※本記事は、株式会社リソー教育 の有価証券報告書(第40期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リソー教育ってどんな会社?
完全個室での1対1個別指導を特徴とする進学塾「TOMAS」を中心に、幼児から社会人まで幅広い教育サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
1985年に設立され、翌年より個別指導塾の展開を開始しました。1998年の店頭登録、2002年の東証一部指定を経て、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しました。2024年には、資本業務提携関係にあったヒューリックが第三者割当増資および公開買付けにより親会社となり、同社グループ傘下に入りました。
従業員数は連結1,149名、単体505名です。筆頭株主は親会社であり不動産事業を展開するヒューリック、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には資本業務提携を結んでいる学校法人駿河台学園が入っており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ヒューリック | 51.08% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.96% |
| 学校法人駿河台学園 | 6.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は天坊真彦氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 天坊 真彦 | 取締役社長(代表取締役) | 1995年入社。経営企画部門や管理部門を経て、2017年社長就任。グループ会社代表を兼務し、2022年より現職。 |
| 久米 正明 | 取締役副社長 | 旧協和銀行、みずほ証券常務取締役等を経て、2017年入社。CFOとして財務戦略を統括し、2019年より現職。 |
| 上田 真也 | 専務取締役 | 1996年入社。企画部門を歴任し、スクールTOMAS代表取締役社長を兼任。2020年より現職。 |
| 西浦 三郎 | 取締役(非業務執行) | 旧富士銀行取締役、みずほ銀行副頭取を経て、ヒューリック代表取締役社長・会長を歴任。2022年より現職。 |
社外取締役は、佐藤敏郎(税理士法人K・T・Two代表社員)、小西徹(目黒・白金法律事務所代表弁護士)、小野田麻衣子(株式会社ライトスタッフ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「学習塾事業」「家庭教師派遣教育事業」「幼児教育事業」「学校内個別指導事業」「人格情操合宿教育事業」および「その他」事業を展開しています。
■学習塾事業
首都圏を中心に、全室黒板付きの完全個室で「ひと部屋に生徒一人に先生一人」の完全個別指導を行う進学塾「TOMAS」、医学部受験専門の「メディックTOMAS」、英会話スクール「インターTOMAS」などを運営しています。小学生から社会人までを対象としています。
生徒からの授業料や入会金、講習会費などを収益源としています。運営は主にリソー教育が行っており、グループの中核事業として高い進学実績を背景に差別化を図っています。
■家庭教師派遣教育事業
100%プロ社会人講師による個別指導を行う「名門会家庭教師センター」、医学部受験専門予備校「MEDIC名門会」、地方都市向けの進学個別指導塾「TOMEIKAI」、オンライン指導の「名門会Online」などを運営しています。
生徒からの指導料、入会金、教材費などを収益源としています。運営は株式会社名門会が行っており、全国規模で拠点を展開し、高品質な教育サービスを提供しています。
■幼児教育事業
名門幼稚園・小学校受験指導を行う「伸芽会」、受験対応型の託児・学童保育を行う「伸芽'Sクラブ」、およびコナミスポーツとの提携による「コナミスポーツ伸芽'Sアカデミー」を運営しています。
会員からの受講料、入会金、模試受験料などを収益源としています。運営は株式会社伸芽会が行っており、首都圏での小学校受験ニーズの高まりに対応しています。
■学校内個別指導事業
私立中高一貫校などの学校内に個別指導ブースを設置し、TOMASのノウハウを活用した学習支援サービス「スクールTOMAS」を提供しています。学校の進学実績向上や教員の長時間労働解消を支援します。
提携校または生徒からの受講料などを収益源としています。運営は株式会社スクールTOMASが行っており、学校内予備校としての契約校数が増加しています。
■人格情操合宿教育事業
勉強だけでなく、多様な体験を通じて人間性を育むためのツアーや合宿企画を行う「スクールツアーシップ」、および「TOMASサッカースクール」「TOMAS体操スクール」などを運営しています。
参加者からの参加費やスクール月謝などを収益源としています。運営は株式会社プラスワン教育が行っています。
■その他
上記セグメントに含まれない事業として、講師の採用・育成・紹介を行う事業や、障害福祉サービス事業などを展開しています。
グループ会社等からの業務受託料やサービス対価などを収益源としています。運営は株式会社ココカラTチャーズや株式会社リソーウェルフェアなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は300億円台で安定的に推移しており、直近5期間を通じて緩やかな増加傾向にあります。経常利益も20億円台後半から30億円前後で推移し、利益率は8〜10%程度を維持しています。特に当期は売上高が過去最高を更新し、利益面でも前期比で改善が見られ、安定した収益基盤を示しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 252億円 | 300億円 | 315億円 | 322億円 | 334億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 31億円 | 25億円 | 27億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 10.2% | 7.8% | 8.2% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 22億円 | 16億円 | 17億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、売上高、売上総利益、営業利益はいずれも増加しています。売上総利益率は27%台で安定しており、営業利益率も8%台後半へ向上しました。増収効果に加え、経費コントロールが進んだことで各利益段階での増益を達成しており、本業の収益性が着実に向上していることが分かります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 322億円 | 334億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 90億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.6% | 27.1% |
| 営業利益 | 26億円 | 29億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が18億円(構成比29%)、広告宣伝費が13億円(同22%)を占めています。売上原価においては、人件費等の労務コストが大きな割合を占める構造となっています。
■(3) セグメント収益
主力の学習塾事業は生徒数増加により増収増益となり、全体の業績を牽引しました。学校内個別指導事業は大幅な増収増益を達成し成長しています。一方、家庭教師派遣事業と人格情操合宿教育事業は減収となりましたが、全社的には増収基調を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 学習塾事業 | 168億円 | 177億円 | 8億円 | 12億円 | 6.6% |
| 家庭教師派遣教育事業 | 50億円 | 49億円 | 4億円 | 4億円 | 7.2% |
| 幼児教育事業 | 57億円 | 57億円 | 6億円 | 5億円 | 7.9% |
| 学校内個別指導事業 | 29億円 | 34億円 | 3億円 | 5億円 | 14.2% |
| 人格情操合宿教育事業 | 17億円 | 16億円 | 0.1億円 | 0.5億円 | 2.9% |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 | 0.2億円 | 0.2億円 | 86.4% |
| 調整額 | 1億円 | 1億円 | 4億円 | 4億円 | 304.8% |
| 連結(合計) | 322億円 | 334億円 | 26億円 | 29億円 | 8.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで推移し、本業で現金を稼ぐ力があります。投資CFはマイナスですが、これは新規開校やリニューアルへの投資によるものです。財務CFはプラスとなっており、これは主に親会社への第三者割当増資による収入です。営業黒字と資金調達を元に積極的な投資を行う**積極型**のキャッシュ・フローと言えます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 25億円 |
| 投資CF | -10億円 | -8億円 |
| 財務CF | -25億円 | 18億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべては子どもたちの未来のために」という企業理念を掲げています。顧客である子供や保護者の要望を的確に把握し、教育力の向上と誠実かつ迅速な対応に努めることで、子供たちの素晴らしい未来づくりに全力で貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「生徒の個性・個人差は千差万別。その個人差に的確に対応できる教育こそが、本物の教育であり、理想の教育である」という信念に基づき、高品質な「本物」の教育サービスを提供することを重視しています。徹底した差別化戦略により、他社にはないオンリーワンの価値を提供し続ける文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2025年2月期を初年度とする3ヵ年の新中期経営計画を策定しています。最終年度となる2027年2月期には、連結業績として以下の目標数値を掲げ、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
* 売上高:382億6,000万円
* 営業利益:33億6,000万円
* 経常利益:33億6,000万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:20億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「徹底的な差別化戦略」を軸に、完全1対1の個別指導による進学実績の創出を追求しています。また、首都圏を中心とした戦略的な校舎展開に加え、1歳から社会人までを対象とした「囲い込み戦略」を推進しています。さらに、ヒューリックおよびコナミスポーツとの提携による教育特化型ビル「こどもでぱーと」の展開により、新たな顧客接点の創出とグループシナジーの発揮を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を重要な経営資源と捉え、優秀な社員や講師の採用・育成を最重要課題としています。講師の採用・育成専門の子会社「ココカラTチャーズ」にて採用管理を一元化し、多くの優秀な講師を確保するとともに、徹底した研修教育を行うことで質の高い教育サービスの提供につなげています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 40.3歳 | 9.2年 | 6,971,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 9.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 133.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 66.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 62.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 81.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 社会情勢の変化に関するリスク
国内で教育サービスを提供しているため、景気変動や物価動向の影響を受けます。特に、少子化の進行や、教育制度・大学入試改革などの大きな環境変化は、同社グループの生徒獲得やカリキュラム対応に影響を与え、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材確保および育成について
高品質な教育サービスの提供と計画的な教室展開には、優秀な社員や講師の確保が不可欠です。採用環境の急激な変化により必要な人材を十分に確保できない場合や、人材育成が計画通りに進まない場合、サービス品質の維持や事業拡大に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 物件の確保を行えないリスク
首都圏を中心に新規開校や既存校の拡大リニューアルを進める計画ですが、希望する立地条件での物件確保が困難な場合、計画通りの教室展開ができなくなる可能性があります。これは同社グループの成長戦略の遂行を遅らせ、将来の収益確保に影響を及ぼすリスクとなります。
■(4) 個人情報の取扱いについて
生徒や保護者の個人情報を多数取り扱っているため、情報の漏洩や不正利用が発生した場合のリスクがあります。プライバシーポリシーに基づく管理を徹底していますが、万が一問題が発生すれば、社会的信用の失墜や損害賠償請求などにより、業績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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