S&J 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

S&J 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

S&Jは東京証券取引所グロース市場に上場し、コンサルティングサービスとSOC(セキュリティ監視・運用)サービスを軸としたサイバーセキュリティ事業を展開しています。業績は堅調で、直近の2026年3月期は監視サービス等の新規案件の獲得やセキュリティ評価案件が寄与し、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、S&Jの有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. S&Jってどんな会社?


同社は最適なセキュリティサービスの提供を通じて、顧客の事業成長を支える環境づくりに貢献しています。

(1) 会社概要


2008年11月にS&Jコンサルティングとして設立され、2009年にセキュリティ・コンサルティングサービスを開始しました。2014年5月に「SOC Engine」の提供を開始し、同年12月に現社名へ変更しました。2015年のSOCサービス開始などを経て、2023年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

現在の従業員数は79名です。筆頭株主は同社サービスの販売代理店であり製品等の仕入先でもあるマクニカで、第2位は創業者の三輪信雄氏です。経営面ではマクニカホールディングスグループから独立した立場で事業展開を行っています。

氏名 持株比率
マクニカ 37.69%
三輪 信雄 18.31%
BNP 10.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三輪 信雄 代表取締役社長 1985年住友ゴム工業入社。ラック代表取締役社長などを経て2008年に同社を設立し代表取締役社長に就任。総務省最高情報セキュリティアドバイザー等を歴任。
石川 剛 取締役事業管掌 2004年セプテーニ入社。ラックなどを経て2012年に同社入社。営業部長、サイバーセキュリティ事業本部長等を歴任し、2026年より現職。
上原 孝之 取締役セキュリティ人材開発部長 1987年リクルート入社。ラックを経て2015年に同社入社。コンサルティング事業部長等を歴任し、2026年より現職。
經田 洋平 取締役管理部長 2001年北陸銀行入行。日本ハウズイング等を経て2017年に同社入社。経営管理部経理担当部長等を経て2022年より現職。
半澤 幸一 取締役技術管掌 兼 セキュリティレジリエンス部副部長 2006年ラック入社。2014年に同社入社。サイバーセキュリティ研究開発部長、コアテクノロジー部長等を歴任し、2026年より現職。
星野 喬 取締役 2008年マクニカ入社。同社ネットワークスカンパニーバイスプレジデント等を務め、2020年に同社取締役に就任。


社外取締役は、大桃健一(元シーイーシー取締役)、谷井亮平(元日本橋税理士法人H&Sパートナーズ)、林孝重(元国土総合開発)です。

2. 事業内容


同社グループは、「サイバーセキュリティ事業」を展開しています。

(1) SOCサービス


SIEMやEDRなどのシステムを用いて、顧客の情報システム全体を24時間365日体制で監視・運用するサービスを提供しています。自社開発の「SOC Engine」や「KeepEye」による監視だけでなく、他社製品の運用やディレクトリーサービス機能に特化したAD監視なども対象としています。

収益源は、顧客からの年間契約を基本とした継続的な監視・運用サービス利用料です。ストック型の安定的な収益を基盤とし、高い継続率を維持しています。サービスの運用は同社のアナリストが行うほか、マクニカなどの販売代理店を通じて多様な企業へと販売されています。

(2) コンサルティングサービス


サイバーセキュリティ事故の発生しづらい環境構築を支援するセキュリティアドバイザー活動をはじめ、事故発生時のインシデント対応、メールセキュリティ訓練、脆弱性診断などを提供しています。また、海外の高度なセキュリティ製品の販売代理店としての活動も行っています。

収益源は、中長期的な改善提案を行うアドバイザリサービスの利用料や、有事のインシデント対応費用、製品販売代金などです。サービスの提供は同社が主体となり、これらで培ったノウハウをSOCサービスなどのセキュリティ運用へフィードバックすることで、全体の品質向上に努めています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、一貫して増収基調を維持しています。特に直近の事業年度にかけては、新規案件の獲得やセキュリティ対策需要の拡大を背景に、売上高が順調に拡大しました。経常利益と当期純利益も増益傾向にあり、20%前後の高い利益率を安定して確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 11億円 13億円 16億円 19億円 23億円
経常利益 3億円 3億円 3億円 4億円 6億円
利益率(%) 23.2% 25.1% 19.8% 21.8% 23.8%
当期利益 2億円 2億円 2億円 3億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の売上高は二桁成長を達成し、売上総利益も拡大しています。利益率も改善傾向にあり、継続的なストック収益の積み上げが収益性の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 19億円 23億円
売上総利益 9億円 12億円
売上総利益率(%) 48.7% 50.9%
営業利益 4億円 6億円
営業利益率(%) 21.6% 23.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比32.2%)、役員報酬が1.0億円(同16.1%)を占めています。売上原価においては、労務費が4.4億円(構成比38.4%)、経費が7.0億円(同60.7%)となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、SOCサービスは既存顧客への継続提供に加え、新規顧客の獲得により大幅な増収となりました。コンサルティングサービスも、不審メール訓練やインシデント対応が堅調に推移し増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
SOCサービス 14億円 18億円
コンサルティングサービス 5億円 6億円
連結(合計) 19億円 23億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で安定した資金を獲得し、その資金で投資や自己株式の取得等の財務活動を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 5億円
投資CF -4億円 -0.1億円
財務CF -0.6億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.2%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「私たちは、最適なセキュリティサービスをより多くのお客様へ提供し、事業の成長を支える環境づくりに貢献いたします。」をミッションとして掲げています。セキュリティだけの視点にとどまらず、顧客の事業環境や経営視点で最適なセキュリティサービスを提供し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、1社でも多くの企業にセキュリティサービスを提供することが社会貢献につながると捉え、事業の拡大を目指す文化を持っています。その時々の脅威トレンドを反映し、日本企業のニーズに応える「やりすぎず、不足しない、変化に合わせた最適なサービス」を提供することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、継続的なサービスの提供によるストック型売上の積上げである「ARR(年間経常収益)」を成長性の重要な経営指標として位置付けています。また、売上の拡大に見合う経費の増加とすることで収益性を確保するため、「売上高営業利益率」を収益性の重要な指標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、コンサルティングとSOCサービスを連動させたコミュニケーション型SOCを推進し、多様なニーズに応える計画です。具体的には、自社開発のEDR製品「KeepEye」や「AD監視サービス」などの新規サービス拡充を進めるほか、AI技術の利活用によるサービス品質の改善と開発スピードの加速を図り、高付加価値なサービスを安定的に提供する体制を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社が事業を拡大していくため、高度なサイバーセキュリティ技術を有する優秀な人材の確保を重要課題と認識しています。採用活動の強化に加え、社内教育制度の充実を進める方針です。また、資格取得・維持費支援制度やオンライン学習環境の導入により自己研鑽を促進し、継続的な人材育成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 3.6年 7,600,825円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サービス内容の陳腐化と競争優位性の低下


サイバーセキュリティ事業は脅威トレンドや技術革新により環境変化が激しい特徴があります。同社がこれらの環境変化に対応できず、技術やサービスが陳腐化した場合、競合他社に対する競争優位性を維持できなくなり、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 独自開発製品やサービスにおけるバグ・欠陥の発生


同社が提供するSOCサービスには自社開発製品が含まれており、事前の検証を経てサービス提供を行っています。しかし、サービス提供後に重大なバグや欠陥が発生し顧客に著しい損害を与えた場合、契約解除による売上減少や信頼の喪失を招く可能性があります。

(3) ストック型収益の解約率増加


同社の事業は監視・運用サービスなどの年間契約によるストック型収益が中心です。顧客満足度の向上に努めていますが、顧客の環境変化等により想定を上回る解約が発生した場合、売上基盤が揺らぎ業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(4) 優秀な人材の確保と育成


事業拡大には、高度なサイバーセキュリティ技術や知識を持つ優秀な人材の確保が不可欠です。十分な人員が確保できない場合や、教育が進展しない場合、成長が鈍化するおそれがあります。また、ノウハウを持つ人材の退職は同社の競争力低下につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。