イオンファンタジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イオンファンタジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イオンファンタジーは東京証券取引所プライム市場に上場し、ショッピングセンター内でファミリー向けアミューズメント施設を展開する企業です。当期は国内事業の既存店が好調に推移し、不採算店の整理を進めたことで、売上高933億円、経常利益74億円となり、増収増益を果たしました。


※本記事は、株式会社イオンファンタジーの有価証券報告書(第30期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イオンファンタジーってどんな会社?

イオン生活圏を中心に、ファミリー向けアミューズメント施設やプレイグラウンドを展開する企業です。

(1) 会社概要

1997年に設立され、ジャスコ(現イオン)から58店舗の遊戯施設を譲り受けて営業を開始しました。2003年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2006年にはマイカルクリエイトを吸収合併しています。2007年の中国法人設立を皮切りに海外進出を本格化し、現在はアセアン各国でも事業を展開しています。

現在、同社は連結で3,955名、単体で902名の従業員を擁しています。筆頭株主は親会社であり総合小売業を展開するイオンで、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行などが名を連ねています。

氏名 持株比率
イオン 60.48%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3.65%
CACEIS BANK, LUXEM BOURG BRANCH/UCITS-FULL TAX 1.04%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は藤原徳也氏が務めており、社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤原徳也 代表取締役社長 同社商品本部各グループチーフマネジャー、国内事業責任者などを経て、2021年より現職。
藤原信幸 取締役会長 永旺幻想(中国)児童遊楽有限公司董事長、同社代表取締役社長を経て、2023年より現職。
井関義徳 取締役兼専務執行役員 ダイエーを経て入社。財経本部長、常務取締役管理統括兼リスクマネジメント担当等を経て現職。
田村純宏 取締役兼執行役員 ジャスコを経て入社。西日本営業本部長、開発本部長、国内事業責任者を経て、2026年より現職。


社外取締役は、山下真実(ここるく代表取締役)、草島智咲(ウィズソフィア代表取締役)、齋藤政彦(富士フイルムビジネスイノベーション新成長事業創出部長等)です。

2. 事業内容

同社グループは、「国内」、「アセアン」、「中国」の3つの報告セグメントを展開しています。

国内

ショッピングセンター内を中心に、ファミリー向けアミューズメント施設やプレイグラウンド施設を提供しています。小さな子どもとその家族を主な顧客層としています。

収益は、店舗に設置された遊戯機械の利用料や、カード・玩具・飲食物などの商品販売から得ています。これらの施設の運営はイオンファンタジーが行っています。

アセアン

マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムのショッピングセンター内において、遊戯施設やプレイグラウンド施設の設置および運営を行っています。

収益は各国の店舗における遊戯機械の利用料や商品販売等によって構成されています。運営はAEON FANTASY (MALAYSIA) SDN.BHD.などの現地子会社が行っています。

中国

中国国内のショッピングセンター内において、遊戯施設などのアミューズメント施設およびプレイグラウンド施設を設置・運営しています。

収益源は、遊戯機械の利用料や関連商品の販売等です。運営は永旺幻想(中国)児童遊楽有限公司などの現地法人が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5年間の業績を見ると、売上高は順調に拡大を続けています。一方、利益面では過去の感染症拡大等の影響で赤字となる時期もありましたが、既存店対策や不採算店舗の整理を進めた結果、直近では黒字転換を果たし、収益性が大幅に改善しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 602億円 727億円 818億円 872億円 933億円
経常利益 -34億円 13億円 45億円 34億円 74億円
利益率(%) -5.6% 1.8% 5.5% 3.9% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -55億円 -39億円 -4億円 -19億円 9億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴って売上総利益も順調に伸びており、収益性が向上しています。また、販売費及び一般管理費を適切にコントロールしたことで、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 872億円 933億円
売上総利益 117億円 132億円
売上総利益率(%) 13.4% 14.1%
営業利益 43億円 61億円
営業利益率(%) 5.0% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が26億円(構成比37.2%)を占めています。また、売上原価の内訳を見ると、家賃及び共益費が150億円(構成比23.6%)、労務費が140億円(同22.0%)、景品費が109億円(同17.2%)となっています。

(3) セグメント収益

国内は主力であるプライズ部門が牽引し増収増益となりました。アセアンは地方出店が寄与し増収となったものの都市部の競争激化で減益、中国は不採算店舗の整理により売上は減少しましたが損失幅は縮小しました。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
国内 692億円 752億円 62億円 70億円 9.3%
アセアン 132億円 152億円 12億円 5億円 3.1%
中国 48億円 29億円 -31億円 -14億円 -48.1%
連結(合計) 872億円 933億円 43億円 61億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業で獲得した資金を元手に、借入も活用しながら積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 124億円 116億円
投資CF -109億円 -149億円
財務CF -28億円 47億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は38.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「こどもたちの夢中を育み、“えがお”あふれる世界をつくる。」というパーパスを掲げています。このパーパスの実現に向け、顧客への提供価値を従来の「子どもが楽しい」から「親も子どもも楽しい」へと範囲を拡大し、持続可能な社会への貢献と企業価値向上の両立を目指しています。

(2) 企業文化

従業員がいきいきと働ける組織づくりを重視し、「すべてのファンタジーピープル(同社で働くすべての人々)が仕事もあそびも夢中になれる会社」を長期目標としています。多様な価値観を活かすダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進し、自ら考え行動し成長し続けられる風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標

2026年度を最終年度とする経営目標として、以下の数値を掲げています。
・売上高:980億円
・営業利益:80億円
・ROE:25.7%
・自己資本比率:15.5%

(4) 成長戦略と重点施策

社会トレンドに対応した国内主力事業の強化や、海外における既存店の顧客価値および競争力向上を目指しています。「イオン生活圏」を基軸とした独自の強みを活かし、事業間のシナジー追求や収益貢献に直結するDX戦略の推進、事業ポートフォリオ経営の進化などの重点施策に取り組んでいます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「日々の変化に自ら意思を持って対応し、周囲とともに成長しながらチームとして成果を出すことができる人財」を理想としています。多様な価値観を活かすダイバーシティの推進や、専門人財の育成、意欲ある人が自ら成長していける仕組みづくりを進め、キャリア形成を支援する制度を整えています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 44.8歳 15.8年 4,968,374円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 52.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) 75.8%
男女賃金差異(正規雇用) 108.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(4.6%)、エンゲージメントスコア(53.6)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化や娯楽多様化によるアミューズメント市場の低迷

同社の収益は国内市場に大きく依存しており、メインターゲットである子どもの減少(少子化問題)がリスクとなります。また、家庭用ゲームやスマートフォンアプリの普及など、余暇市場の多様化によってアミューズメント施設の利用が減少した場合、業績が低迷する可能性があります。

(2) ショッピングセンター内における遊戯施設の競争激化

他のアミューズメント企業や、単独の出店形態を主体とする企業がショッピングセンター内への出店を積極的に進めており、競争が激しくなっています。より広い面積でファミリー層をターゲットにした競合施設の増加は、同社の出店戦略や収益に影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 中国およびアセアンにおける海外事業展開リスク

中国やアセアン各国における経済動向、為替相場の変動、法的規制の変更などが事業活動に影響を与えるリスクがあります。さらに、類似したプレイグラウンド施設が増加し、海外市場においても競争が激化することで、想定した収益性を確保できなくなる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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