※本記事は、株式会社ヨンドシーホールディングス の有価証券報告書(第75期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヨンドシーホールディングスってどんな会社?
ジュエリーブランド「4℃」やアパレル事業を展開する持株会社です。M&Aにより事業領域を拡大しています。
■(1) 会社概要
1950年に繊維製品販売の十和織物として設立されました。1986年にジュエリー事業を担うエフ・ディ・シィ・プロダクツを設立し、2006年には純粋持株会社体制へ移行、現在の商号へ変更しました。主要事業としてアパレルとジュエリーを展開する中、2024年12月に高級ブランド時計のリユース事業を行う羅針を子会社化し、新たな成長領域を取り込んでいます。
2025年2月28日時点で、連結従業員数は1,076名、単体従業員数は11名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は第一生命保険、第3位は広島銀行と、金融機関や機関投資家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.14% |
| 第一生命保険(常任代理人日本カストディ銀行) | 4.99% |
| 広島銀行(常任代理人日本カストディ銀行) | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は増田英紀氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 増田 英紀 | 代表取締役社長 | 2003年アージュ入社。同社社長、ヨンドシーホールディングス常務執行役員などを経て、2022年3月より現職。 |
| 岡藤 一朗 | 代表取締役専務 | 1987年入社。アスティ社長、エフ・ディ・シィ・プロダクツ社長などを歴任。2024年3月より現職。 |
| 西村 政彦 | 常務取締役常務執行役員財務担当 | 1985年入社。財務部長、取締役執行役員財務担当などを経て、2025年3月より現職。 |
| 新井 宏 | 取締役執行役員アスティ担当 | 1993年入社。アスティ取締役執行役員、アスコット社長などを経て、2024年5月より現職。 |
| 嵩下 昌宏 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1985年三井銀行入行。ヨンドシーホールディングス執行役員監査室長などを経て、2021年5月より現職。 |
社外取締役は、児玉直樹(元カインズ常務取締役)、北川展子(島田みらい法律事務所弁護士)、河添博(河添博税理士事務所税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ブランド事業」、「アパレル事業」を展開しています。
■(1) ブランド事業
「4℃」「Canal 4℃」等のジュエリーブランドにおいて、企画・製造・販売の一貫したビジネスを展開しています。また、2024年より高級ブランド時計のリユース販売も開始し、確かな鑑定力と豊富なラインナップを強みに事業を拡大しています。主な顧客は一般消費者です。
ジュエリー販売による代金や、時計リユース品の販売代金が主な収益源です。運営は主に、ジュエリー事業を担う株式会社エフ・ディ・シィ・プロダクツとその子会社、および時計リユース事業を担う株式会社羅針が行っています。
■(2) アパレル事業
アパレルや雑貨を中心に、海外生産背景を強みとしたOEM・ODMメーカー機能と、デイリーファッション等のリテール機能を展開しています。メーカー機能では大手アパレルや専門店、GMSが顧客であり、リテール機能では一般消費者が顧客となります。
メーカー機能では取引先企業からの製品販売代金、リテール機能では店舗での商品販売代金が収益源です。運営は、メーカー機能を担う株式会社アスティとその子会社、リテール事業を展開する株式会社アージュなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年2月期から2025年2月期までの5期間において、売上高は400億円前後で推移していましたが、直近の2025年2月期にはM&A効果等により459億円へと大きく伸長しました。一方、経常利益は20億円台前半から中盤で推移しており、売上高の増加にもかかわらず利益率は低下傾向にあります。当期純利益は10億円から20億円の範囲で推移しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 394億円 | 381億円 | 395億円 | 395億円 | 459億円 |
| 経常利益 | 32億円 | 23億円 | 23億円 | 25億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 8.1% | 6.0% | 5.9% | 6.4% | 5.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 19億円 | 10億円 | 19億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は395億円から459億円へと約16%増加しました。しかし、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったため、売上総利益率は49.5%から43.4%へと低下しています。販売費及び一般管理費も増加した結果、営業利益は21億円から20億円へと微減となりました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 395億円 | 459億円 |
| 売上総利益 | 195億円 | 199億円 |
| 売上総利益率(%) | 49.5% | 43.4% |
| 営業利益 | 21億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、借地借家料が50億円(構成比28%)、給料及び手当が46億円(同26%)を占めています。また、売上原価は売上高の56.6%を占めています。
■(3) セグメント収益
ブランド事業は、女性客の売上増加や新規連結子会社の寄与により大幅な増収となり、利益も増加しました。アパレル事業は、海外生産基盤を活かした取引拡大や「パレット」の出店継続により増収となりましたが、利益面では若干の減益となりました。全体としては増収ながら、先行投資等の影響もあり利益の伸びは限定的でした。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ブランド事業 | 170億円 | 217億円 | 14億円 | 15億円 | 7.0% |
| アパレル事業 | 225億円 | 242億円 | 10億円 | 10億円 | 4.2% |
| 連結(合計) | 395億円 | 459億円 | 21億円 | 20億円 | 4.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFで得た資金に加え、財務CFでの調達資金を用いて積極的な投資を行っている「積極型」です。特に当期は子会社株式取得に伴う支出が大きく、投資CFが大幅なマイナスとなりました。資金調達は長期借入れを中心に行われています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 30億円 |
| 投資CF | -11億円 | -105億円 |
| 財務CF | -18億円 | 76億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
人間尊重の基本理念のもと、商品やサービスの提供を通して人々の快適な生活づくりに貢献することを最大の使命としています。具体的には、「お客様に信頼される企業」「社員に夢を与える企業」「社会に貢献できる企業」「株主に期待される企業」を目指すべき姿として掲げています。
■(2) 企業文化
「人間尊重」を基本理念とし、変革を恐れず挑戦し続ける企業文化を大切にしています。顧客、社員、取引先、株主など取り巻く人々に対する責任を果たすため、一層の高収益企業を目指すとともに、グループの結束力を強化する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
株主還元を重要な経営課題と位置づけ、総還元性向の向上や自己資本の圧縮に取り組んでいます。将来的な目標として以下の数値を掲げています。
* のれん償却前ROE:10%以上
* DOE(株主資本配当率):4%以上
* 1株当たり年間配当:100円
■(4) 成長戦略と重点施策
「Challenge for Future 未来への挑戦」をスローガンに、2030年に向けた成長基盤の構築に取り組んでいます。ブランド事業ではMD改革やOMO戦略の推進、時計リユース事業の拡大を図り、アパレル事業では素材開発の強化や店舗出店を継続します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人間尊重を基本理念とし、「人財」を最大の財産と捉えています。多様な人材の育成に積極的に取り組み、教育プログラムや研修、OJTを通じて能力開発とキャリア形成を支援しています。また、性別や働き方に関わらず個人が能力を発揮できるダイバーシティ推進や、安心安全な職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 38.8歳 | 8.8年 | 527.3万円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(32.6%)、離職率(27.9%)、男性育休取得率(50.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格高騰リスク
主力商品であるジュエリーの主原材料(金・プラチナ等)は国際相場商品であり、流通価格や為替市場の変動により調達コストが高騰する可能性があります。これらのコスト上昇分を販売価格に十分に転嫁できない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 衣料消費の動向や気象条件によるリスク
アパレル事業は国内の専門店や量販店の売上に依存しており、個人消費や衣料消費の動向に左右されます。また、冷夏や暖冬といった気象条件が季節商品の販売動向に大きく影響するため、天候不順等が業績の変動要因となる可能性があります。
■(3) 中古品の仕入・販売に関するリスク
時計リユース事業(羅針)では、新品と異なり仕入量の調整が難しく、景気や競合動向により安定的な調達が困難になる可能性があります。また、コピー品や盗品の混入リスクがあり、これらによる顧客からの信頼低下が業績に影響を及ぼす可能性があります。



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