※本記事は、タキヒヨー株式会社 の有価証券報告書(第114期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. タキヒヨーってどんな会社?
1751年創業の老舗繊維商社で、アパレル製品や生地の企画・製造・販売を主力に、不動産賃貸等も展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1751年に京呉服・絹織物の卸商として創業し、1912年に株式会社滝兵商店を設立しました。1967年に現在のタキヒヨー株式会社へ商号を変更し、2005年には東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第一部に指定されました。2022年の市場区分見直しを経て、現在は東証スタンダード市場および名証プレミア市場に上場しています。
2025年2月28日現在、連結従業員数は703名、単体従業員数は523名です。筆頭株主は株式会社キョクヨーホールディングスで、第2位は株式会社旭洋興産、第3位は株式会社三菱UFJ銀行です。上位株主には創業家に関連する資産管理会社が含まれていると見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社キョクヨーホールディングス | 27.56% |
| 株式会社旭洋興産 | 4.83% |
| 株式会社三菱UFJ銀行 | 2.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は滝 一夫氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 滝 一夫 | 代表取締役社長執行役員 | 1990年3月同社入社。テキスタイル事業部長、営業部門副統轄などを経て、2011年取締役社長就任。2021年1月より現職。 |
| 武藤 篤 | 取締役専務執行役員社長補佐兼スタッフ担当 | 2006年4月同社入社。執行役員特命担当兼スタッフ部門担当、専務取締役スタッフ部門統轄などを経て、2023年3月より現職。 |
| 板倉 秀紀 | 取締役常務執行役員ガーメントグループマネジャー兼生産統括グループマネジャー | 1994年4月同社入社。アパレル営業部メンズ部長、執行役員アパレルグループ副マネジャーなどを経て、2025年3月より現職。 |
| 土屋 旅人 | 取締役執行役員スタッフ副担当兼グローバルブランドグループマネジャー | 2002年4月同社入社。グローバルトレードグループマネジャー、取締役執行役員などを経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、小笠原 剛(株式会社御園座代表取締役会長)、金子 靖代(株式会社ピーシーデポコーポレーション元取締役副社長執行役員)、鷲野 直久(鷲野公認会計士事務所所長)、海老澤 美幸(三村小松法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレル・テキスタイル関連事業」「賃貸事業」「マテリアル事業」および「その他」事業を展開しています。
■アパレル・テキスタイル関連事業
レディスおよびベビー・キッズ向けを主体とする衣料品と、毛織物を主体とするテキスタイル(生地)の企画・製造・販売を行っています。また、海外子会社による生産管理や輸出業務サポート、国内子会社による縫製やパターン・サンプル製造、物流業務なども行っています。
収益は、主に小売店やアパレルメーカー等の顧客に対する製品・商品の販売代金から得ています。運営は主にタキヒヨー株式会社が行い、生産管理や物流機能の一部をタキヒヨー(上海)貿易有限公司、ティー・エフ・シー株式会社、株式会社タキヒヨー・オペレーション・プラザなどの連結子会社が担っています。
■賃貸事業
不動産の賃貸、管理およびそれらに関連する事業活動を行っています。保有する不動産資産を有効活用し、安定的な収益基盤の一角を担っています。
収益は、テナントやグループ企業からの不動産賃貸料および機器リース料などから得ています。運営は、不動産の賃貸管理等をタキヒヨー株式会社が行い、グループ企業への機器リース等を連結子会社のティー・ティー・シー株式会社が行っています。
■マテリアル事業
合成樹脂や化成品等の販売を行っています。アパレル・テキスタイル事業で培った商社機能を活かし、化学品分野での取引を展開しています。
収益は、顧客に対する合成樹脂、化成品等の販売代金から得ています。運営はタキヒヨー株式会社が行っています。
■その他
フランチャイジーとしての「コメダ珈琲店」の運営や、他社の物流業務受託などを行っています。
収益は、飲食店の売上や物流業務の受託手数料などから得ています。運営はタキヒヨー株式会社および株式会社タキヒヨー・オペレーション・プラザが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は500億円台から600億円台で推移しています。利益面では、過去に赤字を計上した時期もありましたが、直近2期間は黒字を確保しており、特に当期は経常利益、当期純利益ともに前期から大きく増加し、回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 500億円 | 538億円 | 618億円 | 577億円 | 606億円 |
| 経常利益 | -8億円 | -20億円 | 3億円 | 8億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | -1.5% | -3.7% | 0.5% | 1.4% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9億円 | -19億円 | 0.5億円 | 6億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は前期の1.2%から2.2%へと上昇しており、本業の収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 577億円 | 606億円 |
| 売上総利益 | 122億円 | 128億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.2% | 21.0% |
| 営業利益 | 7億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が31億円(構成比27%)、運賃諸掛が24億円(同21%)を占めています。売上原価については、商品仕入による費用が大半を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の「アパレル・テキスタイル関連事業」は増収増益となり、全社の利益増加を牽引しました。「マテリアル事業」も大幅な増収増益を達成しています。「賃貸事業」は安定した収益を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アパレル・テキスタイル関連事業 | 518億円 | 538億円 | 0.8億円 | 5億円 | 0.9% |
| 賃貸事業 | 9億円 | 9億円 | 6億円 | 6億円 | 63.5% |
| マテリアル事業 | 40億円 | 49億円 | 3億円 | 3億円 | 6.8% |
| その他 | 11億円 | 10億円 | -2億円 | -0.4億円 | -4.3% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | 0.0億円 | -0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 577億円 | 606億円 | 7億円 | 13億円 | 2.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**改善型**
本業の営業活動でキャッシュを獲得しつつ、資産の売却等による投資キャッシュ・フローのプラスも合わせて、借入金の返済などの財務活動にお金を回している改善局面です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 26億円 |
| 投資CF | -12億円 | 3億円 |
| 財務CF | -28億円 | -20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「夢のあるおもしろい企業を創り、心の豊かな社会を目指す」を経営理念として掲げています。また、「信用第一」「謙虚利中」「客六自四」という経営哲学に基づき、長年にわたり事業を継続しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業以来の経営哲学である「信用第一」「謙虚利中(謙虚であれば利益はおのずと自分の中に生まれてくる)」「客六自四(利益の六割はお客様へ、四割を自分に)」を重視する文化を持っています。これらを基盤とし、ステークホルダーとの信頼関係を大切にする姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2025年度より新たな中期経営計画(2025-2027年度)「Create Future with Passion」をスタートさせています。この計画では、黒字体質の定着と持続的成長に取り組み、「資本コストと株価を意識した経営」を徹底することを掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コア事業であるアパレル・テキスタイル卸売事業の強靭化を図るとともに、欧米ラグジュアリーブランドとの取引、トレーサブル素材や独自素材の開発、小売事業など「特徴ある」事業との相乗効果を高めることで、ユニークな繊維商社の構築を目指します。また、サステナブルな生産体制の構築や、デジタル技術の実装による業務効率化も推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本への投資を企業価値向上の原動力と位置づけています。「事業貢献に報いるメリハリのある人事制度」として、業績貢献度を重視した人事給与制度へ刷新しました。また、経営層や管理職層への若手および女性の積極登用を進め、組織の活力向上と人的資本の拡充に取り組む方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 42.3歳 | 14.0年 | 5,097,347円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.0% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 61.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 53.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 消費者の嗜好の変化などに伴うリスク
同社グループが取り扱う衣料品は、ファッショントレンドや景気動向の影響を受けやすい傾向にあります。情報力や分析力の強化に努めていますが、競合の激化や予測と異なるトレンド変化に対し適切な商品政策が実施できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替に関するリスク
仕入高に占める海外商品の依存度が高く、主として米ドル決済を行っています。為替予約によるヘッジを行っていますが、予期せぬ為替レートの変動が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 生産地に関するリスク
中国等のアジア地域における生産依存度が高くなっています。そのため、現地の法律変更、政治体制の変化、テロ、災害、感染症の流行などにより商品調達に支障が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 販売先に関するリスク
上位販売先への売上高依存度が高い傾向にあります。主力販売先との関係強化や新規販路拡大に努めていますが、販売先の経営方針変更や予期せぬ事態による取引の中断、あるいは販売先の経営破綻による貸倒損失の発生などが生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。



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