※本記事は、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスってどんな会社?
首都圏を地盤とするスーパーマーケットの共同持株会社です。イオングループの一員として、マルエツ、カスミ、いなげや等を傘下に持ちます。
■(1) 会社概要
同社は2015年、マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の経営統合により共同持株会社として設立され、東京証券取引所市場第一部に上場しました。2022年の市場区分見直しを経てスタンダード市場へ移行しています。2024年には、いなげやを完全子会社化し経営統合を完了させ、首都圏における事業基盤をさらに拡大しました。
2025年2月28日時点で、連結従業員数は9,300名、単体従業員数は104名です。筆頭株主は親会社の合弁会社であるイオンマーケットインベストメントで、第2位は流通大手のイオンです。両社で過半数の議決権を保有しており、イオングループとの結びつきが強い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオンマーケットインベストメント | 34.34% |
| イオン | 18.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は井出武美氏です。社外取締役比率は約27%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井出 武美 | 代表取締役社長 | イオンリテール代表取締役社長、イオン執行役GMS担当などを経て、2025年5月より現職。 |
| 本間 正治 | 代表取締役副社長 | マルエツ入社後、同社代表取締役社長などを経て、2023年5月より現職。 |
| 藤田 元宏 | 取締役会長 | カスミ入社後、同社代表取締役社長、同社代表取締役社長、イオン執行役副会長などを経て、2025年5月より現職。 |
| 岡田 元也 | 取締役相談役 | ジャスコ(現イオン)入社後、同社代表取締役社長、イオン取締役兼代表執行役会長などを経て、2015年3月より現職。 |
社外取締役は、鳥飼重和(鳥飼総合法律事務所代表)、牧野直子(有限会社スタジオ食代表取締役)、岡本忍(岡本忍税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スーパーマーケット事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) スーパーマーケット事業
首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城など)を中心に、食料品や生活関連用品を販売するスーパーマーケットを展開しています。主要な事業会社として、マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、および2024年に経営統合した いなげや があります。顧客は地域住民が中心で、生鮮食品やデリカ(惣菜)などの日常的な買い物需要に対応しています。
収益は、一般消費者への商品販売による代金が主な源泉です。運営は、株式会社マルエツ、株式会社カスミ、マックスバリュ関東株式会社、株式会社いなげや 等の各事業会社が行っています。また、株式会社マルエツフレッシュフーズなどの子会社が生鮮食品の加工や製造を行い、グループ店舗へ商品を供給しています。
■(2) その他の事業
スーパーマーケット事業を支援するための周辺事業を展開しています。具体的には、店舗開発や不動産賃貸、商品の品質管理、特例子会社による業務受託、教育研修事業など多岐にわたります。
収益は、グループ会社やテナント等からの不動産賃貸料、業務受託料、品質検査料などが主な源泉です。運営は、株式会社マルエツ開発(不動産)、株式会社食品品質管理センター(品質管理)、株式会社日本流通未来教育センター(教育)などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は第6期から第9期にかけて横ばいから微減で推移していましたが、第10期には経営統合の影響もあり大きく増加し過去最高を記録しました。一方、利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰などの影響を受け、経常利益および当期利益ともに減少傾向が続いています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,189億円 | 7,012億円 | 6,920億円 | 6,905億円 | 7,940億円 |
| 経常利益 | 194億円 | 125億円 | 65億円 | 69億円 | 61億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 1.8% | 0.9% | 1.0% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 88億円 | 54億円 | 13億円 | 10億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は前期比で約1,035億円増加しています。売上総利益率は微減となりました。販管費が増加しており、営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,905億円 | 7,940億円 |
| 売上総利益 | 1,984億円 | 2,299億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.7% | 29.0% |
| 営業利益 | 69億円 | 60億円 |
| 営業利益率(%) | 1.0% | 0.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が969億円(構成比40%)、地代家賃が325億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
いなげやとの経営統合により、主力であるスーパーマーケット事業の売上高が大幅に増加しました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| スーパーマーケット事業 | - | 7,936億円 |
| その他の事業 | - | 4億円 |
| 連結(合計) | 6,905億円 | 7,940億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「積極型」です。本業の営業活動で得た資金に加え、財務活動による資金調達も行いながら、将来の成長に向けた投資活動を積極的に実施しています。特に当期はいなげやとの統合に関連した動きが見られます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 215億円 | 145億円 |
| 投資CF | -256億円 | -163億円 |
| 財務CF | -4億円 | 69億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、基本理念として「お客さまの豊かで健康的な食生活」や「地域の発展と繁栄」への貢献を掲げています。時代に適応する企業として、中長期的な企業価値の最大化と永続的な発展を目指し、事業を通じた社会と企業の持続可能性の両立を追求しています。
■(2) 企業文化
「顧客起点を絶対の価値観」とすることを共通の思想としています。変化する環境の中で、現状を分析し、店頭業務を見直して強化し、リソース配分をシフトすることで、競争優位性を確立しようとする姿勢を持っています。また、経営構造の変革に挑み続けることで真の成長を実現するという方針を共有しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度より3年間(2026年2月期~2028年2月期)を対象とした第4次中期経営計画を策定しています。いなげやとの統合を契機に、事業会社間の関係を抜本的に見直し、首都圏最大規模のスーパーマーケットとして強固な経営基盤を構築することを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
いなげやとの統合効果を最大化するため、本部機能の変革と事業会社の連携強化を進めます。具体的には、規模を活かした調達体制の構築、コスト適正化と効率化、情報共有の迅速化を図ります。店舗サービスにおいてはCXスコアの向上を目指した接客強化、主力商品である生鮮やデリカの強化と従業員教育による品質向上、そしてバックオフィス機能の集約・スリム化を速やかに実行していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資源と捉え、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。事業会社ごとに培った教育システムに加え、グループ横断での次世代人材育成や経営戦略を実践するスキルトレーニングを推進しています。ダイバーシティ推進を経営戦略の一つと位置づけ、女性活躍推進や多様な人材の能力発揮、ワークライフバランスの充実に向けた環境整備を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 47.5歳 | 4.4年 | 7,000,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | マルエツ | カスミ | マックスバリュ関東 | いなげや |
|---|---|---|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.2% | 13.3% | 12.3% | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% | 58.3% | 100.0% | 35.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% | 59.6% | 66.6% | 56.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.9% | 77.0% | 82.4% | 76.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 91.1% | 97.8% | 97.8% | 91.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) スーパーマーケット事業における市場動向及び競合等の影響
スーパーマーケット業界では、異業種を含めた出店競争が激化しており、景気や個人消費の動向、異常気象等の影響を受けやすい環境にあります。ドミナントエリアにおける競合店舗の新規出店や、冷夏・長雨等の天候不順が発生した場合、売上や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制
消費者保護、独占禁止、大規模小売業者出店規制、環境・リサイクル関連などの各種法規制の適用を受けています。予期せぬ法改正や規制強化により営業活動が制限されたり、対応コストが増加したりすることで、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 店舗数の増加及び減少
新規出店や店舗閉鎖は計画的に実施していますが、営業環境の変化や競合店の出店などにより計画通りに進まない可能性があります。計画外の出店や閉鎖が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、減損会計の適用により、収益性の低下した店舗について減損損失を計上するリスクもあります。



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