※本記事は、S&J株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. S&Jってどんな会社?
同社は、大企業や官公庁向けに最適なサイバーセキュリティサービスを提供し、事業成長を支える企業です。
■(1) 会社概要
2008年にサイバーセキュリティサービスの提供を目的に設立され、翌年にはコンサルティングサービスを開始しました。その後、2014年に自社開発のSOC Engineを用いた運用サービス、2015年にはSOCサービスを本格化させています。2023年12月には東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
同社は連結子会社を持たず、単体での従業員数は63名です。筆頭株主は半導体やネットワーク機器などを扱う事業会社のマクニカで、第2位は創業社長の三輪信雄氏、第3位は投資関連法人となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マクニカ | 37.68% |
| 三輪 信雄 | 17.41% |
| BNP | 10.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は三輪信雄氏が務めています。なお、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三輪 信雄 | 代表取締役社長 | 住友ゴム工業、ラック代表取締役社長等を経て、2008年に同社(現S&J)を設立し現職。総務省最高情報セキュリティアドバイザー等も歴任。 |
| 石川 剛 | 取締役営業部長 | セプテーニ、ラック等を経て、2012年に同社入社。2020年より現職。 |
| 上原 孝之 | 取締役セキュリティプロフェッショナルサービス部長 | リクルート、ラックを経て、2015年に同社入社。2024年10月より現職。 |
| 經田 洋平 | 取締役管理部長 | 北陸銀行、日本ハウズイング、TSP太陽等を経て、2017年に同社入社。2022年より現職。 |
| 半澤 幸一 | 取締役コアテクノロジー 部長 | ラックを経て、2014年に同社入社。2023年より現職。 |
| 星野 喬 | 取締役 | マクニカ入社後、マクニカネットワークス等を経て、2020年より同社取締役。現在はマクニカのバイスプレジデントも兼任。 |
社外取締役は、大桃健一(元日本モーゲージサービス入社)、谷井亮平(巌商事入社)、林孝重(日本モーゲージサービス取締役・監査等委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンサルティングサービス」および「SOCサービス」を展開しています。
■(1) コンサルティングサービス
現状のセキュリティ対策状況を把握し、課題抽出や改善提案を行う「セキュリティアドバイザー」や、事故発生時の対応を支援する「インシデント対応」などを提供しています。また、不審メール訓練や脆弱性診断、海外製セキュリティ製品の販売なども行い、顧客のセキュリティ環境維持・向上を支援しています。
収益は、顧客企業からのアドバイザリ費用やインシデント対応費用、診断費用などから構成されます。運営は主にS&Jが行っており、SIer等を販売代理店として活用しながら、大企業から中堅・中小企業まで幅広い顧客層にサービスを提供しています。
■(2) SOCサービス
自社開発の「SOC Engine」や他社SIEM製品を用い、24時間365日体制でシステム監視・運用を行うサービスです。脅威検知だけでなく具体的な対処やアドバイスを行う点が特徴です。また、自社開発のクラウド型EDR「KeepEye」による監視サービスも提供しており、専門家を雇用しない最小限の運用を実現します。
収益は、主に年間契約に基づく月額利用料などのストック型売上が中心となっています。運営はS&Jが行っており、安定的な収益基盤となるストック型売上の拡大と、顧客との長期的な関係構築により高い継続率を維持しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に右肩上がりで推移しており、直近5期間で約2.3倍に成長しています。経常利益も売上拡大に伴い増加傾向にあり、高い利益率を維持しています。特に直近では売上高、利益ともに過去最高水準に達しており、事業規模の拡大と収益性の向上が順調に進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8.3億円 | 10.8億円 | 12.8億円 | 16.1億円 | 19.4億円 |
| 経常利益 | 1.1億円 | 2.5億円 | 3.2億円 | 3.2億円 | 4.2億円 |
| 利益率(%) | 13.4% | 23.2% | 25.1% | 19.8% | 21.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.3億円 | 2.2億円 | 2.1億円 | 2.2億円 | 3.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。利益率の高いビジネスモデルを維持しており、営業利益率も20%を超える高水準で推移しています。販管費などのコストコントロールも適切に行われており、売上成長がそのまま利益拡大につながる収益構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 16.1億円 | 19.4億円 |
| 売上総利益 | 7.8億円 | 9.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.5% | 48.7% |
| 営業利益 | 3.5億円 | 4.2億円 |
| 営業利益率(%) | 21.7% | 21.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.6億円(構成比31%)、役員報酬が0.9億円(同17%)を占めています。売上原価においては、労務費が3.8億円(構成比39%)、経費が6.1億円(同61%)となっており、経費の主な内訳は派遣料や外注費です。
■(3) セグメント収益
SOCサービスは既存顧客へのサービス継続に加え、新規案件の獲得により順調に売上を伸ばしています。コンサルティングサービスも、不審メール訓練案件の獲得やセキュリティインシデント対応などが寄与し増収となりました。両サービスともに顧客ニーズを捉え、堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| SOCサービス | 11.9億円 | 14.4億円 |
| コンサルティングサービス | 4.3億円 | 5.0億円 |
| 連結(合計) | 16.1億円 | 19.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動でキャッシュを稼ぎ出し、それを投資活動に回しつつ、財務活動による支出(自己株式取得など)を行っているため「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.7億円 | 3.4億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | -4.0億円 |
| 財務CF | 7.8億円 | -0.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私たちは、最適なセキュリティサービスをより多くのお客様へ提供し、事業の成長を支える環境づくりに貢献いたします。」をミッションとして掲げています。日本のお客様のニーズに応える最適なサービスの提供を通じて事業を拡大し、1社でも多くの顧客へサービスを提供することが社会貢献につながると捉えています。
■(2) 企業文化
社名の「S&J」は、千里眼(S)と順風耳(J)に由来しています。これらは媽祖の守護神であり、千里眼は監視を、順風耳は悪の兆候を聞き分ける役目を持ちます。この由来には、平時からインシデントの兆候を探り、事前に手を打ち、事故発生時には迅速に対応して被害を最小限に食い止めるサービスを提供したいという思いが込められています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続的なサービス提供によるストック型売上の積み上げであるARR(年間経常収益)を成長性の重要な経営指標としています。これは、同社のコンサルティングおよびSOCサービスが継続的な取引を基盤としているためです。また、収益性の指標として売上高営業利益率を重視し、売上拡大に見合う経費コントロールによる収益確保を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、コンサルティングとSOCサービスを連動させたコミュニケーション型SOCにより、リテラシーの高い顧客ニーズを捉える成長戦略を描いています。国内開発システムを用い、顧客環境に合わせた最適なサービスを提供することで、供給側とのギャップを埋める方針です。
* 自社開発製品(KeepEye、AD Agent)などの新規サービス拡充
* 同一顧客へのサービス深掘りによるストック型売上の拡大
* 事業に精通した営業人員の増強による営業力強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は高度な技術を持つ優秀な人材の確保を重要課題とし、エンジニアを中心とした採用活動に加え、リファラル採用も導入しています。育成面では資格取得支援やオンライン学習環境を提供。また、テレワークや時間単位有休などの柔軟な働き方を推進し、確定拠出年金やGLTD保険などの福利厚生により、働きやすい環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 3.6年 | 7,824,833円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(10%程度からゼロに近づける目標)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サービス内容の陳腐化
サイバーセキュリティ分野は技術革新や新たな脅威により環境が激変しやすい特徴があります。同社がこれらの変化に対応できず、技術やサービスの陳腐化、あるいは競合他社に対する競争優位性を維持できなくなった場合、事業及び業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 代理店との関係
同社はマクニカ等のSIerと販売代理店契約を締結し、販路拡大を図っています。代理店が十分に機能しない場合、業績に影響が出る可能性があります。これに対し、良好な関係構築や販売支援、新規代理店の拡充に注力しています。
■(3) 人材の確保・育成
事業拡大には高度な技術を持つ人材が不可欠です。十分な人員が確保できない場合や、従業員教育が進展しない場合、成長が鈍化する恐れがあります。また、技術や営業担当者の退職によるノウハウ流出などもリスク要因となります。
■(4) システムリスク
サービス提供においてコンピュータシステムと通信ネットワークを活用しているため、自然災害や予期せぬ事態によりシステム停止やネットワーク障害が発生した場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、高レベルなシステム環境の構築・維持に努めています。



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