壱番屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

壱番屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、「カレーハウスCoCo壱番屋」の運営を主力事業としています。直近の業績は、売上高610億円、経常利益52億円、当期純利益32億円といずれも前期を上回り、増収増益で推移しています。


※本記事は、株式会社壱番屋の有価証券報告書(第43期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 壱番屋ってどんな会社?


カレー専門店チェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」を国内外で展開し、独自の暖簾分け制度などを特徴とする企業です。

(1) 会社概要


1978年に愛知県でカレーハウスCoCo壱番屋の1号店を開業し、1982年に会社を設立しました。2005年に東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第一部へ上場を果たしています。2009年以降は米国やアジア各国へ子会社を通じて進出し、2015年にはハウス食品グループ本社の連結子会社となりました。近年はジンギスカンやラーメン等の新業態もM&Aにより拡大しています。

連結従業員数は1,235名、提出会社の従業員数は684名です。筆頭株主は事業会社であるハウス食品グループ本社で、第2位は信託銀行の信託口、第3位は株式会社ベストライフとなっています。

氏名 持株比率
ハウス食品グループ本社 51.02%
日本マスタートラスト信託銀行 信託口 5.78%
ベストライフ 3.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員は葛原守氏が務めています。取締役8名中4名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
葛原 守 代表取締役社長執行役員 1992年同社入社。海外事業本部長等を経て2019年より現職。
宮崎 龍夫 取締役専務執行役員 1990年同社入社。事業本部長、管理本部長等を経て2024年より現職。
安達 史郎 取締役常務執行役員 1993年同社入社。東日本本部長、営業本部長等を経て2025年より現職。
佐久間 淳 取締役 1989年ハウス食品入社。同社取締役開発研究所長等を経て2023年より現職。


社外取締役は、内田俊宏(中京大学経済学部客員教授)、内藤充(公認会計士・税理士)、春馬葉子(弁護士)、宮尾尚子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「カレー事業」および「新業態事業」を展開しています。

(1) カレー事業


国内外においてカレー専門店「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開しています。顧客層は幅広く、国内では直営店およびフランチャイズ加盟店を通じて飲食サービスを提供しています。海外でも同様に店舗展開を進め、現地の顧客ニーズに合わせたメニュー提供を行っています。

フランチャイズ加盟店に対する食材、消耗品、店舗設備等の販売や、店舗経営の指導を行うことで対価を得ています。また、海外展開においてはロイヤルティ収入等も収益源としています。運営は主に同社および国内外の連結子会社が行っています。

(2) 新業態事業


カレー以外の飲食業態として、あんかけスパゲッティ専門店「パスタ・デ・ココ」、ジンギスカン専門店「大黒屋」、ラーメン専門店「麺屋たけ井」、もつ鍋専門店「前田屋」などを展開しています。M&Aを活用し、地域の繁盛店をグループ化することで多様な食の提供を行っています。

各店舗における飲食サービスの提供による売上のほか、フランチャイズ加盟店への商材販売などを収益源としています。運営は同社のほか、大黒商事、竹井、LFD JAPAN、KOZOU、ITEカンパニーなどの連結子会社が各ブランドを担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 442億円 450億円 483億円 551億円 610億円
経常利益 31億円 42億円 40億円 50億円 52億円
利益率(%) 7.0% 9.3% 8.4% 9.1% 8.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 29億円 25億円 27億円 32億円


売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近の2025年2月期には600億円台に到達しました。利益面でも、2023年2月期に一時的な減少が見られたものの、その後は回復し、直近では経常利益52億円、当期純利益32億円と過去5期間で最高水準を記録しています。

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は約50%の高い水準を維持しており、営業利益額も増加しています。原材料価格やコスト上昇の影響を受けつつも、増収効果により利益を確保しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 551億円 610億円
売上総利益 268億円 305億円
売上総利益率(%) 48.6% 50.0%
営業利益 47億円 49億円
営業利益率(%) 8.6% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他が64億円(構成比25%)、給料及び手当が50億円(同19%)を占めています。売上原価においては、材料費などが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


カレー事業は店舗売上の好調や卸売価格の改定、海外事業の拡大などにより増収となりました。新業態事業もM&Aによる連結子会社の増加や既存店の展開により、売上規模が拡大しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
カレー事業 529億円 570億円
新業態事業 22億円 40億円
連結(合計) 551億円 610億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動および財務活動には資金を支出していることから、本業で得た資金を投資や株主還元、負債返済に充てる健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 61億円 53億円
投資CF -50億円 -31億円
財務CF -32億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「経営を通じ人々に感動を与え続け、地域・社会に必要とされる存在となること」をミッションとして掲げ、「会社にかかわるすべての人々と幸福感を共有すること」を経営目的としています。2030年に目指す姿を「食のエンターテイメント企業」とし、顧客に食の楽しさと感動を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ニコ・キビ・ハキ」を共通語として掲げており、これを基盤とした店舗運営や海外展開を推進しています。また、「わくわくで未来をつくる」を長期ビジョンのメインテーマとし、全役職員がわくわくした気持ちを持ってチャレンジを続け、個人と企業が成長を続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年までの長期経営方針「壱番屋長期ビジョン2030」において、グループ全体で2,100店舗、連結営業利益100億円を目標としています。また、第8次中期経営計画(2025年2月期~2027年2月期)では、最終年度の数値目標を掲げています。

* 売上高:740億円
* 営業利益:70億円
* 経常利益:73億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:46億円

(4) 成長戦略と重点施策


国内CoCo壱番屋事業を成長エンジンと再捉え、店舗数と単店売上の両面から成長を目指すとともに、海外事業ではアジア・北米を中心に店舗網を拡大する方針です。また、国内子会社事業においては、M&Aを活用して繁盛店をグループに迎え入れ、新業態の展開を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員が能力を最大限発揮できる環境整備と、ライフスタイルに合わせた働き方の選択によるワークライフバランスの実現を目指しています。能力開発への積極的な取り組みにより個人の成長を促すとともに、IT技術活用による労働生産性向上と待遇面の継続的な向上を図っています。また、独自の独立支援制度「ブルームシステム(BS)」により、社員の独立を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 42.0歳 12.1年 6,127,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.1%
男性育児休業取得率 37.5%
男女賃金差異(全労働者) 60.9%
男女賃金差異(正規雇用) 76.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 115.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 店舗間競合


外食市場の競争激化に加え、コンビニやスーパー等との業態を超えた競争が進行しています。顧客ニーズに合ったメニューや付加価値の高いサービスを提供できない場合、売上が減少し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食品の安全管理


店舗での食中毒事故や、工場・配送センターでの衛生問題、アレルゲンや原産地表示の誤り等が発生した場合、企業イメージの悪化や損害賠償により、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 食材の調達


主要食材について、安全性への懸念や生産・市場動向による供給量減少が生じた場合、メニュー変更や調達価格の高騰を招き、売上減少や収益圧迫につながる可能性があります。

(4) 海外事業


アジアを中心に海外展開を進めていますが、各国・地域の政治・経済情勢の変化により店舗営業が困難となった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。