マルゼン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マルゼン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するマルゼンは、業務用厨房機器および大型製パン機械の総合メーカーです。飲食店やスーパー等へ機器の製造販売と保守を展開しています。直近の業績は、価格改定や流通業向け販売の好調により、売上高と各利益がともに過去最高を更新する増収増益のトレンドとなっています。


※本記事は、株式会社マルゼンの有価証券報告書(第65期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マルゼンってどんな会社?


業務用厨房機器および大型製パン機械の製造・販売を主力事業とするメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1961年に業務用石油ガスバーナーの製造販売を目的として設立されました。1976年に現在の社名であるマルゼンに変更しています。1999年には東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。2003年にはベーカリー工場設備の製造販売会社より営業譲渡を受け、子会社を設立して大型製パン機械事業を開始しています。

同社グループの従業員数は連結で1,293名、単体で842名体制となっています。大株主の構成をみると、筆頭株主は不動産管理などを行うマサトヨで、第2位は投資事業有限責任組合、第3位は代表取締役社長である渡辺恵一となっています。

氏名 持株比率
マサトヨ 22.94%
UH Partners 2投資事業有限責任組合 8.25%
渡辺恵一 6.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は渡辺恵一が務めています。社外取締役は3名選任されており、取締役全10名に対する比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
渡辺恵一 代表取締役社長 1980年同社入社。取締役統轄製造本部長などを経て、2006年に代表取締役社長に就任。子会社の代表取締役社長も兼務しています。
渡辺雄大 取締役副社長営業本部長兼海外営業担当 2008年同社入社。東関東事業部長などを経て、2020年に取締役副社長営業本部長兼海外営業・商品購買担当に就任。2025年より現職。
山野井誠 常務取締役東関東・南関東・信越・北海道・東北事業部担当 1989年同社入社。南関東ブロック長や取締役などを経て、2019年より現職。
箭内隆 常務取締役首都圏・中部・近畿・九州事業部・営業開発部、商品購買担当 1984年同社入社。首都圏事業部長や取締役などを経て、2025年より現職。
種村浩樹 取締役中四国事業部長 1984年同社入社。中四国ブロック長などを経て、2013年に中四国事業部長に就任。2018年より現職。
田中快之輔 取締役首都圏事業部長 1997年同社入社。首都圏ルート支社長や執行役員首都圏事業部長などを経て、2024年より現職。
君塚浩二 取締役経理・財務グループ部長 商工組合中央金庫の支店長や資産サポート部長等を経て、2022年同社に入社。2023年より現職。


社外取締役は、中丸康(元中央日本土地建物常務理事)、矢部孝治(元芝パークホテル常務取締役)、菅沼友子(元第二東京弁護士会会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「業務用厨房機器製造販売業」「大型製パン機械製造販売業」および「ビル賃貸業」を展開しています。

業務用厨房機器製造販売業

同事業では、飲食店やスーパーマーケット、病院などの集団給食施設向けに、フライヤーやスチームコンベクションオーブンなどの業務用熱機器や作業機器の製造・仕入・販売を行っています。また、修理保守サービスも提供しています。

収益源は、顧客からの機器の販売代金および保守契約などに基づくサービス提供料です。製造は子会社のマルゼン工業が担当し、国内の販売および仕入は主に同社が担っています。海外では台湾丸善股份有限公司などが販売を行っています。

大型製パン機械製造販売業

同事業では、国内外の製パンメーカーや異業種の各種食品工場向けに、大規模な製パンや製菓ライン用の工場設備・機器の製造・仕入・販売を行っています。また、販売した機器の修理や部品交換などのメンテナンスサービスも提供しています。

収益源は、食品メーカー等の顧客からの機械の販売代金および修理や部品交換に係るサービス提供料です。本事業の製造・販売および同社への販売は、子会社であるフジサワ・マルゼンが運営しています。

ビル賃貸業

同事業では、土地と資金の有効活用を目的として、ビジネスホテルや介護型有料老人ホームなど、複数の物件の賃貸を行っています。

収益源は、貸与先の企業から定期的に受け取る不動産の賃貸料です。本事業の運営および物件の賃貸業務は、同社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上高は528億円から668億円へと着実に成長を続けています。これに伴い、経常利益も42億円から73億円へと順調に拡大しており、利益率も8.0%から11.0%へと改善傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 528億円 575億円 606億円 643億円 668億円
経常利益 42億円 41億円 53億円 67億円 73億円
利益率(%) 8.0% 7.1% 8.7% 10.4% 11.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 27億円 26億円 36億円 42億円 47億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の643億円から当期は668億円へ増収となりました。売上総利益も180億円から190億円へ増加し、売上総利益率は28.0%から28.5%へ改善しています。これに伴い営業利益も堅調に拡大しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 643億円 668億円
売上総利益 180億円 190億円
売上総利益率(%) 28.0% 28.5%
営業利益 61億円 66億円
営業利益率(%) 9.5% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が51億円(構成比41%)、運賃及び荷造費が20億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の業務用厨房機器製造販売業は、外食チェーンや食品スーパー向け販売が好調に推移して全社の増収を牽引しました。一方で大型製パン機械製造販売業やビル賃貸業の売上は前期を下回る結果となっています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
業務用厨房機器製造販売業 603億円 632億円
大型製パン機械製造販売業 34億円 31億円
ビル賃貸業 5億円 5億円
連結(合計) 643億円 668億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で投資と借入金の返済を行う「健全型」のパターンを示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 54億円 48億円
投資CF -129億円 -61億円
財務CF -17億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.1%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「顧客第一主義」を企業理念として掲げています。業務用厨房機器並びに大型製パン機械の総合メーカーとして、「適正な価格で、より質の高い製品並びにサービスを提供し、お客様に貢献すること」を使命としています。株主やお客様の期待に応え、良き企業市民として社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

同社は、お客様の信頼に応え、感謝の気持ちを大切にして相互の発展に努める価値観を重視しています。「メーカーに徹する」という基本姿勢のもと、社員の能力を最大限に引き出す企業風土の創造に注力しています。また、経営環境の変化に迅速に対応できるスピード経営をモットーに、透明性の高い組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、株主利益重視の観点からEPS(1株当たり当期純利益)を重視しており、売上高と利益の拡大によるEPS上昇を目指しています。適正利益率を維持しながら業界トップの座を確立することを目指し、具体的な数値目標として以下を掲げています。

・売上高 700億円
・ROE 10%

(4) 成長戦略と重点施策

同業他社との競争激化の中、総合的なサービス体制を整えることでシェア拡大を図ります。自社製品比率の向上に向け、高品質かつSDGsに貢献する省エネ機器の開発を進め、直販・ルート販売の双方を強化します。また、全国規模のメンテナンス体制を強化して保守契約を推進し、安定的な収益力の向上と業務の効率化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社グループは、入社時からの新入社員研修や「ブラザー制度」等のOJTを軸として人材育成を図っています。営業や設計、修理等の職種別研修を充実させるほか、厨房に関わる資格取得を奨励し、厨房のプロフェッショナルとして社会貢献できる人材を育成しています。また、処遇向上や再雇用制度による活躍支援を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 40.6歳 14.3年 6,757,746円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 30.0%
男女賃金差異(全労働者) 52.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 49.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1級厨房設備施工技能士(246名)、2級厨房設備施工技能士(62名)、1級厨房設備士(151名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 販売先市場の動向

同社グループの主な販売先は外食・中食産業です。経済情勢の悪化や感染症の流行等により一般飲食店市場の休業期間が長期化し、民間設備投資が大きく減退する局面においては、同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対策として、販売先を様々な業種に分散することでリスク回避を図っています。

(2) 製品の安全性・品質

社内検査体制の強化等により製品の安全性と品質確保に努めていますが、万が一製品のトラブルやリコールが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、完成品の検品作業を強化し、特にガス機器については一品ごとの検品を徹底することで、製品の安全性確保に対応しています。

(3) 法的規則の変更

製造物責任法や消費生活用製品安全法、電気用品安全法など、様々な法的規制の適用を受けています。これらの規制が強化・変更された場合や新たな規制が施行された場合、事業活動に制約が生じる可能性があります。対策として、専門機関のセミナー参加や外部専門家との連携により、早期の情報収集と対応を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。