※本記事は、株式会社あさひ の有価証券報告書(2026年2月期、2025年2月21日 ~ 2026年2月20日、2026年5月13日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
あさひは、店舗において自転車及びパーツ・アクセサリー等の関連商品の販売、各種整備及び修理等の付帯サービスの提供を行っています。全国に539店舗の直営店と18店舗のフランチャイズ店を展開し、インターネット通信販売も手掛けています。
単体従業員数は1,826名です。同社は自転車事業の単一セグメントで事業を展開しています。
あさひは、自社で企画開発したブランド商品を中国や台湾の海外メーカーで生産し、国内外の他社ブランド商品や共同開発商品も取り扱っています。また、国内販売店への商品卸事業も展開しています。
なお、2025年12月2日付で子会社であった愛三希(北京)自転車商貿有限公司の清算が結了しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
株式会社あさひは、自転車事業を主軸とする企業として、従業員の成長と働きがいを重視する環境を提供しています。若手からベテランまで幅広い年齢層の従業員が活躍しており、長期的なキャリア形成を支援する方針が見られます。多様な人材が能力を最大限に発揮できるよう、制度整備や育成に力を入れている点が特徴です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
あさひでは、平均年齢が30代半ばであり、比較的若い世代が中心となって活躍していることがうかがえます。一方で、平均勤続年数も一定の水準にあり、従業員が長期的にキャリアを築いている傾向が見られます。若手から経験を積んだ従業員まで、バランスの取れた年齢構成の中で業務に取り組める環境です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,138,000円 |
| 平均勤続年数 | 9年8ヶ月 |
| 平均年齢 | 35歳4ヶ月 |
| 単体従業員数 | 1,826人 |
あさひは、確定拠出型の退職給付制度(会社が拠出した資金を従業員が運用する)を採用しています。この制度は、大阪商工会議所の特定退職金共済制度への加入を通じて提供されています。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
あさひは、従業員個人の成長が企業の持続的発展に繋がるという認識のもと、人材戦略を推進しています。経営理念とVISIONの実現のため、人事基本方針、目指す組織文化、求める人材像、人材育成方針、社内環境整備方針を掲げています。
人材育成においては、「お客様の安全、安心を追求するプロフェッショナル人材」と「社員一人ひとりの成長とキャリア自律を支援する人材」の育成に注力しています。具体的には、自転車のプロフェッショナルを育成する「あさひ自転車マイスター制度」を推進し、技術・接客・ガイドの3カテゴリーで専門性を高めています。
また、間接部門の専門性向上とキャリア充実のため「上級専門職」を設置し、店舗サポートの充実を図っています。従業員一人ひとりのキャリア自律を推進するため、「キャリア開発支援制度」を通じて研修や勉強会を拡充し、社内公募や自己申告、資格取得支援などの制度も提供しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データであり、女性活躍推進法および育児介護休業法に基づき算出されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 2.0% |
| 男性労働者の育児休業等取得率 | 68.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 53.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 76.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うちパート・有期労働者) | 80.7% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
株式会社あさひは、自転車および関連商品の販売、各種整備・修理サービスを店舗とインターネット通信販売で提供しています。自社ブランド商品の企画開発から販売までを手がけるほか、国内外の他社ブランド商品や共同開発商品も取り扱っています。また、国内販売店への商品卸事業も展開しており、自転車事業を単一セグメントとしています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社は、全国に直営店とフランチャイズ店を展開し、お客様の自転車ライフをサポートしています。店舗では自転車本体に加え、パーツやアクセサリーの販売、購入後の整備や修理といった付帯サービスを提供しています。インターネット通信販売では、公式オンラインストアのほか、主要なECモールにも出店し、多様なチャネルでお客様に商品を提供しています。
商品ラインナップは、同社が企画開発し海外メーカーで生産する自社ブランド商品が中心です。これに加えて、国内外の自転車メーカーの商品や、メーカーとの共同開発商品も取り扱っています。収益は、これらの商品の販売と、修理・メンテナンスサービス、フランチャイズ店からのロイヤリティ収入などから得ています。
自転車小売業界では、高機能な電動アシスト自転車への買い替えが進む一方で、物価上昇による消費者の節約志向から、新車の買い替えサイクルが長期化する傾向が見られます。そのため、同社は修理やメンテナンスの需要増加に対応できるよう、人員体制の整備を進めています。販売実績を見ると、自転車本体の売上が最も大きく、次いでパーツ・アクセサリーが続きます。地域別では、北海道・東北・関東・甲信越地域が最も高い売上構成比を占めています。特定の取引先への売上集中は見られません。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社の直近の業績は、売上高がわずかに減少傾向にあり、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも減少しています。特に営業利益と当期純利益は、前期と比較して大きく減少する結果となりました。
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社は、財務の安定性を示す指標において堅実な状況にあります。本業で得た資金を元手に、事業の成長に向けた投資も継続的に行っています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社の自己資本比率は、当期で71.6%となっており、前期の71.8%からほぼ横ばいです。これはプライム市場の非製造業平均と比較して高い水準を示しており、強固な財務基盤があることがうかがえます。ROE(自己資本利益率)は当期で5.7%となっています。
手元資金である現金及び預金等は、当期末に前期から増加しており、不測の事態に対する耐性がある状態です。これらの財務状況は、同社が安定した経営を維持し、従業員の雇用や給与の安定性にもつながる基盤を持っていることを示しています。
| 指標 | 2025年2月期(前期) | 2026年2月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 391億円 | 402億円 |
| 自己資本比率 | 71.8% | 71.6% |
| ROE(自己資本利益率) | - | 5.7% |
| 現金及び預金等 | 94億円 | 123億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社のキャッシュフローは、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローが当期に増加しています。これは税引前当期純利益や減価償却費が主な収入要因となっています。投資活動によるキャッシュフローは、新規出店に伴う有形固定資産の取得や差入保証金の差入による支出が主な要因で、資金を使用する状況が続いています。
財務活動によるキャッシュフローは、配当金の支払額により資金が減少しています。営業活動で得た資金が投資活動による支出を上回り、自由に使える資金であるフリーキャッシュフローは当期に増加しています。この状況は、同社が本業で安定的に資金を生み出し、事業の成長に向けた投資を行いながらも、資金の余力を確保していることを示しており、将来的な成長と雇用安定性への期待が持てる状態です。
| 項目 | 2025年2月期(前期) | 2026年2月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 42.9億円 | 63.0億円 |
| 投資CF | △30.0億円 | △21.5億円 |
| 財務CF | △13.6億円 | △13.1億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 13.0億円 | 41.5億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社は事業の性質上、春の入学・入社シーズンが最需要期となるため、上半期の売上高は下半期に比べ多くなる傾向があります。また、自社ブランド商品の生産を主に海外に委託しており、当事業年度の輸入仕入高比率は40.2%です。このため、現地における政治・社会情勢や経済環境、為替の変動が財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社は直営店方式による小売業を事業の柱としており、積極的な新規出店を行っています。店舗数の拡大ペースに対応した人材の確保・育成に支障をきたす場合、出店ペースの減速や顧客サービス低下により、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
あさひは、「自転車を通じて世界の人々に貢献する」という経営理念を掲げ、持続可能な社会の実現と同社の持続的な成長を両立させることを目指しています。お客様の自転車ライフを豊かにするため、多様な人材が活躍できる組織づくりと専門性の高い人材育成に注力しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社は、「私たちは、自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。その企業目的に賛同し、参画するすべての人々が、豊かな人生を送れることを目指します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、「持続可能な社会の実現」と「同社の持続的な成長」の両立を基本方針としています。
お客様のより良い自転車ライフを支えるパートナーとして、誰もが安全・安心に自転車を利用できる環境づくりを推進しています。全国の店舗網、ECと店舗を融合したOMO(Online Merges with Offline)基盤、修理・メンテナンス機能、物流体制、人材育成基盤といった同社の強みを一層強化していくことを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社は、経営理念に基づき、自転車を通じて「持続可能な社会の実現」と同社の「持続的な成長」の両立を目指すことをサステナビリティ基本方針としています。未来の低炭素社会、自然共生社会、循環型社会に不可欠なモビリティーである自転車のさらなる活用推進を図っています。
企業活動によって生じる環境への負荷の低減に積極的に取り組み、安全・安心に自転車を利用できる環境づくりや、ルール、マナーの啓発活動にも貢献しています。性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観、キャリアや経験、働き方などに関係なく、多様な人材が活躍できる環境を整えることを目指しています。
従業員個人の成長が企業の持続的発展につながるとの認識に基づき、従業員の声に耳を傾けながら、適材適所で能力を最大限に発揮できる制度の整備や自律型人材育成の風土醸成に取り組んでいます。創業から受け継がれた「お客様の立場に立って考える」という価値観と共に、個人と会社が成長し続けることを目指す企業風土です。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社は、物価上昇による家計負担の増大や消費者の節約志向、高機能商材への移行に伴う買い替えサイクルの長期化、新車需要の減少といった厳しい経営環境を認識しています。一方で、修理・メンテナンスによる長期利用傾向やリユース商品の需要拡大も見込まれています。
こうした環境認識のもと、需要構造の変化に適合した収益基盤の強化を進めています。OMOの強化、修理・メンテナンス体制の充実、リユース車の買取・再販売体制、物流の強化・最適化、修理技能を有する専門人材の育成などを通じた取り組みを行っています。
新中期経営計画「VISION2028」では、「既存事業の深耕」「周辺事業領域の探索と挑戦」「多様な人材が活躍できる人材マネジメント」を3つの柱として「新成長への挑戦」に取り組む方針です。多様な人材が活躍できる組織づくりと専門性の高い人材育成を進め、人的資本経営を実践していくことを掲げています。また、IT基盤、循環型物流基盤、顧客基盤、品質・環境経営の4つの経営基盤を強化し、新たな企業価値の創出を支えていくとしています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
あさひは監査等委員会設置会社を採用しており、取締役会は取締役と監査等委員である取締役で構成されています。経営の監督と業務執行の意思決定を行う体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
あさひの株主構成を見ると、代表取締役社長である下田佳史氏が筆頭株主となっています。また、下田英樹氏、下田美智子氏、下田忍氏といった下田姓の個人株主が上位に複数名を占めており、創業家による影響力がうかがえる資本構成です。その他、信託銀行や同社従業員持株会も大株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 下田 佳史 | 12.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.92% |
| 下田 英樹 | 7.88% |
| 下田 美智子 | 5.95% |
| シー・ビー・エイ | 5.04% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は7名(男性5名・女性2名)で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は下田佳史氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下田 佳史 | 代表取締役社長 | 1994年4月同社入社、商品部長、取締役商品本部長を経て、2012年5月より同社代表取締役社長に現職。 |
| 望月 基 | 取締役副社長 | 1982年4月ブリヂストン入社、同社執行役員、常務執行役員を歴任。ブリヂストンサイクル代表取締役社長、会長を経て、2021年5月より同社取締役副社長に現職。 |
| 西岡 志朗 | 取締役 | 2009年1月同社入社総務部長、2010年5月取締役総務部長を経て、2020年5月より同社取締役に現職。 |
| 長谷川 宏文 | 取締役 | 三菱電機、ルネサスエレクトロニクス、武田薬品工業、ホシザキ、大阪市高速電気軌道を経て、2025年5月より同社取締役に現職。 |
社外取締役は、堀川真氏(元大幸薬品取締役(常勤監査等委員)・常勤監査等委員)、鈴木敦子氏(アサヒグループホールディングス理事CSR部門ゼネラルマネジャー・監査等委員)、井嶋倫子氏(弁護士法人心斎橋パートナーズ社員弁護士・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、社外取締役が監査等委員として経営の監督機能を担っています。社外取締役は、専門的な知見に基づき、経営全般への助言や提言、監査業務の遂行を通じて、経営の透明性・公正性の確保に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
あさひの役員報酬は、取締役(監査等委員を除く)に対しては固定報酬である基本報酬と、業績連動報酬としての中長期インセンティブ報酬(株式報酬)で構成されています。社外取締役は金銭報酬のみで、監査等委員である取締役の報酬は協議により決定されます。業績連動報酬は、営業利益を指標とした株式報酬として、株主との価値共有を重視した設計となっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 社外取締役(監査等委員) | 4名 | 27百万円 | 6.8百万円 |
| 取締役 | 9名 | 1.5億円 | 17.0百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 27百万円 | 6.8百万円 |
なお、業績連動報酬に記載の金額は、株式報酬引当金の繰入額です。
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