※本記事は、アルファパーチェスの有価証券報告書(第16期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルファパーチェスってどんな会社?
同社は、大企業グループ向けに間接材の販売を行うMRO事業と、施設管理を支援するFM事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2000年11月に旧アルファパーチェスが設立され、2010年11月に新設分割によって現在の同社が設立されると同時に、アスクルが親会社となりました。2013年1月に施設管理事業を譲り受けて建設業許可を取得し、2022年12月には東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしています。
同社の従業員数は連結で265名、単体で228名です。筆頭株主は親会社である事業会社のアスクルで、第2位も事業会社のアズワン、第3位は外国法人の金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アスクル | 61.40% |
| アズワン | 7.29% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE NON TREATY CLIENTS ACCOUNT | 3.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は田辺孝夫氏が務めています。社外取締役の比率は全体の33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田辺孝夫 | 代表取締役社長 | 1983年日本鉱業(現ENEOSホールディングス)入社。2001年同社入社、システム開発部長などを経て2025年3月より現職。 |
| 多田雅之 | 取締役会長 | 1985年日本鋼管(現JFEホールディングス)入社。2002年同社入社、2006年代表取締役社長を経て2025年3月より現職。 |
| 齋藤正弘 | 取締役DX推進室長 | 1982年日本電気入社。NECエレクトロニクス経営企画部長などを経て2015年同社入社、2025年3月より現職。 |
| 玉井継尋 | 取締役 | 1991年飛島建設入社。2007年アスクル入社。2014年同社取締役に就任し、2020年アスクル取締役CFOに就任。 |
社外取締役は、江端貴子(元アムジェン取締役)、小串記代(元富士ゼロックス総合教育研究所社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「MRO事業」「FM事業」および「その他」の事業を展開しています。
■MRO事業
MRO事業は、設備や機械の修理用備品、文具などの間接材をインターネットを活用して大企業グループ向けに販売する事業です。多様な事業所が希望する幅広い商品を電子カタログシステムを通じて提供し、顧客の最適な購買行動を支援しています。
収益源は主に間接材の物販による販売代金です。顧客とサプライヤーをITシステムで結び、商品は基本的にサプライヤーから直送される仕組みを構築しており、運営は同社が行っています。
■FM事業
FM事業は、チェーンストアなどの商業施設向けに新築・改装・修繕工事や清掃などの施設管理と運用を支援する事業です。店舗工事に最適化した建材の提供や、全国ネットワークによる24時間体制のメンテナンスを代行しています。
収益源は、施設の維持管理や改装工事に伴う役務提供の対価および資材の販売代金です。改装・リニューアル工事などを担う子会社のAPリノベーションズと、同社が連携して事業を運営しています。
■その他
その他事業は、同社向けのITシステム開発や運用で培った技術とノウハウを外部の顧客に提供する事業です。
収益源は、ITシステムの開発および運用サービスの提供に伴う手数料や対価です。運営は同社の子会社であるATCが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、大企業グループ向けの間接材需要の拡大などを背景に、売上高は379億円から589億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も8億円から15億円へと順調に拡大しており、増収増益のトレンドを維持しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 379億円 | 444億円 | 520億円 | 560億円 | 589億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 10億円 | 12億円 | 12億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 2.2% | 2.3% | 2.2% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 7億円 | 8億円 | 9億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益は55億円から61億円へと拡大しています。売上総利益率も10.4%に改善しており、販売費及び一般管理費の増加を吸収して営業利益も増加しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 560億円 | 589億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.9% | 10.4% |
| 営業利益 | 12億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 2.5% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が16億円(構成比35%)、減価償却費が7億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のMRO事業は、電子カタログの新機能導入による粗利率改善効果などがあり、売上高・利益ともに拡大しました。一方、FM事業は資材の緊急手配による原価増加などが響き、減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| MRO事業 | 412億円 | 443億円 | 8億円 | 12億円 | 2.7% |
| FM事業 | 147億円 | 146億円 | 4億円 | 2億円 | 1.4% |
| その他 | 0.7億円 | 0.2億円 | 0.8億円 | 0.8億円 | 356.3% |
| 連結(合計) | 560億円 | 589億円 | 12億円 | 15億円 | 2.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | 9億円 |
| 投資CF | -7億円 | -9億円 |
| 財務CF | -2億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、経営理念として「購買のベストパートナーであり続けたい!」という「ありたい姿」を掲げています。日本の産業界全体の効率化を実現し、すべての取引当事者のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を支援することで社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
ありたい姿を実現するために「私たちが大切にすること」として、「寄り添うこと」「役立つこと」「信頼されること」「創造的であること」「成長し続けること」の5点を定めています。顧客の課題解決に向け、社員一人ひとりが高い付加価値を提供し続ける文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と収益確保を経営上の目標としています。具体的な指標として、同社グループのサービスの普及状況を示す連結売上高と、付加価値提供の成果を示す連結営業利益額の持続的な拡大を重視し、事業基盤の強化に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存顧客に対する商材拡充やシステム機能の充実を通じて浸透を深めるとともに、マーケティング施策を活用して新規顧客の開拓を進めています。
・既存顧客へのより深い浸透による売上拡大
・新規顧客の開拓
・IT人材およびコンサルティング人材の獲得とスキルの向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、新規顧客の開拓やシステム導入提案を担うコンサルティング人材、および最新のIT技術を活用できるDX人材の確保を重要課題と位置付けています。新卒・中途採用を強化するだけでなく、教育や実践の機会を通じて社内で人材を育成する体制の構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.0歳 | 7.6年 | 5,551,252円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.2% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率は対象となる従業員がいないため「-」としています。労働者の男女の賃金の差異は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地政学的なリスクによる業績変動
台湾などでの地政学リスクが顕在化した場合、世界的なサプライチェーンの麻痺により生産活動が縮小する懸念があります。同社グループはこれに対して、余裕資金の確保や固定費の変動費化などを進め、柔軟に対応できる体制を整えています。
■(2) 市場の景気変動による需要減少
同社の事業は相対的に景気変動の影響を受けにくい性質を持っていますが、国内景気の悪化によって主要顧客である大企業グループや中小企業の需要が減少するリスクがあります。これに対し、顧客層の多様化を進めて景気悪化の影響を軽減する体質構築を目指しています。
■(3) 優秀な人材の確保と定着
新規顧客の獲得やシステムの導入提案、バックオフィス業務のDX化を推進するためには、コンサルティング能力やITスキルに優れた優秀な人材が不可欠です。人材獲得競争が激化する中、採用の強化と教育研修の充実に努めていますが、十分な人材を確保できない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。



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