※本記事は、株式会社エーアイテイー の有価証券報告書(第38期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エーアイテイーってどんな会社?
日中間の海上コンテナ輸送に強みを持つ独立系フォワーダーです。国際物流と通関、3PLを一貫して提供します。
■(1) 会社概要
同社は1988年、大阪府にて雑貨輸入を目的に設立されました。1995年に現社名へ変更し、国際貨物輸送事業を開始しています。2007年に東証マザーズへ上場し、2011年には東証一部へ市場変更を果たしました。その後、2019年に日新運輸を完全子会社化するなど規模を拡大し、現在は日中間の物流を軸にグローバル展開を進めています。
連結従業員数は1,232名、単体では271名体制です。筆頭株主は社長の矢倉英一氏の資産管理会社である株式会社エイチアンドワイで、第2位は資本業務提携先である物流大手のロジスティード(旧日立物流)、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。独立系ながら、強力なパートナーシップとオーナーシップを兼ね備えています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エイチアンドワイ | 33.35% |
| ロジスティード | 20.43% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は矢倉英一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 矢倉 英一 | 代表取締役社長 | 淺川組運輸、アトラス複合輸送(現伊藤忠ロジスティクス)を経て1995年より現職。 |
| 馬上 真一 | 常務取締役 | 伊藤忠エクスプレス(現伊藤忠ロジスティクス)を経て入社。日新運輸代表取締役社長を兼務。 |
| 大槻 信夫 | 取締役大阪営業部・東京営業部担当 | 住友特殊金属を経て入社。執行役員タイ・ベトナム・インドネシア担当等を経て2025年より現職。 |
| 川峯 寛 | 取締役大阪通関部・東京通関部・海上業務部担当 | アスターを経て入社。執行役員東京営業部長等を経て2025年より現職。 |
| 香月 俊哉 | 取締役海外担当 | 伊藤忠商事、デサントCSO等を経て2024年入社。2025年より現職。 |
| 内田 利明 | 取締役総合企画部・情報システム部・経理財務部担当兼経理財務部長 | 日本テレコム、ノーリツ鋼機等を経て入社。執行役員経理財務部長を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、神宮司孝(ロジスティード執行役員)、岡本しのぶ(公認会計士)、北岡侑子(日本ベンチャーキャピタル シニアパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
国際貨物輸送(NVOCC)、通関、倉庫内作業(検品・加工等)、国内配送、3PL事業を展開しています。主力の海上輸送では、自社で船舶を持たず船会社のスペースを利用して輸送サービスを提供しており、特にアパレルや日用雑貨の取扱いに強みを持っています。FCL(コンテナ単位)およびLCL(混載)の双方に対応しています。
収益源は、荷主から受け取る輸送運賃、通関料、作業料等と、実運送業者(船会社等)へ支払う運賃等の差額などです。運営は主にエーアイテイーと連結子会社の日新運輸が行っており、独自のITシステムを活用した貨物情報の可視化サービスなども提供し、顧客の物流効率化を支援しています。
■(2) 中国
中国沿海部(上海、大連、天津、青島、蘇州、寧波、厦門、深圳等)に拠点を構え、日本向け輸出貨物の集荷、現地倉庫での検品・検針・流通加工、通関手配などの物流サービスを提供しています。生産地に近い場所での品質管理やアソート(仕分け)を行うことで、日本到着後のリードタイム短縮に貢献しています。
収益源は、中国国内での輸送運賃、倉庫での検品・検針料、作業料などです。運営は、上海愛意特国際物流有限公司や日一新国際物流(上海)有限公司などの現地法人が担っており、日本側と連携した一貫輸送体制を構築しています。
■(3) その他
台湾、ベトナム、ミャンマーにおいても現地法人を通じて国際貨物輸送事業を展開しています。各地域発着の海上・航空輸送に加え、ベトナムやミャンマーでは縫製品の検品・検針業務なども手掛けており、生産拠点のシフト(チャイナ・プラス・ワン)に対応した物流サービスを提供しています。
収益源は、各地域における国際輸送運賃や付帯業務収入です。運営は、台湾愛意特国際物流股份有限公司、AITC LOGISTICS (VIETNAM) CO.,LTD.、NISSHIN (MYANMAR) CO., LTD.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年2月期から2025年2月期までの業績を見ると、売上収益は2023年2月期をピークに変動しています。2024年2月期は海上運賃の下落等により減収となりましたが、2025年2月期は取扱量の回復や運賃上昇により再び増収基調に戻りました。利益面では、経常利益・当期純利益ともに高い水準を維持しており、利益率(経常利益率)も8%台と安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 458億円 | 599億円 | 695億円 | 514億円 | 556億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 38億円 | 56億円 | 45億円 | 45億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 6.4% | 8.1% | 8.8% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 24億円 | 37億円 | 30億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は増加しましたが、売上総利益は微減となりました。これは海上運賃の上昇に伴い売上原価が増加し、利益率が低下したことによるものです。営業利益も販管費の増加により減益となりましたが、経常利益は為替差益の計上などで前期並みを維持しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 514億円 | 556億円 |
| 売上総利益 | 102億円 | 101億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.9% | 18.1% |
| 営業利益 | 43億円 | 41億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が23億円(構成比39%)、法定福利費が7億円(同11%)、賞与及び賞与引当金繰入額が6億円(同11%)を占めています。売上原価では輸送事業仕入が大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは、海上輸送の取扱コンテナ本数や通関受注件数が増加し増収となりましたが、運賃上昇による利益率低下や販管費増により減益となりました。中国セグメントは、日本向け貨物の安定や円安効果により増収増益を達成しました。その他セグメントも、ベトナムやミャンマーでの取扱回復等により大幅な増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 438億円 | 471億円 | 35億円 | 32億円 | 6.8% |
| 中国 | 64億円 | 69億円 | 6億円 | 7億円 | 9.9% |
| その他 | 11億円 | 16億円 | 2億円 | 2億円 | 12.9% |
| 連結(合計) | 514億円 | 556億円 | 43億円 | 41億円 | 7.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスで、本業で稼いだ資金を投資と借入返済・配当に充てている「健全型」です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 32億円 |
| 投資CF | -2億円 | -19億円 |
| 財務CF | -41億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは基本理念として「創発」を掲げています。変化の激しい環境に適応し、顧客と共に持続的に成長することを目指しています。また、顧客のニーズに基づいた拠点網を拡充し、組織全体が創発により有機的に結びついた創造性あふれる活発な組織を構築することを経営方針としています。
■(2) 企業文化
創業以来、「提案力」「ネットワーク」「オペレーティング」の3つをキーワードに顧客の物流ニーズに応えてきました。現在は、「一人ひとりの想像力を高め、創発が生まれる企業文化」を作ることを重視しており、世界に挑戦できる主体的・自律的な人材を育成し、変革を実現する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
安定的かつ持続的な成長と利益の確保を経営目標としています。特に、営業収益、営業利益及び経常利益においては「成長率」を重要な経営指標と捉えています。また、資本効率の観点から、ROE(自己資本利益率)並びにROA(総資産経常利益率)の更なる向上も目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
DXの推進による競争優位性の強化と顧客利便性の向上を重点施策としています。主力である国際貨物輸送に加え、通関、配送、流通加工といった付帯業務の受注拡大を図るとともに、三国間輸送の獲得にも注力しています。また、海外拠点や代理店との連携強化、他企業との事業提携を通じた総合物流サービスの展開も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「創発人材の育成」を掲げ、「挑戦」「多様性とヒラメキ」「好奇心と感性」「主体性と自律性」を持つ人材の育成を目指しています。採用では、専門性を持つ即戦力の中途採用と、将来を担う新卒採用を並行して行っています。また、エンゲージメントサーベイの活用や労働時間の短縮、賃上げなどを通じて、働きがいのある環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 37.4歳 | 8.5年 | 6,300,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.6% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については、同社は公表義務に基づく公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職候補(課長補佐、課長代理)登用率(41.7%)、資格取得支援の累積利用人数(93人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 燃油価格及び船舶需要の変動等による仕入価格の変動
同社は船舶等を所有せず実運送業者を利用しているため、燃油価格の変動や船腹不足等により仕入運賃が変動するリスクがあります。通常は販売価格へ転嫁しますが、急激な変動時に転嫁できない場合や、仕入価格下落時に販売価格を引き下げる必要が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 中国情勢の変化
国際貨物輸送事業の主要業務は日中間の海上コンテナ輸送です。そのため、中国における政治的・経済的な混乱、政策変更、為替動向、反日運動等の影響により、日中間の国際物流環境に大きな変化が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制への対応
貨物利用運送事業法に基づく登録・許可や、通関業法に基づく許可を受けて事業を行っています。法令違反等によりこれらの登録・許可が取り消されたり、事業停止処分を受けたりした場合、経営及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 一般的な景気動向と特定業種への依存
同社の売上高は繊維・雑貨関連企業への依存が相対的に高くなっています。国内外の景気動向による物流量の変化に加え、特定業種の景気悪化や感染症拡大等による生産活動の停滞が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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