VRAIN Solution 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

VRAIN Solution 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するVRAIN Solutionは、製造業界向けにAI外観検査システムの提供とDXコンサルティングを展開する企業です。直近の業績は、売上高が前期比約53%増の33億円、経常利益が同53%増の9億円と大幅な増収増益を達成しており、順調な成長を続けています。


※本記事は、VRAIN Solutionの有価証券報告書(第6期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. VRAIN Solutionってどんな会社?


製造業界向けにAI外観検査システムの開発・販売とDXコンサルティングをワンストップで提供する企業です。

(1) 会社概要


2020年3月にAI技術を用いて製造業の自動化を支援することを目的として設立されました。同年よりDXコンサルティング及びAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」の開発・販売を開始しました。その後、順調に導入実績を積み上げ、2024年2月に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場しました。

従業員数は単体で138名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の南塲勇佑氏が間接的に保有する資産管理会社の合同会社Y&Nで、第2位は南塲氏本人、第3位は楽天証券共有口となっています。

氏名 持株比率
合同会社Y&N 37.63%
南塲勇佑 28.54%
楽天証券共有口 2.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は南塲勇佑氏が務めており、社外取締役の比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
南塲勇佑 代表取締役社長 エムスリー等を経て、2019年ゼットウィルを設立。2020年3月より現職。
荻本成基 取締役DX事業開発部部長 2020年4月同社入社。2021年3月技術開発部部長等を経て、2022年5月より現職。
菊地佳宏 取締役コーポレート部部長 みずほ銀行を経て、2021年1月同社入社。2022年5月より現職。
山田郁生 取締役技術開発部部長 キーエンスを経て、2021年7月同社入社。2022年5月より現職。


社外取締役は、北田眞治(元トヨタ自動車常務役員)です。

2. 事業内容


同社は、「製造業DX事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) AIシステム


製造ラインの自動化・省力化を実現する汎用性の高いAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」を自社開発し、提供しています。人の目に頼っていた良品・不良品の判定を自動化するソフトウェアだけでなく、カメラやセンサーなどの周辺ハードウェアも組み合わせてワンストップで企画・提案・設置を行っています。

収益は、製造業の顧客からシステムの導入費用およびハードウェアの販売代金として受け取ります。自動車業界や食品業界を中心に導入が進んでおり、平均販売単価は1,800万円です。本事業はVRAIN Solutionが運営しています。

(2) DXコンサルティング


同社のコンサルタントが、製造現場の生産性向上を目的としたDXプロジェクトに参画し、課題設定から運用フェーズまで一貫して支援するサービスです。製造工程に関する豊富な知見とノウハウを活かし、データの取得から分析、現場への実装まで、ハンズオンでの開発支援を行う点が特徴です。

収益は、製造業の顧客からコンサルティングサービスの提供に対する対価として受け取ります。同一企業からの複数回の成約実績もあり、平均販売単価は100万円です。本事業もVRAIN Solutionが単独で運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して高い成長を維持しており、事業規模が急速に拡大しています。それに伴い経常利益および当期純利益も順調に増加しており、高い収益性を確保しながらスケールする成長フェーズにあることがうかがえます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 3億円 6億円 14億円 21億円 33億円
経常利益 0.1億円 0.6億円 5億円 6億円 9億円
利益率(%) 4.1% 10.2% 35.1% 27.8% 27.8%
当期利益 0.1億円 0.5億円 3億円 4億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構造を見ると、売上総利益率は約79%と高い水準を維持しており、付加価値の高いソリューションを提供していることがわかります。営業利益率も約28%と高収益体質を確保しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 21億円 33億円
売上総利益 17億円 26億円
売上総利益率(%) 78.5% 78.9%
営業利益 6億円 9億円
営業利益率(%) 27.7% 27.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が5億円(構成比29%)、研究開発費が3億円(同16%)、採用費が3億円(同15%)を占めています。売上原価については、当期総製造費用のうち、材料費が8億円(構成比71%)、労務費が2億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


サービス別の売上構成を見ると、主力であるAIシステム事業が前期から大幅に成長し、全体の収益を力強く牽引しています。一方、DXコンサルティング事業の売上は減少していますが、同社は両サービスを連携させた顧客への導入を推進しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
AIシステム 18億円 31億円
DXコンサルティング 4億円 2億円
連結(合計) 21億円 33億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の状態です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF -2億円 -4億円
投資CF -2億円 -1億円
財務CF -1億円 4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は37.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.9%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「モノづくりのあり方を変え、世界を変えていく」ことをミッション(企業理念)に掲げています。日本の製造業が抱える人手不足や技能承継などの大きな社会課題を解決するため、AIなどの新しい技術を活用したソリューションを提供し、製造業の競争力を強化して日本のモノづくりの発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、モノづくりの現場に対する深い理解を重視しています。製造業界の出身者が多く在籍しており、高度な業界知識や製造工程のノウハウを共有し合う体制が構築されています。また、マニュアル化や社内教育を通じて、出身業界に関わらず全社員が十分なパフォーマンスを発揮できる環境を整えています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、成長性と収益性を重視しています。

* 売上高
* 売上高成長率
* 売上総利益および売上総利益率
* 営業利益および営業利益率
* 受注残高
* 累計取引社数
* 継続顧客売上高

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、1工場の1ラインから導入を始め、別ラインや別工場への横展開を図ることで取引の拡大を目指しています。さらにAIシステムを導入した企業にDXコンサルティングを提供し、取引の重層化を進めます。今後は国内拠点の展開を進めるとともに、海外工場への本格的なサービス展開も検討し、幅広い業界課題に対応できる企業を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社の持続的成長のためには、製造業に必要な専門知識や優れた営業力を持ち、理念に共感する人材の獲得が不可欠です。入社時の研修に加え、定期的な勉強会や営業活動を通じた気づきの共有を行い、業界知見を高めて営業力の強化を図っています。また、技術面では最新技術をキャッチアップする開発体制の構築に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 38.1歳 1.0年 6,400,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務に基づく公表項目として選択していない等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向と技術革新

同社が事業を展開するIT業界は技術革新のスピードが速く、顧客ニーズも絶えず変化しています。予想以上の急速な技術革新や汎用的な競合商品の出現により、同社のAIシステムやサービスが十分な競争力や付加価値を維持できなくなった場合、新規受注の減少により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合の出現

同社は製造業の豊富な知見を活かしたワンストップ対応により競争優位性を築いていますが、AIビジネス市場には新規参入事業者も見受けられます。今後、豊富な資金力やブランド力を有する大手企業の参入など、同社の強みを上回る競合他社が出現した場合、事業の成長や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 製造業界のDX投資動向

同社は製造業界向けにAIを用いたプロダクトやDXコンサルティングを提供していますが、顧客企業における社内人材の不足等により、DX化が想定通りに進まないリスクがあります。また、製造業界全体の設備投資意欲の低下によりデジタル投資が縮小した場合、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 優秀な人材の確保

高い成長率及び利益率を実現するためには、営業・戦略・技術などの各面において優秀な人材の獲得が不可欠です。同社は労働環境の整備や社内教育体制の強化を図っていますが、採用市場の競争激化等により求める人材の確保ができない場合や人材が流出した場合には、人員の増強や組織の拡充が制限され、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。