歌舞伎座 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

歌舞伎座 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、歌舞伎専用劇場「歌舞伎座」の賃貸および関連事業を行う企業です。不動産賃貸事業を柱に、劇場内での食堂・飲食事業、売店事業を展開しています。直近の決算では、インバウンド需要の増加等により、売上高は1.8%増、経常利益は11.0%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社歌舞伎座 の有価証券報告書(第101期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 歌舞伎座ってどんな会社?


歌舞伎の殿堂「歌舞伎座」を保有し、松竹グループにおいて不動産賃貸や劇場内サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1949年に設立され、1951年に歌舞伎座を開場、翌1952年には東京証券取引所に上場しました。その後、飲食・売店事業を行う子会社の設立や合併を経て、2013年4月に現在の新劇場が開場しました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は39名(単体10名)という少数精鋭の組織です。筆頭株主は、演劇の興行を行うその他の関係会社の松竹で、第2位は建設大手の清水建設です。第3位は資産管理を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
松竹 13.73%
清水建設 8.64%
みずほ信託銀行株式会社 退職給付信託 松竹口再信託受託者 株式会社日本カストディ銀行 3.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安孫子正氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
安孫子 正 代表取締役社長 1975年松竹入社。同社演劇本部長、代表取締役副社長等を経て、2021年5月より現職。
田中 智明 常務取締役総務担当事業担当 2005年松竹総務部人事管理課長。同社人事部長、総務部長を経て、2025年5月より現職。


社外取締役は、小平健(元ニュー・オータニ取締役)、鈴木太一郎(松竹上席執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産賃貸事業」、「食堂・飲食事業」および「売店事業」を展開しています。

(1) 不動産賃貸事業


同社および子会社が所有する土地と建物を賃貸しています。主な資産である劇場歌舞伎座は、演劇興行を行う松竹に対して賃貸されており、グループ収益の柱となっています。

収益は、主に松竹等のテナントからの賃貸料収入です。運営は主に同社と子会社の歌舞伎座サービスが行っており、劇場の敷地の一部については松竹等より賃借し、その一部を再び松竹へ賃貸する形態もとっています。

(2) 食堂・飲食事業


主に歌舞伎座の劇場内および地下広場において、来場者向けの食堂や飲食店舗を営業しています。観劇の幕間に利用される食事処やカフェなどが含まれます。

収益は、店舗利用者からの飲食代金です。運営は、連結子会社である歌舞伎座サービスが行っています。

(3) 売店事業


主に歌舞伎座の劇場内および地下広場において、歌舞伎関連商品や土産物を販売する売店を営業しています。

収益は、来場者や観光客等に対する商品販売代金です。運営は、連結子会社である歌舞伎座サービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響を受けた時期から回復基調にあり、31億円規模まで増加しています。利益面でも、経常利益が赤字の状態から脱却し、直近では利益率約8%の黒字を確保するなど、収益性が改善しています。当期純利益も黒字化し、安定した推移を見せています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 21億円 25億円 27億円 31億円 31億円
経常利益 -3.2億円 -1.0億円 -0.0億円 2.2億円 2.5億円
利益率(%) -15.3% -4.1% -0.1% 7.3% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.5億円 -1.5億円 -0.8億円 2.6億円 2.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高は微増しており、31億円台に乗っています。売上原価も増加していますが、売上総利益率は24%前後を維持しています。営業利益は増加傾向にあり、営業利益率も7%台に向上しています。全体として、収益性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 31億円 31億円
売上総利益 7.7億円 7.5億円
売上総利益率(%) 25.2% 24.0%
営業利益 2.0億円 2.2億円
営業利益率(%) 6.7% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が3.1億円(構成比58%)、その他の経費が1.7億円(同32%)を占めています。

(3) セグメント収益


不動産賃貸事業は売上が安定しており、利益の大部分を稼ぎ出していますが、設備保全等により減益となりました。一方、食堂・飲食事業は黒字転換し、売店事業はインバウンド需要等により大幅な増益となりました。全体として、飲食・売店事業の回復が業績を押し上げています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
不動産賃貸事業 19億円 19億円 6.9億円 5.8億円 30.3%
食堂・飲食事業 5.8億円 5.8億円 -0.2億円 0.2億円 2.9%
売店事業 5.8億円 6.2億円 0.6億円 1.1億円 17.9%
連結(合計) 31億円 31億円 2.0億円 2.2億円 7.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 3.1億円 2.2億円
投資CF 1.6億円 -0.4億円
財務CF -0.6億円 -0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.4%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「歌舞伎の維持・発展に貢献し、豊かで文化的な社会の実現に寄与する」ことを企業理念としています。歌舞伎の殿堂として、多くの人に楽しんでもらえる快適な劇場環境を提供し、健康で文化的な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「歌舞伎の殿堂」としての役割を重視し、快適で安心・安全な劇場環境の提供と、「歌舞伎座」ならではの食やサービスの提供を大切にしています。伝統を守りつつ、多くの人に楽しんでもらえる場づくりに取り組む姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、「持続的成長と企業価値向上」という目標達成のための長期的な経営課題として、「自己資本比率の向上と安定配当の維持・継続」を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


不動産賃貸事業では、保有物件の価値向上や広告媒体活用による収益向上、および劇場の安全な環境整備のための計画的な保全業務を進めます。食堂・飲食事業では、顧客ニーズを捉えた食事の提供と原価・経費管理の徹底による収益性向上を図ります。売店事業では、外国人観光客向け商品の拡充やマーケティング、在庫管理による効率的な販売に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長と企業価値向上には人材と事業の成長が連動すると考え、人的資本を重視しています。人事制度を用いた実績・能力評価により、性別を問わず能力や適性に基づいた処遇を行う方針です。また、育児・介護休業制度の整備等により、多様な人材が働きやすい職場環境の確保に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 43.3歳 12.1年 6,709,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は規定による公表を行っていないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害・事故等の発生について


同社グループは不動産を保有し賃貸しています。そのため、大規模な自然災害や事故等の予期せぬ事態が発生した場合、保有資産への損害や事業の中断等により、財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 衛生管理について


同社グループは飲食サービスを提供しており、衛生管理の指導を徹底しています。しかしながら、万一食中毒等の重大な衛生問題が発生した場合には、社会的信用の失墜や営業停止処分等により、財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 不動産賃貸契約の解約について


同社グループは不動産を保有しテナントと賃貸借契約を締結しています。テナントの財政状態悪化や移転等により契約が解約された場合、新規テナント決定までの賃貸料収入減少や賃料相場の下落等により、財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 松竹への依存について


同社グループは、劇場を松竹に賃貸し、同社が演劇興行を行っています。不慮の事故等により興行が中止になった場合等は、同社グループの財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。