松屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋は東証プライム市場に上場し、銀座・浅草を拠点とする百貨店業を中心に、飲食業やビル総合サービスなどを展開する企業です。直近の業績は、富裕層の消費が堅調な一方でインバウンド需要の変化等の影響を受け、減収減益となっています。顧客第一主義を掲げ、オムニチャネル化の推進等により収益力の強化を図っています。


※本記事は、株式会社松屋の有価証券報告書(第157期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年6月1日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松屋ってどんな会社?


百貨店業を中心に、飲食やビル総合サービスなどの事業を展開する企業の特徴を解説します。

(1) 会社概要


1869年に横浜市で鶴屋呉服店として創業し、1889年に東京神田へ進出して百貨店としての基礎を築きました。1925年に銀座へ本店を移し、1961年に東証二部、1971年に東証一部へ上場しました。近年はオムニチャネル戦略を推進するため、2024年にMATSUYA GINZA.comを設立しています。

現在の従業員数は連結で871名、単体で561名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は松屋取引先持株会、第3位は三菱UFJ銀行と続いています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.61%
松屋取引先持株会 5.51%
三菱UFJ銀行 4.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は古屋毅彦氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
古屋毅彦 代表取締役社長執行役員 1996年東京三菱銀行入行。2001年松屋入社。コロンビア大修士修了後、執行役員本店長、常務執行役員営業本部長等を経て、2026年3月より現職。
秋田正紀 取締役会長兼取締役会議長 1991年松屋入社。1999年取締役就任後、常務、専務等を経て2007年に代表取締役社長就任。営業本部長などを歴任し、2023年3月より現職。
横関直樹 取締役専務執行役員社長補佐、経営企画室長、管財部・広報部担当 1984年松屋入社。営業企画部長、本店長などを歴任。2018年に取締役常務執行役員就任。事業戦略部等の担当を経て、2026年3月より現職。
森田一則 取締役専務執行役員経営企画部・グループ政策部・サステナビリティ戦略部・人事部担当、総務部・経理部管掌 1986年松屋入社。人事部長、経営企画部長などを経て、2021年取締役常務執行役員就任。各管理部門を幅広く担当し、2026年3月より現職。
今井幸夫 取締役常務執行役員営業本部長、営業戦略部担当、CRM推進・オムニチャネル推進担当 1984年三菱銀行入行。2013年松屋執行役員就任。顧客戦略部長や営業副本部長を経て、2023年取締役上席執行役員就任。2026年3月より現職。
柳澤昌之 取締役常勤監査等委員 1985年松屋入社。関連会社総務部長を経て、同社経理部長や総務部長などを歴任。コンプライアンス委員会等を担当し、2024年5月より現職。


社外取締役は、柏木斉(元リクルートホールディングス社長)、武藤潤(元鹿島石油社長)、古屋勝正(元富国生命保険副社長)、中村隆夫(元デジタルガレージ副社長)、吉田正子(元東京海上日動火災保険常務)、井上ゆかり(日本ケロッグ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「百貨店業」「飲食業」「ビル総合サービス及び広告業」および「その他」事業を展開しています。

百貨店業


同社グループの主力事業であり、銀座や浅草に密着した店舗において衣料品、家具、雑貨、食料品などの販売を行っています。顧客に寄り添った商品提案やおもてなしを強化し、国内外の顧客に対して魅力的な商品やサービスを提供しています。

主な収益源は、店舗での商品販売による売上や、取引先からの販売手数料です。また、ポイント制度や商品券の発行なども行っています。運営は主に親会社である同社および子会社のMATSUYA GINZA.comが行っています。

飲食業


飲食店および結婚式場の経営などを展開し、一般消費者や婚礼利用客に対して多様な飲食サービスを提供しています。施設管理部門なども含め、各事業所における安定的なサービス提供と採算管理の徹底に努めています。

収益源は、飲食店舗での飲食代金や、結婚式場等における婚礼・宴会サービスの提供に対する対価です。運営は主に子会社のアターブル松屋が行っています。

ビル総合サービス及び広告業


店舗等の警備、清掃、設備保守・工事をはじめ、建築内装工事、装飾、宣伝広告業務など、ビル管理とプロモーションに付随する幅広いサービスを提供しています。クライアントや利用者の満足度最大化を目指しています。

収益源は、同社グループ内外からの業務受託に伴うサービス提供料や、工事契約に基づく対価です。運営は主に子会社のシービーケーが行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、用度品・事務用品の納入、キャラクターショップの運営、輸入商品の販売、商品販売の取次ぎ、商品検査業務の受託、および不動産賃貸業などを幅広く手がけています。

収益源は、各サービスや商品の販売代金、業務受託料、および不動産の賃貸収入などです。運営は東栄商会、スキャンデックス、松屋友の会、銀座インズなどの子会社および関連会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は新型コロナウイルスの影響で一時減少したものの、その後は回復傾向にあり、直近では457億円となっています。経常利益も黒字基調を維持していますが、当期は減収減益となりました。利益率は5%台で推移しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 650億円 344億円 413億円 481億円 457億円
経常利益 -21億円 3億円 29億円 45億円 26億円
利益率(%) -3.2% 0.8% 7.1% 9.3% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 35億円 26億円 30億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も減少しています。売上総利益率は54%台と安定して推移していますが、営業利益率は9.3%から5.8%に低下しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 481億円 457億円
売上総利益 260億円 248億円
売上総利益率(%) 54.0% 54.3%
営業利益 45億円 26億円
営業利益率(%) 9.3% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、その他が76億円(構成比34%)、役員報酬及び給料手当が61億円(同27%)、賃借料が27億円(同12%)を占めています。売上原価は209億円で、売上高に対する構成比は46%となっています。

(3) セグメント収益


主力の百貨店業は、インバウンド需要の変化等の影響を受けて減収減益となりました。一方で、飲食業やビル総合サービス及び広告業は堅調に推移しており、増収増益を確保しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
百貨店業 400億円 377億円 42億円 21億円 5.6%
飲食業 34億円 35億円 0.3億円 0.4億円 1.1%
ビル総合サービス及び広告業 27億円 24億円 1.0億円 1.4億円 5.7%
その他 20億円 22億円 2.4億円 3.3億円 15.3%
連結(合計) 481億円 457億円 45億円 26億円 5.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益と資産売却で借入返済を進める改善型の局面となっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 31億円 47億円
投資CF -55億円 1.4億円
財務CF 31億円 -40億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「顧客第一主義」「共存共栄」「人間尊重」「堅実経営」「創意工夫」を基本方針としています。中でも「顧客第一主義」を中心に据え、顧客満足度の向上を図ることで、永続的な拡大と発展を目指しています。これらの活動を通じ、広く関係者にとって魅力ある企業グループであり続けることで社会に貢献することを理念に掲げています。

(2) 企業文化


「未来に希望の火を灯す 幸せになれる場を創造する」をMISSIONとして定めています。経済的価値と社会的価値の同期化を重視し、地域の一員として社会課題の解決に取り組む文化が醸成されています。従業員一人ひとりが働きがいを感じ、互いを尊重し合う組織風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


経営計画「Global Destinationとなることを目指して」のもと、環境変化に柔軟に対応しながら単年度目標の完遂と長期視点での変革を目指しています。足元の外部環境の変化を踏まえ、以下の通り数値計画を適正化しています。

* 2026年度連結営業利益目標:18億円
* 2027年度連結営業利益目標:20〜25億円
* 2030年度連結営業利益目標:40〜50億円

(4) 成長戦略と重点施策


「銀座集中投資」「地域共創事業を通じた輪の拡大」「プレゼンス強化」の3つを戦略の柱としています。ID顧客を基軸にリアルとデジタルの融合を一層加速させ、CRM戦略の強化やオムニチャネル推進基盤の構築に取り組みます。また、サステナビリティ経営や人的資本への投資を通じて持続的な成長を実現します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も大切な経営資源と位置づけ、従業員の「働く人の幸せ」が企業価値向上の起点になると考えています。変化への的確な対応力を持つ人材を育成するため、実力主義に基づく人事賃金制度やキャリア開発支援を提供しています。また、多様な人材が強みを発揮できるよう、ワークライフバランスの推進など働きやすい環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 47.5歳 21.9年 7,323,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.7%
男女賃金差異(正規) 73.4%
男女賃金差異(非正規) 63.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用人材比率(11.4%)、一人当たり年間平均年次有給休暇取得日数(13.8日)、従業員エンゲージメント調査スコア(71.1ポイント)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営戦略・環境リスク


国際情勢によるインバウンド需要の変化や、経済情勢・物価上昇によるコスト構造の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、社会のデジタル化やサステナビリティ対応の遅れが、ビジネスモデルの維持や成長の妨げとなるリスクが懸念されています。

(2) オペレーショナルリスク


大規模な自然災害、感染症の拡大、事故などにより、店舗の営業休止や売上の減少が生じる可能性があります。また、販売する商品の瑕疵や食品衛生上の問題が発生した場合、損害賠償負担や社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼすリスクが想定されています。

(3) コンプライアンスリスク


消費者契約法や各種関連法令を遵守できなかった場合、事業活動の制限や多額の費用の発生が生じるおそれがあります。さらに、顧客の個人情報が流出・漏洩した際には、信用の毀損や損害賠償対応を余儀なくされ、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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