ピエトロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ピエトロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ピエトロは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ドレッシング等の食品製造販売とパスタ専門店の経営を主力とする企業です。直近の業績は売上高が前期比で増加し営業増益を達成した一方、原材料高騰や工場移転等の特別費用により親会社所有者帰属の当期利益はマイナスに転じる結果となりました。


※本記事は、株式会社ピエトロの有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ピエトロってどんな会社?


ドレッシングなどの食品製造販売とパスタ専門店を展開する食品メーカー兼外食企業です。

(1) 会社概要


1980年12月に福岡市でパスタ専門店「洋麺屋ピエトロ」を創業し、1985年にドレッシング事業部を分離独立してピエトロを設立しました。2002年4月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2015年に同第一部へ指定替えされています。2021年7月には米国に子会社を設立し、海外展開を推進しています。

現在の従業員数は連結315名、単体313名です。筆頭株主は資産管理等の業務を行うM・LYNXで、第2位は資本業務提携関係にある事業会社の日清オイリオグループ、第3位は創業者の西川啓子氏です。

氏名 持株比率
M・LYNX 21.29%
日清オイリオグループ 15.30%
西川 啓子 3.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は高橋泰行氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋 泰行 代表取締役社長 1987年全日本空輸入社。1999年同社に入社し社長室長などを歴任。2008年常務執行役員、2015年常務取締役を経て、2017年より代表取締役社長。
西川 啓子 代表取締役会長 1980年洋麺屋ピエトロを創業。1985年同社専務取締役に就任し、企画開発部長、名誉相談役、レストラン事業部長などを歴任。2017年より代表取締役会長。
宮川 慎一 代表取締役専務取締役 1979年日清製油(現日清オイリオグループ)入社。2008年同社取締役、2015年執行役員を経て2019年代表取締役専務取締役。2025年より現職。
相薗 好伸 取締役 1994年同社入社。2009年レストラン事業部長、2011年執行役員レストラン西日本営業部長などを歴任し、2017年取締役に就任。2025年より現職。
田島 潤 取締役サポート本部長 1996年同社入社。2008年レストラン事業部課長、2019年人事・総務部長を経て2022年執行役員サポート本部長に就任。2025年より現職。


社外取締役は、髙田聖大(九州総合信用代表取締役社長)、シュードル祐子(AES JAPON取締役副社長)、髙橋康徳(カウテレビジョン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「商品事業」「店舗事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 商品事業


ドレッシング・ソース類の製造販売を行っています。主力である非加熱処理の生タイプドレッシング「ピエトロドレッシング和風しょうゆ」をはじめ、パスタソースやスープ、冷凍食品などの製造も手掛け、海外展開も推進しています。

問屋を経由して全国の量販店やスーパーマーケット等に製品を供給するほか、百貨店等でも販売して代金を受け取ります。運営は同社と米国子会社のPIETRO NORTH AMERICA,INC.が行っています。

(2) 店舗事業


パスタ専門店を中心に、直営店およびFC(フランチャイズ)店を国内に展開しています。また、スープ等の多様な商品を取り扱う直販店や、ファストフード業態「MIOMIO」なども運営し、顧客に食の体験を提供しています。

来店客からの飲食代金や直販店での商品販売代金が主な収益源です。また、FC加盟店からはロイヤリティや食材供給に伴う対価を受け取ります。同事業の運営は同社が行っています。

(3) その他(本社ビルの賃貸等)事業


商品事業や店舗事業には含まれない事業として、不動産の賃貸などを行っています。具体的には、同社が所有する福岡市内の本社ビルの空きスペースを活用したオフィスビルの賃貸事業が含まれます。

本社ビルのテナント企業から受け取る不動産賃貸料が主な収益源となっています。同事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業規模の拡大が見て取れます。一方、利益面では原材料価格やエネルギーコストの高騰、新工場建設に向けた移転費用などの影響を受け、経常利益や当期利益は増減を繰り返しており、直近では利益率が低下する厳しい事業環境となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 85.4億円 91.1億円 101.0億円 111.4億円 121.5億円
経常利益 3.7億円 -0.8億円 2.0億円 1.6億円 0.5億円
利益率(%) 4.3% -0.9% 2.0% 1.4% 0.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.9億円 -3.2億円 2.3億円 1.0億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益や営業利益の絶対額は前期を上回る実績を残しています。原材料価格の高騰を価格改定や生産効率の向上でカバーし、営業利益率は維持されました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 111.4億円 121.5億円
売上総利益 57.0億円 61.1億円
売上総利益率(%) 51.2% 50.3%
営業利益 1.8億円 2.0億円
営業利益率(%) 1.6% 1.6%


販売費及び一般管理費は59.2億円です。主要項目として給料及び手当が22.2億円(構成比37.5%)、地代家賃が5.9億円(同10.0%)、運賃が5.0億円(同8.4%)を占めています。売上原価は60.3億円です。

(3) セグメント収益


商品事業は、主力商品や新商品の販売強化およびBtoB事業の伸長により増収となりましたが、原材料価格の高騰等により減益となりました。店舗事業は、ホスピタリティ強化などによる顧客単価と来客数の増加で好調に推移し、不採算店舗の閉店効果もあり大幅な増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
商品事業 66.7億円 70.9億円 15.6億円 15.4億円 21.7%
店舗事業 43.0億円 48.7億円 1.0億円 1.5億円 3.1%
その他(本社ビルの賃貸等)事業 1.7億円 1.8億円 0.7億円 0.7億円 38.9%
調整額 - - -15.5億円 -15.6億円 -
連結(合計) 111.4億円 121.5億円 1.8億円 2.0億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業活動で稼いだ利益を基盤としつつ、借入等の資金調達によって事業拡大や設備等への積極的な投資を行っている状態です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されておらず市場平均を下回る水準であり、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も43.4%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4.6億円 6.0億円
投資CF -15.0億円 -32.8億円
財務CF -3.5億円 37.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「『おいしさ』と『健康』を追い続けます」「感謝してお客様を大切にします」「新しい食文化を提案します」「会社の発展と社員の豊かな暮らしを実現します」を経営基本方針として掲げています。内食・中食・外食すべてのシーンで顧客満足を追求し、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


創業当初から大事にしている「ファンを大切にする」という理念が同社の企業文化の根底にあります。「たとえ小さな一歩でも、できることからコツコツと」という姿勢でフードロス削減等の社会課題解決に取り組み、お客様、働く仲間、社会の「しあわせ、つながる」経営を通じて豊かさを追求しています。

(3) 経営計画・目標


小さくても歩みを止めない「年輪経営」を掲げ、着実に緩やかな成長を図るとともに継続的な増益を目指しています。中長期的な企業価値向上に向け、営業利益と当期利益を重要な経営指標と位置づけています。新工場への集約に伴う一時的なコスト負担ののち、改善効果の発現により業績の回復軌道への移行を計画しています。

(4) 成長戦略と重点施策


主力であるドレッシング事業への依存度が高い構造を転換するため、パスタや冷凍食品、スープを次なる中核事業として育成し、デリカ・フードサービス事業や海外展開を新たな成長エンジンと位置づけて多角化を進めます。また、レストランを体験型ブランド発信拠点とするエリアマーケティングを展開し、ファンとの繋がりを深めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「会社の総合力は社員の力の総和」「会社の成長は社員の成長の総和」という考えのもと、一人ひとりが活き活きと働ける風土づくりを推進しています。自律人財や次世代リーダーの育成に向けた研修プログラムを充実させるほか、無理な事業計画による採用を避け、定期採用とキャリア採用を組み合わせた着実な人財確保に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.3歳 9.7年 5,320,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 89.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用定着率(71.4%)、全社定着率(89.7%)、有給休暇取得率(72.2%)、リフレッシュ休暇取得率(91.9%)、障がい者雇用率(2.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主力商品への依存リスク


同社の商品事業は「ピエトロドレッシング」への依存度が高く、売上高の大部分を占めています。同製法について特許権を保有していないため、競合による類似商品や低価格商品の参入があった場合、競争の激化により同社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食品の安全性と品質管理


事業の基盤となる食の安全性を確保するため、原材料の規格確認や店舗での衛生管理を徹底しています。しかし、万が一食中毒などの衛生問題や表示ミスによる商品事故が発生した場合、企業イメージの失墜や損害賠償による多額の費用負担が生じ、業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

(3) 原材料およびエネルギー価格の高騰


製品の原材料の一部は天候不順や地政学リスク、為替変動等の影響を受けやすく、食用油や農産物、エネルギー価格が高騰するリスクがあります。計画的な調達や省エネ化、価格改定による収益性向上に努めていますが、予想を超える急激なコスト上昇が生じた場合、収益を圧迫する可能性があります。

(4) 資金調達と借入金に関するリスク


新工場の建設等に伴う設備投資資金を金融機関からの借入で手当てしており、支払利息の増加や金利上昇リスクを抱えています。さらにシンジケートローン等には財務制限条項が付されており、これに抵触した場合、期限の利益を喪失し、ただちに債務弁済を求められることで資金繰りが悪化するおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。