※本記事は、壱番屋の有価証券報告書(第44期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 壱番屋ってどんな会社?
国内外でカレー専門店「カレーハウスCoCo壱番屋」を中心に飲食店事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1978年に「カレーハウスCoCo壱番屋 西枇杷島店」を1号店としてオープンし、1982年に壱番屋を設立しました。2005年に東証・名証の第一部へ上場を果たしています。2015年にはハウス食品グループ本社による公開買付で同社の子会社となりました。近年はM&Aを活用して新業態の拡大を推進しています。
従業員数は連結で1,298名、単体で705名です。筆頭株主は親会社であるハウス食品グループ本社で、第2位は信託業務を行う金融機関、第3位はベストライフとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ハウス食品グループ本社 | 51.01% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 信託口 | 5.31% |
| ベストライフ | 3.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は葛原守氏が務めています。監査等委員である取締役4名は全員が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 葛原守 | 代表取締役社長全国統括本部長兼マーケティング本部担当兼商品本部担当 | 1992年同社入社。海外事業本部長や代表取締役副社長等を経て、2019年3月より現職。 |
| 宮崎龍夫 | 専務取締役管理本部担当兼生産本部担当兼国内関係会社担当 | 1990年同社入社。東日本本部長、業務改善推進本部長等を経て、2026年3月より現職。 |
| 安達史郎 | 常務取締役 | 1993年同社入社。中日本本部長、営業本部長、新規事業開発本部担当等を経て、2026年3月より現職。 |
| 佐久間淳 | 取締役 | 1989年ハウス食品入社。同社常務取締役等を経て、2023年5月より現職。ハウス食品グループ本社取締役を兼務。 |
社外取締役は、内田俊宏(元三菱UFJリサーチ&コンサルティングシニアエコノミスト)、内藤充(元監査法人トーマツ)、春馬葉子(元鳥飼総合法律事務所)、宮尾尚子(元大阪地方裁判所判事補)です。
2. 事業内容
同社グループは、単一セグメントであるものの、事業部門別に「カレー事業」および「新業態事業」を展開しています。
■(1) カレー事業
カレー専門店「カレーハウスCoCo壱番屋」の運営およびフランチャイズ展開を行っています。直営店での飲食サービス提供に加え、フランチャイズ加盟店に対して店舗経営の指導や、食材、消耗品、店舗設備の販売を行っています。また、食品メーカー等への商標の貸し出しも手掛けています。
収益源は直営店での飲食代金のほか、加盟店への商品・製品販売代金、ロイヤルティ収入等です。運営は同社が国内事業を担うほか、海外では国内外の連結子会社および関連会社を通じてグローバルに展開しています。
■(2) 新業態・国内子会社事業
あんかけスパゲッティ「パスタ・デ・ココ」等の新業態に加え、ジンギスカン「大黒屋」、つけ麺「麺屋たけ井」、もつ鍋「前田屋」、ラーメン「小僧」、夜パフェ「パフェテリア パル」などの多様な飲食店を展開しています。
顧客への飲食サービス提供による売上が主な収益源です。運営は同社直営店のほか、M&Aによりグループ入りした大黒商事、竹井、LFD JAPAN、KOZOU、GAKUなどの国内連結子会社がそれぞれ行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は450億円から655億円へと順調に拡大を続けています。一方、経常利益は50億円前後で推移しており、利益率は9.3%から7.6%へと緩やかな低下傾向にあります。原材料価格や物流費の高騰が利益率を圧迫している状況が窺えます。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 450億円 | 483億円 | 551億円 | 610億円 | 655億円 |
| 経常利益 | 42億円 | 40億円 | 50億円 | 52億円 | 50億円 |
| 利益率(%) | 9.3% | 8.4% | 9.1% | 8.5% | 7.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 22億円 | 28億円 | 26億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で堅調に増加し、売上総利益も拡大しましたが、利益率は微減となっています。各種コストの増加が影響し、営業利益および営業利益率ともに前年を下回る結果となりました。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 610億円 | 655億円 |
| 売上総利益 | 305億円 | 326億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.0% | 49.8% |
| 営業利益 | 49億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 8.0% | 7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が54億円(構成比19.5%)、雑給が35億円(同12.6%)、賃借料が31億円(同11.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は飲食事業およびその付帯業務の単一セグメントであるため、連結合計の売上高のみを記載します。国内の価格改定効果や子会社の事業拡大により増収となりました。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 610億円 | 655億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 53億円 | 56億円 |
| 投資CF | -31億円 | -49億円 |
| 財務CF | -29億円 | -29億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「経営を通じ人々に感動を与え続け、地域・社会に必要とされる存在となること」をミッションとして掲げ、「会社にかかわるすべての人々と幸福感を共有すること」を経営目的としています。事業を通じて社会的・環境的なニーズに寄り添い、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「わくわくで未来をつくる」をメインテーマに掲げ、すべての役職員が「わくわく」した気持ちを持って「チャレンジ」を続けることで、個人も企業も成長する文化を重視しています。また、海外事業においては「ニコ・キビ・ハキ」(ニコニコ、キビキビ、ハキハキ)を共通語として展開を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に目指す姿として「食のエンターテイメント企業」を掲げています。具体的な数値目標は以下の通りです。
* 2030年のグループ全体目標:2,100店舗
* 営業利益:100億円
* 第8次中期経営計画(修正計画):売上高726億円、営業利益50億円
■(4) 成長戦略と重点施策
国内CoCo壱番屋事業を成長エンジンと再定義し、1店舗当たりの売上高と店舗数の増加を図ります。海外ではアジアや北米を中心に店舗網を拡大しつつ、中国事業の立て直しに取り組みます。国内子会社事業ではM&Aを活用して新規業態の展開を進め、グループ全体の収益拡大に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
性別を問わず、全従業員が能力を最大限に発揮し、ワークライフバランスを実現できる就業環境の整備を方針としています。具体的な取り組みとして、年次有給休暇の取得促進や男性社員の育児休業取得の推進など、働きやすさを重視した制度運用を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 42.0歳 | 12.1年 | 6,044,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.2% |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 116.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業態の垣根を越えた店舗間競合
外食市場はマーケット規模が横ばい傾向にある中、同業態の飲食店だけでなく、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等との競争が激化しています。顧客ニーズに合ったメニューや付加価値の高いサービスを提供できない場合、売上の減少により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食材の調達価格高騰と供給不安定化
米をはじめとする主要食材について、生産者や市場動向、自然災害等により供給量が減少した場合、調達が困難になるリスクがあります。メニューの改定や削減による売上減少や、調達価格の高騰による収益圧迫が生じ、同社グループの財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外事業における地政学・経済リスク
アジアや北米を中心に海外展開を推進していますが、進出国における政治・経済情勢の悪化、予期せぬ法的規制の変更、為替レートの変動等のカントリーリスクが存在します。これらの影響により店舗営業の継続が困難になった場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。



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