※本記事は、株式会社VRAIN Solution の有価証券報告書(第5期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. VRAIN Solutionってどんな会社?
同社は、製造業の生産性向上や人手不足解消を目指し、AI技術を活用した外観検査システムやDX支援を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2020年に設立され、同年よりDXコンサルティングおよびAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」の提供を開始しました。その後、2024年2月に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場しています。2024年から2025年にかけては大阪、名古屋に営業所を開設し、国内拠点の拡充を進めています。
2025年2月28日時点の従業員数は、連結・単体ともに97名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社で、第2位は創業者である社長本人となっています。第3位にはベンチャーキャピタルが名を連ねており、経営陣が安定した持分を保有するオーナーシップの強い資本構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 合同会社Y&N | 38.18% |
| 南塲 勇佑 | 28.96% |
| ジャフコSV6投資事業有限責任組合 | 2.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長には南塲勇佑氏が就任しており、社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 南塲勇佑 | 代表取締役社長 | キーエンス、エムスリーを経て、2019年ゼットウィル設立。2020年3月より現職。 |
| 荻本成基 | 取締役DX事業開発部部長 | 2020年4月同社入社。取締役技術開発部部長を経て、2022年5月より現職。 |
| 菊地佳宏 | 取締役コーポレート部部長 | みずほ銀行を経て、2021年1月同社入社。2022年5月より現職。 |
| 山田郁生 | 取締役技術開発部部長 | キーエンスを経て、2021年7月同社入社。2022年5月より現職。 |
社外取締役は、北田眞治(元プライムアースEVエナジー社長)です。
2. 事業内容
同社は、「AIシステム」および「DXコンサルティング」の2つのソリューションを展開しています。
■(1) AIシステム
自社開発のAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」や、それに関連する撮像機器(カメラ、照明等)、検査装置などを提供しています。主な顧客は自動車業界や食品業界の製造業であり、従来検査員が目視で行っていた良品・不良品判定の自動化・省力化を実現しています。
収益は、顧客に対してAIソフトウェアのライセンス、専用ハードウェア、および導入に伴うシステム構築費用等を販売することで得ています。運営はVRAIN Solutionが単独で行っており、企画から導入、稼働までをワンストップで提供できる体制を構築しています。
■(2) DXコンサルティング
製造現場の生産性向上を目的として、AIやIoT技術を活用したDX推進を支援するサービスです。顧客の課題設定からデータ取得デバイスの選定、分析、実際の運用支援まで、プロジェクト全体に伴走します。製造業や製造工程に関する専門知識を持つコンサルタントが、ハンズオンで開発支援まで行う点が特徴です。
収益は、顧客企業からコンサルティングフィーや開発支援費用を受け取ることで発生します。この事業もVRAIN Solutionが運営しており、AIシステムの導入前後のフェーズにおいて顧客のDXを多角的に支援し、同一顧客内での取引拡大を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は設立初期から急速に拡大しており、特に直近の2025年2月期には売上高が21億円を突破しました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに右肩上がりで推移しており、高い利益率を維持しながら成長を続けています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1.0億円 | 3.4億円 | 6.2億円 | 14.1億円 | 21.4億円 |
| 経常利益 | 0.2億円 | 0.1億円 | 0.6億円 | 5.0億円 | 6.0億円 |
| 利益率(%) | 18.9% | 4.2% | 10.3% | 35.1% | 27.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.1億円 | 0.1億円 | 0.5億円 | 3.3億円 | 4.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。直近の2025年2月期においては、売上総利益率が70%台後半という高い水準を維持しています。営業利益率も20%台後半を確保しており、事業規模の拡大と高収益体質の維持を両立していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 14.1億円 | 21.4億円 |
| 売上総利益 | 11.4億円 | 16.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 80.5% | 78.5% |
| 営業利益 | 5.1億円 | 5.9億円 |
| 営業利益率(%) | 36.0% | 27.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が2.8億円(構成比26%)、研究開発費が2.3億円(同21%)を占めています。売上原価においては、材料費が4.4億円(売上原価比60%)、労務費が2.0億円(同27%)となっており、ハードウェア構成要素と人的リソースへの投資が主なコスト要因です。
■(3) セグメント収益
AIシステム、DXコンサルティングともに増収となりました。特にAIシステムは、自動車・食品業界等での導入が進み、売上高が前期比で大きく伸長しています。DXコンサルティングも堅調に推移しており、両事業が相互に連携しながら全体の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| AIシステム | 10.7億円 | 17.9億円 |
| DXコンサルティング | 3.5億円 | 3.6億円 |
| 連結(合計) | 14.1億円 | 21.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、製造業DX事業を単一セグメントとしており、AIシステムやDXコンサルティングを提供しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益の計上はあったものの、売上債権及び契約資産の増加や法人税等の支払いが主な要因となり、支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や敷金の差入が主な要因となり、支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済が主な要因となり、支出となりました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.4億円 | -1.6億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -2.4億円 |
| 財務CF | 5.3億円 | -0.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「モノづくりのあり方を変え、世界を変えていく」を企業理念(ミッション)として掲げています。国際競争の激化や人手不足といった課題に直面する日本の製造業に対し、AIやIoTなどの新技術を活用した自動化・省力化ソリューションを提供することで、製造業の競争力を強化し、日本のモノづくりの発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、製造業界出身者が多く在籍しており、業界知識や製造工程に関する深い知見を共有する文化があります。また、単なるアドバイスにとどまらず、顧客の課題に対してハンズオンで開発支援まで行う姿勢を重視しています。マニュアル化や社内教育の仕組みを整えることで、出身業界にかかわらず高いパフォーマンスを発揮できる組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年度から2028年度における中期経営方針を定めており、成長性と収益性を重視した経営を行っています。目標達成状況を判断する客観的な指標として、売上高、売上高成長率、売上総利益、売上総利益率、営業利益、営業利益率を設定しています。また、今後の成長に向けて、受注残高、累計取引社数、継続顧客売上高についてもモニタリングしていく方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、AIシステムの導入ライン拡大とDXコンサルティングによる異なる工程の自動化支援を通じて、同一顧客への複数回にわたるサービス提供を推進しています。今後は、国内支社の展開や海外工場へのサービス展開を検討するとともに、新規ソリューションの開発や技術面の拡充を進め、製造業におけるDX支援企業としての地位確立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的成長には優秀な営業人材の採用と育成が不可欠とし、製造業の専門知識や営業力を有し、理念に共感する人材の発掘に注力しています。教育面では、入社時研修に加え、定期的な勉強会や営業活動を通じた知見共有を行い、営業力を強化しています。また、技術面でも優秀な技術者の確保と最新技術をキャッチアップする体制構築を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 34.6歳 | 1.0年 | 6,166,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合について
同社事業には競合他社が存在し、新規参入も見受けられます。同社は製造業の知見とワンストップ対応で優位性を築いていますが、資金力やブランド力を持つ大手企業の参入などにより競争環境が激化した場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 人材の確保について
高い成長率と利益率を実現するには、営業・技術・管理の各面で優秀な人材の確保が不可欠です。採用競争が激化する中、一定数の退職者も発生しており、労働環境整備や採用・教育体制の強化に努めていますが、人材確保が計画通り進まない場合、事業展開に支障が出る可能性があります。
■(3) 取引依存度の高い主要な取引先について
同社のAIシステム事業において、東海漬物株式会社への売上依存度が11.6%(2025年2月期)と比較的高くなっています。同社は新規顧客開拓によりポートフォリオのバランスを図っていますが、主要顧客の事業環境変化や取引方針の変更等は、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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