**※本記事は、株式会社エストラスト の有価証券報告書(第28期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**
1. エストラストってどんな会社?
同社は山口県や九州の主要都市を中心に、マンションや戸建住宅の企画・販売等の不動産分譲事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1999年に不動産分譲事業を目的として設立され、2010年に福岡支店を開設しました。2012年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2014年には市場第一部へ市場変更しています。2017年に公開買付けにより西部ガスホールディングスの子会社となり、2023年には建和住宅を子会社化して事業を拡大しています。
従業員数は連結で95名、単体で50名です。筆頭株主は親会社である西部ガスホールディングスで、第2位は岡部産業、第3位は個人の笹原友也氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 西部ガスホールディングス | 51.90% |
| 岡部産業 | 4.40% |
| 笹原 友也 | 3.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は藤田尚久氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤田 尚久 | 代表取締役社長 | 1991年ダン総合会計事務所入社。2006年同社入社。管理部長や常務等を経て、2023年3月より現職。 |
| 藤本 隆史 | 専務取締役住宅事業本部長 | 1996年原弘産入社。2001年同社入社。事業開発部長や常務等を経て、2023年3月より現職。 |
| 中山 公宏 | 常務取締役マンション事業本部長 | 1999年ジェイジーエム住宅販売入社。2007年同社入社。建設部長等を経て、2023年3月より現職。 |
| 小林 聖 | 取締役マンション事業部長 | 2006年同社入社。事業開発部長等を経て、2023年3月より現職。 |
| 久野 耕一郎 | 取締役 | 1983年山口銀行入行。同社専務やもみじ銀行取締役等を経て、2025年5月より現職。 |
社外取締役は、山根康路(山根総合法律事務所代表)、黒川直樹(元山口銀行市場業務部長)、杉本康平(杉本康平税理士事務所代表)、野田芳(野田公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産分譲事業」「不動産管理事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
■不動産分譲事業
山口県および九州の主要都市を中心に、自社ブランド「オーヴィジョン」マンションや分譲戸建「オーヴィジョンホーム」、注文住宅「Kenwa Style」の企画・開発・販売を行っています。ファミリー層などの一般消費者を主な顧客としています。
顧客へのマンションや戸建住宅の引渡し時に、不動産売買代金として収益を受け取るモデルです。運営は同社および連結子会社の建和住宅が企画・開発を行い、エストラスト不動産販売が販売代理業務を担っています。
■不動産管理事業
分譲マンションの維持管理などの管理サービスを山口県および九州全域を中心に提供しています。主な顧客は、同社グループが分譲したマンションの管理組合です。
顧客との管理委託契約に基づき、毎月の管理手数料を収益として受け取るモデルです。運営は連結子会社のトラストコミュニティが行っています。
■不動産賃貸事業
収益基盤の安定化を図るため、将来的な開発を見据えた立地かつ収益性を考慮した賃貸用の駐車場やオフィスビル、商業施設等を保有・運用しています。
テナントや利用者から安定的な賃料収入を収益として受け取るモデルです。運営は同社グループ各社が行っています。
■その他
郊外や狭小など分譲マンション開発が困難な用地を活用した宅地造成開発による販売、賃貸マンションやコンパクトマンション等の供給、不動産の売買および仲介事業などを行っています。
物件の引渡しや不動産取引に伴うサービス提供の完了時に、販売代金や仲介手数料を収益として受け取るモデルです。運営は同社グループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の売上高は150億円台から220億円台へと拡大傾向にあります。経常利益も直近2期間は19億円台と高水準で安定しており、価格転嫁の進展や各セグメントの持続的成長を背景に着実な増収トレンドが見て取れます。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 160億円 | 156億円 | 180億円 | 192億円 | 223億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 12億円 | 11億円 | 19億円 | 20億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 7.8% | 6.0% | 10.0% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 7億円 | 6億円 | 12億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も増加していますが、建築コストの上昇等により売上総利益率はわずかに低下しています。一方、営業利益は前期比で増加を維持しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 192億円 | 223億円 |
| 売上総利益 | 42億円 | 46億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.7% | 20.6% |
| 営業利益 | 20億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 10.4% | 9.4% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が6億円(構成比23%)、支払手数料が5億円(同19%)を占めています。売上原価は工事外注費が102億円(構成比61%)、用地取得費用が40億円(同24%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力の不動産分譲事業は価格転嫁の進展等により増収となりました。不動産管理事業や不動産賃貸事業も堅調に推移しており、その他事業は不動産売却等により大幅な増収を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 不動産分譲事業 | 171億円 | 187億円 |
| 不動産管理事業 | 7億円 | 8億円 |
| 不動産賃貸事業 | 4億円 | 5億円 |
| その他 | 10億円 | 24億円 |
| 連結(合計) | 192億円 | 223億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがプラスのため、本業赤字を資産売却と借入で補填する「救済型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35億円 | -56億円 |
| 投資CF | -5億円 | 4億円 |
| 財務CF | -4億円 | 29億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人と地球にやさしい暮らし」を基本理念とし、環境に配慮した良質な住まいの提供を通じて「人」と「社会」と「環境」の調和した未来の創造を目指しています。企業の社会的責任を認識し、法令遵守の徹底と地球環境への負荷低減に配慮した事業活動を推進することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、6つの企業理念および「率先垂範の精励」を社員行動規範として掲げています。多様な価値観を有する人材による意見交換を通じた意思決定が企業価値の向上に資すると考え、国籍や性別等に囚われず、その能力や成果に応じた人事評価を行うことを基本方針とする文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な事業運営のために自己資本比率30%以上を重要な経営指標の目標としています。また、中期経営計画(2026年2月期〜2028年2月期)を策定し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
* 売上高:230億円
* 営業利益:22億円
* 経常利益:20億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:14億円
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産分譲事業では、再開発や他社との共同事業への参入、福岡都市圏での用地仕入強化を進め、ZEH仕様など環境配慮型住宅の供給に注力します。また、親会社の西部ガスホールディングスと連携し、プロジェクト用地情報の共有などシナジー効果の最大化に向けた事業推進体制を整備しています。
* マンション引渡目標:500戸以上
* 戸建引渡目標:100戸以上
* 不動産管理事業管理戸数目標:7,000戸
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、役員および従業員のスキルアップが不可欠と認識し、職種に応じた専門知識の修得や他分野の知識修得を奨励する資格手当制度を定めています。また、eラーニングを活用した社員教育や新入社員向け研修を実施し、自己成長意欲および主体性を持った人材の育成と中途・新卒採用による人材確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 41.1歳 | 7.3年 | 5,349,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 土地仕入時において予想できないリスク
事業用地の取得にあたり様々な調査を行っていますが、取得後に土壌汚染や地中埋設物等の予期せぬ瑕疵が発見された場合や、近隣住民の反対運動が発生した場合には、プロジェクト工程の遅れや追加費用が生じるリスクがあります。
■(2) 開発・販売地域が集中していることに関するリスク
同社グループの開発および販売地域は山口県や九州エリアに集中しています。他地域への展開も検討していますが、同地域の景気悪化や重大な災害が発生した場合には、業績等に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 在庫に関するリスク
分譲マンションや戸建の企画・販売のために先行して用地仕入を行いますが、景気悪化や金利上昇等で住宅需要が減退した場合、販売計画の遅延や滞留在庫の増加を招き、資金収支の悪化や評価損の計上を余儀なくされるリスクがあります。
■(4) 小規模組織であることによるリスク
同社グループは小規模組織であり、今後の成長に向けて優秀な人材の確保が必要です。人材が適時に確保できなかった場合や、人員増強や教育、システム強化に伴う固定費の増加が生じた場合、業務への支障や収益性悪化のリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。