#イズミ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社イズミ の有価証券報告書(第64期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イズミってどんな会社?
ショッピングセンター「ゆめタウン」やスーパー「ゆめマート」を西日本エリアでドミナント展開する小売企業です。
■(1) 会社概要
1961年に株式会社いづみを設立し、広島で衣料品等の販売を開始しました。1978年に大証二部および広証へ上場し、1980年に現社名へ変更、1987年には東証一部へ上場しました。2018年にセブン&アイ・ホールディングスと業務提携を締結。2024年には西友から九州地域の食品スーパー事業を承継しました。
連結従業員数は4,938人、単体では2,908人です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社と思われる山西ワールドで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も創業者一族関連とみられる不動産会社です。創業家が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山西ワールド | 27.86% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.34% |
| 第一不動産 | 5.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名、計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表者は代表取締役会長の山西泰明氏と、代表取締役社長の町田繁樹氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山西 泰明 | 代表取締役会長 | 1977年に入社。常務、専務、副社長を経て1993年に社長に就任。2025年4月より現職。 |
| 町田 繁樹 | 代表取締役社長 | 1991年に入社。衣料品事業部長、経営企画本部長、取締役副社長などを経て2025年4月より現職。 |
| 山西 大輔 | 取締役副社長 | 2005年に入社。中央事業部長、業務プロセス改革本部長、経営企画本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 田原 英樹 | 取締役専務執行役員管理本部長 | 1991年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。執行役員広報部長などを経て2024年に同社入社。2025年5月より現職。 |
| 青木 孝幸 | 取締役常務執行役員開発本部長 | 1990年に住友商事入社。不動産投資開発事業部長などを経て2024年に同社入社。2025年5月より現職。 |
社外取締役は、西川正洋(西川ゴム工業取締役会長)、矢野泉(広島修道大学学長)、青山直美(有限会社スタイルビズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売事業」「小売周辺事業」および「その他」事業を展開しています。
■小売事業
ショッピングセンター、ゼネラル・マーチャンダイジング・ストア(GMS)、スーパーマーケット等の業態により、衣料品、住居関連品、食料品等の販売を行っています。地域に密着した店舗展開を特徴としています。
顧客への商品販売による対価を主な収益源としています。運営は主にイズミが行うほか、ゆめマート熊本、ゆめマート北九州、ユアーズなどの連結子会社が各地域での店舗運営を担っています。
■小売周辺事業
小売事業を補完する業務として、クレジット取扱業務、店舗施設管理業務、外食事業などを展開しています。
クレジットカード会員からの年会費や加盟店手数料、施設管理の業務受託料、飲食サービスの提供対価などが収益源です。運営はゆめカード(金融)、イズミテクノ(施設管理)、イズミ・フード・サービス(外食)などが担当しています。
■その他
上記セグメントに含まれない事業として、卸売業や不動産賃貸業などを展開しています。
取引先への商品卸売による対価や、保有不動産の賃貸による賃料収入を収益源としています。運営は主にヤマニシ(卸売)や泉不動産(不動産賃貸)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は新型コロナウイルスの影響を受けた時期を経て回復基調にあり、特に直近では大型M&Aにより収益規模が拡大しています。一方で、経常利益や当期利益は、システム障害や事業承継に伴う一時的な費用の発生などにより減少傾向にあります。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 6,798億円 | 6,768億円 | 4,601億円 | 4,712億円 | 5,241億円 |
| 経常利益 | 361億円 | 347億円 | 344億円 | 323億円 | 257億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 5.1% | 7.5% | 6.9% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 231億円 | 232億円 | 232億円 | 205億円 | 119億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、営業収益は増加しましたが、売上原価や販管費の増加により各段階利益は減少しました。特にM&Aに伴うコスト増やシステム障害対応などが利益を圧迫しており、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,156億円 | 4,673億円 |
| 売上総利益 | 1,398億円 | 1,508億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.6% | 32.3% |
| 営業利益 | 314億円 | 254億円 |
| 営業利益率(%) | 7.6% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が606億円(構成比33%)、その他が387億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
小売事業はM&A効果で増収となりましたが、コスト増により減益でした。小売周辺事業もシステム障害の影響などを受け減益となりました。全セグメントで利益率が低下しており、コストコントロールと効率化が課題となっています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売事業 | 4,545億円 | 5,070億円 | 254億円 | 197億円 | 3.9% |
| 小売周辺事業 | 446億円 | 479億円 | 57億円 | 55億円 | 11.5% |
| その他 | 53億円 | 50億円 | 7億円 | 6億円 | 11.6% |
| 調整額 | △332億円 | △357億円 | △3億円 | △3億円 | - |
| 連結(合計) | 4,712億円 | 5,241億円 | 314億円 | 254億円 | 4.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で獲得した資金に加え、借入等の資金調達を行って、M&Aや設備投資などの成長投資へ積極的に振り向けている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 316億円 | 403億円 |
| 投資CF | △247億円 | △916億円 |
| 財務CF | △51億円 | 551億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社員が誇りと喜びを感じ、地域とお客さまの生活に貢献し続ける」を経営理念として掲げています。収益の源泉である地域や顧客への貢献を通じて、社員自身も働きがいを感じられる環境を作り、ステークホルダーの期待に応えることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業以来のDNAとして「革新」「挑戦」「スピード」を大切にしています。市場環境が変化する中で、顧客ニーズに適切に対応できる組織・人材の養成を重視し、常に好奇心を持って一段上の仕事にチャレンジする自立した人材の育成を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
第二次中期経営計画の最終年度となる2026年2月期に向け、長期ビジョン達成のための体制強化を図っています。事業承継や環境変化を踏まえて数値目標を見直し、最終年度の連結業績計画として以下の目標を掲げています。
* 営業収益:5,901億円
* 営業利益:307億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「顧客満足度No.1」と「持続的成長」を目指し、既存店の活性化や積極的な出店、M&A戦略を推進します。店舗の若返りやデジタル化による業務効率化を進め、創出した時間をサービス向上へ転換します。
* 広域型SC「ゆめタウン」、近隣型SC「ゆめモール」、食品スーパー「ゆめマート」の積極出店と既存店活性化
* M&A戦略の積極展開による地域ドミナント基盤の強化
* 店舗作業の効率化と人員多能工化による生産性向上
* 2030年までの環境目標「you me MIRAI 宣言」の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「街の核」となることを目指し、人材育成、エンゲージメント向上、採用と定着、ダイバーシティ推進、健康経営、コンプライアンスを主要課題としています。次世代リーダー育成のための「イズミ大学」や階層別研修を実施し、自ら学ぶ自立した人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 41.1歳 | 16.7年 | 5,557,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.8% |
| 男性育児休業取得率 | 106.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 103.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、イズミ大学参加人数累計(103名)、生鮮技能ライセンス取得率(52%)、離職率(入社3年時)(21.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティに関するリスク
個人情報や情報資産を取り扱う中で、サイバー攻撃や管理ミスによる情報漏洩、システム障害のリスクがあります。2024年2月には実際にランサムウェア感染によるシステム障害が発生しており、再発防止策としてCISOの設置やセキュリティ強化を進めていますが、信用低下や対応費用が業績に影響する可能性があります。
■(2) 自然災害に関するリスク
西日本を中心に店舗を展開しているため、豪雨、台風、巨大地震などの自然災害リスクが高まっています。災害による店舗の損壊やインフラ停止は営業活動に支障をきたし、地域インフラとしての責任を果たせない場合、ブランド価値の毀損につながる可能性があります。BCPの策定や安否確認システムの導入などで対策を行っています。
■(3) M&Aに関するリスク
成長戦略の一環としてM&Aを積極的に実施していますが、買収後にのれんや無形資産の償却負担が発生します。また、期待した効果が得られない場合の減損損失や、予期せぬ偶発債務の発覚などが、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 法規制・制度動向リスク
食品の安全性確保や各種法的規制の遵守に努めていますが、食中毒や異物混入、表示ミスなどの問題が発生した場合、信用低下や損害賠償責任が生じる可能性があります。また、大規模小売店舗立地法などの規制変更により出店や改装が困難になるリスクもあります。



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