※本記事は、リックソフトの有価証券報告書(第24期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リックソフトってどんな会社?
同社は、世界的に評価の高いデジタルツールを活用して企業の生産性向上を支援するツールソリューション事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2005年1月にリックソフト有限会社として設立され、2009年に株式会社へ組織変更するとともに、Atlassian Pty Ltd.とパートナー契約を締結しました。2012年に自社開発の「WBS Gannt-Chart for Jira」の販売を開始し、その後も海外製ツールの取り扱い拡充やクラウドサービスの展開を進めています。2019年2月には株式上場を果たし、グローバル市場に向けた事業展開も本格化させています。
現在の従業員数は連結で136名、単体で125名です。筆頭株主は事業会社であるHSで、持株比率は44.44%となっています。第2位は光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信、第3位はSBI証券が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| HS | 44.44% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信 | 7.02% |
| SBI証券 | 3.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役は大貫浩氏が務めており、社外取締役の比率は57.1%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大貫 浩 | 代表取締役 | 1995年4月日本電気入社。1998年11月個人事業主として活動。2005年1月リックソフト設立、代表取締役就任。2016年12月米国法人Ricksoft, Inc.設立、Vice President就任。現職。 |
| 服部 典生 | 取締役 | 1989年4月東海テクノシステム(現デンソーテクノ)入社。1999年1月エイチ・エス・ディー設立。2016年1月同社と合併し執行役員就任。2023年1月同社カスタマーサービス部ゼネラルマネージャー就任。現職。 |
| 加藤 真理 | 取締役人事総務部ゼネラルマネージャー | 1991年4月三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。1996年10月太田昭和監査法人入所。2003年7月加藤公認会計士事務所設立。2024年3月人事総務部ゼネラルマネージャー就任。現職。 |
社外取締役は、早川智也(プロジェクト・オーシャン代表取締役)、岡田善男(さくらケーシーエス常勤監査役)、青木理惠(青木公認会計士事務所開設)、官澤康平(法律事務所ZeLo入所)です。
2. 事業内容
同社グループは、ツールソリューション事業の単一セグメントで事業を展開しており、提供するサービスの内容によって大きく3つの区分に分けられています。
■テクノロジーソリューション
主にAtlassian社のソフトウェアを活用し、顧客のビジネス課題を解決するための導入提案とライセンス販売を行っています。顧客のニーズに合わせてクラウド型とオンプレミス型の利用環境を提供し、最新のAI機能などを盛り込んだベストプラクティスの提案によって、企業の業務効率化やデジタルトランスフォーメーションを支援しています。
収益源は、顧客の新規導入時およびライセンス更新時に発生するライセンスの再販費用です。運営は主にリックソフトが行っており、大企業を中心とした継続的な利用により、安定したストック型の収益基盤を形成しています。
■プロフェッショナルサービス
ソフトウェアを導入した顧客に対し、より高度な要求や先進的な要望に応えるための技術的な専門サービスを提供しています。具体的には、顧客の課題分析から設計、構築、運用までのSI(システムインテグレーション)サービスや、専任技術者が24時間365日体制で管理するフルマネージドクラウドサービス「RickCloud」の提供、ユーザー向け研修などを行っています。
収益源は、個別見積りに基づく役務提供の対価や、クラウド上の運用代行費用、契約期間中のサポート費用です。運営は主にリックソフトが行い、国内最大級のAtlassian認定技術者を擁する強みを活かしています。
■自社プロダクト
Atlassian製品の主力機能(JiraやConfluenceなど)では標準で実現できない機能を補完するため、独自のアドオン製品を自社開発し、Atlassian Marketplaceを通じて世界に向けて販売しています。代表的な製品として「WBS Gantt-Chart for Jira」や「Excel-like Issue Editor for Jira」などがあり、日本の商習慣だけでなく海外ユーザーの要望も取り入れた機能拡充を続けています。
収益源は、製品ごとの新規購入時およびライセンス更新時の費用です。運営はリックソフトおよび米国子会社のRicksoft, Inc.が共同で行い、グローバル市場での強力なライバルに負けないUI/UXの改善に取り組んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続け、43億円から109億円へと大きく規模を拡大しています。一方で、経常利益および当期利益は増減を伴いながら推移しており、直近では将来成長を見据えた人材確保や戦略的投資などの影響により減益となっています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 43億円 | 56億円 | 75億円 | 90億円 | 109億円 |
| 経常利益 | 4.5億円 | 5.7億円 | 6.8億円 | 4.6億円 | 3.6億円 |
| 利益率(%) | 10.5% | 10.1% | 9.0% | 5.1% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.2億円 | 4.2億円 | 2.7億円 | 3.6億円 | 2.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が順調に伸びているものの、売上原価の増加額が売上高の増加額を上回ったため、売上総利益は横ばいにとどまり、売上総利益率は低下しています。さらに、給与手当などの販売費及び一般管理費も増加した結果、営業利益および営業利益率は低下する傾向にあります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 109億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.3% | 21.8% |
| 営業利益 | 4.6億円 | 3.8億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.4億円(構成比27%)、支払手数料が3.4億円(同17%)を占めています。また、売上原価のうち、ライセンス仕入高等が81億円(構成比94%)、経費が3.0億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのサービス区分において売上が推移していますが、特に主力のテクノロジーソリューションが牽引しています。プロフェッショナルサービスも大きく売上を伸ばしており、案件の大型化やストック売上の着実な積み上がりが全体の増収に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| テクノロジーソリューション | 74億円 | 89億円 |
| プロフェッショナルサービス | 9.1億円 | 14億円 |
| 自社プロダクト | 7.2億円 | 6.3億円 |
| 連結(合計) | 90億円 | 109億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、手元資金で投資を賄う健全な状態です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.8億円 | 7.0億円 |
| 投資CF | -1.4億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -0.9億円 | - |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「イノベーションをおこして、あらゆる人の可能性を最大化する」ことをミッションとして掲げています。イノベーションをおこすことによってすべての人が新たな可能性を見出し、社会が持続的に成長し続ける未来の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
2023年8月にミッション・ビジョン・バリューを刷新し、従業員の多様な働き方に対応するためリモートワークやフレックスタイム制、時短勤務制度などを定着させています。個々人のエンゲージメント向上と生産性の最大化を追求し、会社の成長とともに従業員の成長が実現できる文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
事業拡大を推進し継続的な企業価値向上を実現する上で、売上高を重要な指標と位置付けています。また、利益の確保も重要であるとの考えから、顧客数、認定技術獲得数、およびEBITDAを客観的な指標として設定し、事業基盤の強化に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の「価値ある道具の提供」から「顧客に合わせた付加価値を提供」へ事業ドメインを拡張し、海外で評価の高い先進テクノロジを厳選して国内へ提供する差別化戦略を推進します。また、一部署での成功を他部署へ広げる段階的拡大(ランド・アンド・エクスパンド)戦略や伴走支援を行い、グローバル市場ではAtlassianエコシステムを活用して自社プロダクトを展開します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業基盤の強化に向けて、先進テクノロジーの活用を促せる優秀な営業人材や、コンサルティング・開発を担う高い技術力を持つ人材の確保を急務としています。資格取得や生成AIの活用を組織的に推進して専門性を高めるとともに、人的資本経営の観点から、全従業員が心身ともに健康で最大限のパフォーマンスを発揮できる強固な職場環境の構築に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 38.3歳 | 5.0年 | 6,501,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 45.5% |
| 男性育児休業取得率 | 67.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 86.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 36.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) Atlassian製品への依存
ツールソリューション事業の売上の大部分を占めるAtlassian製品の売上に大きく依存しており、競合製品の台頭や製品の陳腐化による競争力低下、パートナー契約の解除等が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新と顧客ニーズの変化への対応
IT業界は新技術の開発や顧客ニーズの変化が非常に激しく、これらへの対応が遅れた場合や予定外の投資が必要となった場合、提供するサービスの競争力低下や業績悪化につながるリスクがあります。
■(3) 人材および技術認定資格者の確保
事業拡大にはエンジニアや営業の優秀な人材の確保、およびAtlassian等の認定技術の獲得が不可欠ですが、これらを安定的に確保・育成できなかった場合、円滑なサービス提供が阻害され、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報管理体制とセキュリティ
業務上、多数の顧客企業の重要な情報資産を取り扱っており、ISO認証の取得など情報管理体制の強化に努めていますが、万一情報漏洩が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償責任の発生により業績に悪影響を与えるリスクがあります。



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