銚子丸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

銚子丸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

銚子丸は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、グルメ回転寿司「すし銚子丸」を中心とする直営店舗を展開し寿司事業を営む企業です。直近の業績は、新規出店や既存店改装、価格改定の効果などにより売上高が約237億円、経常利益が約16億円となり、増収増益のトレンドで推移し着実な成長を続けています。


※本記事は、株式会社銚子丸の有価証券報告書(第49期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 銚子丸ってどんな会社?


グルメ回転寿司を主力とする同社の歩みと現在の組織体制、大株主の構成を解説します。

(1) 会社概要


同社は1977年に玩具店および飲食店経営として設立されました。1987年に回転寿司業態の第1号店を開設し、1998年にはグルメ回転寿司業態の第1号店「すし銚子丸」を開設しました。2007年にジャスダック証券取引所に株式を上場し、近年は都心型店舗や立ち食い形式の新ブランド開設、また米国での合弁会社設立など事業領域を拡大しています。

従業員数は単体514名です。筆頭株主は同社役員等の資産管理会社である有限会社オール・エムで、第2位から第3位にかけても創業家や役員等の個人株主が名を連ねており、経営陣に関連する安定的な資本構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社オール・エム 31.31%
堀地かなえ 22.45%
堀地元 2.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は石井憲氏が務めています。社外取締役比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
石井憲 取締役社長(代表取締役) 1988年京樽入社。吉野家ホールディングス執行役員、京樽代表取締役社長等を経て2023年同社入社。取締役副社長を経て2025年5月より現職。
堀地かなえ 取締役 2000年有限会社オール・エム取締役。2003年同社入社後、グループ各社の代表取締役を歴任。有限会社オール・エム代表取締役等を兼務し、2024年8月より現職。


社外取締役は、柴野智政(元カフェ・カンパニー専務取締役)、齋藤正淑(元タナベ経営執行役員)、永井俊秀(元千葉県庁病院局副病院局長)、登三樹夫(公認会計士・税理士)、粟谷しのぶ(弁護士)、守屋達雄(社会保険労務士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「寿司事業」を展開しています。

より上質な商品とサービスをよりお得感のある価格帯で提供するグルメ回転寿司業態として、「すし銚子丸」を中心ブランドに直営店のみによる多店舗展開を行っています。千葉、東京、埼玉、神奈川の1都3県でロードサイドや都心部への出店を推進し、職人が握る新鮮で本格的な寿司を一般顧客へ直接提供しています。

収益の大部分は、飲食店における顧客からの注文に基づく料理の提供による飲食代金から構成されています。主な運営主体は銚子丸単体であり、直営店舗網を通じて「おもてなしの舞台」となる店舗空間を提供し、日々の営業活動から売上と利益を獲得するシンプルな単一事業のビジネスモデルを採用しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は店舗網の拡大や価格改定、既存店改装の効果などにより堅調に推移しており、変則決算の2025年2月期を除いて着実な増収傾向にあります。経常利益率も直近では6.7%まで回復しており、原材料費や人件費の高騰といった外部環境の逆風を受けながらも、着実な利益成長を実現しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 170億円 193億円 214億円 174億円 237億円
経常利益 17億円 8億円 17億円 11億円 16億円
利益率(%) 9.9% 4.1% 8.1% 6.2% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 6億円 11億円 6億円 10億円

(2) 損益計算書


新規出店や価格改定が奏功し、売上高は増加しています。売上総利益率も堅調な水準を維持しており、品質を保ちながらも原価コントロールが機能していることが伺えます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 174億円 237億円
売上総利益 107億円 142億円
売上総利益率(%) 61.4% 59.9%
営業利益 11億円 16億円
営業利益率(%) 6.1% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が66億円(構成比53%)、地代家賃及び賃借料が16億円(同12%)、減価償却費が6億円(同5%)を占めています。売上原価は95億円で、全てが原材料仕入などに関連する費用で構成されています。

(3) セグメント収益


同社は寿司事業の単一セグメントであるため、業績の大部分は「すし銚子丸」をはじめとする各店舗からの飲食代金によって構成されています。既存業態の磨き上げや新業態の出店などの施策が奏功し、売上高は着実に増加しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
寿司事業 174億円 237億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 6億円 21億円
投資CF -10億円 -13億円
財務CF -18億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.9%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人間の生命を支える最も基本的な飲食を通し、より多くのお客様に、よりおいしく・よりよいサービス・より速く、をもって私達の『真心』を提供し、お客様の『感謝と喜び』を頂くことを私達の使命と致します。」を掲げています。全従業員にこれを徹底することで「おもてなし」を充実させ、企業価値を向上させることを基本方針としています。

(2) 企業文化


劇団員(従業員)一人ひとりが接客業の喜びを感じるとともに人としても成長し、良質な外食体験を生み出してお客様の感謝と喜びを増大していくという循環を重視しています。誰もが挑戦できる社風づくりや、幅広い人材が活躍できる土壌の形成を進めており、従業員が体感・共感・共有できる研修環境の整備に努めています。

(3) 経営計画・目標


安定した財務基盤を維持しつつ、売上高を着実に増加させ、適正な利益の確保を図っていくことを目指しています。そのための重要な経営指標として、以下の3つを位置付けています。

・売上高経常利益率
・自己資本比率
・ROE

これらの指標の向上に努め、事業の継続的な発展と企業価値の最大化を追求しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存業態の徹底的な磨き上げとして「職人の握る寿司」「目利き」「おもてなしの舞台」を強化し、新鮮で高品質な商品を追求します。また、未展開エリアでの出店強化と都心型店舗モデルの確立を進めるほか、既存店の改装や不採算店舗の退店による利益体質の強化を図ります。さらにDX戦略の推進や米国市場への展開を戦略の柱としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人を増やす「採用」、技術者を育てる「育成」、長く働き続ける環境を作る「リテンション」の3つをテーマとし、優秀な人材の確保を推進しています。適正人材の採用や配転教育を実施するとともに、中長期的な能力開発のためにキャリアデベロップメントプログラムと新しい評価制度を導入し、女性活躍推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 44.3歳 10.9年 5,234,079円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.1%
男女賃金差異(正規雇用) 71.6%
男女賃金差異(パート・有期) 96.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(17.0%)、女性店長人数(3人)、65歳以上の社会保険適用従業員雇用数(126人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外食業界の動向と競争激化
多様化する外食ニーズの中で、大手チェーン店の相次ぐ出店や異業種参入等による競争が激化しています。外食市場の縮小や中食事業者を含めた他社との競争がさらに激しさを増した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は独自の商品力向上と差別化に向けた施策で収益力の確保に努めています。

(2) 食材の調達と価格変動
水産物や米などの原材料において、気候変動や世界情勢による市場価格の変動、漁獲量の減少に伴う欠品等が発生するリスクがあります。特にまぐろ等の主要品目は価格変動の影響を受けやすいため、固定価格での長期契約や仕入経路の多様化を図っていますが、急激な価格上昇が生じた場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人件費・光熱費等のコスト上昇
労働人口の減少に伴う労働市場の逼迫から、優秀な人材を確保するための賃金上昇圧力が高まっています。また、エネルギー危機や円安を背景とした光熱費や諸経費の高止まりも顕在化しています。今後、急激な人件費や光熱費の上昇が生じた場合、収益を圧迫し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 衛生管理と食品の安全性
外食産業の中でも生鮮食材を取り扱う業態として、食中毒事件等の発生は重大なリスクとなります。地球温暖化の影響による寄生虫関連の食中毒も増加傾向にあり、万一安全性の問題が発生した場合、企業存続に影響を及ぼす恐れがあります。衛生管理室による厳格な評価・教育やHACCPに沿った衛生管理体制を構築し対策しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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