オキサイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オキサイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オキサイドは東京証券取引所グロース市場に上場し、単結晶やレーザ光源などの光学関連製品の開発・製造・販売を展開しています。直近の業績では、半導体事業や新領域事業の順調な拡大により売上高が増加し、営業利益も大幅な増益を達成しました。一方、子会社株式譲渡に伴う特別損失計上で最終赤字となっています。


※本記事は、株式会社オキサイドの有価証券報告書(第26期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オキサイドってどんな会社?


オキサイドは、単結晶やレーザ光源などの光学関連製品を開発・製造・販売するグローバルニッチトップ企業です。

(1) 会社概要


2000年に創業者の研究成果を社会還元する目的で設立されました。2010年にマグネスケールからレーザ事業、2015年に日立化成からシンチレータ単結晶事業を買収し事業を拡大しました。2021年に東京証券取引所マザーズに上場し、2024年にはオキサイドパワークリスタルを設立しています。

従業員数は連結312名、単体297名です。筆頭株主は創業者の古川保典氏で、第2位はケーエルエー・テンコール、第3位はNTTアドバンステクノロジとなっています。

氏名 持株比率
古川保典 9.49%
ケーエルエー・テンコール 8.21%
NTTアドバンステクノロジ 5.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役CEOは古川保典氏が務めています。取締役8名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
古川保典 代表取締役CEO 1983年日立金属入社。1996年物質・材料研究機構入社。2000年同社設立。2024年オキサイドパワークリスタル代表取締役社長。2026年5月より現職。
山本正幸 代表取締役COO 1990年商工組合中央金庫入社。2007年同社取締役副社長。2024年代表取締役社長。2026年5月より現職。
藤浦和夫 取締役CTO 1985年日本電信電話入社。2012年エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ入社。2017年同社取締役。2024年取締役副社長。2026年5月より現職。
石橋浩之 取締役CTO 1980年日立化成工業入社。2014年東北大学特任教授。2017年同社取締役。2024年オキサイドパワークリスタル取締役副社長。2026年5月より現職。
内田誠二 取締役CSO 2004年大和証券SMBC入社。2011年シティグループ証券入社。2017年同社IPO準備室長。2021年取締役。2026年5月より現職。


社外取締役は、為近恵美(元日本電信電話)、Gareth C.W. Jones(元Gooch & Housego CEO)、小池美和(エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ担当部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体事業」「ヘルスケア事業」「新領域事業」の3つの事業を展開しています。

半導体事業


半導体ウエハの検査装置メーカー向けに、単結晶やそれを搭載したレーザの開発・製造・販売を行っています。半導体の微細化に伴い、短波長化と高出力化を実現する次世代製品の開発・提案を継続的に行っています。

主にシリコンウエハの欠陥検査装置向けのレーザ光源等を販売して収益を得ています。また、定期的な部品交換等のメンテナンス需要による安定した収益も見込めます。運営は同社が行っています。

ヘルスケア事業


がんの診断に使用されるPET検査装置に搭載されるシンチレータ単結晶の開発・製造・販売を行っています。また、アルツハイマー型認知症診断向けの需要拡大を見据えた開発も進めています。

製造したシンチレータ単結晶を加工した素子を、国内外のPET検査装置メーカーに販売することで収益を得ています。運営は同社が行っています。

新領域事業


国内外の光計測機器メーカーや大学等研究機関向けに、単結晶、光部品、レーザ光源及び光学測定装置を開発・製造・販売しています。コア技術を活用し有望な新用途や新製品を育成しています。

研究開発や試作の受託に加え、商品化された波長変換デバイスや量子もつれ光子対発生モジュールなどの販売により収益を得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、100億円を突破しました。経常利益も増益傾向にあり収益性の改善が進んでいますが、特別損失の計上などにより最終赤字や低水準の利益となる期もみられます。

項目 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 66.1億円 83.9億円 100.4億円
経常利益 -7.7億円 2.3億円 6.7億円
利益率(%) -11.6% 2.7% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.8億円 -32.7億円 0.1億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加していますが、売上総利益率はやや低下傾向にあります。一方で、販売費及び一般管理費が減少したことにより営業利益率は改善し、大幅な営業増益を達成しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 83.9億円 100.4億円
売上総利益 32.6億円 33.7億円
売上総利益率(%) 38.9% 33.6%
営業利益 1.3億円 5.4億円
営業利益率(%) 1.5% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が12.0億円(構成比42.4%)、給料及び手当が4.1億円(同14.5%)、支払手数料が2.6億円(同9.1%)を占めています。売上原価は66.7億円(構成比66.4%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は光学事業の単一セグメントですが、用途別に3つの事業を展開しています。半導体事業が売上の半分を占めて牽引するほか、ヘルスケア事業と新領域事業も大幅な増収となり、全領域で成長を実現しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
半導体事業 47.0億円 50.0億円
ヘルスケア事業 12.3億円 20.0億円
新領域事業 24.6億円 30.4億円
連結(合計) 83.9億円 100.4億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の状態です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 8.9億円 28.5億円
投資CF -15.4億円 -6.8億円
財務CF 12.8億円 -22.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-10.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も31.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「研究成果を社会に還元し、キーマテリアルを世界に向けて発信する」「顧客へマテリアルソリューションを提供し、社会の発展に貢献する」「単結晶を核とした製品を開発し、未来の市場機会を創造し続ける」の3つの経営理念を掲げています。光産業のオープンイノベーションパートナーとして、新たな付加価値を創造する役割を担っています。

(2) 企業文化


「世の中に無い、また敢えて他社ができないものに取り組む」というベンチャー精神を発揮し、ユニークな光学技術でイノベーションに貢献することを目指しています。また、社員が能力を最大限発揮できる環境整備に向け「行動指針」を制定し、社員同士が互いに教え合う文化の促進に注力しています。

(3) 経営計画・目標


経営指標として、営業利益率とEBITDAマージンの向上を目標に掲げています。高付加価値製品の開発により営業利益率を高めるとともに、設備投資や生産・業務の効率化を図ることでEBITDAマージンの目標達成を目指しています。

・営業利益率:10%
・EBITDAマージン:20%

(4) 成長戦略と重点施策


光学分野の次世代製品や新領域での新製品開発と、コア技術である単結晶の高品質化開発を推進しています。具体的には、カーボンニュートラル実現に貢献するパワー半導体向けのSiCウエハやβ型酸化ガリウム基板の開発に注力しています。中長期的には技術者集団の形成を図り、高付加価値製品の提供により企業価値の増大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員を「人的資本」と捉え、成長を支援する人事制度「OGS」を導入しています。職能型とジョブ型を兼ね備えた「スキルベース型」の考え方を採用し、社員の長期的なモチベーション維持を図ります。また、教育制度の強化やサクセッションプランの推進、タレントマネジメントシステムを通じた人材配置の最適化にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 40.8歳 5.5年 5,025,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規雇用) 80.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(12.44時間)、2026年4月の新卒採用実績(5名)、2026年2月期の正社員中途採用実績(12名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存と顧客動向


同社の販売先は多岐にわたるものの、上位6社に対する売上が約66%を占めています。特定の取引先の業績悪化や事業方針の変更が生じた場合、収益が減少する可能性があります。また、製品需要は顧客の次世代製品開発投資に依存するため、半導体や医療機器などの各産業の業績悪化や、開発スケジュールの遅延が同社の業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 海外事業展開と地政学的要因


売上高の90%以上を海外市場が占めており、特に中国や米国向けが大きな割合を持っています。各国の税制や輸出管理規制の変更、米中間の関税政策、地政学的リスクの高まりによる国際物流の停滞などが事業活動に影響を与える可能性があります。同社は情勢変化をモニタリングし、イスラエルの子会社を売却するなどリスク低減に努めています。

(3) 特殊原材料や部材の調達難


同社は特殊な原材料や部品を使用しており、一部で代替が困難なものが存在します。例えば、ヘルスケア事業のシンチレータ単結晶に使用する酸化ルテチウムは主に中国から調達しているほか、半導体事業のレーザ部材も製造可能な企業が限られています。調達先の国策や供給不安、原材料価格の急激な変動が生じた場合、生産活動や収益に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。