※本記事は、あさひの有価証券報告書(第51期、自 2025年2月21日 至 2026年2月20日、2026年5月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. あさひってどんな会社?
自転車の店舗・オンライン販売から修理・メンテナンスまで、人々の自転車ライフを総合的にサポートする企業です。
■(1) 会社概要
同社の前身は、1949年に創業した旭玩具製作所に始まります。1975年に大阪府で一般向け自転車専門店をオープンして設立され、1992年にあさひへ商号変更しました。1997年にはインターネット通販を開始し、全国へ店舗網を拡大しました。2005年に上場を果たし、2017年には「ルイガノ」などの日本総販売代理権を取得するなど、取扱ブランドを拡充しています。
現在の従業員数は単体で1,826名です。筆頭株主は創業家の関係者である下田佳史氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。第3位にも創業家関係者の下田英樹氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 下田 佳史 | 12.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.92% |
| 下田 英樹 | 7.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は下田佳史氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下田 佳史 | 代表取締役社長 | 1994年同社入社。商品部長、商品本部長等を経て、2012年5月より現職。 |
| 望月 基 | 取締役副社長 | 1982年ブリヂストン入社。同社常務執行役員、ブリヂストンサイクル代表取締役等を経て、2021年5月より現職。 |
| 西岡 志朗 | 取締役 | 1989年東京リーガルマインド入社。ファーストサーバ等を経て2009年同社入社。総務部長を経て2020年5月より現職。 |
| 長谷川 宏文 | 取締役 | 1993年三菱電機入社。ホシザキ、大阪市高速電気軌道等を経て、2025年5月より現職。 |
社外取締役は、堀川真(元大幸薬品取締役)、鈴木敦子(元アサヒビール社会環境部長)、井嶋倫子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは自転車事業の単一セグメントですが、主に以下の事業領域を展開しています。
■(1) 自転車及び関連商品の販売
同社は、一般用自転車からスポーツサイクル、電動アシスト自転車まで幅広い自転車と、関連するパーツ・アクセサリーを販売しています。実店舗は全国に直営店とフランチャイズ店を展開し、加えて公式オンラインストアや各種ECモールを通じた通信販売も行っています。
収益は一般消費者からの商品購入代金として得ています。取扱商品は、同社が企画開発し中国や台湾などの海外メーカーに委託生産する自社ブランド商品のほか、国内外の他社ブランド商品や共同開発商品を含み、あさひが主体となって販売網を運営しています。
■(2) 各種サービスおよび卸売事業
同社は自転車の販売にとどまらず、店舗での整備や修理といった付帯サービスを提供しています。また、フランチャイズ加盟店向けのロイヤリティ収入や、国内の他販売店に対する自社ブランド商品・日本総販売代理権を持つブランド商品の卸売事業も展開しています。
主な収益源は、顧客からの整備・修理手数料やサイクルメイト加入料、加盟法人のダイツー等からのロイヤリティ、販売店からの卸売代金です。フランチャイズ展開については、あさひが経営ノウハウを提供し、各加盟法人が店舗を運営する形態をとっています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は810億円規模で安定して推移していますが、直近は微減となっています。経常利益は50億円台を維持していましたが、当期は物価高による買い替えサイクルの長期化等の影響を受け、減益となりました。これに伴い、利益率も低下傾向にあります。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 714億円 | 747億円 | 781億円 | 816億円 | 814億円 |
| 経常利益 | 55億円 | 53億円 | 52億円 | 56億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 7.7% | 7.1% | 6.7% | 6.9% | 5.1% |
| 当期純利益 | 35億円 | 34億円 | 31億円 | 36億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年とほぼ同水準を維持していますが、店舗展開や人件費の増加により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益は減少しました。一方、調達コストの見直しにより、売上総利益率は安定して推移しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 816億円 | 814億円 |
| 売上総利益 | 387億円 | 388億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.5% | 47.7% |
| 営業利益 | 55億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 6.7% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が117億円(構成比34%)、地代家賃が64億円(同18%)を占めています。売上原価の主な内訳は、当期商品仕入高が420億円であり、期首期末の棚卸高調整を経て計上されています。
■(3) セグメント収益
同社は自転車事業の単一セグメントですが、品目別に見ると自転車の販売が全体の大半を占めています。自転車やパーツ類の売上が微減した一方、整備や修理などの各種サービス収入を含む「その他」が増加しました。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 自転車 | 578億円 | 573億円 |
| パーツ・アクセサリー | 140億円 | 140億円 |
| ロイヤリティ | 1億円 | 1億円 |
| その他 | 96億円 | 100億円 |
| 連結(合計) | 816億円 | 814億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 43億円 | 63億円 |
| 投資CF | -30億円 | -22億円 |
| 財務CF | -14億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私たちは、自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。その企業目的に賛同し、参画するすべての人々が、豊かな人生を送れることを目指します。」という経営理念を掲げています。持続可能な社会の実現と同社の持続的な成長の両立を基本方針とし、人々の自転車ライフを支えるパートナーとなることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業から受け継がれる「お客様の立場に立って考える」という価値観を大切にしています。性別や年齢、価値観に関係なく、多様な人材が活躍できる環境を整え、一人ひとりが自律型人材として成長する組織づくりを重視しています。安全・安心を追求するプロフェッショナルとして、会社と個人が共に成長し続けることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は新中期経営計画「VISION2028」を策定し、2029年2月期の達成に向けた定量目標を掲げています。
・売上高 約968億円
・営業利益 85億円
・ROE 10%以上
・あさひ会員数 850万人以上
・あさひブランド取扱い店舗数 1,700店舗以上
・自転車販売台数シェア 29%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の深耕と周辺事業領域の拡大、多様な人材が活躍できる人材マネジメントを柱に掲げています。商品企画から販売までを一貫するSPAバリューチェーンや、店舗とECを融合したOMO基盤の進化を図ります。さらに、修理・メンテナンス事業やリユース事業などの周辺領域を拡大し、新車販売だけに依存しない循環型ビジネスモデルの構築を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員個人の成長が企業の持続的発展につながると考え、適材適所で能力を発揮できる制度整備と自律型人材の育成に取り組んでいます。社内資格である「あさひ自転車マイスター制度」を通じたプロフェッショナルの育成や、キャリア開発支援制度、将来の経営幹部を育成するエースプログラムなど、多様な学習や挑戦の機会を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 35.3歳 | 9.7年 | 5,138,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 68.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 80.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、あさひ自転車マイスター技術マイスター(407名)、あさひ自転車マイスター接客マイスター(278名)、あさひ自転車マイスターガイドマイスター(95名)、離職率(6.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 店舗政策とフランチャイズ展開
同社は直営店を主体としており、出店費用や人件費の負担、予定通りの出店ができない場合の業績への影響が懸念されます。また、賃貸物件における保証金の回収不能や中途解約時の違約金支払いリスクがあります。フランチャイズ展開においては、加盟店の経営状態の悪化や店舗運営の浸透不足がブランドの信用低下を招くリスクがあります。
■(2) 自社ブランド商品の生産・仕入リスク
同社は自社ブランド商品の企画・開発に注力し、主に中国等の海外メーカーに生産を委託しています。現地の政治・社会情勢や経済的環境の変化により、生産支障やコスト上昇が生じる可能性があります。また、為替変動が予想以上に大きい場合や、仕入価格の変動を販売価格へ適時に転嫁できない場合、利益率が圧迫されるリスクがあります。
■(3) 人材確保と品質管理の課題
専門性の高い人材の確保・育成が店舗拡大のペースに追いつかない場合、顧客サービスの低下を招く恐れがあります。また、自転車は安全性が重視されるため、組立・整備上の瑕疵による事故発生時や、自社ブランド商品における製造物責任賠償の発生時は、多額の費用や社会的信用の低下を通じて業績に影響を与える可能性があります。



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