※本記事は、株式会社チームスピリット の有価証券報告書(第29期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. チームスピリットってどんな会社?
働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」を主力とするB2B SaaS企業です。
■(1) 会社概要
1996年に有限会社デジタルコーストとして設立され、2012年に働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」の提供を開始しました。2018年に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しました。現在では持続的成長に向けたマルチプロダクト化を推進しています。
同社グループの従業員数は連結207名、単体205名です。筆頭株主は創業者の荻島浩司氏で、第2位はベンチャーキャピタルファンド、第3位は米国に拠点を置く金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 荻島 浩司 | 29.55% |
| Draper Nexus Technology Partners 2号投資事業有限責任組合 | 9.29% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役CEOは道下和良氏が務めています。社外取締役比率は80.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 道下 和良 | 代表取締役CEO | 日本オラクル、セールスフォース・ドットコム常務執行役員、WalkMe代表取締役社長等を経て、2023年11月より現職。 |
社外取締役は、古市克典(元Box Japan代表取締役会長)、田邉美智子(公認会計士)、氏家優太(弁護士)、桑園寛之(日本ベンチャーキャピタル取締役副社長執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「SaaS事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ライセンス(TeamSpiritシリーズ)
主力製品である「TeamSpirit」シリーズを提供しています。勤怠管理、工数管理、経費精算、電子稟議等の機能を一元化したクラウドサービスで、従業員1,000名以上の大企業向け「TeamSpirit Enterprise」や中堅企業向け製品を展開し、企業の働き方改革や生産性向上を支援します。
収益は主に、顧客企業から受け取るサブスクリプション方式のライセンス利用料(月額課金)です。契約期間に応じたサービス料をユーザー人数分課金するリカーリングレベニューモデルを採用しています。運営は主にチームスピリットが行っています。
■(2) プロフェッショナルサービス
「TeamSpirit」の導入や運用に関して、ユーザー企業を有償で支援するサービスです。導入時の設定支援や業務フロー構築のコンサルティングを行う「スポットサポート」と、本番稼働後の安定運用や活用促進を支援する「プレミアサポート」を提供しています。
収益は、顧客企業の導入プロジェクトや運用支援契約に基づき、役務提供の対価として受け取るコンサルティング料やサポート料です。高度なITおよび業務スキルを持つコンサルタントが支援を行い、顧客の成功(カスタマーサクセス)を後押しします。運営は主にチームスピリットが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加しており、事業規模の拡大が続いています。利益面では、過去3期において先行投資等の影響により損失を計上していましたが、当期においては営業損益、経常損益、当期純損益のいずれも黒字転換を果たしました。利益率もプラスに転じ、収益構造の改善が見られます。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 29.0億円 | 32.6億円 | 38.1億円 | 44.2億円 | 49.2億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 | -1.3億円 | -2.3億円 | -0.9億円 | 2.8億円 |
| 利益率(%) | 6.0% | -3.9% | -6.0% | -2.0% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.1億円 | -1.1億円 | -2.0億円 | -1.3億円 | 3.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、49億円規模に達しました。売上総利益率も改善傾向にあります。販管費のコントロールや増収効果により、営業損益は前期の赤字から黒字へと大きく改善しました。収益性の向上が進んでいます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44.2億円 | 49.2億円 |
| 売上総利益 | 16.5億円 | 19.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.4% | 40.3% |
| 営業利益 | -0.9億円 | 2.7億円 |
| 営業利益率(%) | -2.0% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が6.0億円(構成比35%)、広告宣伝費が1.7億円(同10%)を占めています。売上原価においては、ソフトウェア償却費やサーバー費用等の固定費が含まれますが、プラットフォーム利用料等の変動費も一定割合を占めています。
■(3) セグメント収益
ライセンス売上高、プロフェッショナルサービス売上高ともに前期比で増加しました。特にライセンス売上はエンタープライズ企業等の新規・追加契約により堅調に推移しており、全社売上の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) |
|---|---|---|
| ライセンス | 35.9億円 | 40.2億円 |
| プロフェッショナルサービス | 8.3億円 | 9.0億円 |
| 連結(合計) | 44.2億円 | 49.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.7億円 | 4.4億円 |
| 投資CF | 1.1億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | -0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「働くを変え、チームの力を解き放つ」というミッションを掲げ、個人の力を発揮できる環境づくりとチームの成功を支援することを目指しています。また、「チームの成功を支える プラットフォームになる」をビジョンとし、顧客の事業成功を支える価値創造の基盤となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「Spirit」として4つのバリューを掲げています。「Customer Value Spirit(お客さまの期待を超えていこう)」、「Challenger Spirit(変化と挑戦を楽しもう)」、「Professional Spirit(常に学び、高め合おう)」、「Team Spirit(最高のチームになろう)」を行動指針とし、チーム一丸となって成功を目指す文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な目標として、SaaS事業における安定性と高い成長性の両立を目指しています。具体的には、以下の数値を長期的な目線として掲げています。
* ARR(年間経常収益)100億円
* 営業利益率20%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は成長戦略として「エンタープライズ戦略」と「マルチプロダクト戦略」を推進しています。大企業向け製品の拡販による市場浸透を図るとともに、勤怠管理以外の新製品開発や周辺領域への拡大を進めています。また、経営効率性の改善による収益性向上にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を価値創造の源泉と位置づけ、「スキル・リスキリング」「ウェルビーイング」「カルチャー」の3点を重視しています。リーダー育成やSalesforce認定資格取得の支援、ハイブリッドワーク環境の整備、多様性を尊重しチームワークを促進するカルチャー形成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 36.4歳 | 3.5年 | 7,128,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.3% |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 65.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Salesforce認定資格保有者数(60人)、リファーラル採用又はアルムナイ採用比率(24.4%)、退職率(16.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) セールスフォース・ジャパンとの関係
同社サービスはSalesforceのプラットフォーム基盤上で提供されており、同社とのOEMパートナー契約に基づいています。同社の戦略変更やプラットフォームの障害、契約解除等の事態が生じた場合、サービスの提供や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 営業活動の長期化と季節変動
エンタープライズ企業との契約拡大を目指していますが、大企業特有の慎重な検討プロセスにより商談が長期化するリスクがあります。また、顧客企業の決算期やシステム更新時期の影響を受けやすく、契約獲得が下半期に偏重する傾向があり、計画との乖離が業績変動要因となる可能性があります。
■(3) 想定を上回る解約の発生
SaaSビジネスにおいて契約の継続は収益安定の要ですが、顧客の経営環境の変化や利用状況により一定の解約が発生します。顧客満足度向上等の施策を行っていますが、想定を超える解約が発生した場合、成長性や収益性に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 単一事業への依存
同社グループの売上は「TeamSpirit」および関連サービスによる単一事業で構成されています。働き方改革や生産性向上への需要は継続すると見込んでいますが、市場環境の変化や競合の影響により当該事業の成長が鈍化した際の影響を分散する事業ポートフォリオを持たないリスクがあります。



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