幸和製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

幸和製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

幸和製作所は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、シルバーカーや歩行車、杖などの介護用品・福祉用具の製造・販売を主力に、介護サービス事業やEC事業を展開しています。直近の業績は、主力商品の販売が堅調に推移し増収を確保した一方で、物流費や仕入コストの高騰などの影響により減益となりました。


※本記事は、幸和製作所の有価証券報告書(第39期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 幸和製作所ってどんな会社?


同社は、歩行補助を目的としたシルバーカーなどの福祉用具の開発・製造・販売を総合的に展開しています。

(1) 会社概要


同社は1987年に児童乗物の製造販売を目的に設立されました。その後、高齢者向け製品の開発へ事業を転換し、2007年に自社ブランド「TacaoF」を創設しました。2011年には中国に生産拠点を設立し、2017年に株式上場を果たしました。2024年には新ブランド「AURULA」を立ち上げています。

現在の従業員数はグループ全体で211名、単体で50名です。筆頭株主は同社の親会社である秀一で、第2位株主は代表取締役社長の玉田秀明氏、第3位株主は個人のヨシダトモヒロ氏となっています。創業家および親会社が株式の多くを保有し、安定した経営基盤を構築しています。

氏名 持株比率
秀一 54.99%
玉田秀明 5.95%
ヨシダトモヒロ 3.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は玉田秀明氏が務めており、社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
玉田秀明 代表取締役社長 1996年同社入社。1997年取締役、2002年幸和(香港)有限公司総経理を経て、2005年より現職。東莞幸和家庭日用品有限公司監事などを兼任。
玉田栄一 取締役会長 1987年同社を設立し代表取締役社長に就任。2002年幸和(香港)有限公司董事を経て、2010年代表取締役会長に就任。2017年より現職。
植田樹 取締役 2010年同社入社。2018年執行役員営業本部長、2019年執行役員経営企画室長を経て、2020年より現職。ネクストケア・イノベーション取締役などを兼任。
玉田秀一 取締役 2023年同社入社。新任取締役として経営に参画。
髙森裕行 取締役(監査等委員) 1991年会計事務所入所後、複数社を経て2015年同社入社。経営管理部部長、内部監査室室長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、加藤伸隆(加藤会計事務所所長)、白坂一(弁理士法人白坂所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「介護用品・福祉用具製造販売事業」「介護サービス事業」「EC事業」を展開しています。

(1) 介護用品・福祉用具製造販売事業


シルバーカーや歩行車、杖などの歩行補助具を中心に、入浴や排泄などの生活支援用品を企画・製造し、ホームセンターなどの量販店や介護サービス事業者へ販売しています。主に自立歩行が可能な高齢者や要介護認定を受けた方が顧客です。

製品の販売による収益を主な収益源としています。自社ブランド「TacaoF」や「AURULA」などで展開し、同社やシクロケアが販売を担うほか、製造は中国の生産拠点である東莞幸和家庭日用品有限公司が行う体制を構築しています。

(2) 介護サービス事業


介護保険法に基づき、要介護者や要支援者に対して福祉用具貸与(レンタル)事業を行っています。日常生活の自立支援や機能訓練を目的とし、利用者の心身の状況や生活環境に応じた適切な介護用品や福祉用具を提供しています。

利用者への福祉用具のレンタル料を主な収益源としています。地域密着型のサービス提供を通じて事業を展開しており、運営は主に連結子会社である幸和ライフゼーションおよびパーソンケアが担当しています。

(3) EC事業


インターネットを通じて、車いすやシルバーカー、歩行車といった介護用品・福祉用具の通信販売を行っています。主に一般の消費者に向けて直接製品を販売し、幅広いニーズに応えています。

ECサイトを通じた商品の販売代金を主な収益源としています。同社や協力工場から仕入れた製品を販売しており、運営は連結子会社であるネクストケア・イノベーションが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は安定して推移しており、直近数年は64億円前後で堅調に推移しています。一方、経常利益や当期利益については、物流費や原材料価格の変動などの影響を受け、増減を繰り返す傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 57億円 63億円 64億円 64億円 64億円
経常利益 5億円 7億円 9億円 8億円 7億円
利益率(%) 9.5% 10.6% 14.6% 13.0% 10.4%
当期利益 4億円 3億円 6億円 3億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいで推移していますが、売上総利益率もほぼ前年並みを維持しています。しかし、運賃をはじめとする物流費や人件費などの販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益および営業利益率は前年度を下回る結果となりました。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 64億円 64億円
売上総利益 28億円 28億円
売上総利益率(%) 44.4% 44.2%
営業利益 8億円 7億円
営業利益率(%) 12.5% 11.7%


販売費及び一般管理費(21億円)のうち、従業員給料および手当が5億円(構成比23.5%)、運賃が3億円(同14.0%)、物流委託費が3億円(同13.9%)を占めています。売上原価(36億円)の内訳については有価証券報告書に詳細な記載がありません。

(3) セグメント収益


主力である介護用品・福祉用具製造販売事業は、歩行車などの販売が堅調でしたが、仕入コストや物流費の増加により減益となりました。介護サービス事業は営業体制の強化や事業拡大により大幅な増収を達成しています。一方、EC事業は販促効果の一巡により減収となりました。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
介護用品・福祉用具製造販売事業 55億円 54億円
介護サービス事業 0.9億円 3億円
EC事業 8億円 7億円
連結(合計) 64億円 64億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 10億円 7億円
投資CF 0.4億円 -4億円
財務CF -5億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、明日の笑顔のため、全ての人に愛と感動と勇気を与えます。私たちは、使う人が幸せを感じる、また心が豊かになる製品創りを目指します。」という経営理念を掲げています。介護用品および福祉用具の開発や提供を通じて、高齢者の生活の質向上と持続可能な社会への貢献を使命としています。

(2) 企業文化


同社は、利用者の生活環境や心身の状況に合わせた「使いやすさ」や「安全性」を追求するだけでなく、日常に自然と馴染む「デザイン性」などの感性価値を重視する文化を持っています。福祉用具に対する既存の固定観念を打ち破り、あらゆる人が自分らしく生活できるような製品づくりにグループ一丸となって取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な企業価値の向上を目指し、中長期的な経営目標として以下の数値を掲げています。

・売上高:72億円
・営業利益:12億円
・経常利益:12億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:8億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「生活価値創造企業」への進化を目指し、既存事業の変革と拡大、業務の効率化、ブランド価値の再設計を進めています。介護保険対象の製品拡充やEC・量販店を通じた自費市場の開拓に加え、機能性とデザイン性を両立させた新ブランドの浸透に注力します。また、システム統合を通じた生産性の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本の強化を重要な経営戦略と位置づけ、従業員の主体性と生産性の向上を両立する人材育成を推進しています。OJTを通じた実務能力の開発や、働きやすい職場環境の構築に向けた有給休暇の取得促進、業務プロセスの標準化など、労働環境の改善に向けた人的資本への投資を積極的に行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 41.1歳 9.1年 5,058,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は関連法令の規定に基づく公表を行っていないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 中国の生産拠点への依存


同社グループは、製品の量産を主に中国の生産子会社で行っています。中国における政治的・法的な環境変化や、人件費の高騰、労働力不足、物流網の混乱など、予期せぬ事象が発生した場合には生産体制に支障が生じ、同社の業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品リコールや製造物責任


同社はSG基準やJIS規格、ISO9001に従って安全性の確保に努めていますが、製品の欠陥を完全に防ぐ保証はありません。大規模な製品回収(リコール)が発生した場合、多額の損害賠償や回収費用の負担が発生するだけでなく、ブランド価値が著しく毀損し、売上の減少につながるリスクがあります。

(3) 介護保険制度の変更


同社グループの事業は、売上の約4割を占めるなど介護保険制度に大きく依存しています。今後、要介護認定の範囲の変更や、福祉用具の適用対象の見直し、利用者の自己負担割合の引き上げなど、介護保険制度そのものが変更された場合、需要が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定顧客への売上依存


同社グループの販売先のうち、特定の主要顧客であるパナソニックエイジフリーに対する売上割合が約21%を占めています。特定企業への依存度を下げるべく新規開拓を進めていますが、該当顧客の事業方針や取引条件の変更が生じた場合、同社の経営成績に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。