カンセキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カンセキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する同社は、栃木県を中心にホームセンター事業やアウトドア専門店「WILD-1」、業務スーパーなどの専門店事業を展開する企業です。2025年2月期の業績は、周年セールの実施や専門店事業の好調により売上高が増加し、増収かつすべての利益段階で黒字転換を達成しました。


※本記事は、株式会社カンセキ の有価証券報告書(第51期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カンセキってどんな会社?


北関東を中心にホームセンターやアウトドア専門店「WILD-1」、業務スーパー等を展開する小売企業です。

(1) 会社概要


1975年に茨城県で株式会社服部として設立され、同年ホームセンター1号店を開店しました。1984年にはアウトドア専門店「WILD-1」の1号店を開店し、事業を拡大。2004年にジャスダック証券取引所に株式を上場しました。2022年には同市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行し、DCMホールディングス等と資本業務提携を締結しています。

2025年2月28日現在、従業員数は単体で306名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理会社である服部商会、第2位は創業家関係者とみられる個人株主、第3位は2022年に資本業務提携を締結したホームセンター大手のDCMとなっています。

氏名 持株比率
服部商会 29.23%
服部京子 19.55%
DCM 9.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長兼営業本部長は大田垣一郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大田垣 一郎 代表取締役社長兼営業本部長 1986年同社入社。商品部長、ホームセンター事業部長を経て2012年取締役就任。2018年より代表取締役社長。茨城カンセキ社長などを歴任し2025年3月より現職。
大野 昌利 常務取締役管理本部長兼総務人事部長兼コンプライアンス担当 1987年足利銀行入行。同行常務執行役員監査部長などを経て2022年同社入社。経営企画部長、取締役を経て2025年3月より現職。
星 一成 取取締役WILD-1事業部長兼商品部長 1989年同社入社。WILD-1事業部長、営業本部長、常務取締役経営企画部長等を歴任。2025年3月より現職。
野尻 昌彦 取締役専門店事業部長 1987年同社入社。店舗運営課長、管理本部総務部長、総務人事部長等を歴任し2022年取締役就任。2025年3月より現職。
福田 誠 取締役店舗開発部長 1987年同社入社。人事労務課長、ホームセンター店長、人事部長兼労務グループ統括マネージャー等を歴任。2022年取締役就任、現職。
益子 和也 取締役(常勤監査等委員) 1986年同社入社。ホームセンター事業部店舗運営部長、営業本部専門店事業部長、内部統制監査室長を経て2024年5月より現職。


社外取締役は、横山幸子(横山法律事務所所長)、藤沼千春(元東武宇都宮百貨店取締役総務部長兼人事部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホームセンター事業」、「WILD-1事業」、「専門店事業」、「店舗開発事業」および「その他」事業を展開しています。

ホームセンター事業


栃木県を中心に地域密着型のホームセンターを展開し、DIY用品、家庭用品、カー・レジャー用品、文具、食品などを販売しています。地域の生活インフラとしての役割を担い、防犯関連商品や暖房器具など、生活に必要な物資を提供しています。

主な収益は一般消費者からの商品販売代金です。同社が主体となって運営しており、公式アプリの導入などによる顧客サービスの向上や、創業50周年記念セールなどの販売促進活動を行っています。

WILD-1事業


「人間と自然」のあり方をテーマに、キャンプ用品、登山用品、釣り具などを取り扱うアウトドア専門店「WILD-1」を運営しています。プライベートブランド「tent-Mark DESIGNS」の販売や、キャンプ場の運営も行っています。

収益源は、アウトドア愛好家を中心とした顧客からの商品販売収入やサービス利用料です。同社が運営を行っており、フランチャイズ展開やテナント型店舗の出店など、事業エリアの拡大を進めています。

専門店事業


リユースショップ「オフハウス」や業務用食品スーパー「業務スーパー」のフランチャイズ店舗、および飲食店を運営しています。業務需要だけでなく一般客の利用も多い業務スーパーや、リユース需要を取り込むオフハウスなど、多様な業態を展開しています。

収益は店舗利用者からの商品購入代金や飲食代金です。同社がフランチャイジーとして運営しており、異業態併設型店舗の出店など、効率的な店舗運営と顧客利便性の向上を図っています。

店舗開発事業


同社が保有する建物等の不動産賃貸や、アミューズメント施設の運営を行っています。

テナントからの賃貸料収入や施設利用者からの利用料が収益源となります。同社が運営を行っており、既存店の改修などを通じて資産の有効活用を図っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない不動産事業などを行っています。

主に不動産管理などに関連する収益を得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第47期から第51期までの推移を見ると、売上高は400億円前後から360億円台へと推移しています。利益面では第50期に営業損失や多額の減損損失を計上し赤字となりましたが、第51期には黒字転換を果たしました。自己資本比率の改善と収益力の向上が課題となっています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 416億円 409億円 - 364億円 366億円
経常利益 29億円 24億円 13億円 -15億円 5億円
利益率(%) 7.0% 5.8% - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 -2億円 7億円 -52億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増しました。前期は営業赤字でしたが、当期は売上総利益率の改善や販売費及び一般管理費の抑制により、営業黒字への転換を実現しています。コストコントロールと売上総利益の確保が進んでいる様子がうかがえます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 364億円 366億円
売上総利益 83億円 98億円
売上総利益率(%) 22.8% 26.7%
営業利益 -15億円 5億円
営業利益率(%) -4.0% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が34億円(構成比35%)、地代家賃が18億円(同18%)を占めています。売上原価については、商品売上原価が268億円(売上原価の100%)となっています。

(3) セグメント収益


ホームセンター事業と専門店事業は増収増益となりましたが、WILD-1事業は減収ながらも黒字転換しました。専門店事業は大幅な増益を達成し、全体の利益改善に寄与しています。店舗開発事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
ホームセンター事業 158億円 160億円 4.1億円 4.1億円 2.6%
WILD-1事業 99億円 93億円 -19億円 0.2億円 0.3%
専門店事業 108億円 115億円 8.1億円 9.3億円 8.1%
店舗開発事業 3.6億円 3.5億円 1.4億円 1.3億円 38.2%
その他 0.1億円 0.1億円 0.1億円 0.1億円 100.0%
調整額 - - -9.7億円 -9.7億円 -
連結(合計) 369億円 371億円 -15億円 5億円 1.5%

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「住まいと暮らしを豊かに快適にするための商品とサービスを提供し、地域の皆様の生活文化の向上に貢献する」を経営理念として掲げています。ホームセンター事業を核に、アウトドア専門店など複数の事業を通じて、日常の快適な暮らしから人生を豊かにするライフスタイルの提案まで幅広いニーズに応えることを目指しています。

(2) 企業文化


「お客様にとって、安心・親切・便利な店」をスローガンに掲げ、地域の人々に愛される「地域一番店」であり続けることを基本方針としています。地域社会への貢献を重視し、生活インフラとしての役割を果たすとともに、豊かなアウトドアライフや多様化するニーズに対応する姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Make Smile2026」を策定し、着実な成長とステークホルダーのスマイル創造の実現を目指しています。具体的な経営指標としては、自己資本比率および営業利益率を主要な指標として位置づけ、毎期の向上を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「生活の快適創造」につなげる体制づくりを推進しています。ホームセンター事業では地域密着の「物販+サービス」を強化し、WILD-1事業では「人間と自然」をテーマに豊かなアウトドアライフの実現に貢献します。専門店事業では社会環境の変化に応じた新業態や店舗開発に挑戦し、売上拡大と利益確保を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材育成と活用を重視し、組織パフォーマンスの向上を目指して人事制度の刷新を進めています。eラーニング等を通じたスキルアップ支援や、即戦力・専門スキル人材の中途採用強化に取り組んでいます。また、多様な部署・ポジションでの女性活躍推進を掲げ、正社員に占める女性比率の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 44.9歳 19.8年 5,199,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 43.6%
男女賃金差異(正規雇用) 77.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性労働者の比率(14.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 他社との競合によるリスク


取扱商品は差別化が困難であり、地域市場での競争激化が予想されます。競合他社の動向や新規参入により価格競争が進み、販売価格が下落した場合、売上高の減少や利益率の低下など、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 個人情報等の漏洩に関するリスク


「スマイルカード」や「WILD-1メンバーズカード」などを通じて多数の個人情報を保有しています。管理体制を整備していますが、予期せぬ原因で情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償などにより、経営成績や事業展開に影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制に関するリスク


店舗の出店や増床に際し「大規模小売店舗立地法」の規制を受けます。環境対策を考慮した計画を立てていますが、同法の規制により計画通りの出店ができない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 金利変動による業績に関するリスク


出店や改装資金の多くを借入金で調達しており、総資産に占める借入金の割合が高くなっています。金利が予想以上に上昇した場合、支払利息の増加により経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。