幸和製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

幸和製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。シルバーカーや歩行車を中心とした介護用品・福祉用具の製造・販売を主力とし、介護サービスやEC事業も展開しています。直近の業績は、売上高64億円(前期比0.6%減)、経常利益8億円(同11.7%減)と、主力製品は堅調ながらコスト増等の影響で減収減益となりました。


※本記事は、株式会社幸和製作所 の有価証券報告書(第38期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 幸和製作所ってどんな会社?


シルバーカーや歩行車などの福祉用具を製造・販売するメーカーです。高齢者の歩行支援製品に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1987年に大阪府堺市で設立され、乳母車の製造技術を応用してシルバーカーの開発を開始しました。2002年には中国・香港に関連会社を設立して生産体制を構築し、2017年にJASDAQ(現スタンダード)へ上場しました。近年は、2019年に幸和ライフゼーション等を子会社化し、介護サービス分野へも事業領域を拡大しています。

従業員数は連結218名、単体55名です。筆頭株主は資産管理運用業を行う秀一で、第2位は代表取締役社長の玉田秀明氏、第3位は個人株主です。経営陣や創業家が株式の過半数を保有しており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
秀一 55.08%
玉田 秀明 5.96%
ヨシダ トモヒロ 3.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は玉田秀明氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
玉田 秀明 代表取締役社長 1996年入社。香港や中国拠点の設立・運営に携わり、2005年より現職。
玉田 栄一 取締役会長 1987年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2017年より現職。
植田 樹 取締役 2010年入社。営業本部長、ネクストケア・イノベーション取締役等を経て、2020年より現職。
髙森 裕行 取締役(監査等委員) 日本振興等を経て2015年入社。経営管理部長、内部監査室長等を歴任し、2023年より現職。


社外取締役は、加藤伸隆(加藤会計事務所所長)、白坂一(株式会社AI Samurai代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「介護用品・福祉用具製造販売事業」「介護サービス事業」「EC事業」を展開しています。

(1) 介護用品・福祉用具製造販売事業

シルバーカー、歩行車、杖などの歩行補助具を中心に、入浴・排泄・服薬支援などの福祉用具を製造・販売しています。自社ブランド「TacaoF(テイコブ)」等を展開し、高齢者や要介護者の自立支援と介護負担の軽減を目指した製品を提供しています。

収益は、代理店(問屋)やホームセンター等の量販店、介護サービス事業者への製品販売により得ています。製品の多くは中国の生産子会社である東莞幸和家庭日用品で製造されており、販売は主に国内では幸和製作所およびシクロケア、海外では東莞幸和家庭日用品が行っています。

(2) 介護サービス事業

介護保険法に基づき、居宅要介護者や要支援者に対して、車いすや特殊寝台などの福祉用具の貸与(レンタル)を行っています。利用者の心身の状況や生活環境に応じた適切な用具を選定・提供し、日常生活の自立を支援しています。

収益は、介護保険制度を利用した福祉用具のレンタル料(利用者負担分および介護保険給付分)です。運営は連結子会社の幸和ライフゼーションおよびパーソンケアが行っています。

(3) EC事業

インターネットを通じて、車いす、シルバーカー、歩行車などの介護用品・福祉用具を一般消費者に直接販売しています。また、カタログ通販企業向けの通販ルートも展開しています。

収益は、ECサイトを通じた利用者への製品販売代金です。運営は連結子会社のネクストケア・イノベーションが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は60億円台で安定的に推移していますが、直近では横ばい傾向にあります。利益面では、2024年2月期に大幅な増益を達成しましたが、2025年2月期はコスト増等の影響により減益となりました。利益率は依然として10%を超える高い水準を維持しており、収益性は良好です。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 52億円 57億円 63億円 64億円 64億円
経常利益 3.9億円 5.5億円 6.7億円 9.4億円 8.3億円
利益率(%) 7.4% 9.5% 10.6% 14.6% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.9億円 3.6億円 3.2億円 5.7億円 3.4億円

(2) 損益計算書


売上高は微減でほぼ横ばいでしたが、売上総利益および営業利益は減少しました。売上総利益率は40%台半ばで推移していますが、直近ではやや低下しています。営業利益率は12%台と、製造業としては比較的高い水準を確保しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 64億円 64億円
売上総利益 30億円 28億円
売上総利益率(%) 46.1% 44.4%
営業利益 9億円 8億円
営業利益率(%) 14.8% 12.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料および手当が4.3億円(構成比21%)、運賃が3.0億円(同15%)、物流委託費が2.8億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の介護用品・福祉用具製造販売事業は売上が堅調に推移しましたが、円安によるコスト増で減益となりました。介護サービス事業は事業譲渡の影響で減収となり、営業損失を計上しています。EC事業は売上が減少したものの、収益性の改善により増益となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
介護用品・福祉用具製造販売事業 54億円 55億円 11億円 11億円 19.5%
介護サービス事業 1.5億円 0.9億円 -0.1億円 -0.6億円 -62.2%
EC事業 8億円 8億円 0.4億円 0.5億円 7.0%
連結(合計) 64億円 64億円 9億円 8億円 12.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 7億円 10億円
投資CF 1億円 0.4億円
財務CF -11億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.7%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、明日の笑顔のため、全ての人に愛と感動と勇気を与えます。私たちは、使う人が幸せを感じる、また心が豊かになる製品創りを目指します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、高齢者の生活の質(QOL)向上と持続可能な社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


福祉用具を単なる道具としてではなく、使用者の生活や感性に寄り添う「生活道具」として捉える価値観を持っています。従来の「医療的・高齢者的」な固定観念を打破し、デザイン性と機能性を両立させることで、使用者が持つことに誇りや安心を感じられる製品づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年2月期よりスタートした中期経営計画を推進しています。最終年度となる2027年2月期には以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:72億3200万円
* 営業利益:12億4200万円
* 経常利益:12億3200万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:7億9700万円

(4) 成長戦略と重点施策


「既存事業の変革と拡大」「業務の効率化」「ブランド価値の再設計」の3方針を掲げています。製品の差別化や用途別提案力の強化、ECや量販店を通じた自費購入層への展開を進めるほか、新ブランド「AURULA(アウルラ)」による新たな価値提案を行っています。また、海外拠点での内製化による生産体制強化や、社内業務の標準化による効率化も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業価値向上のため、組織機能の連携強化と人材育成を課題としています。OJTや社内外の研修を通じた育成に加え、労働環境の見直しや残業時間の削減、有給取得率の向上など、人的資本への積極的な投資を行っています。経営環境の変化に機動的に対応できる人材の確保と育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 40.9歳 8.8年 5,543,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定に基づく公表を行っていないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、残業時間削減率(前年比34%削減)、有給休暇取得率(75%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 生産体制に関するリスク

製品の多くを中国の生産子会社で製造しているため、中国における政治・法環境の変化、人件費高騰、物流網の混乱などが事業遂行に影響を与える可能性があります。特定の地域への生産集中に伴うカントリーリスクが存在します。

(2) 介護保険制度に関するリスク

売上高の約4割が介護保険制度に関連しています。要介護認定の範囲変更や、保険適用となる福祉用具の見直し、利用者負担率の変更などが行われた場合、需要動向が変化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料価格高騰のリスク

主な原材料であるアルミパイプや樹脂などは資源価格の変動影響を受けます。不測の価格高騰が発生し、販売価格への転嫁が遅れた場合、利益を圧迫する可能性があります。

(4) 為替変動に関するリスク

製品の輸出入取引を行っており、外貨建の債権債務について為替変動リスクを有しています。特に円安の進行は輸入コストの増加要因となり、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。