※本記事は、株式会社あさひ の有価証券報告書(第50期、自 2024年2月21日 至 2025年2月20日、2025年5月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. あさひってどんな会社?
国内最大手の自転車専門店チェーン「サイクルベースあさひ」を全国展開し、企画・製造から販売までを一貫して行うSPA企業です。
■(1) 会社概要
1949年に創業者の下田順次氏が旭玩具製作所を創業し、1975年に前身となる旭玩具を設立しました。1989年に大型専門店「サイクルベースあさひ」1号店を開店し、現在のビジネスモデルを確立。2004年にジャスダックへ上場後、2007年に東証一部へ指定替えとなりました。2010年には中国・北京に現地法人を設立し海外進出を果たしています。
同社グループの従業員数は単体で1,794名です。筆頭株主は代表取締役社長の下田佳史氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は下田英樹氏となっています。創業家が主要株主として名を連ねる一方、機関投資家も一定の株式を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 下田 佳史 | 12.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.57% |
| 下田 英樹 | 7.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は下田佳史氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下田 佳史 | 代表取締役社長 | 1994年同社入社。商品部長、専務取締役商品本部長、中国現地法人総経理などを経て、2012年5月より現職。 |
| 望月 基 | 取締役副社長 | 1982年ブリヂストン入社。同社常務執行役員などを経て、ブリヂストンサイクル代表取締役社長等を歴任。2021年5月より現職。 |
| 西岡 志朗 | 取締役 | 東京リーガルマインド、ファーストサーバ(現IDCフロンティア)を経て2009年同社入社。総務部長を務め、2020年5月より現職。 |
| 長谷川 宏文 | 取締役 | 三菱電機、武田薬品工業、ホシザキを経て、大阪市高速電気軌道で経理部長やグループ監査部長を歴任。2025年5月より現職。 |
社外取締役は、堀川真(元大幸薬品取締役)、鈴木敦子(元アサヒビール社会環境部長)、井嶋倫子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自転車事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自転車及び関連商品販売
一般用自転車、スポーツサイクル、電動アシスト自転車等の完成車および、パーツ・アクセサリー等の関連商品を販売しています。同社が企画開発し海外メーカーで生産した自社ブランド商品に加え、国内外の他社ブランド商品も取り扱うSPA(製造小売)モデルを採用しています。一般消費者向けの店舗・EC販売のほか、商品卸事業も行っています。
主な収益は、直営店舗および公式オンラインストア等における商品販売による代金です。また、卸売事業では国内販売店への商品販売収益を得ています。運営はあさひが主体となり、中国子会社も連携して事業を行っています。
■(2) その他サービス
自転車の各種整備、修理等の付帯サービスを提供しています。また、フランチャイズ(FC)事業として加盟店へのノウハウ提供や自社ブランド商品の供給を行っています。そのほか、自転車ライフを楽しむためのガイドツアーやイベント等のコト消費の提供にも取り組んでいます。
収益源は、顧客からの整備・修理代金、FC加盟店からのロイヤリティ収入や商品売上、および「サイクルメイト(会員サービス)」の加入料などです。これらのサービス事業も主にあさひが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、800億円台に到達しています。利益面では、2022年2月期以降はやや調整局面が見られましたが、直近の2025年2月期は増益に転じました。安定した収益基盤を維持しながら、着実な成長を続けています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 695億円 | 714億円 | 747億円 | 781億円 | 816億円 |
| 経常利益 | 73億円 | 55億円 | 53億円 | 52億円 | 56億円 |
| 利益率(%) | 10.5% | 7.7% | 7.1% | 6.7% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 47億円 | 35億円 | 34億円 | 31億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益は前期比で増加し、営業利益率も改善しました。販売費及び一般管理費のコントロールを行いつつ、売上拡大による利益成長を実現しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 781億円 | 816億円 |
| 売上総利益 | 373億円 | 387億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.8% | 47.5% |
| 営業利益 | 49億円 | 55億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が112億円(構成比34%)、地代家賃が62億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は自転車事業の単一セグメントなので、セグメント利益の開示はありません。EC販売の拡大やリユース需要への対応、新規出店効果などにより、自転車事業全体の売上高は増加しました。利益面でも、増収効果により前期比で増加しています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ現金を元手に、店舗展開やシステム投資などの成長投資を行いつつ、株主還元や自己株式取得も実施する「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 86億円 | 43億円 |
| 投資CF | -31億円 | -30億円 |
| 財務CF | -13億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.8%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。その企業目的に賛同し、参画するすべての人々が、豊かな人生を送れることを目指します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、自転車ライフの向上に努める自転車専門販売店チェーンとしての役割を果たしています。
■(2) 企業文化
創業以来、「お客様の立場に立って考える」という価値観を重視しています。安全・安心を追求し、自転車の楽しみ方を伝えるため、技術・接客・ガイドの3分野で社内資格「あさひ自転車マイスター制度」を設けるなど、プロフェッショナル人材の育成に力を入れる文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「あさひVISION2025」に基づき、以下の指標を目標として掲げています。
* 年間出店数:15〜20店舗
* 自社ブランド商品構成比率:50%前後
* 対売上高営業利益率:8%
■(4) 成長戦略と重点施策
「あさひVISION2025」において、「お客様との関係性強化(CRM強化)」「既存店の活性化」「新しい店舗スタイルの開発」「事業領域の拡大」の4つを重点戦略として推進しています。また、これらを支える基盤として、デジタル・IT、物流機能、ブランディングの強化に取り組んでいます。
* アプリ連携強化によるCRM推進
* OMO戦略(ネットで注文・お店で受取り)によるEC化率拡大
* 都市型店舗や小型店舗の開発
* 卸売事業やリユース事業の拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「お客様の立場に立って考える」価値観を基盤に、従業員の個性を尊重し、自律型人材として活躍できる環境を提供することを目指しています。「あさひ自転車マイスター制度」による専門性の向上、キャリア開発支援制度による自律的なキャリア形成、経営幹部育成プログラム「ACEP」による次世代リーダー育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 34.8歳 | 9.4年 | 4,984,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 61.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 80.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、あさひ自転車マイスター 技術マイスター(409名)、離職率(6.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出店政策について
直営店を中心とした店舗展開を行っているため、出店費用や人件費などの固定費負担が大きくなるリスクがあります。また、差入保証金や建設協力金の回収不能リスクや、中途解約時の違約金発生リスクも存在します。これに対し、厳選した物件選定や貸主の与信管理を行うことでリスク低減に努めています。
■(2) 業績の季節変動について
主要商品である自転車は、春の入学・入社シーズンが最需要期となるため、売上高は上半期に偏る傾向があります。一方、固定費は年間を通じて一定して発生するため、営業利益も上半期に偏重する傾向があります。天候不順等により最需要期の販売が低迷した場合、通期の業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 自社ブランド商品について
自社ブランド商品の大半を中国などの海外メーカーに生産委託しています。現地の政治・社会情勢や経済環境の変化により、生産支障やコスト上昇が生じる可能性があります。また、他社の知的財産権侵害のリスクや、仕入価格変動に対する販売価格転嫁の遅れなどが業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 為替リスクについて
中国を中心とした海外メーカーから商品を輸入しており、輸入仕入高比率は約45%を占めています。為替相場の変動により仕入コストが変動し、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、為替予約取引を行うことでリスク軽減を図っています。



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