※本記事は、株式会社フェリシモ の有価証券報告書(第60期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フェリシモってどんな会社?
フェリシモは、独自の「定期便」スタイルで衣料品や雑貨を販売する、神戸発のダイレクトマーケティング企業です。
■(1) 会社概要
同社は1965年に大阪市で株式会社ハイセンスとして設立され、1989年に現社名へ変更しました。2006年に東京証券取引所市場第二部に上場した後、2021年には神戸市の新港町へ本社を移転しています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
2025年2月28日現在、連結従業員数は419名、単体従業員数も419名です。大株主構成については、筆頭株主は株式会社目神山事務所で、第2位は一般財団法人フェリシモ財団、第3位はフェリシモ共創会となっており、創業家関連や関連団体が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 目神山事務所 | 11.27% |
| フェリシモ財団 | 8.42% |
| フェリシモ共創会 | 5.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は矢崎和彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 矢崎 和彦 | 取締役社長(代表取締役) | 1978年同社入社。事業本部長、マーケティング本部長などを経て、1987年より現職。hope for代表取締役社長、フェリシモ財団代表理事を兼務。 |
| 矢崎 真理 | 専務取締役クラスター本部長 | 京セラを経て2008年同社入社。事業企画部長、経営企画室長、CFV事業統括本部長などを歴任し、2022年より現職。 |
| 松本 和子 | 常務取締役クラスター本部副本部長 | 1984年同社入社。ファッション部長、マーケティング本部長、経営企画室長などを経て、2022年より現職。 |
| 吉岡 哲 | 取締役ビジネスプラットフォーム本部長 | 1995年同社入社。社長室長、しあわせ生活プログラム事業部長などを経て、2020年より現職。 |
| 宮本 孝一 | 取締役経営企画室長コーポレートスタイルデザイン本部担当 | エレコムを経て2002年同社入社。米国法人COOなどを務め、2016年より経営企画室長。2024年より現職。 |
| 小池 弘之 | 取締役新事業開発本部長兼神戸ポートタワー事業本部長 | 1992年同社入社。マーケティング本部しあわせ共創部長などを経て、2020年新事業開発本部長。2025年より現職。 |
社外取締役は、藤田清文(弁護士)、豊島順子(元USJマーケティング本部VP)、平井直人(ダイズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「通信販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 通信販売事業
同社は日本国内において、自社企画の服飾・服飾雑貨(衣料品、身の回り品)や生活関連品(美容健康、食品、手芸用品等)を提供しています。主な顧客は30代から50代の女性層であり、独自の「フェリシモ定期便」という仕組みを通じて、商品とともに情報価値の高いカタログを毎月定期的に届けています。
収益は、顧客からの商品代金が主な源泉です。カタログやインターネットを通じた直接販売形式(D2C)をとっており、注文受付から発送までを自社の受注・物流センターで一貫して行っています。運営は主にフェリシモが行っています。
■(2) その他事業
通信販売以外の事業として、カタログや書籍の出版事業を行っています。また、新規事業として神戸ポートタワーの運営事業や、他社の商品を販売するプラットフォーム事業なども展開しています。
収益は、書籍の販売代金や、神戸ポートタワー事業における来場者収入、物販・飲食収入などから構成されています。運営はフェリシモおよび連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は330億円規模から290億円台へと緩やかな減少傾向にあります。利益面では、2023年2月期までは黒字を維持していましたが、2024年2月期に赤字へ転落しました。しかし、直近の2025年2月期においては、売上高は横ばいながらも経常利益および当期純利益が黒字に回復しており、収益性の改善が見られます。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 333億円 | 337億円 | 322億円 | 296億円 | 294億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 16億円 | 8億円 | -6.1億円 | 2.3億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 4.7% | 2.5% | -2.1% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 17億円 | 8億円 | -6.5億円 | 1.9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は296億円から294億円へと微減しましたが、売上総利益は156億円から159億円へ増加しました。これは原価率の改善が進んだことを示唆しています。営業利益については、前期の9億円の赤字から当期は0.7億円の黒字へと転換しており、コストコントロールの効果が表れています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 296億円 | 294億円 |
| 売上総利益 | 156億円 | 159億円 |
| 売上総利益率(%) | 52.6% | 53.9% |
| 営業利益 | -9.3億円 | 0.7億円 |
| 営業利益率(%) | -3.1% | 0.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告費が37億円(構成比24%)、給与手当が31億円(同20%)を占めています。また、運送費が22億円(同14%)、業務手数料が19億円(同12%)となっており、物流や販売促進に関連するコストが高い比率を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメント(通信販売事業)のため、セグメント別の詳細な分析はありませんが、品目別に見ると「その他」の売上が増加傾向にあります。全体としては、冬物商品の好調や購入単価の向上があった一方で、新規顧客獲得の苦戦により売上高は微減となりましたが、広告費や物流費の削減により利益面では改善しました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| 通信販売事業 | 296億円 | 294億円 |
| 連結(合計) | 296億円 | 294億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
フェリシモは、通信販売事業を主軸に、商品仕入実績は前年比で微増となりました。営業活動では、利益計上や減価償却費の計上があったものの、売上債権や棚卸資産の増加により、資金は増加しました。投資活動では、定期預金の預入や固定資産・無形固定資産の取得により、資金は減少しました。財務活動では、配当金の支払いにより、資金は減少しました。これらの結果、現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて減少しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8.8億円 | 6.9億円 |
| 投資CF | -14.2億円 | -19.0億円 |
| 財務CF | -1.1億円 | -1.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「しあわせ社会学の確立と実践」を経営理念として掲げています。これは、事業活動を通じて永続的なしあわせ社会を創造することを目指すものです。「事業性」「独創性」「社会性」の3つが重なり合う領域を事業領域と定め、長期的な視点で社会全体への影響を考慮した経営を行う方針としています。
■(2) 企業文化
同社は中核価値として「ともにしあわせになるしあわせ」を掲げています。これは、自分たちだけでなく、顧客、取引先、地域社会など関わる全ての人々と共に幸福を追求するという価値観です。この考えに基づき、環境や社会、人々の健康に配慮した商品開発やプロジェクト運営を行う文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年2月期を「成長軌道確立期」と位置づけ、収益力のさらなる向上を目指しています。長期的視点での成長基盤確立に向けた取り組みを継続し、増収増益を図る計画です。
* 2026年2月期 売上高:305億円
* 2026年2月期 営業利益:1.4億円
* 2026年2月期 経常利益:2.4億円
* 2026年2月期 親会社株主に帰属する当期純利益:1.8億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は持続的な成長基盤の確立を目指し、「顧客基盤の拡大」「顧客との継続的な関係育成」「第2の収益の柱の育成」の3点に注力しています。定期便事業では販売価格の適正化やコスト効率化を進めつつ、新規事業として「リテールメディア事業」を開始します。また、神戸ポートタワー事業等の集客・単価向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、属性に関わらず経営理念に共鳴する人材を採用し、個人の経験価値を引き出す方針をとっています。事業と顧客を創造できる人材育成に注力し、若手へのリーダー抜擢や部門横断的なアサインを積極的に行っています。また、多様な人材が活躍できるよう、公正な評価と柔軟な働き方を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 42.2歳 | 15.7年 | 6,706,538円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 35.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 61.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料市況等の影響
通信販売事業の特性上、カタログ制作費や顧客への配送コストが販売費の多くを占めています。紙市況の変動によるカタログコストの上昇や、国内輸送コストの増加が想定以上に発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、エネルギー価格の高騰による原価率の上昇もリスク要因となります。
■(2) カントリーリスク
取扱商品の多くは中国を中心としたアジア地域で生産されており、同地域での販売活動も行っています。そのため、これらの地域における地政学的リスク、信用リスク、市場リスクが顕在化した場合、同社グループの事業運営や業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 通信販売市場の動向
インターネットやモバイル端末の普及によりEC市場は拡大していますが、カタログ通販市場は縮小傾向にあります。同社はWebへの移行を進めていますが、施策の効果が想定を下回る場合や、競合他社の参入、消費者の購買行動の変化などにより、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 個人情報保護
通信販売事業を通じて多くの個人情報を保有しており、その管理には厳重な対策を講じています。しかし、万一個人情報の漏洩や法令違反が発生した場合、損害賠償や対応費用の発生に加え、社会的信用の低下を招き、事業活動に深刻な影響を与える可能性があります。



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