※本記事は、イオンの有価証券報告書(第101期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イオンってどんな会社?
国内外に広範な店舗網を持ち、小売を中心に金融や開発事業も展開する総合小売グループです。
■(1) 会社概要
1926年に岡田屋呉服店として設立され、1970年にジャスコへ商号変更、1974年に上場を果たしました。2001年にイオンへ社名を変更し、以降ダイエーやマルエツ、キャンドゥなどを子会社化して事業規模を拡大しています。直近では2026年1月にツルハホールディングスを連結子会社化しました。
従業員数は連結で179,230名、単体で559名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も資産管理業務を行う日本カストディ銀行、第3位には事業会社であるみずほ銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.75% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.91% |
| みずほ銀行 | 3.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性3名の計19名で構成され、女性役員比率は15.8%です。代表執行役会長は岡田元也氏、代表執行役社長は吉田昭夫氏です。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡田 元也 | 取締役会議長指名委員報酬委員代表執行役会長 代表執行役会長 | 1979年3月同社入社。1997年6月代表取締役社長、2012年3月グループCEOを経て、2020年3月より現職。 |
| 吉田 昭夫 | 取締役代表執行役社長 代表執行役社長 | 1983年4月同社入社。中国本部長やディベロッパー事業担当を経て、2020年5月より現職。 |
| 羽生 有希 | 取締役執行役副社長中国事業担当 | 1991年4月同社入社。中国事業最高経営責任者や執行役等を経て、2022年5月より現職。 |
| 土谷 美津子 | 取締役執行役副社長商品・物流担当 執行役副社長商品・物流担当 | 1986年4月同社入社。イオンリテール専務執行役員等を経て、2024年5月より現職。 |
社外取締役は、塚本隆史(元みずほフィナンシャルグループ社長)、ピーターチャイルド(元マッキンゼーシニアパートナー)、キャリー ユー(元PwC消費者市場業界リーダー)、林眞琴(元検事総長・監査委員長)、リシャールコラス(元シャネル日本法人社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、GMS事業、SM事業、DS事業、ヘルス&ウエルネス事業、総合金融事業、ディベロッパー事業、サービス・専門店事業、国際事業およびその他事業を展開しています。
■GMS事業
総合スーパーを運営し、食品や衣料品、住居余暇商品など幅広い生活必需品を顧客に提供しています。
商品の販売による収益が主な収入源です。運営は主にイオンリテール、イオン北海道、イオン九州などが担っています。
■SM事業
地域密着型のスーパーマーケットや小型店舗を運営し、日常の食料品や日用品を提供しています。
商品の販売を通じて収益を得ています。運営はユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス、フジ、ミニストップなどが担っています。
■DS事業
ディスカウントストアを展開し、価格を重視する顧客向けに生活必需品を低価格で提供しています。
低コスト運営による商品販売で収益を上げています。運営はイオンビッグやビッグ・エーなどが担っています。
■ヘルス&ウエルネス事業
ドラッグストアや調剤薬局を運営し、医薬品や化粧品、日用品を提供しています。
商品販売や調剤報酬などから収益を得ています。運営はウエルシアホールディングスやツルハホールディングスが担っています。
■総合金融事業
クレジットカード、銀行、保険などの金融サービスを個人顧客向けに提供しています。
カードの決済手数料やキャッシング利息、ローン金利などから収益を得ています。運営はイオンフィナンシャルサービスやイオン銀行が担っています。
■ディベロッパー事業
大型ショッピングセンターの開発から運営、テナントの誘致などを行っています。
テナントからの賃料収入や共益費などが主な収益源です。運営はイオンモールやイオンタウンが担っています。
■サービス・専門店事業
施設管理、アミューズメント施設、映画館、専門衣料品店などを展開しています。
施設の管理受託料やアミューズメント施設の利用料などから収益を得ています。運営はイオンディライト、イオンファンタジーなどが担っています。
■国際事業
中国やアセアン地域で総合スーパーやスーパーマーケットなどの小売事業を展開しています。
海外市場における商品の販売を通じて収益を得ています。運営は現地の各子会社が担っています。
■その他事業
報告セグメントに含まれないデジタル事業やモバイルマーケティング事業を展開しています。
デジタルプラットフォームを通じたサービス提供などで収益を得ています。運営はイオンスマートテクノロジーなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、経常利益は成長基調にあり、直近では過去最高を更新しています。当期利益についても安定的に黒字を確保しており、持続的な成長を実現していることが伺えます。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 1,671億円 | 2,037億円 | 2,375億円 | 2,242億円 | 2,430億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 234億円 | 177億円 | 221億円 | 402億円 | 250億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益を見ると、売上総利益と営業利益がともに増加傾向にあります。特に営業利益は着実な伸びを示しており、本業の収益力が着実に向上していることが確認できます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | 25,156億円 | 26,492億円 |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 2,377億円 | 2,705億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上を見ると、全ての主要事業で増収を達成しています。特にヘルス&ウエルネス事業やGMS事業が売上拡大を牽引しており、グループ全体としての力強い成長に寄与していることが伺えます。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| GMS事業 | 34,607億円 | 36,049億円 |
| SM事業 | 30,398億円 | 30,704億円 |
| DS事業 | 4,102億円 | 4,292億円 |
| ヘルス&ウエルネス事業 | 13,220億円 | 16,325億円 |
| 総合金融事業 | 4,670億円 | 4,862億円 |
| ディベロッパー事業 | 4,093億円 | 4,315億円 |
| サービス・専門店事業 | 5,212億円 | 5,319億円 |
| 国際事業 | 5,443億円 | 5,636億円 |
| その他事業 | 154億円 | 254億円 |
| 調整額 | -551億円 | -602億円 |
| 連結(合計) | 101,349億円 | 107,153億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5,662億円 | 11,266億円 |
| 投資CF | -4,788億円 | -10,887億円 |
| 財務CF | 9億円 | 401億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は7.9%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」を基本理念として掲げています。「すべてはお客さまのために」という視点から市場や顧客の変化を見据え、長期的な視点で持続可能な成長と地域社会に貢献するグループを目指し、企業価値向上に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は「一人ひとりの笑顔が咲く未来のくらしを創造する」というイオングループ未来ビジョンを策定し、顧客や地域社会とともに良好な関係を築くことを重視しています。現状に安住せず、常に変化する顧客ニーズや社会の変化を先取りし、「絶えず革新し続ける企業集団」としての姿勢を企業文化の根幹に据えています。
■(3) 経営計画・目標
アジアのヘルス&ウエルネス分野におけるグローバル企業を目指し、将来に向けた具体的な目標数値を設定して成長を加速させています。
* 売上高:3兆円(2032年2月期目標)
* 営業利益:2,100億円(2032年2月期目標)
* 営業利益率:7.0%(2032年2月期目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
変化の激しい環境下において、マルチフォーマットでの適応力と事業ポートフォリオ戦略を推進しています。具体的には、食品小売事業の収益構造改革、ヘルス&ウエルネス事業の進化、ディベロッパーとエンターテイメントの融合などを重点施策として持続的成長の基盤確立に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進を経営戦略として位置付け、「ダイ満足」という活動を推進しています。経営人材やデジタル人材の育成・採用を強化し、従業員の働きがい向上と柔軟な働き方の環境整備を図ることで、人的資本への積極的な投資を実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 49.3歳 | 18.5年 | 9,329,258円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.1% |
| 男性育児休業取得率 | 98.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 114.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントレーティングB以上出現率(73.2%)、障がい者雇用率(2.94%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 環境規制の強化と気候変動
脱炭素や資源循環などの環境課題に対する法的規制の強化や社会的要請の高まりにより、想定以上の対策コストが発生するリスクがあります。また、異常気象に伴う原材料調達への影響や、環境への取り組みが不十分とみなされた場合の社会的信用の低下が、事業や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報セキュリティとサイバー攻撃
顧客や取引先、従業員の個人情報などを保有しており、これらの情報が漏洩、改ざんされた場合やサイバー攻撃によるシステム障害が発生した場合、損害賠償やサービス停止による費用の発生、ブランドイメージの低下が生じ、経営に重大な影響を与えるリスクが存在します。
■(3) M&A戦略と投資回収
新たな成長モデル確立のために企業買収を行っていますが、買収後に予期せぬ債務が発覚したり、内部統制が十分に機能しなかったりする可能性があります。また、新たに発生するのれんの償却費用が増加し、期待通りのシナジーや投資成果が得られない場合、財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 商品の開発および調達環境
商品の安全性に関わる事故や異物混入が発生した場合、販売自粛による売上低下やブランド毀損のリスクがあります。また、急激な為替変動や天候不順、物流コストの上昇等により調達に支障が生じたり、取引先における人権配慮等の問題が発覚したりすることで、業績に影響が及ぶ可能性があります。



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