※本記事は、イオン株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イオンってどんな会社?
国内トップクラスの小売事業を中核に、金融や不動産開発など複合的な事業を展開し、人々の暮らしを支える企業集団です。
■(1) 会社概要
1926年に四日市市で岡田屋呉服店として設立され、1970年にフタギ、シロとの合併によりジャスコが誕生しました。2001年にイオンへ社名変更し、グローバル企業として発展。2008年には純粋持株会社体制へ移行しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証プライム市場に上場しています。
同社グループの従業員数は連結で168,001名、単体で490名です。大株主は、信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭株主で、第2位は日本カストディ銀行、第3位は主要取引行であるみずほ銀行となっています。創業家関連の財団なども上位株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 13.82% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 4.44% |
| 株式会社みずほ銀行 | 3.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性18名、女性3名の計21名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表執行役会長は岡田 元也氏、代表執行役社長は吉田 昭夫氏です。取締役9名のうち過半数の5名を社外取締役が占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡 田 元 也 | 取締役会議長指名委員報酬委員代表執行役会長 代表執行役会長 |
1979年入社。ジャスコ代表取締役社長、イオン取締役兼代表執行役社長、グループCEOなどを歴任し、2020年3月より現職。 |
| 吉 田 昭 夫 | 取締役代表執行役社長 代表執行役社長 |
1983年入社。イオンモール代表取締役社長、イオン執行役ディベロッパー事業担当、代表執行役副社長などを経て、2020年5月より現職。キャンドゥ取締役も兼務。 |
| 羽 生 有 希 | 取締役執行役副社長中国担当 | 1991年入社。永旺(中国)投資有限公司董事長・総裁、イオン執行役中国事業担当、イオンリテール取締役などを歴任。2025年3月より中国担当。 |
| 土 谷 美 津 子 | 取締役執行役副社長商品・物流担当 執行役副社長商品・物流担当 |
1986年入社。イオンファンタジー代表取締役社長、ビオセボン・ジャポン代表取締役社長、イオントップバリュ代表取締役社長などを歴任。2025年3月より商品・物流担当。 |
社外取締役は、塚本 隆史(元みずほフィナンシャルグループ社長)、ピーターチャイルド(元マッキンゼー・アンド・カンパニー シニアパートナー)、キャリー ユー(元PwC中国・アジア太平洋 小売・消費者リーダー)、林 眞琴(元検事総長)、リシャールコラス(元シャネル日本法人代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「GMS事業」「SM事業」「DS事業」「ヘルス&ウエルネス事業」「総合金融事業」「ディベロッパー事業」「サービス・専門店事業」「国際事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) GMS事業
総合スーパー(GMS)の運営を行う事業です。食料品、衣料品、住居余暇商品など生活に必要な商品を幅広く取り扱い、ファミリー層をはじめとする幅広い顧客にワンストップショッピングの利便性を提供しています。
商品販売による売上収益が主な収益源です。運営は主にイオンリテール、イオン北海道、イオン九州、イオン東北、イオン琉球、サンデーなどが担当しています。また、オリジン東秀による弁当・惣菜販売やキャンドゥによる均一価格雑貨販売なども含まれます。
■(2) SM事業
スーパーマーケット(SM)やコンビニエンスストア、小型スーパーマーケットの運営を行う事業です。地域密着型の店舗展開を行い、毎日の食卓を支える生鮮食品や惣菜などを提供しています。
商品販売による売上収益が主な収益源です。運営はユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(傘下のカスミ、マルエツ、マックスバリュ関東)、ミニストップ、フジ、マックスバリュ東海、いなげや、まいばすけっとなどが行っています。
■(3) DS事業
ディスカウントストア(DS)の運営を行う事業です。低価格を強みとし、生活必需品を求める顧客に対して、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)で商品を提供しています。
商品販売による売上収益が主な収益源です。運営は主にイオンビッグ、ビッグ・エーなどが担当しています。
■(4) ヘルス&ウエルネス事業
ドラッグストアや調剤薬局の運営を行う事業です。医薬品、化粧品、日用品の販売に加え、調剤サービスや健康相談などを通じて、地域の人々の健康で豊かな暮らしをサポートしています。
商品販売および調剤技術料などが主な収益源です。運営はウエルシアホールディングス(傘下のウエルシア薬局等)、クスリのアオキホールディングス(持分法適用)などが担っています。
■(5) 総合金融事業
クレジットカード、銀行、保険などの金融サービスを提供する事業です。買い物客や加盟店に対して、決済、融資、預金、保険販売などのサービスを展開しています。
クレジットカードの手数料、カードキャッシングやローンの利息、銀行業務による運用益などが主な収益源です。運営はイオンフィナンシャルサービス、イオン銀行などが担当しており、日本国内だけでなくアジア各国でも展開しています。
■(6) ディベロッパー事業
ショッピングセンター(SC)の開発・賃貸・運営・管理を行う事業です。大型モールから近隣型SCまで多様な商業施設を開発し、テナント企業や地域社会に商業空間を提供しています。
テナントからの賃貸料や共益費、管理運営受託手数料などが主な収益源です。運営は主にイオンモール、イオンタウンなどが担当しており、国内外で事業を展開しています。
■(7) サービス・専門店事業
施設管理、アミューズメント、外食、専門店などを展開する事業です。商業施設の安全・安心を守るファシリティマネジメントや、家族で楽しめる遊び場、カジュアル衣料や靴などの専門店を提供しています。
サービス対価、施設利用料、商品販売代金などが収益源です。運営はイオンディライト(ファシリティ)、イオンファンタジー(アミューズメント)、ジーフット(靴)、コックス(衣料)、イオンイーハート(外食)など多岐にわたるグループ企業が行っています。
■(8) 国際事業
アセアン地域および中国における小売事業です。各国の市場特性に合わせたGMSやSMなどを展開し、現地顧客に対して日本流のきめ細やかなサービスと商品を提案しています。
商品販売による売上収益が主な収益源です。運営はイオンマレーシア、イオンベトナム、イオンストアーズ(香港)、永旺(中国)投資有限公司などが担っています。
■(9) その他事業
デジタル事業やモバイルマーケティング事業など、上記セグメントに含まれない事業を展開しています。
サービスの利用料や手数料などが収益源です。運営はイオンマーケティングなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、営業収益は一貫して増加傾向にあり、第100期には10兆円を突破して過去最高を記録しました。経常利益も第96期以降回復基調にありましたが、第100期は前期比で減少しています。当期純利益についても、第96期の赤字から回復し黒字を維持していますが、第100期は前期比で減益となりました。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 8兆6,039億円 | 8兆7,160億円 | 9兆1,168億円 | 9兆5,536億円 | 10兆1,349億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | 1,388億円 | 1,671億円 | 2,037億円 | 2,375億円 | 2,242億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 1.9% | 2.2% | 2.5% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -710億円 | 65億円 | 214億円 | 447億円 | 288億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、10兆円台に乗せました。売上総利益も増加していますが、売上原価や販売費及び一般管理費の負担もあり、営業利益は前期を下回る結果となりました。営業利益率は2.3%と、前期の2.6%から低下しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9兆5,536億円 | 10兆1,349億円 |
| 売上総利益 | 3兆5,458億円 | 3兆7,547億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.1% | 37.0% |
| 営業利益 | 2,508億円 | 2,377億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が1兆2,325億円(構成比35.0%)、その他経費が5,556億円(同15.8%)を占めています。売上原価においては、商品仕入等が大半を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの収益状況を見ると、GMS事業とSM事業が売上の大きな柱となっています。両事業とも増収となりましたが、利益面ではGMS事業が減益、SM事業も減益となりました。一方、総合金融事業とディベロッパー事業は高い利益率を維持しており、グループ全体の利益を牽引しています。国際事業やヘルス&ウエルネス事業も増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| GMS事業 | 3兆3,673億円 | 3兆4,607億円 |
| SM事業 | 2兆7,683億円 | 3兆0,458億円 |
| DS事業 | 3,992億円 | 4,102億円 |
| ヘルス&ウエルネス事業 | 1兆2,343億円 | 1兆3,220億円 |
| 総合金融事業 | 4,247億円 | 4,670億円 |
| ディベロッパー事業 | 3,837億円 | 4,093億円 |
| サービス・専門店事業 | 5,125億円 | 5,151億円 |
| 国際事業 | 5,045億円 | 5,443億円 |
| その他事業 | 105億円 | 154億円 |
| 調整額 | -514億円 | -549億円 |
| 連結(合計) | 9兆5,536億円 | 10兆1,349億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金と財務活動(借入等)による調達資金を、投資活動(設備投資等)に充当する「積極型(事業拡大に伴う資産増加)」のキャッシュ・フロー状態にあります。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に銀行業における貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,685億円 | 5,662億円 |
| 投資CF | -5,089億円 | -4,788億円 |
| 財務CF | -159億円 | 9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を大幅に下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も7.6%で市場平均を大きく下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という基本理念を定款に定めています。「すべてはお客さまのために」という視点から、市場や顧客の変化を見据え、長期的な視点で持続可能な成長と地域社会に貢献するグループを目指し、企業価値向上に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は「革新し続ける企業集団」であることを重視しています。現状に安住せず、自らを絶えず変革し続けること、顧客や社会の変化を先取りする先見性と洞察力を持つことを求めています。また、小売業を「平和産業」「人間産業」「地域産業」と位置づけ、平和への関与、人間の幸福と規範の下支え、地域の繁栄への貢献を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2021~2025年度)の最終年度として、掲げた変革の実行と成果の創出に取り組んでいます。また、2030年に向けた「イオングループ未来ビジョン」を策定し、「一人ひとりの笑顔が咲く未来のくらしを創造する」というステートメントのもと、長期的な繁栄と成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画で掲げる5つの変革(デジタルシフトの加速と進化、サプライチェーン発想での独自価値の創造、ヘルス&ウエルネスの進化、イオン生活圏の創造、アジアシフトの更なる加速)と「グリーン戦略」を推進しています。デジタル事業の拡大やPB商品の強化、ドラッグストア連合の構築、地域ごとの生活圏構築、アジア市場でのシェア拡大などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「教育は最大の福祉」という考えに基づき、従業員一人ひとりの自律的な成長を支援しています。人材育成、登用、採用を強化し、特にデジタル人材の育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を経営戦略の一つと捉え、パートタイマーの賃金引き上げなども実施し、人的資本への投資と生産性向上の両輪で成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 49.1歳 | 17.8年 | 9,471,912円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 19.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 96.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 64.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 72.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 132.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、基本理念への共感度(3.43)、エンゲージメントレーティング B以上出現率(73.5%)、障がい者雇用率(3.05%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 災害・感染症・テロ等のリスク
店舗周辺での地震、台風等の自然災害、新型感染症の流行、テロ活動、システム障害等が発生した場合、店舗の損壊や営業停止、サプライチェーンの寸断などが起こり得ます。これにより、販売活動や物流が阻害され、同社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 環境課題・気候変動リスク
脱炭素や資源循環などの環境課題への対応が求められる中、法的規制の強化やエネルギーコストの上昇が発生する可能性があります。また、気候変動による農水産物の品質・収量変化や、環境配慮への取り組みが不十分とみなされた場合の社会的信用の低下などが、事業活動に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 情報セキュリティ・サイバー攻撃リスク
個人情報や機密情報を多数保有しているため、情報漏洩や改ざん、不正使用が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。また、サイバー攻撃によるシステム停止等のインシデントが発生した場合、事業継続に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) M&Aおよび新規投資に関するリスク
成長戦略の一環として行うM&Aや新規事業投資において、期待した成果が得られない場合や、偶発債務の顕在化、のれんの減損処理などが発生する可能性があります。これにより、同社グループの財政状態や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。



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