ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、首都圏を中心にマルエツ、カスミ、イオンフードスタイル、いなげやなどのスーパーマーケットを展開する企業グループです。直近の業績は、既存店の客数増加やいなげやとの統合により大幅な増収を達成したものの、物価上昇や競争激化に伴う価格施策の影響で減益・純損失となっています。


※本記事は、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第11期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月20日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスってどんな会社?


首都圏でスーパーマーケット事業を展開し、地域社会の食のインフラを支える企業集団です。

(1) 会社概要


同社は2015年にマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東およびイオン、丸紅による共同持株会社設立に向けた経営統合により設立され、上場しました。2024年にいなげやを完全子会社化して経営統合を完了し、2026年にはマックスバリュ関東をイオンフードスタイルに社名変更するなど組織再編を進めています。

現在の従業員数はグループ全体で9,349名、単体で445名規模の体制です。筆頭株主は事業会社のイオンマーケットインベストメントで、第2位は親会社のイオン、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、イオングループの中核的なスーパーマーケット事業会社として強固な事業基盤を築いています。

氏名 持株比率
イオンマーケットインベストメント 34.33%
イオン 18.44%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は井出武美氏が務めています。取締役7名中3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
井出 武美 代表取締役社長 1985年ジャスコ(現イオン)入社。山陽マルナカ社長、イオンリテール副社長、社長などを経て、2025年より現職。
本間 正治 代表取締役副社長 1992年マルエツ入社。同社経営企画本部長等を経て2023年マルエツ社長に就任。2023年より現職。
藤田 元宏 取締役会長 1978年カスミ入社。同社社長や当社社長、イオン副社長などを経て、2024年カスミ会長、2025年より現職。
岡田 元也 取締役相談役 1979年ジャスコ(現イオン)入社。同社社長を経て2020年イオン会長に就任。2015年より現職。


社外取締役は、鳥飼重和(鳥飼総合法律事務所代表)、岡本忍(岡本忍税理士事務所代表)、牧野直子(スタジオ食代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、スーパーマーケット事業およびその他の事業を展開しています。

(1) スーパーマーケット事業


食料品を中心に生活関連用品や衣料品等を販売するスーパーマーケットの運営、および生鮮食品等の加工・製造を行っています。多様な顧客ニーズに対応するため、店舗をダウンタウン、アーバン、ルーラルの3地域に区分し、それぞれの地域特性に応じた品揃えや売場構成、サービスを提供しています。

主な収益源はスーパーマーケット各店における食品や日用品等の商品販売による売上です。事業の運営は、マルエツ、カスミ、いなげや、イオンフードスタイル(旧マックスバリュ関東)、セイブなどの事業会社が行っており、商品の加工等はマルエツフレッシュフーズなどの子会社が担っています。

(2) その他の事業


スーパーマーケット事業を支援するための各種サービスや周辺事業を展開しています。具体的には、不動産事業、商品開発事業、品質管理および品質検査事業、業務受託事業、人材派遣事業、小売業におけるレジ等店舗運営業務、店舗支援請負業務、農作物の栽培生産などに幅広く取り組んでいます。

グループ内の各事業会社等からの経営管理料やサービス収入、テナント等からの不動産賃貸収入などが主な収益源となります。運営は、不動産事業をマルエツ開発、商品開発をクローバ商事、品質管理を食品品質管理センター、人材派遣をアスビズサポートなどの各専門子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は6,900億円台から推移し、直近ではいなげやとの統合効果等により9,444億円まで大きく拡大しています。一方で経常利益は減少傾向にあり、利益率は1%台から低下し、直近では純損失を計上するなど、競争激化やコスト上昇に伴う収益性の確保が課題となっています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 7,012億円 6,920億円 6,905億円 7,940億円 9,444億円
経常利益 125億円 65億円 69億円 61億円 49億円
利益率(%) 1.8% 0.9% 1.0% 0.8% 0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 54億円 13億円 10億円 8億円 -32億円

(2) 損益計算書


売上高は前年同期比で増加していますが、物価上昇や競争激化に対応するための価格施策の継続により、売上総利益率は低下しています。さらに、労務費や物流費などのコスト上昇が売上総利益の伸びを上回った結果、営業利益および営業利益率は前年を下回る厳しい事業環境となっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 7,940億円 9,444億円
売上総利益 2,299億円 2,698億円
売上総利益率(%) 29.0% 28.6%
営業利益 60億円 51億円
営業利益率(%) 0.8% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1,147億円(構成比40%)、地代家賃が398億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はスーパーマーケット事業の単一セグメントですが、事業区分別の販売実績を見ると、主力であるスーパーマーケット事業の販売高が前年比で大きく伸長しています。これは既存店の客数増加に加えて、新たにグループへ加わったいなげやの業績が通期で寄与したことによるものです。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
スーパーマーケット事業 - 9,435億円
その他の事業 - 9億円
連結(合計) 7,940億円 9,444億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で安定した資金を生み出し、その範囲内で必要な投資を行いつつ、借入金の返済などを進める「健全型」の傾向を示しています。店舗網の拡大や設備投資を自己資金等で適切に賄いながら、財務基盤の強化を図っていることが伺えます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 145億円 256億円
投資CF -163億円 -166億円
財務CF 69億円 -123億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失を計上しているため算出されておらず市場平均との比較ができませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.9%でスタンダード市場の非製造業平均(48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客さまの豊かで健康的な食生活」や「地域の発展と繁栄」に貢献することを基本理念に掲げています。「時代に適応する企業」として、中長期的な企業価値の最大化と永続的な発展を実現し、事業を通じた社会と企業の持続可能性の両立を目指しながら、食に関する事業の創造と革新に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は「真の顧客起点を絶対の価値観」として掲げており、常にお客様の視点に立って事業を展開する文化を重視しています。また、国籍・性別・年齢・心身の障がいの有無などによる差別を排し、能力と成果に貫かれた人事を基本とする「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」を経営戦略として推進しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度からスタートした第4次中期経営計画では、「経営構造の変革に挑み続ける」ことを掲げています。持続的成長と競争優位性の確立を目指し、労働集約型経営からの脱却に向けた生産性の向上と人員適正化を喫緊の経営課題として、事業会社中心の育成にとどまらない新たな価値提供の実現を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


首都圏で圧倒的なシェアを獲得するため、各地域の特性に応じた店舗の最適化(ダウンタウン、アーバン、ルーラルの3区分)を図ります。また、イオンフードスタイルの設立を通じて、機能やシステムの統合によるシナジーの最大化やスケールメリットを活かした競争力強化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を最も重要な経営資源と捉え、従業員エンゲージメントの向上を起点とした好循環の形成を目指しています。グループ横断での次世代人財育成プログラムや成長事業開発プログラムを推進し、多様な人材が働きがいとやりがいを持ち、仕事と私生活の両面で充実できる職場環境の整備に継続して取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 46.3歳 1.6年 6,000,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、マルエツの障がい者雇用率(3.2%)、カスミの障がい者雇用率(4.2%)、いなげやの障がい者雇用率(4.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) スーパーマーケット市場の競争激化と外部環境の影響


スーパーマーケット業界は異業種も含めた出店競争が激化しており、景気や個人消費の動向、法改正、異常気象等の影響を受けやすい環境にあります。同社のドミナントエリアでの競合店舗の新規出店や、冷夏・長雨などの異常気象による季節商品の販売不振が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 燃料費等の高騰に伴うコスト上昇


店舗における商品の冷凍・冷蔵には電力が不可欠であり、再生可能エネルギーの導入等を進めているものの、燃料費の高騰により電気料金や物流を支える配送費等が上昇するリスクがあります。これらのコスト増加要因は同社グループの経費増につながり、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報管理およびシステム障害


店舗や事務所でネットワークを構築し、営業、財務、個人データなど様々な重要情報を管理しています。社内情報管理規程等により厳正な管理を実施していますが、犯罪行為やネットワーク障害などによって情報の漏洩や流失、システム破壊が生じた場合、営業活動への支障や社会的信用の失墜を招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。