※本記事は、ダイセキの有価証券報告書(第68期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイセキってどんな会社?
ダイセキは産業廃棄物の収集運搬・中間処理を主力とし、資源リサイクルを通じた環境保全を推進する企業です。
■(1) 会社概要
1958年に石油製品の製造販売を目的として設立され、1971年に産業廃棄物中間処理業へ本格参入しました。2000年には東証・名証の市場第一部に指定され、その後も全国規模で事業所を開設しています。直近では2025年にダイセキ環境ソリューションを完全子会社化し、環境リスクへの対応力を強化しています。
従業員数は連結で1,295名、単体で809名体制で事業を運営しています。同社の大株主構成をみると、筆頭株主および第2位の株主は信託財産等の運用を担う国内の信託銀行です。第3位には創業家の資産管理会社とみられる法人が名を連ねており、安定的な資本基盤を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 15.94% |
| 日本カストディ銀行 | 11.58% |
| こども未来研究所 | 5.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長執行役員は山本哲也氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本哲也 | 代表取締役社長執行役員 | 1989年日立製作所入社後、同年同社に入社。事業統括本部本部長などを経て、2022年5月より現職。 |
| 伊藤泰雄 | 代表取締役副社長執行役員事業統括本部本部長経営企画室室長 | 1996年同社入社。名古屋事業所長、取締役専務執行役員などを歴任し、2022年5月より現職。 |
| 天野浩二 | 取締役専務執行役員事業統括本部副本部長 | 1985年同社入社。九州事業所長、関東事業所長などを経て、2020年5月より現職。 |
社外取締役は、岡田満(元古河スカイ社長)、佐橋典一(元名古屋市会議長)、前田勝己(元有限責任監査法人トーマツシニアマネージャー)、菅沼綾子(元愛知県庁環境部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「環境関連事業」を展開しています。
■環境関連事業
同事業では、製造業を中心とした顧客から排出される工場廃液などの産業廃棄物の収集運搬および中間処理、リサイクル業務を提供しています。加えて、土壌汚染調査や処理、鉛のリサイクル、大型タンクの洗浄工事、廃石膏ボードや古紙の資源回収など、多様化する環境保全ニーズに応える幅広いサービスを展開しています。
収益は、産業廃棄物の処理や収集運搬に係る役務提供の対価、土壌汚染対策の調査および工事代金、再生利用された非鉄金属原料の販売代金などを顧客から受け取るモデルです。事業の運営は主にダイセキが行うほか、土壌汚染対策はダイセキ環境ソリューション、鉛リサイクルはダイセキMCRなどのグループ会社がそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が順調に拡大傾向をたどっており、特に当期は過去最高の売上高を記録しました。経常利益についても安定した高水準を維持しており、利益率も常に20%以上を確保するなど、非常に強固な収益基盤と高い成長性を両立させていることがわかります。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 569億円 | 586億円 | 692億円 | 673億円 | 718億円 |
| 経常利益 | 131億円 | 131億円 | 155億円 | 148億円 | 149億円 |
| 利益率(%) | 23.1% | 22.3% | 22.3% | 22.0% | 20.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 67億円 | 70億円 | 76億円 | 79億円 | 87億円 |
■(2) 損益計算書
売上原価の増加を吸収して売上総利益を順調に拡大させており、売上総利益率は30%台を維持しています。営業利益についても着実に増加しており、高い収益力を保ちながら堅実に利益を創出する安定した事業構造を構築しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 673億円 | 718億円 |
| 売上総利益 | 224億円 | 241億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.3% | 33.6% |
| 営業利益 | 143億円 | 146億円 |
| 営業利益率(%) | 21.2% | 20.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が18億円(構成比19%)、運賃が9億円(同10%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスのため、「健全型」に該当します。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 138億円 | 110億円 |
| 投資CF | -73億円 | -41億円 |
| 財務CF | -53億円 | -187億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、地球環境の保全と持続可能な社会の構築を使命としています。「限られた資源を活かして使う『環境を通じ社会に貢献する環境創造企業』」をパーパスに掲げ、リサイクルを中心とした産業廃棄物中間処理を事業の核としながら、気候変動や資源の有限性といった地球規模の課題解決に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業から半世紀を超える歴史の中で培ってきた「知恵と工夫と行動力」を価値観として大切にしています。社会の変化や多様な要請に柔軟に対応し、事業活動を通じて新たな価値を創造し続ける姿勢を重視しており、地域社会や顧客から信頼され、愛される企業となるための強固なコンプライアンスの徹底も図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、株主資本コストを上回るROE(自己資本利益率)を維持しつつ、中長期的にはROE15%以上の達成を目標として掲げています。また、中期計画として3期後の2029年2月期に向けて以下の具体的な数値目標を設定し、事業の持続的な成長と収益基盤のさらなる拡大を目指しています。
・売上高:830億円
・営業利益:190億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、関東地区や関西地区などシェア拡大余地のある大規模市場への積極的な設備投資と営業強化を推進する「エリア戦略」を掲げています。また、グループ間連携によるトータルプランナー機能の強化やM&Aを通じた金属・大型タンク以外のリサイクル事業の拡大、最新設備導入による取扱可能品目の拡張に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「家族に誇れる会社」をキーワードに、次世代経営人材の育成を中核に据えた人材戦略を推進しています。階層別教育やジョブローテーションを活用し、社員の視野と仕事への好奇心を高める育成プログラムを充実させるほか、多様な価値観を持つ人材が個性を発揮して活躍できるダイバーシティの推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 41.1歳 | 12.2年 | 7,525,522円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.2% |
| 男性育児休業取得率 | 70.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(1%未満)、有給休暇取得率(80%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 廃棄物処理業における法的規制リスク
同社の主力事業である産業廃棄物の収集運搬・中間処理業は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」をはじめとする環境関連法規制の強い規制を受けています。各都道府県知事等からの許可が必要であり、万一法令に抵触して営業停止命令や許可取り消し等の行政処分を受けた場合、事業継続や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 環境規制強化等の市場ニーズ変化
土壌汚染調査や処理の需要は、関連法令や各地方自治体の条例、企業の環境投資動向に大きく影響されます。今後、法規制の強化や浄化対策基準の厳格化に伴い市場需要の拡大が見込まれますが、同社グループが新しい技術基準や複雑な規制要請に迅速かつ適切に対応できない場合、受注機会を逸失し業績が低迷するリスクがあります。
■(3) 気候変動に伴う物理的・移行リスク
自然災害の激甚化や異常気象の増加による自社施設の物理的な被害リスクが存在します。また、脱炭素社会に向けたカーボンプライシングや温室効果ガス排出量規制の強化により、化石燃料由来のエネルギーコスト増大といった移行リスクも生じます。不測の環境変化への適応が遅れた場合、事業の収益性を圧迫する可能性があります。



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