※本記事は、株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングス の有価証券報告書(第28期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. クリエイト・レストランツ・ホールディングスってどんな会社?
マルチブランド・マルチロケーション戦略を掲げ、立地に合わせて多様な飲食ブランドを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1997年に前身となる会社が設立され、1999年に洋食レストランの営業譲渡を受けて本格的にレストラン事業を開始しました。2000年には御殿場プレミアム・アウトレットにフードコートを出店し事業を拡大。2005年に東証マザーズへ上場し、2013年に東証一部へ市場変更しました。その後も積極的なM&Aを行い、SFPダイニング(現SFPホールディングス)やサンジェルマンなどをグループ化しています。
2025年2月時点の連結従業員数は4,173人、単体では129人です。筆頭株主は代表取締役会長の後藤仁史氏が代表を務める資産管理会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業者が実質的に株式の多くを保有するオーナー系企業としての側面を持ちつつ、多数の事業会社を統括する持株会社体制をとっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| G&Company | 41.24% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.33% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 1.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は川井潤氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 後藤 仁史 | 代表取締役会長 | 1980年旭化成ホームズ入社。徳壽専務取締役等を経て、1997年に同社の前身企業を設立し社長就任。2003年より現職。 |
| 川井 潤 | 代表取締役社長食の安全安心推進室、内部統制システム推進室、グループ監査室、サステナビリティ推進室及び社長室管掌 | 1987年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年同社入社。管理本部長、海外事業本部長などを歴任し、2021年より現職。 |
| 島村 彰 | 常務取締役商品部マーケティング部、情報システム推進室、DX推進室、店舗開発部及び店舗設計管理部管掌 | 伊藤忠商事、サンマルクホールディングス常務等を経て2012年同社入社。クリエイト・ダイニング社長等を歴任し2022年より現職。 |
| 大野 仁之 | 常務取締役経営企画部、海外事業部及び北米事業投資推進部管掌 | 三菱商事より出向を経て同社入社。中国・北米事業の要職やローソン海外事業本部部長等を歴任し、2025年より現職。 |
| 大内 源太 | 取締役CFO経理部及びIR部管掌 | 三菱商事、絆ファクトリー社長を経て2015年同社入社。管理本部長などを務め、2024年より現職。 |
| 両角 元勝 | 取締役グループ事業会社統括部管掌 | シダックス・コミュニティー等を経て2004年同社入社。経営企画部長、人事部長、サンジェルマン専務等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、松井晴美(食楽代表取締役)、松岡一臣(公認会計士・税理士)、大塚美幸(株式会社 and 代表取締役)、片山典之(シティユーワ法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) CRカテゴリー
ショッピングセンターのフードコートやレストラン街を中心に、多様なブランドを展開しています。主力ブランドには、しゃぶしゃぶ食べ放題の「しゃぶ菜」や「デザート王国」、「MACCHA HOUSE 抹茶館」などがあります。また、ゴルフ場内レストランやJA全農とのコラボレーション店舗などの受託運営も行っています。
主な収益源は、一般顧客からの飲食代金および業務受託に伴う収入です。運営は主に株式会社クリエイト・レストランツおよび株式会社クリエイト・ダイニングが行っています。立地特性や顧客層に合わせた柔軟なブランド展開を行い、グループの中核を担っています。
■(2) SFPカテゴリー
都心繁華街や駅前立地を中心に、海鮮居酒屋「磯丸水産」や鶏料理専門店「鳥良商店」、「おもてなしとりよし」などの居酒屋業態を展開しています。また、熊本県や長野県などの地方都市においても、地域に根差した居酒屋店舗を運営しています。
主な収益源は、店舗における一般顧客からの飲食代金です。運営は、上場子会社であるSFPホールディングス株式会社を中心に、株式会社ジョー・スマイルや株式会社クルークダイニングが行っています。生販直結モデルによる鮮度の高い食材提供を強みとしています。
■(3) 専門ブランドカテゴリー
特定の料理ジャンルや製法にこだわった専門性の高いブランドを展開しています。ベーカリーの「サンジェルマン」「レフボン」、つけ麺の「つけ緬TETSU」、銀座の「雛鮨」、北海道そばの「遊鶴」、北関東中心の「いっちょう」、札幌ラーメンの「えびそば一幻」など、M&Aによりグループ入りしたブランドが多数含まれます。
主な収益源は、各店舗での飲食・物販代金です。運営は、株式会社サンジェルマン、株式会社レフボン、株式会社グルメブランズカンパニー、株式会社KRフードサービス、株式会社遊鶴、株式会社いっちょう、株式会社一幻フードカンパニーなど、各ブランドを承継した事業会社が行っています。
■(4) 海外カテゴリー
シンガポール、香港、米国においてレストラン事業を展開しています。アジアでは日本食レストランやフランチャイズ店舗を、米国ではイタリアンレストラン「Il Fornaio」やベーカリーレストラン「Wildflower」などを運営しています。
収益源は、海外店舗における飲食代金です。運営は、create restaurants asia Pte. Ltd.(シンガポール)、香港創造餐飲管理有限公司(香港)、Create Restaurants NY Inc.(米国)およびその傘下の子会社が行っています。現地の嗜好に合わせたメニュー開発やM&Aによる事業拡大を進めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益はコロナ禍の影響を受けた時期から急回復し、直近では過去最高を更新して成長を続けています。利益面でも赤字から黒字転換し、利益率は安定して推移しています。当期利益も増加傾向にあり、M&Aや筋肉質な経営体質への転換が奏功していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 744億円 | 783億円 | 1,182億円 | 1,458億円 | 1,564億円 |
| 税引前利益 | -150億円 | 71億円 | 46億円 | 66億円 | 77億円 |
| 利益率(%) | -20.2% | 9.1% | 3.9% | 4.5% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -139億円 | 59億円 | 34億円 | 50億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。原材料費や人件費の高騰がある中でも、適正価格化や生産性向上により利益率を維持・向上させています。営業利益率は5%台へと改善しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,458億円 | 1,564億円 |
| 売上総利益 | 1,038億円 | 1,114億円 |
| 売上総利益率(%) | 71.2% | 71.2% |
| 営業利益 | 71億円 | 85億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が556億円(構成比55%)を占めており、労働集約的な飲食業の特徴を表しています。次いで減価償却費が155億円(同15%)、水道光熱費が61億円(同6%)となっています。
■(3) セグメント収益
全カテゴリーにおいて売上収益が増加しましたが、特にCRカテゴリーと海外カテゴリーの伸びが顕著です。CRカテゴリーはコアブランドの出店やグループ内FCが寄与し、海外カテゴリーは新規M&Aや既存店の回復が貢献しました。専門ブランドカテゴリーは微減となりましたが、これは一部店舗の退店や入れ替えによる影響が含まれます。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| CRカテゴリー | 473億円 | 548億円 |
| SFPカテゴリー | 291億円 | 304億円 |
| 専門ブランドカテゴリー | 515億円 | 498億円 |
| 海外カテゴリー | 197億円 | 233億円 |
| その他調整額 | -18億円 | -19億円 |
| 連結(合計) | 1,458億円 | 1,564億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、多様な資金調達手段を確保し、事業活動等により創出したキャッシュ・フローを補完しています。営業活動によるキャッシュ・フローは増加し、これは主に減価償却費や税引前当期利益によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業譲受や有形固定資産の取得による支出が主な要因でした。財務活動によるキャッシュ・フローは、リース負債や長期借入金の返済による支出が大きくなりました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 233億円 | 260億円 |
| 投資CF | -36億円 | -92億円 |
| 財務CF | -225億円 | -167億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「わくわく無限大!個性いろいろ ともに創る 驚きの未来。」というグループミッションを掲げています。多様な個性を持つ仲間と共に、予想もつかない未来を創造することを目指しています。また、常にスピードを持ってクリエイティブにチャレンジし、変化する環境の中で新しい価値を提供し続けることを経営理念としています。
■(2) 企業文化
各事業会社の個性を尊重しつつ連携する「グループ連邦経営」を重視しています。互いにリスペクトし合い、時には単独で、時にはチームとして力を発揮する柔軟な組織風土が特徴です。失敗を恐れず挑戦する姿勢や、変化に迅速に対応するスピード感を大切にし、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年2月期を初年度とする5か年の中期経営計画を策定しています。この計画では「グループ連邦経営2.0」への進化を掲げ、持続的な成長基盤の確立を目指しています。
* 2026年2月期 売上収益:1,650億円
* 2026年2月期 営業利益:96億円
* 2026年2月期 調整後EBITDA:272億円
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、コアブランドの磨き上げや新業態開発による「本質的価値の進化」、国内外での「シナジーのあるM&A」、そして北米・アジア・欧州での「海外事業の拡大」を3本柱としています。また、これらを支える基盤として、テクノロジー活用による顧客満足度向上(HX)、人的資本経営の推進、サステナビリティへの取り組みを強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を「持続的な成長を創出する極めて重要な源泉」と位置づけ、多様な人材が安心して活き活きと働ける環境整備を進めています。モチベーション向上、DE&I(多様性・公平性・包括性)の推進、相互尊重、育成支援を重点項目とし、昇給ファンドの拡大や評価制度の見直し、研修の充実などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 48.0歳 | 13.6年 | 6,700,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 26.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 61.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 62.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 105.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の管理職の比率(13.7%)、男性の育児休暇取得率(39.1%)、外国籍従業員の比率(11.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食材調達について
原油高、円安、地政学的リスク、天候不順などにより、食材価格の高騰や供給不安定が生じる可能性があります。同社は多様な業態を展開することで特定食材への依存を分散し、グループのスケールメリットを活かした調達やメニュー価格の適正化で対応していますが、想定以上の変動は業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 人財の確保について
外食需要の回復に伴い、業界全体で人手不足が深刻化しています。必要な人材を確保できない場合や、採用費・人件費が高騰した場合、店舗運営に支障をきたす可能性があります。同社は外国人採用の拡大やDXによる省人化、労働環境の改善を進めていますが、人件費の上昇は利益を圧迫する要因となります。
■(3) 出店政策について
同社は商業施設や駅前立地を中心に出店していますが、競合激化や賃料上昇、消費者の行動変容により、当初見込んだ収益が得られない可能性があります。また、定期借家契約の終了による退店や、敷金・保証金の回収リスクも存在します。投資基準の見直しを行っていますが、不採算店舗の減損や撤退費用が発生するリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。