ジェイグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する同社は、居酒屋「芋蔵」や「博多かわ屋」などの飲食事業を中核に、不動産事業や卸売事業等を展開する持株会社です。2025年2月期の業績は、既存店の好調や新規出店、M&A効果により、売上高は増収、各利益段階でも過去最高益を達成し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ジェイグループホールディングス の有価証券報告書(第24期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジェイグループホールディングスってどんな会社?


名古屋を地盤に、「芋蔵」「博多かわ屋」など多業態の飲食店を全国展開し、不動産事業も手がける企業グループです。

(1) 会社概要


1997年に名古屋市で有限会社ジェイプロジェクトとして設立され、「にんにくや本店」等をオープンしました。2001年に株式会社化し、2006年に東証マザーズへ上場を果たしました。2012年には持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。積極的なM&Aも行っており、2017年には「博多かわ屋」を展開するかわ屋インターナショナルを子会社化、直近では2025年にエッジオブクリフ&コムレイド等を子会社化するなど、事業規模を拡大させています。

2025年2月末時点の連結従業員数は419名、単体では381名です。筆頭株主は代表取締役会長である新田二郎氏の資産管理会社であるニューフィールドで15.68%を保有しています。第2位は個人の松永圭司氏、第3位は事業会社であるサントリーとなっており、創業家と取引先が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
ニューフィールド 15.68%
松永 圭司 2.60%
サントリー 2.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表者は代表取締役会長の新田 二郎氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
新田 二郎 代表取締役会長 1997年ジェイプロジェクト(現同社)設立、代表取締役社長。2022年より現職。
林 裕二 取締役社長 1992年名古屋レジャー開発入社。2001年同社入社。常務取締役等を経て2025年3月より現職。
林 芳郎 取締役副社長 1988年名古屋レジャー開発入社。ジェイブライダル代表取締役、ジェイフィールド代表取締役等を歴任。2020年より現職。
田渕 正紀 取締役 2002年ジェイプロジェクト(現同社)入社。執行役員東京営業本部長等を経て2025年5月より現職。
猿渡 弘太 取締役 大和証券出身。まん福ホールディングス入社などを経て2025年4月同社入社。2025年5月より現職。
玉田 貴彦 取締役監査等委員 公認会計士・税理士。あずさ監査法人を経て2006年同社入社。2023年より現職。


社外取締役は、安達 幸子(元ノヴァトレーディング取締役業務部長)、細野 順三(freebalance代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 飲食事業


中核事業として、居酒屋、カフェ、レストランを多業態で展開しています。主なブランドには焼酎主体の居酒屋「芋蔵」、とりかわ焼きの「博多かわ屋」、カフェ「猿Cafe」などがあり、2025年2月末時点で101店舗を運営しています。画一的なチェーン展開ではなく、立地や客層に合わせた個店主義の店づくりが特徴です。

収益は、来店客からの飲食代金等が主な源泉です。運営は、同社および連結子会社のボカディレクション、かわ屋インターナショナル、エッジオブクリフ&コムレイド、EOCブレイン、EOCクラシコ、エー・ラウンドなどが行っています。アフターコロナを見据え、大型店から小型・専門業態への転換を進めています。

(2) 不動産事業


同社グループが所有または賃借するテナントビルや社員寮などの不動産について、賃貸および管理業務を行っています。また、飲食事業とのシナジーを活かし、ビルや商業施設の開発段階から飲食フロアを一括プロデュースする「プロジェクト出店」も推進しています。

収益は、テナント等からの賃貸収入や管理料等が主な源泉です。運営は、主に同社および連結子会社のジェイアセットが行っています。飲食事業の投資コスト抑制や、グループ全体での収益性向上を目指しています。

(3) その他の事業


飲食事業に関連する食品等の卸売業や、人材派遣事業を行っています。FC加盟店への食材卸などが含まれます。

収益は、卸売販売収益や人材派遣料等が源泉です。運営は主に株式会社ジェイフィールド、株式会社かわ屋インターナショナル、株式会社ボカディレクション、株式会社ジェイキャストが行っています。なお、ジェイキャストの人材派遣事業は終了に伴い縮小しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年2月期から2023年2月期にかけては、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、最終赤字が続きました。しかし、2024年2月期には売上高が回復し、各利益段階で黒字転換を果たしました。直近の2025年2月期は、既存店の好調や新規出店、M&Aの効果により、売上高・利益ともに拡大し、回復から成長軌道へと移行しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上収益(または売上高) 67億円 47億円 80億円 104億円 107億円
経常利益 -15億円 -19億円 -9億円 3億円 4億円
利益率(%) -21.9% -40.4% -11.3% 2.9% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -24億円 -6億円 -5億円 2億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果により営業利益率は改善傾向にあります。特に当期は売上高経常利益率などの収益性が向上しており、効率的な店舗運営やコストコントロールが進んでいることがうかがえます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 104億円 107億円
売上総利益 70億円 72億円
売上総利益率(%) 67.0% 67.2%
営業利益 3億円 4億円
営業利益率(%) 3.0% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が27億円(構成比39%)、地代家賃が12億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


飲食事業は、既存店の回復やM&Aによる店舗取得が寄与し、増収増益となりました。不動産事業はグループ内再編の影響もあり減収減益となりました。その他の事業は人材派遣業の終了などにより減収となり、営業損失が継続しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
飲食事業 98億円 101億円 12億円 13億円 12.6%
不動産事業 4億円 4億円 1億円 1億円 25.7%
その他の事業 3億円 2億円 -1億円 -1億円 -43.3%
調整額 -億円 -億円 -9億円 -9億円 -
連結(合計) 104億円 107億円 3億円 4億円 3.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は、本業で稼いだ資金で借入金を返済しつつ、投資は抑制気味の「健全型」です。営業CFは前期に続きプラスを維持し、大幅に増加しました。投資CFは店舗改装やM&A等によりマイナス幅が拡大しました。財務CFは借入金の返済や配当金の支払い等によりマイナスとなりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 1億円 8億円
投資CF -2億円 -4億円
財務CF -0.0億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「たくさんの“ありがとう”を集めよう」を創業精神とし、「幸福創造販売企業」を目指しています。飲食業はサービス業であるとの信念のもと、お客様、社会、社員に対する幸福の創造を通じて、食文化を通じた人づくりと社会貢献、地域活性化に寄与することを事業目的としています。

(2) 企業文化


「人間力」による成長を重視し、数字では表せない価値を大切にする文化があります。「jGroup20の人柄」として、仲間の幸せを願う姿勢や感謝の気持ち、逆境へのタフさなどを掲げ、「10マインド」(ホスピタリティ、ポジティブ、チームワーク等)を社員の行動指針としています。人を育てることを企業の使命としています。

(3) 経営計画・目標


経営効率を高め企業価値を増大させるため、売上高経常利益率を重要指標としています。引き続き新規出店や新業態開発、不動産事業の拡大等に努め、売上高経常利益率3.0%の達成を目指しています(当期実績は3.3%)。

(4) 成長戦略と重点施策


アフターコロナの市場環境に対応し、ポートフォリオの再構築を進めています。飲食事業では、大型総合居酒屋から専門業態・小型店舗・郊外店舗への転換を図り、M&Aによる規模拡大も推進します。また、個店主義に基づき立地特性に応じた最適な業態開発を継続します。

* グループ全体の生産性向上(間接部門の効率化、低収益事業の撤退・改善)
* 店舗の魅力と生産性の向上(商品開発、WEB販促強化、オペレーション効率化)
* 不動産事業におけるプロジェクト出店の推進(開発段階からの提案による付加価値向上)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間力」による成長を志向し、社員に成長の場を与え人材を輩出することを責務としています。創業以来の新卒採用に加え、キャリアのある中途社員の採用も継続的に行っています。多様な人材が活躍できるよう、育児や介護等を理由に働き方を選択できる「フレキシブルワーカー制度」を導入するなど、環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 35.8歳 8.9年 4,456,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 6.6%
男女賃金差異(全労働者) 70.4%
男女賃金差異(正規) 73.1%
男女賃金差異(非正規) 97.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用の女性比率(21.4%)、中途採用者の比率(女性)(34.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外食業界の動向について


原材料費の高止まりや光熱費・人件費の高騰など、外食業界を取り巻く環境は厳しさが続いています。同社は魅力的な店づくりやメニュー変更等で対応していますが、出店エリアでの商流変化や競合激化により集客力が低下した場合、売上高の減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業展開について


同社は大型店から小型・専門業態への転換を進めていますが、計画通りに出店地を確保できない場合や、市場ニーズに合った業態開発ができない可能性があります。また、新規出店や退店に伴い一時的な費用や損失が発生するため、これらが想定以上に膨らんだ場合、利益を圧迫するリスクがあります。

(3) 金利変動の影響について


出店等の設備投資資金を主に金融機関からの借入で調達しており、2025年2月末時点で総資産に占める有利子負債の割合は59.1%となっています。有利子負債への依存度が高いため、金利が上昇した場合、支払利息の増加により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 差入保証金について


店舗物件の多くを賃借しており、差入保証金等の残高は総資産の9.4%を占めています。賃貸人の経営状況悪化や、同社都合による中途解約などにより、差入保証金の全部または一部が返還されない場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。