イオンファンタジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イオンファンタジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はプライム市場に上場しており、ショッピングセンター内でのファミリー向け遊戯施設運営を主な事業としています。直近の業績トレンドは、売上高が増加する一方で経常利益は減少し、最終損益は赤字となる増収減益・最終赤字の状態です。アセアン事業が拡大する一方、中国事業の低迷が響いています。


※本記事は、株式会社イオンファンタジーの有価証券報告書(第29期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イオンファンタジーってどんな会社?


イオングループのショッピングセンターを中心に、子供向け遊戯施設「モーリーファンタジー」等を国内外で展開する企業です。

(1) 会社概要


1997年に設立され、ジャスコ株式会社(現イオン)から58店舗を譲り受けて営業を開始しました。2003年に東証二部に上場し、2005年には東証一部銘柄に指定されました。2006年にマイカルクリエイトを吸収合併し、2015年にはファンフィールドと合併しました。2022年にプライム市場を選択しています。

連結従業員数は4,620名、単体従業員数は895名です。筆頭株主は親会社で総合スーパー事業などを展開するイオンであり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同様に資産管理を行う銀行です。

氏名 持株比率
イオン 60.49%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.41%
日本カストディ銀行(信託口) 3.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は藤原 徳也氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
藤原 徳也 代表取締役社長 2000年入社。商品本部長、国内事業責任者などを経て、2021年5月より現職。
藤原 信幸 取締役会長 2004年入社。中国事業責任者、代表取締役社長などを経て、2023年5月より現職。
井関 義徳 取締役兼専務執行役員管理統括兼リスクマネジメント担当 ダイエー入社後、ダイエーレジャーランド(現同社)入社。財経・管理本部長などを経て、2025年5月より現職。
田村 純宏 取締役兼執行役員国内事業責任者 ジャスコ(現イオン)入社後、同社開発本部長、グローバル開発本部長などを経て、2024年3月より現職。
小岩 渉 取締役兼執行役員海外事業責任者 2003年入社。アセアン事業責任者、エデュテイメント事業開発本部長などを経て、2025年3月より現職。


社外取締役は、山下 真実(株式会社ここるく代表取締役)、草島 智咲(株式会社ウィズソフィア代表取締役)、齋藤 政彦(元Fuji Xerox Malaysia Sdn.Bhd.社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内事業」「中国事業」「アセアン事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 国内事業


イオングループおよびその他のディベロッパーが運営するショッピングセンター内を中心に、ファミリー向けアミューズメント施設およびプレイグラウンド施設等を展開しています。「モーリーファンタジー」や「ちきゅうのにわ」などのブランドでサービスを提供しています。

収益は、来店客からの施設利用料やゲームプレイ料金などが主な源泉です。運営は主にイオンファンタジーが行っています。

(2) 中国事業


中国において、イオングループおよびその他のディベロッパーが運営するショッピングセンター内で遊戯施設の設置運営を行っています。経済活動の低迷や競争激化に対応し、アミューズメントからプレイグラウンドへの業態転換などを進めています。

収益は、施設利用者からの利用料などが主な源泉です。運営は連結子会社の永旺幻想(中国)児童遊楽有限公司が行っています。

(3) アセアン事業


マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムにおいて、ショッピングセンター内での遊戯施設の設置運営を行っています。「キッズーナ」等の主力業態に加え、地域特性に合わせた新業態の開発も進めています。

収益は、各国の施設利用者からのプレイ料金などが主な源泉です。運営は、AEON FANTASY(MALAYSIA)SDN.BHD.など現地の連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に直近は過去最高を更新しています。一方で利益面では、一時期の赤字から回復して黒字化しましたが、直近では経常利益が減少し、最終損益は再び赤字となっています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 461億円 602億円 727億円 818億円 872億円
経常利益 -77億円 -34億円 13億円 45億円 34億円
利益率(%) -16.7% -5.6% 1.8% 5.5% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -88億円 -55億円 -39億円 -4億円 -19億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益および営業利益も増加していますが、売上総利益率および営業利益率は低下しています。増収により利益額は確保しているものの、利益率の改善が課題といえます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 818億円 872億円
売上総利益 103億円 117億円
売上総利益率(%) 12.5% 13.4%
営業利益 36億円 43億円
営業利益率(%) 4.4% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が26億円(構成比36%)、退職給付費用が2億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内事業とアセアン事業は増収増益となり、特に国内事業が業績を牽引しています。一方、中国事業は減収となり、営業損失も拡大して全体の足を引っ張る形となっています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
国内事業 642億円 692億円 46億円 62億円 9.0%
アセアン事業 110億円 132億円 14億円 12億円 9.0%
中国事業 65億円 48億円 -23億円 -31億円 -63.2%
連結(合計) 818億円 872億円 36億円 43億円 5.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

イオンファンタジーは、事業活動に必要な資金を営業キャッシュ・フローで賄うことを基本とし、主に金融機関からの借入で資金調達しています。

営業活動では、減損損失の計上等により資金が増加した一方、法人税等の支払いにより資金が減少しました。投資活動では、新規出店や既存店活性化のための設備投資により資金を使用しました。財務活動では、借入金の返済等により資金を使用しましたが、新たな借入により資金が増加しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 121億円 124億円
投資CF -107億円 -109億円
財務CF -1億円 -28億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「こどもたちの夢中を育み、“えがお”あふれる世界をつくる。」というパーパスを掲げています。目指す姿として『こどもたちの“たのしい”を創造し、「こころ・あたま・からだの成長」を育み続けるファミリー支援企業』を掲げ、持続可能な社会への貢献と企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


「日々の変化に自ら意思を持って対応し、周囲とともに成長しながらチームとして成果を出すことができる人財」を目指す姿としています。従業員がいきいきと働ける組織づくりを進め、「すべてのファンタジーピープルが仕事もあそびも夢中になれる会社」を長期目標としています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から「新中期経営計画」(2024年~2026年)を推進しており、「市場の変化に合わせた自らの変革」および「自社の強みを生かした成長戦略の推進」を経営課題として掲げています。
* 2025年度目標:売上高922億円
* 2025年度目標:営業利益73億円
* 2025年度目標:ROE31.7%
* 2025年度目標:自己資本比率15.6%

(4) 成長戦略と重点施策


国内事業では原資創出と市場領域の拡大、アセアン事業では第2の成長ドライバーとしての新業態・エリア開発、中国事業では不採算店舗の閉店と戦略再構築を進めます。国内では「ちきゅうのにわ」等の新業態やDXによる構造改革、アセアンでは地域所得等に応じた出店パターンの最適化に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


成長の原動力は「人財」であるとの認識のもと、多様な価値観を活かす「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」を推進しています。性別・国籍等を問わない採用・起用や、専門人材の確保、教育体系の改革による自律的なキャリア形成支援、エンゲージメント向上のための環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 44.3歳 15.6年 4,761,153円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 51.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.4%
男女賃金差異(正規雇用) 74.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 111.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界における持続的な低迷のリスク


国内アミューズメント市場は縮小傾向にあり、少子化による対象人口の減少も懸念されています。これにより、同社グループ施設の利用者が減少し、業績が低迷する可能性があります。収益が国内市場に大きく依存しているため、国内市場動向の影響を受けやすい構造です。

(2) 競争の激化に関するリスク


ショッピングセンター内に出店する競合他社や、単独出店型の企業との競争が激化しています。競合他社がより広い面積で家族層をターゲットにした出店を加速させており、こうした競争環境の変化が同社グループの出店戦略や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 感染症発生及び拡大のリスク


新たな感染症の発生・拡大により、子供が集まる施設への来店減少や臨時休業を余儀なくされる可能性があります。過去の新型コロナウイルス感染拡大時のような事態が長期化した場合、業績に大きな影響を与えるリスクがあります。

(4) 消費税率引き上げに伴うリスク


消費税率の引き上げが行われた場合、個人消費の落ち込み、特にレジャー・娯楽費の抑制が予想されます。これにより来店客数や客単価が減少し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 海外事業の展開に関するリスク


中国やアセアン各国での事業展開において、経済動向、為替変動、法的規制の変更、政情不安などのカントリーリスクが存在します。また、現地での類似施設の増加による競争激化も懸念され、これらが業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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