近鉄百貨店 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

近鉄百貨店 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

近鉄百貨店は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、百貨店業を主力として卸・小売業や内装業などを展開する企業です。直近の業績は、あべのハルカス近鉄本店の外商売上増や構造改革の推進等により増収増益を達成しました。今後は地域共創と収益力向上を通じ、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。


※本記事は、株式会社近鉄百貨店の有価証券報告書(第132期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 近鉄百貨店ってどんな会社?


百貨店業を中心に、卸・小売や内装事業などを展開する地域共創型企業です。

(1) 会社概要


1936年に大軌百貨店として開業し、1949年に大阪証券取引所へ上場しました。2001年に旧近鉄百貨店を合併して現在の商号に変更し、2013年には東京証券取引所へ上場しています。2014年には旗艦店であるあべのハルカス近鉄本店をグランドオープンさせるなど、事業基盤を拡大してきました。

同社グループの従業員数は連結で1,954名、単体で1,503名です。筆頭株主は親会社である近鉄グループホールディングスであり、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
近鉄グループホールディングス 63.12%
日本カストディ銀行(りそな銀行再信託分・近畿日本鉄道退職給付信託口) 3.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 2.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員は梶間隆弘氏が務めており、社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
梶間隆弘 代表取締役取締役社長社長執行役員 1984年中部近鉄百貨店入社。2015年同社四日市店長、2018年執行役員、2023年取締役常務執行役員を経て、2024年より現職。
長野公俊 代表取締役副社長執行役員社業全般につき社長執行役員補佐商業施設運営本部長 1990年近畿日本鉄道入社。2014年同社営業統括本部営業戦略部長等を経て、2025年より現職。
八木徹 代表取締役専務執行役員監査部、総合企画本部、総務本部担任コンプライアンス推進本部長及び業務本部長 1984年近畿日本鉄道入社。近鉄不動産常務取締役経理本部長などを経て、2021年取締役常務執行役員。2024年より現職。
北村浩 取締役常務執行役員本店長 1985年旧近鉄百貨店入社。2016年同社奈良店副店長、2019年執行役員、2023年常務執行役員を経て、2024年より現職。
秋田拓士 取締役会長 1981年旧近鉄百貨店入社。2015年同社取締役専務執行役員、2019年取締役社長などを経て、2024年より現職。
小林哲也 取締役 1968年近畿日本鉄道入社。同社取締役社長や近鉄グループホールディングス取締役会長などを歴任。2019年より現職。


社外取締役は、向井利明氏(元関西電力取締役副社長)、吉川一三氏(元住江織物取締役社長)、廣瀬恭子氏(広瀬製作所取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、百貨店業、卸・小売業、内装業、不動産業およびその他事業を展開しています。

(1) 百貨店業


主にあべのハルカス近鉄本店や各地域の店舗において、衣料品、食料品、雑貨などの販売を行うほか、顧客向けの各種サービスを提供しています。また、各種サービスの提供を目的とした前払式の商品売買の取次ぎも行っています。

収益源は、一般消費者や法人顧客に対する商品の販売代金などです。事業の運営は主に近鉄百貨店が行っており、前払式の商品売買の取次ぎについては近鉄友の会が担っています。

(2) 卸・小売業


主に食料品の製造および販売と、輸入自動車の販売を行っています。量販店などへの卸売りや、一般消費者向けの新車・中古車販売およびアフターサービスなどを提供しています。

収益源は、商品の販売代金や自動車の整備・修理などによるサービス提供料です。運営主体としては、シュテルン近鉄が輸入自動車の販売を、ジャパンフーズクリエイトが食料品の製造および販売を行っています。

(3) 内装業


ホテルや学校、商業施設などを対象とした内装工事等の受注および施工を行っています。グループ内の店舗改装などに加え、新規顧客の開拓による外部からの受注拡大にも注力しています。

収益源は、顧客から受け取る内装工事などの施工代金です。事業の運営は主に近創が行っており、近鉄百貨店からも内装工事等の発注を受けています。

(4) 不動産業


あべの・天王寺エリアを中心とした商業施設や医療モールなど、同社が保有する物件の賃貸事業を展開しています。エリア全体の魅力向上に向けた施設運営を行っています。

収益源は、入居テナントなどから受け取る不動産の賃貸収入です。この事業の運営は、主に近鉄百貨店が単独で行っています。

(5) その他事業


百貨店で取り扱う販売商品の配送などをはじめとした運送業を展開しています。グループ内の物流機能として重要な役割を担っています。

収益源は、業務委託などに伴う運送サービス料です。事業の運営は近畿配送サービスが行っており、近鉄百貨店からも業務の委託を受けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は着実な増加傾向を示しています。経常利益も初年度の赤字から黒字転換を果たしたのち、継続的に利益水準を切り上げており、利益率も改善傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 981億円 1078億円 1135億円 1151億円 1255億円
経常利益 -6億円 19億円 39億円 51億円 66億円
利益率(%) -0.6% 1.8% 3.4% 4.5% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -12億円 15億円 21億円 31億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益状況を見ると、増収に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も改善しており、本業の収益力が向上していることが伺えます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 1151億円 1255億円
売上総利益 582億円 638億円
売上総利益率(%) 50.5% 50.8%
営業利益 54億円 67億円
営業利益率(%) 4.7% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が124億円(構成比22%)、賃借料が118億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である百貨店業が大幅な増収となり、連結全体の売上成長を牽引しています。内装業も順調に売上を伸ばした一方、その他事業は減収となりました。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
百貨店業 930億円 1032億円
卸・小売業 149億円 150億円
内装業 40億円 45億円
不動産業 3億円 3億円
その他事業 29億円 24億円
連結(合計) 1151億円 1255億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てる「健全型」となっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 67億円 152億円
投資CF -39億円 -125億円
財務CF -40億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念「市民生活の向上と地域社会の発展に貢献し続ける」に基づき、より素敵な暮らしづくりを応援し、幅広い品揃えときめ細かなサービスの提供を通じて、すべてのステークホルダーの期待に応えることを使命としています。地域の発展に貢献する企業であり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


「創造と革新の姿勢をもって、積極果敢に目標と取組む」「顧客第一の精神に徹し、まごころと感謝の念をもって奉仕する」などを経営の基本方針に掲げています。相互信頼を基盤として取引先との共存共栄を図り、理解と協調に基づく働きがいのある職場環境づくりを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、収益性の向上と最適な株主還元を追求し、資本コストや株価を意識した経営の実現を最重要課題と位置付けています。最終年度の経営目標として以下の数値を掲げています。

* 連結営業利益 65億円
* ROE 9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「くらしを豊かにするプラットフォーマー」を目指し、あべの・天王寺エリアを最重要拠点として重点投資を行うほか、全社顧客戦略を通じて顧客生涯価値の最大化を図ります。また、地域店の収益構造改革や新規事業ポートフォリオの育成、人的資本経営やDXの推進など、将来への基盤整備に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人財コンセプト「自律した百“価”店人の創出」に基づき、社員の自主・自律を尊重し、新たな価値創造に挑戦する企業風土の醸成に取り組んでいます。多様性を尊重し、柔軟な発想を持つ人財の採用や、ジョブローテーションと選択式の教育メニューを通じたキャリア形成の支援など、持続的な企業価値向上を目指した人財育成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 46.9歳 22.2年 5,196,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.6%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 83.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 消費動向の変化と競争激化リスク
百貨店業は一般消費者を対象とするため、人口減少や景気動向、消費行動の変容などの影響を大きく受けます。デジタル化の進行やインバウンド需要の変動など、環境変化のスピードが加速しており、これらに適切に対応できない場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品品質と信用維持のリスク
消費者向けの取引が主体であり、商品の品質や食品の安全性に関する問題が生じた場合、社会的信用の毀損や売上高の減少を招く恐れがあります。また、法人向けなどの掛売取引において、取引先の倒産による貸倒れが発生するリスクも存在します。

(3) 新規事業展開に伴う不確実性リスク
企業の成長と競争力向上のため、従来の枠組みにとらわれない新規事業への取り組みを進めています。しかし、新規事業は不確実な要素が多く、市場ニーズの変化などにより事業の確立が困難となった場合、投資回収の遅れなどで業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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