#エスクロー・エージェント・ジャパン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン の有価証券報告書(第18期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エスクロー・エージェント・ジャパンってどんな会社?
不動産取引の安全性と利便性を高めるエスクローサービスや、金融・建築・士業向けBPO事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2007年に設立され、不動産取引の決済支援(エスクロー)事業を開始しました。2014年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2016年には東証一部へ指定替えとなりました。その後、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しましたが、2023年10月にスタンダード市場へ移行しています。グループ再編として、建築分野の株式会社中央グループ等の子会社化を進めてきました。
連結従業員数は268名、単体では146名です。筆頭株主は同社代表取締役会長が代表を務める株式会社中央グループホールディングスで、第2位は創業者であり代表取締役会長の本間英明氏です。第3位には測量関連事業を行う事業会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中央グループホールディングス | 42.62% |
| 本間 英明 | 7.20% |
| 日本測量 | 1.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は成宮正一郎氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 本間 英明 | 代表取締役会長 | 1982年土地家屋調査士事務所開設。2007年同社代表取締役社長。2021年より現職。 |
| 成宮 正一郎 | 代表取締役社長 | 2000年雪印乳業入社。司法書士事務所等を経て2007年同社入社。営業本部長、不動産事業本部長等を歴任し2021年より現職。 |
| 太田 昌景 | 取締役 | 2000年朝日監査法人入社。ジャスダック証券取引所等を経て2014年同社入社。管理本部長等を歴任し2022年より取締役管理本部担当。 |
社外取締役は、山本隆(元東京地方検察庁検事)、丸尾浩一(元大和証券専務取締役)、園田博之(元有限責任あずさ監査法人パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融ソリューション事業」「不動産ソリューション事業」「建築ソリューション事業」および「士業ソリューション事業」を展開しています。
■(1) 金融ソリューション事業
主に金融機関に対し、住宅ローン事務や相続手続きの効率化・安全性向上を支援する各種サービスを提供しています。具体的には、システム支援サービス、住宅ローン融資に係る業務受託、エスクロー口座サービス(信託機能活用)、相続・終活手続き代行サービスなどを行っています。
収益は、金融機関や取引関係者からのシステム利用料、業務受託手数料、信託サービスの手数料などが主な源泉です。運営は主に同社が行っていますが、信託サービスや相続代行は連結子会社の株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託が担っています。
■(2) 不動産ソリューション事業
主に不動産事業者に対し、取引の利便性と安全性を高めるサービスを提供しています。非対面決済サービス「H'OURS」による決済支援や、不動産調査、重要事項説明書作成等のBPOサービス、士業専門家を通じた不動産オークション取引の場を提供しています。
収益は、不動産事業者や売主・買主からのサービス利用料、事務受託手数料、オークション手数料などから得ています。運営は同社に加え、不動産オークション等の特定業務については株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託が担当しています。
■(3) 建築ソリューション事業
主に建築事業者に対し、現場管理や建築確認・申請業務の効率化を支援するサービスを提供しています。建築申請から図面作成、検査までをトータルサポートする「ARCHITECT RAIL」の提供や、測量、建築設計等の専門業務を行っています。
収益は、建築事業者からのシステム利用料や、設計・測量・コンサルティング等の業務受託料が源泉となります。本事業の運営は、主に連結子会社である株式会社中央グループが行っています。
■(4) 士業ソリューション事業
不動産取引に関わる司法書士や土地家屋調査士などの士業専門家に対し、業務効率化のためのクラウドシステム等を提供しています。登記申請に関連する「サムポローニアシリーズ」や、マイナンバーカードを利用した本人確認サービス「サムポロトラスト」などを展開しています。
収益は、士業専門家からのシステム利用料や、登記情報の取得にかかる手数料などが主な源泉です。本事業の運営は、主に連結子会社である株式会社サムポローニアが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、2023年2月期に利益率が低下したものの、その後は回復基調にあり、直近では売上高・経常利益ともに前期を上回っています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 31億円 | 36億円 | 37億円 | 41億円 | 47億円 |
| 経常利益 | 5.5億円 | 6.2億円 | 2.7億円 | 4.6億円 | 4.9億円 |
| 利益率(%) | 17.9% | 17.4% | 7.3% | 11.0% | 10.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.8億円 | 1.8億円 | -1.2億円 | 1.9億円 | 1.7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は若干低下しましたが、40%台を維持しています。営業利益も増益を確保しており、事業の拡大に伴うコスト増を吸収して利益を出している構造です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 41億円 | 47億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.4% | 43.8% |
| 営業利益 | 4.6億円 | 4.8億円 |
| 営業利益率(%) | 11.0% | 10.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.3億円(構成比27.2%)、役員報酬が1.8億円(同11.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収を達成しました。特に不動産ソリューション事業は大幅な増収となりましたが、システム移行費用等の発生により減益となりました。主力の金融ソリューション事業は堅調に推移し、建築・士業ソリューション事業も増収増益となり、全体としてバランスよく成長しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金融ソリューション事業 | 18億円 | 19億円 | 8.0億円 | 8.0億円 | 41.4% |
| 不動産ソリューション事業 | 6.2億円 | 8.9億円 | 0.4億円 | 0.0億円 | 0.5% |
| 建築ソリューション事業 | 8.3億円 | 9.5億円 | 0.9億円 | 1.2億円 | 12.4% |
| 士業ソリューション事業 | 8.3億円 | 9.6億円 | 0.9億円 | 1.6億円 | 17.2% |
| その他 | 2.3億円 | 2.4億円 | - | - | - |
| 調整額 | 0.1億円 | 0.1億円 | -5.6億円 | -6.1億円 | - |
| 連結(合計) | 41億円 | 47億円 | 4.6億円 | 4.8億円 | 10.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金で投資を行い、かつ配当等の財務活動にも支出している「健全型」です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.0億円 | 6.9億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | -3.1億円 |
| 財務CF | -1.8億円 | -3.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「共に育つ」を経営理念に掲げています。金融、不動産、建築、士業の領域において、取引支援の知見を活かした専門業務の横断的対応を行い、取引関係者の業務を一貫してサポート可能なワンパッケージサービスを提供することで、安心・安全な取引環境の構築を目指しています。
■(2) 企業文化
「堅実、健全、革新」の3点を基本的な経営方針として定めています。取引の安心と安全を支えるエスクロー基盤の構築による「堅実な経営」、自己資本向上を指標とする「健全な経営」、そして時流を捉え変化に対応する「革新な経営」を重視し、挑戦的な事業展開を目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョンとして「専門性×革新的サービス」で未来を支える社会インフラ企業となることを掲げています。これを実現するため、2025年2月に「中期経営計画2027」を策定しました。戦略的かつ重点的な投資拡大により、各事業領域において非対面化・デジタル化・自動化を推進することを目指しています。
* 売上高営業利益率やROE(自己資本利益率)等を主要な経営指標として位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2027」に基づき、競争力のある領域へのリソース集中による専門性の深化や、M&A・提携による取引プロセスの網羅的カバーを推進します。また、業務プロセスの標準化・自動化による生産性向上や、人事制度刷新等によるエンゲージメント向上にも注力し、持続的な企業価値向上を図ります。
* サービスの専門性を深める(リソース集中)
* 最適化された業務プロセスの提供(標準化)
* 取引プロセスを網羅的にカバー(M&A、提携)
* エンゲージメントの向上(人事制度刷新、環境づくり)
* 業務改革の推進(自動化、センター集約)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財」こそが事業成長の根幹であると位置づけ、人事制度の刷新や働きやすい環境づくりにより、成長意欲の向上と離職防止を図っています。多様な人材を採用し、その能力が最大限発揮できるよう適切な配置を行うとともに、研修等の成長機会を提供することで、自律し挑戦し続ける人材の育成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 41.2歳 | 4.8年 | 4,976,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 36.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 48.7% |
※男性労働者の育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業からの復職率(100.0%)、男女間の賃金差異(75.2%)、女性管理職比率(36.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) オペレーショナルリスク
業務において事務ミスや不正、システム障害等が発生した場合、履行補償や損害賠償責任を負い、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、業務プロセスの改善・標準化、事務過誤報告態勢の構築、情報セキュリティ管理の徹底を行っています。
■(2) 住宅ローン市況、不動産市況等のリスク
住宅ローン市場や不動産流通市場等の動向に影響を受ける事業があり、これらが急速に悪化した場合、取扱件数の減少により業績に影響が出る可能性があります。対策として、市場動向の注視とともに、相続市場など長期的に拡大が見込まれる分野へのシフトを進めています。
■(3) 貸倒れに関するリスク
取引先の信用不安等により予期せぬ貸倒れが発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、与信管理規程に基づく限度額設定や信用状態の継続的な把握、債権保全措置等を行い、不良債権の発生防止に努めています。



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