※本記事は、クリエイト・レストランツ・ホールディングスの有価証券報告書(第29期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. クリエイト・レストランツ・ホールディングスってどんな会社?
多様なブランドでレストランや居酒屋などの飲食事業を展開する企業の特徴を紹介します。
■(1) 会社概要
同社は1997年4月に前身となるヨコスカ・ブルーイング・カンパニーとして設立され、1999年にクリエイト・レストランツへ商号変更して本格的にレストラン事業を開始しました。2005年9月に株式上場を果たし、2010年3月の事業持株会社体制への移行に伴い現在の社名に変更しています。近年はM&Aを積極的に推進しており、2022年にサンジェルマン、2024年に一幻フードカンパニー(現クリエイト・ヌードルズ)などを完全子会社化し、事業基盤を拡大しています。
従業員数は連結で4,468名、単体で127名です。筆頭株主は代表取締役会長の後藤仁史氏が代表を務める資産保全会社のG&Companyで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| G&Company | 41.24% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.91% |
| ユリッサ | 1.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長の川井潤氏をはじめとする経営陣を紹介します。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川井 潤 | 代表取締役社長 | 1987年日本興業銀行入行。2003年同社入社、取締役管理本部長。専務取締役等を経て、2021年代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 後藤 仁史 | 代表取締役会長 | 1980年旭化成ホームズ入社。1997年同社前身を設立し代表取締役社長。2003年代表取締役会長。2008年G&Company代表取締役に就任し現職。 |
| 島村 彰 | 常務取締役CDO | 1993年伊藤忠商事入社。サンマルクホールディングス常務取締役等を経て2012年同社入社。2021年常務取締役。2026年より現職。 |
| 大野 仁之 | 常務取締役 | 1998年三菱商事入社。ローソン海外事業本部部長等を経て2019年同社入社。2021年執行役員、2023年取締役を経て、2026年より現職。 |
| 大内 源太 | 取締役CFO | 1996年三菱商事入社。LEOC執行役員CFO等を経て2015年同社入社。2018年執行役員管理本部長。2021年取締役CFOに就任し現職。 |
| 両角 元勝 | 取締役 | 1999年シダックス・コミュニティー入社。2004年同社入社。管理本部経営企画部長、執行役員人事部長等を経て、2025年取締役に就任し現職。 |
社外取締役は、松井晴美(食楽代表取締役)、松岡一臣(松岡一臣公認会計士・税理士事務所開設)、大塚美幸(and代表取締役)、片山典之(シティユーワ法律事務所創立時パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」の単一セグメントで事業を展開しています。ここではブランドカテゴリーごとに解説します。
■(1) CRカテゴリー
ショッピングセンターや駅前などの立地特性に合わせ、カジュアルなフードコートからディナータイプのレストランまで、多様なブランドで飲食サービスを提供しています。また、ゴルフ場内やレジャー施設内のレストラン等の受託運営も行っています。
収益は、一般消費者からの飲食代金や業務受託による手数料等から得ています。運営は主にクリエイト・レストランツおよびクリエイト・ダイニングが行っています。
■(2) SFPカテゴリー
主に繁華街を中心とした好立地において、「磯丸水産」や「鳥良商店」などの専門性の高い居酒屋業態を展開し、幅広い顧客層に向けて飲食サービスを提供しています。
収益は、各店舗に来店する一般消費者からの飲食代金から得ています。運営は主にSFPホールディングス、SFPダイニング、ジョー・スマイル、およびクルークダイニングが行っています。
■(3) 専門ブランドカテゴリー
ベーカリー、うどん・そば、ラーメン、つけ麺、ベーグルなど、専門性の高い日常食や地域密着型の飲食店を展開し、それぞれのブランドで特徴あるメニューを提供しています。
収益は、一般消費者からの飲食代金から得ています。運営は主にグルメブランズカンパニー、KRフードサービス、遊鶴、いっちょう、サンジェルマン、クリエイト・ヌードルズなどが行っています。
■(4) 海外カテゴリー
シンガポール、香港、米国などにおいて、日本食レストランやイタリアンレストラン、ベーカリーレストランなどの事業を展開し、現地の消費者に向けて飲食サービスを提供しています。
収益は、現地の店舗を訪れる消費者からの飲食代金から得ています。運営はcreate restaurants asia Pte. Ltd.やIl Fornaio (America) LLC、Create Restaurants DE LLCなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上収益はM&Aの推進や新規出店などにより継続して増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。一方、税引前利益は年度によって変動が見られ、直近では増益となったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益は減益となっています。利益率は概ね安定した水準で推移しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 783億円 | 1182億円 | 1458億円 | 1564億円 | 1654億円 |
| 税引前利益 | 71億円 | 46億円 | 66億円 | 77億円 | 79億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 3.9% | 4.5% | 4.9% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 59億円 | 34億円 | 50億円 | 56億円 | 47億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期から増加して堅調な成長を示していますが、売上総利益率は低い水準にとどまっています。営業利益は前期からやや減少し、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1564億円 | 1654億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 62億円 |
| 売上総利益率(%) | 3.6% | 3.7% |
| 営業利益 | 85億円 | 79億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、株主優待引当金繰入額が10億円(構成比22%)、給与が9億円(同20%)、業務委託費が8億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは飲食事業の単一セグメントであるため、事業全体の収益状況を示します。売上収益は新規ブランドの追加や既存店の堅調な推移により前期比で増収となりましたが、営業利益は一部カテゴリーでの原価率上昇等の影響を受けて減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益(2026年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結(合計) | 1564億円 | 1654億円 | 85億円 | 79億円 | 4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業といえます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 260億円 | 230億円 |
| 投資CF | -92億円 | -58億円 |
| 財務CF | -167億円 | -213億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.6%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はグループミッションとして「わくわく無限大! 個性いろいろ ともに創る 驚きの未来。」を掲げています。いろいろな個性を持った仲間とわくわくしながら驚くような未来をともに創り、各事業会社の個性を活かしつつ連携して豊かな食生活へ貢献することを目指しています。また、継続的なチャンスの開拓やイノベーションの創出を経営理念として定めています。
■(2) 企業文化
同社は「スピード、クリエイティブ、チャレンジ」という経営理念を牽引する企業文化を重視しています。各事業会社の独自性を尊重しながらグループとして成長する「グループ連邦経営」を推進し、多様な個性が最大限に発揮される企業風土を醸成しています。人権を守り、仲間を相互に尊重し感謝し合うサステナブルな職場づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年2月期を初年度とする5か年の中期経営計画を推進しています。持続的成長を達成するために、収益性の重要な経営指標(KPI)として調整後EBITDAおよび調整後EBITDAマージンを、財務の安定性を図る指標として調整後自己資本比率を重視しています。
* 2027年2月期 売上収益1710億円
* 2027年2月期 営業利益90億円
* 2027年2月期 調整後EBITDA271億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「グループ連邦経営2.0」への進化を掲げ、あらゆるステークホルダーから選ばれる企業グループの実現を目指しています。成長の3本柱として「本質的価値の進化」「シナジーのあるM&A」「海外事業の拡大」を推進し、基盤としてテクノロジーの活用や人的資本経営の強化に取り組んでいます。
* 既存店来客数の向上と新規業態の開発
* 国内外における年間2件前後のM&A実行
* 海外売上比率を2030年2月期に現状の2倍へ拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人財こそが持続的な成長を創出する極めて重要な源泉であると位置づけています。多様な人財がわくわく仕事に取り組める環境整備、多様性の尊重(DE&I)、教育・研修を通じた成長支援を重視し、人的投資の継続的な強化や人事評価・研修制度の見直し等を通じて、個々の成長につながる環境を構築しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 48.5歳 | 14.2年 | 6,800,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 32.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 65.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 107.1% |
※男性労働者の育児休業取得率は有報において「-」と記載されています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(60.7%)、外国籍従業員比率(17.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食の安全管理と品質問題
飲食事業において食中毒や異物混入等の衛生問題が発生した場合、商品に対する信用力の低下や企業イメージの失墜を招き、業績に重大な影響を与えるリスクがあります。同社は「食の安全安心推進室」を中心に、衛生管理マニュアルの見直しや従業員教育の徹底、外部機関による定期的な検査等を通じて予防に努めています。
■(2) 出店政策と店舗開発
出店時の立地選定や賃貸借契約の更新において、好立地の条件変化や投資金額の増加、定期賃貸借契約の非更新などが発生した場合、店舗の採算性悪化や撤退に伴う違約金・除却損等の損失が生じ、事業計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は投資基準の見直しや賃貸人の信用状況確認を行っています。
■(3) 人財の確保とコスト上昇
外食需要の変化や人手不足の中で必要な人財を十分に確保できない場合や、人件費および採用コストの高騰が収益を圧迫するリスクがあります。同社は採用手法の刷新や多様な人財が能力を発揮できる環境整備を進めるとともに、DX活用による店舗運営の省人化を図り効率的な運営体制の構築に取り組んでいます。
■(4) インターネット等による風評被害
SNSやインターネット上の掲示板等への不適切な書き込みや風評被害が拡散した場合、内容の真偽にかかわらず企業の信用やブランドイメージが損なわれ、来店客数の減少などを通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はWEBリスクモニタリングを導入し、リスク投稿を早期に検知する体制を整えています。



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