松屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋は東京証券取引所プライム市場に上場し、銀座と浅草に拠点を置く百貨店業を主力事業としています。直近の業績は、インバウンド需要の回復や富裕層消費の堅調さにより、売上高・各利益ともに前期を上回る増収増益を達成しました。積極的な店舗改装やオムニチャネル戦略を推進しています。


※本記事は、株式会社松屋 の有価証券報告書(第156期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松屋ってどんな会社?


銀座と浅草に店舗を構える老舗百貨店です。「顧客第一主義」を掲げ、銀座という立地特性を活かした高感度な提案を行っています。

(1) 会社概要


同社は1869年に創業し、1919年に株式会社として設立されました。1925年に銀座本店、1931年に浅草支店を開設し、百貨店としての地位を確立しました。その後、1971年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。近年では2024年に株式会社MATSUYA GINZA.comを設立するなど、デジタル戦略を強化しています。

2025年2月28日時点の連結従業員数は862名(単体543名)です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は取引先持株会、第3位は主要取引銀行である三菱UFJ銀行です。第4位には浅草店の建物を賃貸している東武鉄道が入っています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.71%
松屋取引先持株会 5.39%
三菱UFJ銀行 4.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表者は代表取締役社長執行役員の古屋毅彦氏が務めています。社外取締役比率は53.8%です。

氏名 役職 主な経歴
秋田 正紀 取締役会長兼取締役会議長 1991年同社入社。2007年代表取締役社長、2023年3月より現職。
古屋 毅彦 代表取締役社長執行役員営業本部長 1996年東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入社。2001年同社入社。2023年3月より現職。
横関 直樹 取締役専務執行役員社長補佐、経営企画室長、事業戦略部・管財部・広報部担当 1984年同社入社。本店長、営業本部長等を経て2025年3月より現職。
森田 一則 取締役専務執行役員経営企画部・グループ政策部・サステナビリティ戦略部・総務部・人事部担当、経理部管掌 1986年同社入社。人事部長、総務部長等を経て2025年3月より現職。
今井 幸夫 取締役常務執行役員営業副本部長、デジタル化推進部担当、CRM推進・オムニチャネル推進担当 1984年三菱銀行入社。2013年同社入社。顧客戦略部長等を経て2025年3月より現職。
柳澤 昌之 取締役常勤監査等委員 1985年同社入社。経理部長、総務部長等を経て2024年5月より現職。


社外取締役は、根津嘉澄(東武鉄道会長)、柏木斉(元リクルート社長)、武藤潤(元鹿島石油社長)、古屋勝正(元富国生命副社長)、中村隆夫(弁護士)、吉田正子(元東京海上日動常務取締役)、石戸奈々子(慶應義塾大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「百貨店業」「飲食業」「ビル総合サービス及び広告業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 百貨店業


銀座店および浅草店において、衣料品、雑貨、食料品等の販売を行っています。また、Eコマース事業やこれらに関連する製造加工、輸出入業、卸売業も手掛けています。

主に一般顧客に対する商品販売により収益を得ており、一部取引では消化仕入契約に基づく純額表示を行っています。運営は主に株式会社松屋が行っており、連結子会社である株式会社MATSUYA GINZA.comもこの事業を営んでいます。

(2) 飲食業


レストランやカフェなどの飲食店の運営、および結婚式場の経営を行っています。

一般顧客への飲食サービスの提供や、結婚式の挙行に伴うサービス料等が主な収益源です。運営は連結子会社である株式会社アターブル松屋が行っています。

(3) ビル総合サービス及び広告業


ビルの警備、清掃、設備保守、工事、内装工事、装飾、宣伝広告業務などを行っています。

ビルオーナーやテナント等からの業務受託料や工事代金が収益源となります。主に同社グループ向けのサービス提供を行っていますが、外部顧客へのサービスも展開しています。運営は連結子会社である株式会社シービーケーが行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、用度品・事務用品の納入、キャラクターショップ運営、輸入商品の販売、商品販売の取次ぎ、商品検査受託、不動産賃貸業などを行っています。

各サービスの提供や商品の販売、不動産賃貸料などが収益源です。運営は、株式会社東栄商会、株式会社スキャンデックス、株式会社松屋友の会、株式会社エムジー商品試験センター、株式会社銀座インズ、株式会社銀座五丁目管財などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、2021年2月期は感染症拡大の影響を強く受け赤字となりましたが、その後は回復基調にあります。特に2023年2月期以降は黒字転換し、売上高・利益ともに拡大傾向が続いています。最新の2025年2月期では、売上高、各利益段階ともに過去5年間で最高水準に達しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 527億円 650億円 344億円 413億円 481億円
経常利益 -40億円 -21億円 3億円 29億円 45億円
利益率(%) -7.5% -3.2% 0.8% 7.1% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -44億円 10億円 44億円 26億円 24億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。これは富裕層消費やインバウンド需要の取り込みによるものです。営業利益率は大きく向上しており、収益性が高まっています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 413億円 481億円
売上総利益 217億円 260億円
売上総利益率(%) 52.6% 54.0%
営業利益 30億円 45億円
営業利益率(%) 7.2% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が72億円(構成比34%)、給与手当が58億円(同27%)を占めています。

(3) セグメント収益


百貨店業は、インバウンド売上の好調や富裕層向け商品の販売増により、大幅な増収増益となりました。飲食業は婚礼組数の獲得等により増収増益、ビル総合サービス及び広告業も外部の大型受注により増収増益となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
百貨店業 343億円 400億円 29億円 42億円 10.5%
飲食業 32億円 34億円 0.6億円 0.3億円 0.8%
ビル総合サービス及び広告業 21億円 27億円 0.1億円 1億円 3.8%
その他 16億円 20億円 2億円 2億円 11.8%
調整額 -36億円 -40億円 -0.5億円 -0.7億円 -
連結(合計) 413億円 481億円 30億円 45億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、事業活動を通じて安定的に資金を生み出し、将来の成長に向けた投資と株主への還元をバランス良く行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、本業で得た利益を中心に、税金等調整前当期純利益やその他の要因により、潤沢な収入を確保しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の事業拡大を見据えた設備投資や事業取得のために支出しましたが、その規模は大きくなっています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入れによる資金調達や借入金の返済、配当金の支払いなど、資金調達と返済のバランスを取りながら、安定的な資金繰りを実現しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 23億円 31億円
投資CF -40億円 -55億円
財務CF -13億円 31億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「顧客第一主義」「共存共栄」「人間尊重」「堅実経営」「創意工夫」を経営方針としています。特に「顧客第一主義」を中心に据え、顧客満足度の向上を図ることで支持されるグループを目指しています。また、経済価値と社会価値を同期化させた共通価値の創造を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「MISSION」として「未来に希望の火を灯す 幸せになれる場を創造する」を掲げています。変化の激しい時代において、長期的な視点で企業の経済的成長と社会貢献を両立させることを重視しており、サステナビリティ経営や人的資本経営にも取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2050年度までの長期的視野に立ち、2027年度を第1フェーズ、2030年度を第2フェーズとする経営計画「Global Destination」を策定しています。

* 2027年度:連結営業利益 55億円
* 2030年度:連結営業利益 80~85億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ホームタウンである銀座への「銀座集中投資」、日本各地における「地域共創事業を通じた輪の拡大」、世界に向けた「プレゼンス強化」の3つを戦略の方向性として掲げています。第1フェーズではオムニチャネル戦略を推進し、店舗・システム・不動産・人材への投資を実行して事業基盤を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も大切な経営資源と位置づけ、従業員の幸せを起点としたエンゲージメント向上に取り組んでいます。自律的なキャリア形成を支援する能力開発や実力主義に基づく人事制度を展開し、多様な人材が活躍できる環境整備を推進しています。また、女性管理職比率の向上など、ダイバーシティ推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 47.1歳 22.1年 7,455,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.8%
男女賃金差異(正規) 73.1%
男女賃金差異(非正規) 60.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用人材比率(8%)、一人当たり月間平均時間外労働時間(11.1時間)、従業員エンゲージメント調査スコア(73.8ポイント)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢


同社グループはインバウンド売上の比重が高いため、戦争や政治的対立などの国際秩序の変調によるサプライチェーンの分断や、それらに伴うインバウンド需要の減少・喪失により、業績に影響を受ける可能性があります。これに対し、不動産関連事業の育成や国内地域共創事業の拡大などでリスク分散を図っています。

(2) 経済情勢・需要動向・社会構造等


主要セグメントである百貨店業や飲食業の需要は、国内外の景気、消費動向、株式相場などの経済情勢や、人件費・物価上昇によるコスト構造の変化の影響を受けます。これにより業績が影響を受ける可能性があります。同社は、環境変化に柔軟に対応する経営計画を実行することで、持続的な成長に取り組んでいます。

(3) 事業戦略


少子高齢化や消費者の行動様式の変化、デジタル化の進展などの市場変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。特にeコマース市場の拡大やデジタル対応の遅延はリスク要因です。これに対し、オムニチャネルプラットフォームの構築や、独自の売場づくり、CRM強化などを進め、ビジネスモデルを進化させています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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