近鉄百貨店 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

近鉄百貨店 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の百貨店大手です。近鉄沿線を地盤に、あべのハルカス近鉄本店を中核とする百貨店業を展開しています。直近の業績は、インバウンド需要の回復や高額商品の販売好調により、売上高は1151億円(前期比1.4%増)、営業利益は54億円(同37.2%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社近鉄百貨店 の有価証券報告書(第131期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 近鉄百貨店ってどんな会社?


近鉄グループの中核企業として、あべのハルカス近鉄本店をはじめとする百貨店運営や商業施設運営を行う会社です。

(1) 会社概要


1920年に京都物産館として開業し、1936年には近鉄グループとしての百貨店事業(大軌百貨店)を開始しました。1949年に株式を上場し、2001年の合併を経て現在の商号となりました。2014年には日本一の超高層ビル内に「あべのハルカス近鉄本店」をグランドオープンさせ、関西のランドマークとして定着しています。

同社の連結従業員数は1,962名、単体では1,519名です。筆頭株主は親会社の近鉄グループホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同様に信託銀行となっています。

氏名 持株比率
近鉄グループホールディングス 63.12%
株式会社日本カストディ銀行 3.57%
野村信託銀行株式会社 3.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員は梶間隆弘氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
秋田 拓士 取締役会長 旧近鉄百貨店入社後、近鉄リテールサービス専務などを経て、2019年より同社社長。2024年より現職。
梶間 隆弘 代表取締役取締役社長社長執行役員 中部近鉄百貨店入社後、四日市店長、常務執行役員などを経て、2024年より現職。
長野 公俊 代表取締役副社長執行役員社業全般につき社長執行役員補佐商業施設運営本部長 近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。近鉄リテーリング企画部GM、同社専務執行役員などを経て2025年より現職。
八木  徹 代表取締役専務執行役員監査部、総合企画本部、総務本部担任コンプライアンス推進本部長及び業務本部長 近畿日本鉄道入社。近鉄不動産常務、同社常務執行役員などを経て2024年より現職。
北村 浩 取締役常務執行役員本店長 旧近鉄百貨店入社。奈良店副店長、執行役員などを経て2024年より現職。
小林 哲也 取締役 近畿日本鉄道入社。近鉄グループホールディングス会長などを歴任し、2024年より同社相談役。2019年より現職。


社外取締役は、向井利明(元関西電力取締役副社長)、吉川一三(元住江織物社長)、廣瀬恭子(広瀬製作所社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「百貨店業」、「卸・小売業」、「内装業」、「不動産業」、「その他事業」を展開しています。

**(1) 百貨店業**
あべのハルカス近鉄本店を旗艦店とし、近鉄沿線を中心に百貨店を運営しています。衣料品、食料品、身の回り品、家庭用品などを一般顧客へ販売するほか、友の会運営による前払式特定取引業も行っています。
収益は主に顧客への商品販売代金や友の会会費から構成されます。運営は主に同社が行い、株式会社近鉄友の会が友の会事業を担当しています。

**(2) 卸・小売業**
輸入自動車の販売や食料品の製造・販売を行っています。メルセデス・ベンツなどの高級輸入車や、水産加工品を中心とした食料品を取り扱っています。
収益は自動車や食料品の販売代金です。運営は輸入車販売を株式会社シュテルン近鉄が、食料品製造・販売を株式会社ジャパンフーズクリエイトが行っています。

**(3) 内装業**
商業施設やホテル、オフィスなどの内装工事、家具・什器の製造販売を行っています。グループ内外の施設改装や新規出店に伴う工事を請け負っています。
収益は発注者からの工事代金や製品販売代金です。運営は株式会社近創が行っています。

**(4) 不動産業**
同社が保有する商業施設等の不動産賃貸事業を行っています。
収益はテナントからの賃貸料収入です。運営は同社が行っています。

**(5) その他事業**
商品配送などの運送業を行っています。
収益は運送サービスの提供対価です。運営は近畿配送サービス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は回復基調にあります。特に直近2期は1000億円台を維持し、経常利益も黒字で推移しています。利益率も改善傾向にあり、当期純利益も連続して黒字を確保するなど、コロナ禍からの業績回復が鮮明です。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 2184億円 981億円 1078億円 1135億円 1151億円
経常利益 -13億円 -6億円 19億円 39億円 51億円
利益率(%) -0.6% -0.6% 1.8% 3.4% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -51億円 -12億円 15億円 21億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高、売上総利益ともに増加しており、本業の収益力が向上しています。営業利益率も改善しており、増収効果が利益面に波及しています。効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 1135億円 1151億円
売上総利益 556億円 582億円
売上総利益率(%) 49.0% 50.5%
営業利益 39億円 54億円
営業利益率(%) 3.4% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が121億円(構成比23%)、賃借料が117億円(同22%)を占めています。売上原価は売上高に対して約49%を占めています。

(3) セグメント収益


百貨店業はインバウンド需要や高額品販売が好調で増収増益となりました。卸・小売業も輸入車販売の好調により増収増益です。内装業は増収ながらも利益率の高い案件の影響で減益、不動産業は概ね横ばいでした。全体として主力の百貨店業が業績を牽引しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
百貨店業 925億円 930億円 25億円 39億円 4.2%
卸・小売業 135億円 149億円 3億円 4億円 2.5%
内装業 38億円 40億円 9億円 9億円 21.6%
不動産業 3億円 3億円 2億円 2億円 74.2%
その他事業 34億円 29億円 1億円 1億円 2.3%
調整額 -70億円 -56億円 -2億円 -1億円 -
連結(合計) 1135億円 1151億円 39億円 54億円 4.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 102億円 67億円
投資CF -22億円 -39億円
財務CF -75億円 -40億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「市民生活の向上と地域社会の発展に貢献し続ける」ことをミッションとしています。顧客第一の精神でまごころと感謝の念を持って奉仕し、よりよき生活の提案者として魅力ある店づくりに努めることで、全てのステークホルダーの期待に応える企業を目指しています。

(2) 企業文化


「創造と革新の姿勢」「相互信頼」「理解と協調」を重視し、働きがいのある職場環境づくりに取り組んでいます。地域共創型百貨店として「地域に寄り添い、地域と活きる」姿勢を大切にし、地域産品の紹介や市民活動との連携を通じて、地域社会との絆を深める文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2028年度を最終年度とする中期経営計画において、「新たな価値創造事業会社=百“価”店」への転換を掲げています。あべのハルカス近鉄本店や外商を核として既存事業を強化しつつ、事業環境の変化に対応した基盤強化を進めています。

* 連結営業利益:65億円
* ROE:9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「百“価”店」への進化に向け、旗艦店であるあべのハルカス近鉄本店のリモデルや、あべの・天王寺エリアの魅力最大化に注力します。また、全社顧客戦略として近鉄グループの顧客ID統合を活用し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を図ります。さらに、フランチャイズ事業の質的転換や農業事業などの自主事業を進化させ、多角的な収益基盤を構築します。

* 設備投資額:4年間で総額350億円(あべの・天王寺エリアへ100億円投資)
* 人的資本投資:4年間で約40億円
* DX投資:4年間で約20億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自律した百“価”店人の創出」をコンセプトに、従業員の多様性を尊重し、個人の成長や健康管理を重視した環境整備を進めています。2027年度には人事制度の抜本的な改革を予定しており、従業員が自らキャリアを選択できる仕組みや、成果に見合った適正な処遇を実現することで、新たな価値創造に挑戦する企業風土を醸成します。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 47.1歳 22.6年 4,925,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 250.0%
男女賃金差異(全労働者) 49.9%
男女賃金差異(正規) 65.3%
男女賃金差異(非正規) 75.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒正社員採用数(18人)、女性採用比率(84.4%)、正規雇用労働者の中途採用比率(60.0%)、障がい者雇用率(2.72%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

**(1) 経営環境上のリスク**
主力である百貨店業は、人口減少や消費動向、インバウンド需要の変化などに強く影響を受けます。消費行動の変容やデジタル化の進展、衣料品販売の低迷などが進む中で、これらの環境変化に対応できない場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

**(2) 商品取引に関するリスク**
食品の安全性や商品の品質に関する問題が発生した場合、信用毀損により売上が減少する恐れがあります。また、法人向け掛売取引において取引先の倒産等による貸倒れが発生した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

**(3) 法律の規制、制度の変更に関するリスク**
大規模小売店舗立地法、独占禁止法、景品表示法、食品衛生法など多岐にわたる法的規制を受けています。これらに違反する事態が生じれば、社会的信用の失墜や企業活動の制限を招く可能性があります。

**(4) 新規事業への取組みに関するリスク**
従来の枠組みを超えた新規事業への取り組みにおいて、不確実な要素や市場ニーズの変化により事業確立が困難となる可能性があります。また、法規制への対応不足等が生じた場合、業績への悪影響や社会的信用の低下につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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