※本記事は、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第11期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスってどんな会社?
首都圏を地盤とする複数のスーパーマーケット運営会社を傘下に持つ共同持株会社です。
■(1) 会社概要
2014年10月にマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、イオン、丸紅の5社により共同持株会社に関する経営統合契約が締結されました。これに伴い2015年3月にユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスが設立され、上場しました。その後、2024年4月にいなげやとの経営統合契約を締結して完全子会社化し、2025年12月にはマックスバリュ関東等との統合によりイオンフードスタイルを新設しています。
従業員数は連結9,349名、単体445名です。筆頭株主および第2位の株主は、親会社であるイオンならびに同グループのイオンマーケットインベストメントで、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオンマーケットインベストメント | 34.33% |
| イオン | 18.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は井出武美氏が務めています。社外取締役の比率は27.3%(11名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井出武美 | 代表取締役社長 | ジャスコ(現イオン)入社。同社執行役スーパーマーケット事業担当などを経て、2025年5月より現職。 |
| 本間正治 | 代表取締役副社長 | マルエツ入社。同社代表取締役社長などを経て、2023年5月より現職。 |
| 藤田元宏 | 取締役会長 | カスミ入社。同社代表取締役社長、イオン代表執行役副社長などを経て、2025年5月より現職。 |
| 岡田元也 | 取締役相談役 | ジャスコ(現イオン)入社。同社代表取締役社長などを経て、2015年3月より現職。 |
社外取締役は、鳥飼重和(鳥飼総合法律事務所代表)、岡本忍(岡本忍税理士事務所代表)、牧野直子(スタジオ食代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、スーパーマーケット事業およびその他の事業を展開しています。
■スーパーマーケット事業
食料品を中心に生活関連用品や衣料品などのスーパーマーケットを展開し、一般消費者を主な顧客としています。また、生鮮食品の加工、食品の製造や仕入販売、惣菜の製造なども行っています。
主な収益源は、店舗での商品販売による代金です。スーパーマーケットの運営は、マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、いなげや、セイブなどが担い、食品加工等はマルエツフレッシュフーズなどの子会社が手掛けています。
■その他の事業
不動産事業、商品開発事業、品質管理および品質検査事業、人材派遣事業、教育事業、店舗運営におけるレジ等の請負事業などを展開しています。
主にグループ内外の企業から不動産賃貸料や業務委託料を受け取る収益モデルです。不動産事業はマルエツ開発、人材派遣事業はアスビズサポート、商品開発はクローバ商事がそれぞれ運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は7,000億円前後で推移していましたが、直近2期間で増加傾向にあり、当期は9,444億円に達しています。一方、経常利益は125億円から49億円へと減少傾向が続いており、利益率も1.8%から0.5%へと低下しています。売上規模の拡大と並行して、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,012億円 | 6,920億円 | 6,905億円 | 7,940億円 | 9,444億円 |
| 経常利益 | 125億円 | 65億円 | 69億円 | 61億円 | 49億円 |
| 利益率(%) | 1.8% | 0.9% | 1.0% | 0.8% | 0.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 24億円 | 26億円 | 29億円 | 32億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大きく増加し、売上総利益も拡大しています。しかし、競争激化による価格施策の強化やコスト増の影響を受け、売上総利益率と営業利益率はともに低下しており、営業利益は前期を下回る結果となりました。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,940億円 | 9,444億円 |
| 売上総利益 | 2,299億円 | 2,698億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.0% | 28.6% |
| 営業利益 | 60億円 | 51億円 |
| 営業利益率(%) | 0.8% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1,147億円(構成比40.4%)、地代家賃が398億円(同14.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
スーパーマーケット事業の単一セグメントを中心としていますが、その他の事業も含めた販売実績を見ると、主力事業の売上が大きく拡大しています。新規出店や店舗活性化、および他社との経営統合が寄与し、全体の売上高を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| スーパーマーケット事業 | 7,935億円 | 9,435億円 |
| その他の事業 | 5億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 7,940億円 | 9,444億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てる「健全型」の傾向を示しています。財務面では、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータがなく、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.9%でスタンダード市場の非製造業平均を上回っています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 145億円 | 256億円 |
| 投資CF | -163億円 | -166億円 |
| 財務CF | 69億円 | -123億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客さまの豊かで健康的な食生活」や「地域の発展と繁栄」に貢献し、「時代に適応する企業」として、中長期的な企業価値の最大化と永続的な発展を実現していくことを基本理念として掲げています。事業を通じた社会と企業の持続可能性の両立を目指しています。
■(2) 企業文化
国籍、性別、年齢、心身の障がいの有無などによる差別を排し、能力と成果に貫かれた人事を基本的な考え方とする「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」を推進しています。多様な人材が活躍し、常にお客さまのニーズに柔軟に応じる組織風土を築いています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度より第4次中期経営計画を始動し、「真の顧客起点を絶対の価値観とし、経営構造の変革に挑み続ける」をスローガンに掲げています。新会社イオンフードスタイルを通じ、スケールメリットを生かしたビジネスモデルの進化を推進します。
* 食品小売で売上高1兆円超
■(4) 成長戦略と重点施策
店舗をエリア特性に応じ「ダウンタウン」「アーバン」「ルーラル」の3地域に区分し、地域特性に即した最適化を図ります。商品仕入の集中購買体制やグループ共通の販促施策の管理を強化するとともに、間接部門や情報・物流の統合により経営効率化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
お客さまに安定的な商品やサービスを提供する基盤として、人材の教育と店舗でのサポート体制をグループの強みとしています。経営戦略を実践するスキルトレーニングや成長事業開発プログラムを通じて、グループ横断で次世代人材の育成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 46.3歳 | 1.6年 | 6,000,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 92.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、マルエツの障がい者雇用率(3.2%)、カスミの障がい者雇用率(4.2%)、いなげやの障がい者雇用率(4.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) スーパーマーケット事業の競争激化と気象影響
異業種も含めた出店競争が激化しており、ドミナントエリアに競合店舗の新規出店が続いた場合、売上および業績に影響を及ぼす可能性があります。また、季節商品の販売も多いため、冷夏や長雨などの異常気象が発生した場合にも、財政状態に悪影響を与えるリスクがあります。
■(2) 店舗出店および閉鎖計画の変動
スーパーマーケットを中心に多店舗展開を行っており、新規出店および店舗閉鎖を計画的に実施しています。しかし、営業環境の変化や近隣地域への競合出店による顧客動向の変化が生じた場合、計画外の出店や閉鎖が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 食品の安全性に関わる問題
消費者に安心な買物環境を提供するため、食中毒の未然防止や食品検査体制の充実に努めています。しかし、万一食中毒や商品の信頼性を損なう事態が発生した場合、同社グループの社会的信用が低下し、業績および財政状態に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
■(4) 燃料費高騰と物流コストの上昇
店舗での冷凍・冷蔵設備に多大な電力を要するため、燃料費の高騰による電気料金や配送費などの上昇は経費増加の直接的な要因となります。再生可能エネルギーの導入等を進めていますが、急激なコスト増加が生じた場合、収益性に影響を与える可能性があります。



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