東京個別指導学院 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京個別指導学院 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(スタンダード市場)に上場しており、個別指導塾の運営を主要事業としています。直近の業績トレンドについては、売上高は生徒数の増加等により増収となりましたが、教室現場への積極投資等の影響で営業利益は微減益、当期純利益は増益となりました。


#記事タイトル:東京個別指導学院転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社東京個別指導学院 の有価証券報告書(第42期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京個別指導学院ってどんな会社?


ベネッセグループに所属し、小中高生向けの個別指導塾「東京個別指導学院」「関西個別指導学院」等を展開する教育企業です。

(1) 会社概要


1985年に設立され、1994年に「東京個別指導学院」等の教室展開を開始しました。2002年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2003年には市場第一部へ指定替えとなりました。2007年に株式会社ベネッセコーポレーション(現ベネッセホールディングス)と資本業務提携契約を締結し、同社の子会社となりました。

2025年2月28日現在、連結従業員数は592名、単体では586名です。筆頭株主は親会社で通信教育「進研ゼミ」などを展開するベネッセホールディングス(61.90%)です。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)(5.51%)、第3位は金融機関のMSIP CLIENT SECURITIES(2.50%)です。

氏名 持株比率
ベネッセホールディングス 61.90%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.51%
MSIP CLIENT SECURITIES 2.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は松尾茂樹氏です。社外取締役比率は約27%です。

氏名 役職 主な経歴
松尾 茂樹 代表取締役 社長 1991年福武書店(現ベネッセHD)入社。ベルリッツ・ジャパン社長、ベネッセコーポレーション執行役員等を歴任。2024年5月より現職。
瀧川 敬司 取締役 1993年エジュテックジャパン入社。同社取締役CEO等を経て、2024年9月より同社取締役執行役員。HRBC取締役を兼務。
山口 文 洋 取締役 2006年リクルート入社。リクルートマーケティングパートナーズ社長、LITALICO社長等を経て、2025年4月よりベネッセコーポレーション副社長。
浜 垣   剛 取締役 1983年鉄緑会(現東京教育研)設立。2009年同社代表取締役に就任し現職。2025年5月より同社取締役。


社外取締役は、三箇功悦(元サティスコム社長)、長谷川秀樹(元東急ハンズ執行役員CIO)、平山景子(元Googleブランドマーケティング統括)です。

2. 事業内容


同社グループは、「個別指導塾事業」および「その他」事業を展開しています。

個別指導塾事業


小学生、中学生、高校生を対象とした個別指導塾「東京個別指導学院」および「関西個別指導学院」を運営しています。首都圏、関西、東海、九州エリアに教室を展開し、一人ひとりの目標達成に向けた学習指導サービスを顧客に提供しています。

収益は、生徒(保護者)から受け取る授業料、講習会費、およびその他関連費用から構成されています。運営は主に東京個別指導学院が行っており、直営方式による教室運営を主体としています。

その他事業


科学実験教室「ベネッセサイエンス教室」、文章表現教室「ベネッセ文章表現教室」、および企業向け人財開発事業などを展開しています。サイエンス・文章表現教室は首都圏を中心に展開し、人財開発事業では企業研修などを手掛けています。

収益は、教室の受講料や企業からの研修費などで構成されています。教室事業は東京個別指導学院が運営し、企業向け人財開発事業は連結子会社のHRBC株式会社が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は220億円前後で安定的に推移しています。2021年2月期は落ち込みましたが、その後回復し、直近では緩やかな増加傾向にあります。利益面では、経常利益率は以前の10%台から低下し、近年は7〜8%程度で推移しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 191億円 225億円 218億円 217億円 222億円
経常利益 6.5億円 24億円 18億円 16億円 16億円
利益率(%) 3.4% 10.7% 8.4% 7.5% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.8億円 16億円 12億円 10億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も微増しました。一方で、販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期と同水準で推移しました。営業利益率は7.2%となり、安定した収益性を維持しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 217億円 222億円
売上総利益 78億円 79億円
売上総利益率(%) 36.2% 35.8%
営業利益 16億円 16億円
営業利益率(%) 7.4% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が24億円(構成比38%)、支払手数料が10億円(同15%)、給料及び手当が9億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の個別指導塾事業が売上の大半を占めており、生徒数の増加に伴い増収となりました。その他事業も人財開発事業や校内塾事業等の寄与により増収となっています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
個別指導塾 212億円 217億円
その他 4億円 5億円
連結(合計) 217億円 222億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)で借入金の返済や配当支払い(財務CFマイナス)を行い、投資(投資CFマイナス)も自己資金の範囲内で実施していることから、「健全型」と言えます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 20億円 19億円
投資CF -2.6億円 -2.0億円
財務CF -10億円 -7.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「やればできるという自信 チャレンジする喜び 夢を持つ事の大切さ」という3つの教育理念を掲げています。この理念とホスピタリティをすべての企業活動の基軸とし、教育環境やニーズの変化に対応しながら、笑顔あふれる「人の未来」に貢献することを目指して事業を行っています。

(2) 企業文化


「ホスピタリティ」を基軸とし、顧客一人ひとりに寄り添う姿勢を重視しています。提供価値のコアに「自走サイクルの醸成」を据え、子どもたちの目標達成を支援するとともに、サービス提供者である人財の育成にも注力しています。働く人の活力が事業成長の源泉であると捉え、人を大切にする風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは継続的な成長を目指し、収益性の観点から翌期の予想数値を経営指標としています。

* 2026年2月期(予想)売上高:240.5億円
* 2026年2月期(予想)営業利益:16.4億円

(4) 成長戦略と重点施策


主力とする個別指導事業において、難関校志望層からも選ばれる塾への変革を推進するため、以下の課題に優先的に取り組んでいます。

* 教務・サービス開発の推進(私立生対応や大学年内入試対策の強化、難関校向けコースの展開)
* マーケティングの深化(流入チャネル別の対策と地域・学校種別の特性分析)
* 人財育成の強化(ホスピタリティを基軸とした大学生講師と社員の育成)
* 教室運営の生産性向上(教室DX化による付加価値向上と業務効率化)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、大学生講師と教室社員を重要な人的資本と位置づけています。ホスピタリティを基軸とし、顧客に教育理念を届けるための人財育成を強化するとともに、人事制度の変革も推進しています。多様な人財が能力を発揮できる組織風土づくりに努め、働く人の活力向上を通じて顧客体験価値を高める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 37.7歳 9.2年 5,485,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 23.1%
男女賃金差異(全労働者) 77.4%
男女賃金差異(正規雇用) 69.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 94.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正規雇用女性従業員比率(34.2%)、モチベーションサーベイの回答率(97.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化と今後の方針について


学習塾業界は出生率低下による学齢人口の減少に直面しています。また入試制度の変化により競争が激化する可能性があります。同社は事業の複線化や差別化に努めていますが、少子化の急速な進展やコモディティ化、事業複線化の遅れなどが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人財確保及び育成について


同社は1万人を超えるアルバイト講師を雇用しています。優秀な講師の継続的な採用や育成が困難になった場合、業績に影響が出る可能性があります。これに対し、エリアごとの拠点での採用活動や、独自の育成プログラムなどを通じて対策を講じています。

(3) 個人情報の取扱いについて


多数の生徒・保護者の個人情報を管理しています。過失や第三者の不法行為等により個人情報の漏洩等が発生した場合、損害賠償責任や社会的信用の低下により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。