ヨンドシーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨンドシーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨンドシーホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、「4℃」ブランドのジュエリーSPA事業や高級時計のリユース販売、アパレルメーカー事業などを展開する企業です。直近の業績では、高級時計のリユース販売を行う羅針の連結効果などもあり、大幅な増収増益のトレンドで推移しています。


※本記事は、株式会社ヨンドシーホールディングスの有価証券報告書(第76期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヨンドシーホールディングスってどんな会社?


ジュエリーの企画・製造・販売とアパレル事業を中核に、多彩なブランドを展開する企業です。

(1) 会社概要


ヨンドシーホールディングスは、1950年に繊維製品の販売を目的に十和織物として設立されました。1986年に子会社エフ・ディ・シィ・プロダクツを設立してブランド事業を本格化し、2006年に純粋持株会社へ移行して上場を果たしました。2013年に現社名へ変更し、直近では2024年に高級時計リユースの羅針を子会社化しています。

同社グループの現在の体制は、連結従業員数1,047名、単体従業員数11名となっています。筆頭株主は信託業務を行う信託銀行で、第2位も同様に金融機関が名を連ねています。また第3位には、子会社と密接な取引関係にある取引先による共栄会が入っています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.16%
広島銀行(常任代理人日本カストディ銀行) 4.94%
4℃ホールディングスグループ共栄会 4.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は増田英紀氏が務めています。社外取締役比率は37.5%となっています。

氏名 役職 主な経歴
増田英紀 代表取締役社長 2003年アージュ入社、常務取締役等を経て、2021年当社代表取締役社長・COO。2022年より現職。
岡藤一朗 代表取締役専務 1987年当社入社。アスティ代表取締役社長等を歴任し、2024年当社代表取締役専務。同年よりエフ・ディ・シィ・プロダクツ代表取締役社長。
西村政彦 常務取締役常務執行役員財務担当 1985年当社入社。財務部長等を経て、2022年常務取締役常務執行役員。羅針常務取締役等を経て、2025年より現職。
新井宏 取締役執行役員アスティ担当 1993年当社入社。アスティで各事業部長を歴任し、2023年同社代表取締役社長。2024年より現職。
嵩下昌宏 取締役(監査等委員)(常勤) 1985年三井銀行(現三井住友銀行)入行。2018年当社入社、経営企画室長等を経て2021年より現職。


社外取締役は、児玉直樹(元カインズ常務取締役)、北川展子(島田みらい法律事務所弁護士)、河添博(河添博税理士事務所税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ブランド事業」および「アパレル事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

ブランド事業

ジュエリーを中心とした商品群において、企画・製造・販売を一貫して行うSPAモデルのブランドビジネスを展開しています。主なブランドとして「4℃」や「CANAL 4℃」を取り扱うほか、高級ブランド時計を専門に、確かな鑑定力による高い信頼性と豊富なラインナップを強みとしたリユース販売を行っています。

収益は一般消費者からの商品販売代金で構成されています。ジュエリー事業の運営は主にエフ・ディ・シィ・プロダクツおよびエフ・ディ・シィ・フレンズが担当し、高級ブランド時計のリユース販売事業の運営は羅針が行っています。

アパレル事業

衣料品や雑貨を核とし、中国やバングラデシュ、ベトナム等の海外生産背景を強みに持つ企画提案型のメーカー機能と、婦人服や服飾雑貨、実用衣料品を中心とした総合衣料品店の小売機能を有しています。メーカー機能では大手アパレルやGMSを主たるマーケットとし、小売事業では西日本を中心にチェーン展開しています。

収益は、メーカー機能における法人取引先からの卸売代金や、小売機能における一般消費者からの商品販売代金などから構成されています。メーカー機能の運営は主にアスティやアスコットが担当し、小売事業のデイリーファッション「パレット」の運営はアージュが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台後半から400億円台で推移していましたが、直近で企業買収の効果もあり大幅な増収を達成しています。一方、利益面では利益率が緩やかな低下傾向にあり、当期利益においても増減を伴いながら推移していることが読み取れます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 381億円 395億円 395億円 459億円 700億円
経常利益 23億円 23億円 25億円 24億円 32億円
利益率(%) 6.0% 5.9% 6.4% 5.1% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 10億円 19億円 2億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な拡大に伴い、売上総利益と営業利益の絶対額は増加しています。しかし、事業構成の変化や原材料価格の高騰などの影響により、売上総利益率および営業利益率は前期間と比較して低下しており、収益性の確保が今後の課題となる構造が見受けられます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 459億円 700億円
売上総利益 199億円 232億円
売上総利益率(%) 43.4% 33.2%
営業利益 20億円 28億円
営業利益率(%) 4.4% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が51億円(構成比25%)、借地借家料が50億円(同24%)、広告宣伝費が21億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


ブランド事業は、MD改革や価格政策による既存店の回復に加え、高級時計リユース販売を行う子会社が通年で寄与し、大幅な増収となりました。アパレル事業は、海外サプライチェーンの強みを活かした卸売が堅調に推移し、微増収となっています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
ブランド事業 217億円 453億円
アパレル事業 242億円 246億円
調整額 -1億円 -1億円
連結(合計) 459億円 700億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」となっています。営業活動による収入と投資有価証券の償還等による資産の現金化を合わせて、借入金の返済や配当金の支払いに充てることで財務体質の改善を進める局面であることがわかります。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 30億円 11億円
投資CF -105億円 23億円
財務CF 76億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「私達は、お客様に信頼される企業を目指します。」「私達は、社員に夢を与える企業を目指します。」「私達は、社会に貢献できる企業を目指します。」「私達は、株主に期待される企業を目指します。」という4つの経営理念を掲げています。商品やサービスの提供を通して、人々の快適な生活づくりに貢献することを最大の使命としています。

(2) 企業文化

人間尊重の基本理念のもと、変革を恐れず、挑戦し続ける企業文化を大切にしています。顧客、社員、取引先、株主など企業を取り巻く人々に対する責任を果たすため、グループの結束力を一段と強化し、一層の高収益企業を目指す価値観が根付いています。

(3) 経営計画・目標

第7次中期経営計画「Challenge for Future 未来への挑戦~2030年に向けて~」をスローガンに、持続的な成長を支える基盤構築に取り組んでいます。利益配分の基本方針として総還元性向の水準向上に取り組み、自己資本の圧縮を図っています。

* のれん償却前ROE 10%以上(将来的目標)
* DOE(自己資本配当率) 4%以上
* 1株当たり年間配当 100円(将来的目標)

(4) 成長戦略と重点施策

経営環境の変化に柔軟に対応し、強固な事業ポートフォリオの構築を目指しています。ブランド事業では、ジュエリー領域の女性支持拡大に向けたMD改革とチャネル戦略を推進し、高級時計領域では高額品の品揃え強化と広告投資を進めます。アパレル事業では、海外サプライチェーンの優位性を活かした卸売拡大や、小売店「パレット」の新規出店による売上拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人財」こそが同社グループ最大の財産であるとの認識のもと、多様な人財の育成に積極的に取り組む方針を掲げています。教育プログラムや研修、OJTを通じて従業員の能力開発とキャリア形成を促す環境を提供し、個人が能力を最大限発揮できるようダイバーシティの推進や、安心安全な職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 38.1歳 7.3年 4,875,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 90.4%
男女賃金差異(正規雇用) 74.4%
男女賃金差異(パート・有期) -

※提出会社において育児休業等取得の対象となる男性従業員がいないため、男性育児休業取得率は該当なしとなっています。また、パート・有期労働者はすべて男性であるため、男女賃金差異は算出されていません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、目標とする女性管理職比率(40.0%)、従業員の離職率(20.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格高騰によるコスト増

ジュエリーの主要原材料である金やプラチナ等の国際商品相場、ならびにアパレル関連の繊維製品や資材の価格変動により、短期間で大幅な仕入価格の上昇が生じるリスクがあります。販売価格への適時な転嫁が困難な場合、利益率の低下や在庫評価の悪化を招く可能性があります。

(2) 中古品の仕入・販売に伴う信頼性低下

高級時計を中心とした中古品は、景気や競合の買取動向により安定的な調達が困難になるリスクがあります。さらに、コピー品や盗品の混入、欠陥商品の見落としが発生した場合、顧客からの信頼喪失やブランドイメージの低下、行政処分などにつながるおそれがあります。

(3) 地政学事象によるサプライチェーン寸断

海外の生産拠点や取引先への依存度が高く、各国・地域の政治情勢の不安定化や通商政策の変更、関税規制の強化などの影響を受けるリスクがあります。これにより、原材料や商品の調達遅延、物流の停滞、調達コストの上昇が発生し、事業運営に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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