ダイセキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイセキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイセキは、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する企業です。産業廃棄物の中間処理・リサイクルや土壌汚染対策などを主要事業として展開しています。2025年2月期の連結業績は、売上高673億円(前期比2.7%減)、経常利益148億円(同4.0%減)で減収減益となりました。


記事タイトル:ダイセキ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社ダイセキ の有価証券報告書(第67期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイセキってどんな会社?


産業廃棄物の中間処理・リサイクルを中心に、土壌汚染対策や鉛リサイクルなどを展開する「環境創造企業」です。

(1) 会社概要


同社は1958年に石油製品の製造・販売を目的として設立されました。1971年に産業廃棄物中間処理業へ本格参入し、1995年には業界初の公開企業として店頭市場へ登録しました。その後、2000年に東証・名証一部へ指定され、2004年にはエンジニアリング部門を分社化した子会社が現在の株式会社ダイセキ環境ソリューションへ商号変更するなど、グループ体制を強化してきました。

現在の従業員数は連結1,264名、単体787名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社、第2位は同じく資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行となっており、機関投資家が多く保有しています。第3位はJP MORGAN CHASE BANKです。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 15.29%
日本カストディ銀行 9.52%
JP MORGAN CHASE BANK 8.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長執行役員は山本哲也氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 哲也 代表取締役社長執行役員 日立製作所を経て1989年同社入社。リサイクル事業開発本部長、名古屋事業所長、事業統括本部本部長などを歴任。2022年5月より現職。
伊藤 泰雄 代表取締役副社長執行役員事業統括本部本部長経営企画室室長 1996年同社入社。名古屋事業所長、事業統括本部経営企画室室長などを歴任。2022年5月より現職。
天野 浩二 取締役専務執行役員事業統括本部副本部長 1985年同社入社。九州事業所長、関東事業所長、関西事業所長などを歴任。2020年5月より現職。


社外取締役は、岡田満(元株式会社UACJ代表取締役社長)、佐橋典一(元名古屋市会議長)、前田勝己(公認会計士・税理士)、菅沼綾子(元愛知県庁環境部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境関連事業」の単一セグメントですが、事業内容は多岐にわたります。

(1) 産業廃棄物処理関連事業


工場廃液を中心とした産業廃棄物の収集運搬・中間処理を行っています。製造業などを主な顧客とし、廃棄物の適正処理を行うとともに、リサイクル燃料の製造なども手掛けています。

排出事業者から処理委託費を受け取るほか、製造したリサイクル燃料などの製品を販売することで収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(2) 土壌汚染処理関連事業


土壌汚染の調査から処理、浄化工事までを一貫して行っています。土地の売買や再開発を行う企業、工場跡地の所有者などが主な顧客です。

顧客から土壌汚染調査、浄化処理、工事等の対価を受け取ります。運営は主に株式会社ダイセキ環境ソリューションが行っています。

(3) 鉛リサイクル関連事業


使用済バッテリーの収集運搬・再生利用、鉛の精錬および非鉄金属原料の販売を行っています。

顧客から使用済バッテリー等を回収し、精錬した再生鉛や非鉄金属原料を販売することで対価を受け取ります。運営は株式会社ダイセキMCRが行っています。

(4) タンク洗浄関連事業


石油タンク等の洗浄およびタンクに付帯する工事、VOCガスの回収作業などを行っています。

顧客からタンク洗浄作業や工事等の対価を受け取ります。運営はシステム機工株式会社が行っています。

(5) その他


廃石膏ボードのリサイクルや古紙の回収・販売、一般廃棄物の収集運搬などを行っています。

顧客から処理委託費やリサイクル製品・古紙の販売代金を受け取ります。運営は株式会社グリーンアローズ中部、株式会社グリーンアローズ九州、株式会社杉本商事などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にありましたが、直近では減少に転じました。利益面では高い利益率を維持しているものの、直近2期は減益傾向となっています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 515億円 569億円 586億円 692億円 673億円
経常利益 105億円 131億円 131億円 155億円 148億円
利益率(%) 20.3% 23.1% 22.3% 22.3% 22.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 65億円 84億円 87億円 95億円 93億円

(2) 損益計算書


売上高、各利益ともに前期を下回る結果となりました。原価率は改善したものの、販管費率の上昇が営業利益率の低下につながっています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 692億円 673億円
売上総利益 227億円 224億円
売上総利益率(%) 32.8% 33.4%
営業利益 148億円 143億円
営業利益率(%) 21.4% 21.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が27億円(構成比34%)、運賃が10億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の産業廃棄物処理関連事業は増収となりましたが、土壌汚染処理関連事業の減収が全体の業績に影響を与えました。鉛リサイクル関連事業やタンク洗浄関連事業、その他の事業は増収で推移しました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
産業廃棄物処理関連事業 377億円 389億円
土壌汚染処理関連事業 196億円 148億円
鉛リサイクル関連事業 41億円 46億円
タンク洗浄関連事業 39億円 45億円
その他 39億円 45億円
連結(合計) 692億円 673億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ダイセキは、環境関連事業を単一セグメントとして展開しています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益や減価償却費等により、安定的に資金を獲得しています。投資活動では、有形固定資産の取得による支出が主な要因となっています。財務活動では、長期借入れによる収入があったものの、配当金の支払いなどが支出を上回りました。これらの活動の結果、当連結会計年度末の資金残高は増加しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 138億円 138億円
投資CF -83億円 -73億円
財務CF -41億円 -53億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「環境創造企業」をスローガンに掲げています。リサイクルを中心とした産業廃棄物中間処理を事業の核として業容拡大を図るとともに、「環境」を通して社会に貢献することを経営方針としています。

(2) 企業文化


「限られた資源を活かして使う『環境を通じ社会に貢献する環境創造企業』」というパーパスを重視した経営を行っています。創業以来、産業廃棄物処理業界のリーダー的存在として社会的信頼性の向上に努めており、ESGを経営の最重要課題の一つとして捉え、社会全体からの信頼と期待に応える姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期計画として、3期後の2028年2月期に向けた数値目標を掲げています。また、中長期的には資本効率を重視した経営を目指しています。

* 売上高:810億円
* 営業利益:180億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:112億円
* 連結ROE:15%以上(中長期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


産業廃棄物の適正処理・リサイクル化のニーズに対応するため、技術力向上や設備投資を進めます。特に関東・関西地区でのシェア拡大に加え、北海道・東北・広島地区での新拠点開発に注力します。また、子会社との連携による土壌汚染調査や鉛リサイクル等の事業拡大、コンプライアンス体制の充実、情報化投資による業務効率化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のために、次世代経営人材の育成を中核と位置付け、階層別教育やキャリア志向に応じたプログラムを充実させる方針です。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人材が活躍できる環境づくりや、社員の健康を経営基盤と捉えた健康経営、ワークライフバランスの実現に向けた支援に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 40.8歳 12.1年 7,331,705円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 21.4%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規) 65.3%
男女賃金差異(非正規) 47.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2%未満)、有給休暇取得率(80%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制リスク


産業廃棄物処理業は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」等の法的規制を受けており、事業継続には都道府県知事等の許可が必要です。法令違反等により営業停止や許可取消等の行政処分を受けた場合、グループの事業展開や業績に重大な影響を与える可能性があります。

(2) 市場ニーズの変化


土壌汚染調査・処理事業は、企業の環境投資や「土壌汚染対策法」等の規制動向の影響を受けます。法令等の改正により需要が拡大する可能性がある一方、規制強化への対応が遅れた場合や、市場環境の変化により需要が減少した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 気候変動に関するリスク


気候変動に伴う自然災害や異常気象による物理的被害、気候関連規制の強化、脱炭素社会への移行コストなどが事業活動に影響を及ぼす可能性があります。同社はTCFD提言への賛同やシナリオ分析を行っていますが、想定を超える事象が発生した場合には業績に影響を与える可能性があります。

(4) 建設業関係法令リスク


土壌汚染処理事業において、原位置処理や土壌掘削等は建設業法の規制を受けます。同社は「特定建設業」の許可を取得していますが、法令違反等により営業停止等の行政処分を受けた場合、事業展開に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。