存取引先の減少等により横ばい、オーガニックEC事業は冷凍フルーツの好調により増収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 液卵事業 | 237億円 | 305億円 |
| 調味料事業 | 12億円 | 12億円 |
| オーガニックEC事業 | 6億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 256億円 | 326億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う積極型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 40億円 | 12億円 |
| 投資CF | -19億円 | -23億円 |
| 財務CF | -13億円 | 5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「わが社は、高い倫理観を保ち、浮利を追わず、質実剛健と先憂後楽の社風を確立して、社業の発展に努め、以って社会に貢献することを旨とする」という経営理念を掲げています。市場に流通しない規格外卵を食の半導体として適正価格で提供し、継続的な関係を構築する「サステナブルサプライ」の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念にも掲げている「質実剛健」と「先憂後楽」の社風を重視しています。また、従業員がコスト削減や業務改善の提案を行う「提案制度」を積極的に活用し、全社的なコスト意識の醸成を進めるとともに、「品質」「効率」「歩留」「もったいない」の観点を重視したローコストオペレーションを実践しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な経営目標として、2030年度に液卵の販売数量8万トン、業界シェア20%の達成を目指しています。また、利益目標としては連結売上高経常利益率8%以上を安定的に確保することを掲げています。設備投資やM&Aを積極的に検討する方針であり、その指標としてEBITDAを重視しています。
* 2030年度に液卵販売数量8万トン、業界シェア20%
* 連結売上高経常利益率8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、液卵事業において高品質な製品を適正価格で安定的に供給することを使命とし、新規業種への展開を加速させます。調味料事業ではマーケティング機能の高度化や新たな市場への提案を強化し、オーガニックEC事業では商品ラインナップの拡充を進めます。また、DXの推進による業務効率化やオープンイノベーションによる新規用途開発にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「社員一人ひとりが自律的に成長し、その個の力が活かされる環境を構築していくこと」を人材育成の基本方針に掲げています。次世代を担う人材の育成に向け、新入社員研修や管理者研修、DX人材の育成を推進するほか、独自の「伴走型支援」体制を構築して心理的安全性を確保し、エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.5歳 | 12.3年 | 5,747,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 64.3% |
※男女の賃金差異については、等級別人数構成の差及び全労働者に対する女性の短時間パートタイム労働者の比率が高いことに伴う労働時間の差によるものであり、同じ等級において男女の賃金差異はありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人従業員の比率(15%程度)、障がい者雇用率(法定雇用率を継続して上回る)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鶏卵相場が業績に与える影響
同社の主力製品である液卵は、主原料である鶏卵の相場に応じて販売価格および仕入価格が変動します。大規模な鳥インフルエンザの発生や食料政策の変更などにより鶏卵需給が逼迫し、鶏卵相場が高騰した場合や、不安定な供給環境によって相場が大きく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の業種への販売依存リスク
液卵事業の主要な販売先は製パン業界であり、同業界に対する売上高比率は全体の約4割を占めています。そのため、製パン業界の仕入・生産動向が同社グループの業績に影響を与える可能性があります。同社は冷凍食品メーカーや総菜メーカーなどの新たな業種への販路拡大を進め、依存度の低減に努めています。
■(3) 凍結製品の在庫管理リスク
同社の液卵事業では、鶏卵相場や販売予測を勘案して長期保存が可能な凍結製品を製造・保管しており、在庫の大部分を占めています。これらは主に外部の営業倉庫に保管されているため、大規模な在庫毀損や、販売動向の予測との乖離による過剰在庫または在庫枯渇が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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