リックソフト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リックソフト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する同社は、ツールソリューション事業を主力とし、アトラシアン製品の導入支援や自社ソフト開発を行っています。直近の業績は、売上高90億円(前期比20.7%増)、経常利益4.6億円(同31.8%減)と増収減益でした。ストック売上の積み上げが進み、事業基盤を拡大しています。


指定された構成とルールに従い、企業分析記事を作成しました。

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リックソフト転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態


※本記事は、リックソフト株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リックソフトってどんな会社?

アトラシアン製品を中心とした海外製ツールの導入支援や、独自のアドオンソフト開発を行うIT企業です。

(1) 会社概要

同社は2005年に設立され、2009年に豪州Atlassian社とパートナー契約を締結しました。2016年には米国法人を設立してグローバル展開を開始し、2019年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2022年にはアトラシアンのマーケットプレイスに参入するなど、事業領域を拡大しています。

2025年2月末時点の従業員数は連結137名、単体128名です。筆頭株主はHS株式会社で、第2位は株式会社SBI証券、第3位は光通信株式会社です。

氏名 持株比率
HS 44.64%
SBI証券 4.46%
光通信 3.91%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役は大貫 浩氏です。

氏名 役職 主な経歴
大貫 浩 代表取締役 1995年日本電気入社。1998年よりフリーエンジニアとして活動し、2005年に同社設立、代表取締役就任。2016年より米国子会社Vice Presidentを兼任。
服部 典生 取締役カスタマーサービス部ゼネラルマネジャー 1989年東海テクノシステム入社。1999年エイチ・エス・ディー設立。2016年合併に伴い同社執行役員就任。2017年取締役就任。2023年より現職。
加藤 真理 取締役人事総務部ゼネラルマネージャー 1991年三菱銀行入行。太田昭和監査法人を経て2003年加藤公認会計士事務所設立。2019年同社社外取締役就任後、2021年取締役就任。2024年より現職。


社外取締役は、早川 智也(元プロジェクト・オーシャン代表)、岡田 善男(元三井住友銀行事業統括部上席推進役)、青木 理惠(青木公認会計士事務所代表)、官澤 康平(法律事務所ZeLo弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ツールソリューション事業」の単一セグメントで、製品・サービスの内容により以下の3つに区分して事業を展開しています。

(1) ライセンス&SIサービス

主にAtlassian社のソフトウェア(Jira、Confluence等)の導入支援を行っています。顧客の課題解決に向けた提案からライセンス販売、SI(システムインテグレーション)、研修、ヘルプデスクによる運用支援までを包括的に提供しています。

収益は、Atlassian社から仕入れたライセンスの再販や更新時のライセンス費用、およびSIサービス(環境構築、カスタマイズ、研修等)の対価として顧客から受領します。運営は主にリックソフトが行っています。

(2) マネージドサービス

同社グループで取り扱う製品の運用を、顧客に代わって行うフルマネージドクラウドサービス「RickCloud」を提供しています。AWS等のクラウド環境を利用し、専任技術者が24時間365日体制で運用管理、セキュリティ対応、監視などを行います。

収益は、クラウド上の運用代行費用として顧客から受領し、利用開始後は毎月売上を計上するストック型ビジネスモデルとなっています。運営は主にリックソフトが行っています。

(3) 自社ソフト開発

Atlassian製品(Jira等)の機能を拡張するアドオン製品(「WBS Gantt-Chart for Jira」等)を自社開発し、Atlassian Marketplaceを通じてグローバルに販売しています。海外ユーザーの要望を取り入れたUI/UX改善も進めています。

収益は、製品ごとのライセンス費用として新規購入時および更新時に顧客から受領します。また、Atlassian Marketplaceの使用料として手数料を支払っています。開発・販売はリックソフトおよび米国子会社のRicksoft, Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では90億円を突破しました。一方、利益面では投資や為替の影響等により変動が見られ、直近の経常利益率は低下しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 44億円 43億円 56億円 75億円 90億円
経常利益 6億円 5億円 6億円 7億円 5億円
利益率(%) 13.6% 10.5% 10.1% 9.0% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 3億円 4億円 3億円 4億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高は20.7%増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回り、売上総利益率は低下しました。また、販管費の増加により営業利益率は低下しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 75億円 90億円
売上総利益 22億円 24億円
売上総利益率(%) 29.9% 26.2%
営業利益 7億円 5億円
営業利益率(%) 8.9% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5億円(構成比28%)、支払手数料が3億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益

各サービス区分ごとの売上高を見ると、主力のライセンス&SIサービスが堅調に推移し、自社ソフト開発も伸長しています。マネージドサービスは一部減少しました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
ライセンス&SIサービス 67億円 82億円
マネージドサービス 3億円 2億円
自社ソフト開発 6億円 7億円
連結(合計) 75億円 90億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

リックソフトのキャッシュ・フローは、営業活動で大幅な収入増を達成しました。これは主に、利益の増加や、仕入債務の増加などが要因です。一方、投資活動では、設備投資や敷金等への支出がありました。財務活動では、自己株式の取得による支出がありました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 1億円 4億円
投資CF -0.4億円 -1億円
財務CF 0.1億円 -0.9億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「イノベーションをおこして、あらゆる人の可能性を最大化する」をミッションとして掲げています。イノベーションを通じてすべての人が新たな可能性を見出し、社会が持続的に成長し続ける未来の実現を目指しています。

(2) 企業文化

技術者集団から生まれた背景を持ち、先進テクノロジの本質を理解し活用することを重視しています。単に海外の優れたツールを提供するだけでなく、顧客の課題に合わせて付加価値を提供する姿勢を持っています。また、2023年にはミッション・ビジョン・バリューを刷新し、従業員の成長と会社の成長を連動させる文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標

経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、ライセンス販売やSI、自社開発プロダクト等から構成される「売上高」を重要な指標と位置付けています。また、継続的な成長と企業価値向上のため、「顧客数」「認定技術獲得数」および「EBITDA」も重要な指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策

事業ドメインを「価値ある道具の提供」から「顧客に合わせた付加価値を提供」へと拡張させています。具体的には、AI等の先進テクノロジをいち早く目利きして提供する「先進テクノロジ提供戦略」、組織の一部から全社へ利用を広げる「段階的拡大(ランド・アンド・エクスパンド)戦略」、顧客とともに課題解決に取り組む「顧客専門チーム戦略」を推進しています。海外ではAtlassianエコシステムを活用した自社製品の展開を強化します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

先進テクノロジの活用を促す営業人材や、コンサルティング・開発を担う高い技術力を持つ人材の確保を急務としています。新ミッションに基づく人事制度の運用や、リモートワーク・フレックスタイム制等の多様な働き方の導入により、個人の成長とワークライフバランスの実現を目指しています。また、認定資格取得の推進や健康的な職場環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 38.7歳 4.4年 6,735,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.3%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.3%
男女賃金差異(正規雇用) 88.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 23.7%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT投資動向の変化

主要顧客である企業のIT投資意欲に事業が依存しています。経済情勢の変化等により顧客の投資意欲が減退した場合、受注減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、事業・顧客・地域の分散や付加価値の高いサービスの提供によりリスク低減を図っています。

(2) 競合の激化

国内外を問わず競合企業や類似製品が存在しており、技術革新や新規参入により競争が激化した場合、失注や契約減少につながる可能性があります。同社は顧客ニーズを汲んだ製品・サービスの提供や、最新情報の蓄積・分析により競争力維持に努めています。

(3) アトラシアン製品への依存

売上の大部分をアトラシアン製品が占めており(当連結会計年度のライセンス売上比率78.4%)、同社製品の競争力低下やパートナー契約の変更・解除が業績に大きく影響する可能性があります。これに対し、アトラシアン以外のツール(Workato、Miro等)の取り扱いを拡大し、依存度の低減を進めています。

(4) 人材の確保・育成

事業拡大にはエンジニアや営業等の優秀な人材確保と育成が不可欠です。人材の安定的確保が困難な場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。採用活動の強化や研修体制の充実、働き方改革による定着率向上に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。