オキサイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オキサイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場し、単結晶、光部品、レーザ光源等の開発・製造・販売を行う光学関連企業です。当連結会計年度の業績は、売上高が前期比27.1%増の84億円と伸長し、経常損益は2億円の黒字に転換しました。一方で、のれん減損損失の計上等により、親会社株主に帰属する当期純損失は27億円となりました。


※本記事は、株式会社オキサイド の有価証券報告書(第25期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オキサイドってどんな会社?


国立研究開発法人からのスピンオフベンチャーとして設立され、光技術のキーマテリアルである単結晶やレーザ製品をグローバルに展開する研究開発型企業です。

(1) 会社概要


2000年に山梨県で設立され、翌年には新製品開発に成功し国際展示会で販売を開始しました。その後、三菱電線工業からの光デバイス事業、マグネスケールからのレーザ事業、日立化成からのシンチレータ単結晶事業など、国内外の企業から技術や事業を買収・承継し成長を遂げました。2021年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2023年にはイスラエルのRaicol Crystals Ltd.を子会社化するなど、グローバル展開を加速させています。

連結従業員数は402名、単体では302名です。筆頭株主は資本業務提携先である米国半導体検査装置メーカーの日本法人ケーエルエー・テンコール、第2位は創業者で会長の古川保典氏、第3位は資本業務提携先のエヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジです。

氏名 持株比率
ケーエルエー・テンコール 8.46%
古川 保典 7.61%
エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ 5.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長(COO & CFO)は山本正幸氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
古川 保典 代表取締役会長(CEO) 1983年日立金属入社。物質・材料研究機構を経て2000年同社設立、代表取締役社長。2024年5月より現職。
山本 正幸 代表取締役社長(COO & CFO)財務経理本部長SCM本部長 1990年商工組合中央金庫入社。2007年同社取締役副社長を経て、2024年5月より現職。
藤浦 和夫 取締役副社長(CTO) 1985年日本電信電話入社。NTT理事、NTT-ATを経て2017年同社取締役。2024年5月より現職。
石橋 浩之 取締役(CTO) 1980年日立化成工業入社。東北大学特任教授(客員)。2017年より現職。
内田 誠二 取締役(CSO)管理本部長 大和証券SMBC、シティグループ証券等を経て2017年同社入社。2021年より現職。


社外取締役は、為近恵美(横浜国立大学教授)、Gareth C.W. Jones(元Gooch & Housego CEO)、小池美和(NTT-AT統括マネージャ)です。

2. 事業内容


同社グループは、「新領域事業」「半導体事業」「ヘルスケア事業」の3つの事業区分で製品を展開しています。

(1) 新領域事業


単結晶、光部品、レーザ光源および光学測定装置の開発、製造、販売を行っています。また、コア技術である単結晶技術等を活用し、新用途や新製品の研究開発、試作受託なども手掛けています。近年は量子通信分野向けの製品開発にも注力しています。

収益は主に製品の販売対価です。運営はオキサイド、Raicol Crystals Ltd.、およびオキサイドパワークリスタルが行っています。

(2) 半導体事業


半導体ウエハの欠陥検査装置メーカー向けに、単結晶およびレーザの開発、製造、販売を行っています。特に非線形光学効果の強い単結晶やそれを搭載した深紫外レーザは、半導体微細化に伴う検査需要に対応しています。

収益は製品販売に加え、定期的なメンテナンスや消耗部品の交換によるリカーリング収益も含まれます。運営は主にオキサイドが行っています。

(3) ヘルスケア事業


がん診断用のPET検査装置等に搭載されるシンチレータ単結晶の開発、製造、販売を行っています。製造した単結晶を加工し、PET用素子として検査装置メーカーに供給しています。また、頭部専用PETなど新たな用途開発も進めています。

収益は製品の販売対価です。運営はオキサイドが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年2月期は売上高66億円に対し経常損失7.7億円、最終赤字1.8億円となりました。2025年2月期は売上高が84億円へと拡大し、経常利益も2.3億円と黒字転換を果たしましたが、のれん減損損失等の計上により最終損失は27億円へと拡大しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 66.1億円 83.9億円
経常利益 -7.7億円 2.3億円
利益率(%) -11.6% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.2億円 -27.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間において売上高は約27%増加し、売上総利益率は28.5%から38.8%へと大きく改善しました。これに伴い、営業損益も前期の赤字から黒字へと転換しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 66.1億円 83.9億円
売上総利益 18.8億円 32.6億円
売上総利益率(%) 28.5% 38.8%
営業利益 -9.8億円 1.3億円
営業利益率(%) -14.9% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が13億円(構成比41%)、給料及び手当が4.3億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


半導体事業は生産効率改善等により大幅な増収となりました。新領域事業もデータセンター向け案件獲得等で伸長しています。一方、ヘルスケア事業は既存顧客の需要減等により減収となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
新領域事業 18.7億円 24.6億円
半導体事業 31.4億円 47.0億円
ヘルスケア事業 15.9億円 12.3億円
連結(合計) 66.1億円 83.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を元手に、借入金等を活用してさらに積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF -9.5億円 8.9億円
投資CF -61.4億円 -15.4億円
財務CF 73.0億円 12.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-41.5%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「研究成果を社会に還元し、キーマテリアルを世界に向けて発信する」「顧客へマテリアルソリューションを提供し、社会の発展に貢献する」「単結晶を核とした製品を開発し、未来の市場機会を創造し続ける」という3つの経営理念を掲げています。また、ミッションとして「豊かな未来を光の技術で実現する」ことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「世の中に無い、また敢えて他社ができないものに取り組む」というベンチャー精神を重視しています。光産業におけるオープンイノベーションパートナーとして、技術シーズと市場ニーズをマッチングさせ、世界でもユニークな光学技術を用いて新たな付加価値を創造するコーディネーターの役割を担うことを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営指標として以下の数値を目標に掲げています。

* 営業利益率:10%
* EBITDAマージン:20%

(4) 成長戦略と重点施策


光学分野の次世代製品やレーザ加工・センシング等の新領域開発に加え、コア技術である単結晶の高品質化を推進します。特に、カーボンニュートラル実現に向けたパワー半導体向けSiCウエハの高品質化・大口径化や、低コストβ-Ga2O3基板の開発に注力します。また、光学技術の蓄積や技術者集団の形成、M&Aノウハウの活用により、高付加価値製品を開発し収益性を高める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


需要増や開発促進に対応するため、即戦力の技術者採用と若手の人材開発を経営課題としています。新卒採用では大学等との連携やインターンシップを通じて博士課程修了者を含む人材を確保し、中途採用では人材紹介会社を活用して即戦力を確保しています。また、社員を「人的資本」と捉え、人事制度「OGS」を通じてスキルベース型の評価や成長支援を行い、エンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 40.6歳 4.7年 5,439,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.1%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規) 80.6%
男女賃金差異(非正規) 58.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(72.1%)、平均勤続年数(4.7年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客動向によるリスク


同社製品は半導体や医療機器メーカー等へ提供されており、これら産業の景気変動や顧客企業の経営状態の影響を受けます。特に、顧客の次世代製品への投資や製品転換が遅れた場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、幅広い産業セクターへの展開を進め、特定産業への依存リスクの分散を図っています。

(2) 特定の取引先への依存リスク


売上高の約65%が特定の6取引先に集中しており、これら主要顧客の事業方針変更や業績悪化があった場合、同社の業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は新規顧客開拓や新市場の創造を通じて顧客ポートフォリオを分散させ、特定取引先への依存度を低減させる取り組みを進めています。

(3) 海外事業展開に関するリスク


売上の80%超が海外向けであり、特に中国や米国が主要市場です。各国の貿易政策、地政学的リスク(米中摩擦や中東情勢など)、為替変動等が事業に影響を与える可能性があります。特にイスラエルの子会社Raicol社に関しては、地域紛争の影響等を注視しています。同社は情勢変化のモニタリングを強化し、リスク管理に努めています。

(4) 資材調達に関するリスク


シンチレータ単結晶の原料である酸化ルテチウム等のレアアースや、レーザ部品などの特殊部材には調達先が限定されるものがあります。中国の輸出規制や供給企業の事情により調達難が生じた場合、生産に支障が出る可能性があります。同社は複数購買や在庫積み増し、代替部材の確保、サプライヤーとの連携強化等により安定調達を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。