歌舞伎座 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

歌舞伎座 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する歌舞伎座は、劇場等の不動産賃貸事業を柱に、劇場内や地下広場での食堂・飲食事業および歌舞伎関連の売店事業を展開しています。直近の業績では、来場者の増加を背景に全事業が好調に推移しており、売上高および経常利益ともに前期を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社歌舞伎座の有価証券報告書(第102期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 歌舞伎座ってどんな会社?


歌舞伎座は、世界で唯一の歌舞伎専用劇場を保有し、不動産賃貸や食堂・売店の運営を展開しています。

(1) 会社概要


1949年に設立された同社は、1951年に歌舞伎座を開場し、翌1952年に東京証券取引所へ株式上場を果たしました。1954年には現在の歌舞伎座サービスを設立し、食堂・飲食や売店事業を本格化させました。2013年には建替えを経て新劇場を開場するとともに、地下に木挽町広場をオープンしています。

同社の従業員数は連結で38名、単体で5名という体制です。筆頭株主は同社が劇場を賃貸し演劇興行を担う松竹で、第2位は建設業を営む事業会社の清水建設、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
松竹 13.73%
清水建設 8.64%
みずほ信託銀行 退職給付信託 松竹口再信託受託者 日本カストディ銀行 3.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安孫子正氏が務め、社外取締役の比率は28.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
安孫子 正 代表取締役社長 1975年松竹入社、取締役、常務、専務を経て、2006年演劇本部長・歌舞伎座総支配人。2014年松竹副社長、2019年同代表取締役副社長。2020年日本演劇興行協会会長。2021年より現職。
田中 智明 常務取締役総務担当事業担当 2005年松竹総務部人事管理課長、人事部長、総務部長を歴任。2022年同社取締役総務担当・業務副担当 総務部長に就任。2025年より現職。


社外取締役は、小平健(元ニュー・オータニ取締役副総支配人)、鈴木太一郎(松竹上席執行役員 不動産本部副本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産賃貸事業」「食堂・飲食事業」「売店事業」を展開しています。

不動産賃貸事業


歌舞伎座の土地と建物を所有し、テナントに対して不動産の賃貸を行っています。主要な賃貸先は演劇興行を行う松竹であり、劇場や附帯施設を安全に利用できる環境を整備しています。

主な収益は、各テナントからの不動産賃料や広告媒体の活用等による収入です。本事業は親会社である歌舞伎座と、連結子会社である歌舞伎座サービスの両社によって運営されています。

食堂・飲食事業


主に劇場内や木挽町広場などの地下広場において、食堂および飲食店舗を営業しています。観劇に訪れる顧客に対して、趣向やニーズに合わせた食事やドリンクなどのサービスを提供しています。

顧客に食事や弁当を提供し、その対価として受け取る代金が主な収益源となっています。本事業は、連結子会社である歌舞伎座サービスが主体となって運営を行っています。

売店事業


主に劇場内および地下広場において、歌舞伎に関連する商品を販売する売店を営業しています。公演演目にちなんだオリジナル商品や土産品を取り揃え、観劇客や外国人観光客に提供しています。

店舗で顧客に商品を引き渡し、その対価として受け取る販売代金が主な収益源です。本事業についても、食堂・飲食事業と同様に連結子会社の歌舞伎座サービスが運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は25億円から36億円へと順調な拡大を続けています。経常利益は新型コロナウイルス等の影響でマイナスとなった時期もありましたが、その後回復し、直近では4億円まで利益を伸ばしています。利益率もマイナスから10.5%へと大幅に改善しており、着実な収益力向上がうかがえます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 25億円 27億円 31億円 31億円 36億円
経常利益 -1億円 - 2億円 2億円 4億円
利益率(%) -4.1% -0.1% 7.3% 7.9% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 2億円 1億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の31億円から当期は36億円へと増加し、売上総利益も7億円から9億円に拡大しました。これに伴い営業利益も2億円から4億円へと大幅な増益を達成しており、利益率の改善が進んでいることが確認できます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 31億円 36億円
売上総利益 7億円 9億円
売上総利益率(%) 24.0% 25.3%
営業利益 2億円 4億円
営業利益率(%) 7.0% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が3億円(構成比59%)、その他の経費が2億円(同30%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上を見ると、不動産賃貸事業はテナントの賃料改定により売上が拡大しました。食堂・飲食事業では襲名披露公演の記念メニューやドリンクが好調に推移し、売店事業もオリジナル商品や催しによる新規来場者の増加が寄与して売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
不動産賃貸事業 19億円 20億円
食堂・飲食事業 6億円 8億円
売店事業 6億円 8億円
連結(合計) 31億円 36億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金を活用して、投資や借入金の返済等を自己資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 2億円 7億円
投資CF -0.4億円 -1億円
財務CF -0.6億円 -0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「日本の伝統芸能である歌舞伎の殿堂として、多くの人に楽しんでいただける快適な劇場環境を提供することにより、歌舞伎の維持・発展に貢献するとともに、健康で文化的な社会の実現に寄与する」ことを企業理念として掲げています。世界で唯一の歌舞伎専用劇場を保持し、周辺事業の発展に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は法令遵守を重視しており、「歌舞伎座グループ企業行動規範」等の諸規程を定め、コンプライアンスに関する教育研修を通じてグループ一体で健全な企業風土の形成に努めています。また、サステナビリティ経営を推進し、多様な人材が働きやすい職場環境の確保や環境問題への対応に取り組む行動様式を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、「持続的成長と企業価値向上」を目標に掲げて事業を展開しています。その実現に向けた長期的な経営課題として、「自己資本比率の向上と安定配当の維持・継続」を認識しており、堅実な財務基盤の構築と株主還元を重視した経営計画を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、快適で安心・安全な劇場環境と独自の食やサービスの提供を成長戦略の軸としています。不動産賃貸事業では保有物件の価値向上や広告媒体の活用による収益拡大を目指し、食堂・飲食事業では顧客ニーズを捉えたサービスと徹底した原価管理を進めます。売店事業においては、増加する外国人観光客向けの商品拡充や効率的な販売に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的成長には人材の成長と事業の成長が継続的に連動すると考え、人的資本を重視しています。人事制度を用いた実績や能力の評価により、性別を問わず適性に基づいた処遇を行うことを基本方針としています。また、育児休業や介護休業制度の整備を通じて、多様な人材が働きやすい職場環境の確保に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 42.2歳 12.8年 6,874,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は法令等の規定による公表を行っていないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食堂・飲食事業における衛生管理


同社グループは劇場内や地下広場で飲食サービスを提供しており、従業員に対して衛生管理の指導を徹底しています。しかし、万が一食中毒などの重大な衛生問題が発生した場合には、営業停止やブランドイメージの低下を招き、同社グループの財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 不動産賃貸契約の解約と空室


同社グループは不動産を保有し、各テナントと賃貸借契約を結んでいます。テナントの財政状態の悪化や移転などによって契約が解約された場合、新たなテナントが決定するまでの賃貸料収入の減少や、賃料相場の下落などが生じ、同社グループの業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

(3) 松竹が実施する演劇興行への依存


同社グループは劇場を松竹に賃貸しており、同社が演劇興行を担っています。そのため、不慮の事故やその他の要因によって公演が中止になった場合などは、来場者の減少や賃貸収入への影響が生じ、同社グループの財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。